ドラゴンボールAT 作:澄ましたガール大好きおじさん
こうするしかなかったので初投稿です。
「ぐおぁぁぁぁぁぁがぁぁぁぁぁぁあ!!!」
1700万ゼノを超えるブルーツ波をその瞳から吸収し、ラディッツは瞬く間に巨大なモンスターに変貌した。
「お…大猿の…化け物…!?」
ドラミングをしてその闘争心を高める巨大モンスター、
その様子に何かを思い出せそうなのか、悟空は完全に動きを止めてしまう。
ぎろり、足元に惚ける雑魚を見逃さない。
完全に理性と瞳孔が消し飛んだ瞳が悟空を捉える。
今の彼にとって、悟空は健闘を讃えあった友などではない。
踏み潰すべき虫ケラである。
巨体に似合わない俊敏な動き、巨大な腕が悟空を捕獲しようと飛び出した。
ハッと我に返った悟空、しかし間に合わない。
大猿化したラディッツの戦闘力は10倍にも跳ね上がっている。
今の悟空にとって、この怪物はどうやっても倒し様のない文字通りの怪物。
そんな相手に不意をつかれて反応などできるはずもない。
巨大な五指が彼の体躯を捕まえるその刹那ーーー
彼の身体が跳ね飛ばされる。
大猿にとって、捕まえる相手が悟空か、小籠包かは問題ではない。
小さな虫ケラAがBになったとて同じこと。
「ッ…!」
彼女の気がぐん!と昂る。あの日ピッコロとの戦いで見せた一時的な超パワーアップ。
気功法を文字通り全力で行使して…回避を試みるが、遅い。
ソレでも力の差は圧倒的だ。
彼女の体はあっけなく、大猿の片手に鷲掴みにされる。
「ァ…ぐ!?」
みし…と嫌な音が巨大な拳の中から響く。この数秒で何本もの骨が砕けただろうか。
「や、やめろ!!ラディッツ!!」
「ぐ、がぁぁぁぁぁ!!」
「ぐ…ぎゃァァァァァ!?」
あまりにも情けない悲痛な悲鳴、高められた気がみるみるうちに萎んで行くのを感じる。このままではまずいと悟空は気を高める。
「波ァァァァ!!」
ノータイムで放たれたフルパワーの超かめはめ波。
しかし、大猿ラディッツの腕に直撃したはずのそれは、僅かに体毛を焦がしただけ…「がう?」などと呑気な声をあげるあたりまともなダメージになっていない。
防御力の乏しい小籠包は攻撃ですらないただの蹂躙行為で、その命は風前の灯火だった。
「ぎゃう。」
壊れた玩具に興味を失せたのか、大猿は無造作にその身体を地面目掛けて投げ捨てる。
戦闘力、万超えの圧倒的パワーで叩きつけられた彼女は辛うじて保っていた命の灯火をあっさり消し飛ばされた。
僅か数秒の出来事。
手強いライバルと認めていた強者があっさり死んだ。
その絶望的な状況で急速に脳髄が冷えていくのを感じる。
地頭の良い悟空は、過去に起きた養父の死亡と、今回の件を即座に紐づけていく。
「…ッ、そうか、お、オラだったのか…!じっちゃんを、じっちゃんを殺しちまったのは…!」
そう言いながらもたった今戦友を殺した怪物に向き直る。
自分では決して敵わない絶望的な相手だというのは理解している。
だが、ここで逃げても同じ事、ここで倒さなければチチに、悟飯に、仲間たちに危害が及ぶ。
「悪ぃな小籠包、オラが油断しちまったばっかりに…!」
もう彼女の体からは気の一切が感じられない。
寝ている時すら気を解放している彼女がこの有事に気を纏っていないということの意味を悟空は理解する。
せめて、一矢報いてやらねばと身構える。
その戦力差は重ねて言うが絶望的だ。
正に埒外と言えるパワー。
この世にコレほどまでの力を持った存在がいるとは…!
仮に万全な状態の小籠包と共闘したところで勝ち目はなかっただろう。
その時、どこからか聞き馴染みのあるライバルの声。
「孫!…手を貸すぞ。」
「ぴ、ピッコロ…!」
既に重いターバンとマントを脱いでいるピッコロが彼の隣に並び立つ。
その視線は無惨にも死に絶えた、ライバルを捉える。
「ちっ…俺様の獲物を横取りとは、イイ度胸だな獣が…!」
「ピッコロ!尻尾だ…尻尾を狙ってくれ…!オラが奴の注意を引く!」
「イイだろう、死ぬなよ孫…!」
決死の覚悟。目の前の巨獣に対して身構えたその時、二人の頭の中に声が響く。
ーーー孫、ピッコロ、満月だ。満月をこわせ。
ピッコロは心底不愉快そうに顔を歪めた。
「誰かと思えば…貴様か。月だと…?」
ーーー時間がない、説明は後だ。奴は油断している。今すぐ月を壊せ!
「ちっ…この俺様に命令するな。おい孫!やるぞ!」
「あぁ…!」
ドラミングをして此方を煽る巨大な猿を尻目に天高く二人は飛翔する。
ウガ?…と、彼らの予期せぬ動きに大猿は呑気に首を傾げる。
襲いかかってくるのなら遊んでやろう、そんな風に構えて居たのに、逃げるでもなく戦うでもない虫どもの動きに理解ができない。
「かめはめ…波!!」
「爆力魔波!!」
その野生の無防備さが彼の致命傷となった。
二人の気が急激に上昇、巨大な二つの気功波がまっすぐ中空に浮かぶ大きな新円目掛けて直進し…コレを木っ端微塵に破壊した。
「ご…お、ぉぉぉ…?」
時同じくして大猿の様子がおかしくなる。
満月より供給されるブルーツ波が枯渇する。
その巨体を維持する為のエネルギーを急速に消耗し…みるみるうちに身体と気が萎んでいく。
後に残されたのは…うつ伏せに倒れて気絶するラディッツの姿。
「ち…ッ、こんなつまらん死に方をしやがって…!」
両腕、両足があらぬ方向に曲がり…見るに堪えない肉の残骸と化したライバルと認めた女を見下ろす。
その右手には無念のあまりに血が滴るほど握り込まれていた。
「ぴ、ピッコロ…すまねぇ、助かった。」
「勘違いするな、俺の獲物を掠め取りやがったこのクズが許せなかった、それだけだ。」
ぐり、とラディッツの後頭部を踏みつける。
ーーーそやつの尻尾を切るのだ、そうすればもう大猿になることはない。
「ちっ…!」
忌々しい相手からの度重なる命令にイラつきながら、力任せに尻尾を引っ張る。
根本からぶちん!とちぎれたソレを空中に放り投げると
「かぁ!!」
精彩を欠いた文字通り力任せの気功波でソレを消し飛ばした。
二人は顔を見合わせる。
思いは珍しく完全に一致していた。
「孫、さっさとドラゴンボールを集めるぞ、あの女を生き返らせる。」
「ああ!ブルマからドラゴンレーダーを借りてくる!」
ーーー待つのだ二人とも。
再び響く静謐な声に二人は足を止める。
「…何度も何度も、気安く俺様の心に語りかけるんじゃない。」
『緊急だ、許せピッコロ。…私がもう少し早く事態を把握してれば、こうはならなかった。』
「能書きはいい、さっさと要件を話せ。」
神は語った。
突如現れた外宇宙からの来訪者。
コレを知らぬはずはなく、危険な大猿の因子を放置していたわけではなかった。
しかし、神である自分が直接手を下すわけにはいかない。
そこで神は時の部屋を駆使して、彼の素性をミスターポポに洗わせたのだ。
「お、オラは宇宙人だったのか…。」
『うむ、孫よ、そやつはお主の実の兄。…大方お前を迎えにきたのだろう。』
「でもサイヤ人っちゅーのは悪ィ奴なんだろ?オラ、そいつらの仲間にはなりたくねぇ。」
思わぬところで自らのルーツを知ることになった悟空。
しかし、だからと言って自分が地球育ちであることに変わりは無い。
滅んだという自分の母星には何の思い入れもないし、なんならこの地球が彼の故郷である。
「そのサイヤ人…こいつの仲間がこの星に向かってるというのか。」
『そうだ、一人は…お前たちと同程度、協力すればなんとかなる。しかし…もう一人のサイヤ人はそうはいかん、例え小籠包がいてもどうにもならんだろう。』
「…しかも、そいつらも大猿になれるっちゅー訳か。」
あまりにも絶望的。
あのラディッツが大猿になっただけで手のつけられない怪物になったというのに、それ以上の力を持った二人が同じ能力を持っている。
地球滅亡の危機と言っても過言ではないだろう。
『敵はそいつらだけではない…その背後には更に恐ろしい巨悪がいる。』
「…全くどうなってやがる。あの大猿でさえ手がつけられんというのにそれ以上だと?」
『そうだ、その力の差は私では測ることすらできん。何故この星が狙われてないのかは解らん。しかし、彼らに目をつけられた以上、遅かれ早かれ、我が地球は彼らに占領されるであろうな。』
「…折角、平和になったっていうのによ…!」
ぎゅ…!と握り締める拳。
スクスクと育つ我が子とソレを支えてくれる妻と義父。
そして仲間たちが脳裏に過ぎる。
『奴らは今地球に向かっている。神龍によればあと11ヶ月ほどでこの星に辿り着くようだ。』
「ふざけやがって…たった一年であの怪物を超えろというのか。」
『そうでなければ地球は助からん。』
彼らが到着するまで一年弱。
たったの一年しか猶予がないというのだ。
「だったらよ、早く小籠包を生き返らせて一緒に修行しねえとな…!」
「まったくだ、他の連中もかき集めて戦力を底上げせねばならん。」
タイムリミットを告げられた彼らは早速いきりたつ。
しかし、神は言葉を続けた。
『まあ待て二人とも。小籠包には考えがある、ワシに預からせてはくれんか。』
「…ドラゴンボールは貴様が使ったのだったな、余計なことしやがって。…好きにしろ。」
「神様、すまねえけど小籠包は任せたぜ。」
承知した、その言葉と共に小籠包の亡骸は一瞬で消えた。
恐らく、天界に移動したのだろう。
倒れ伏すラディッツを見てピッコロは静かに言い放った。
「…孫、コイツは俺が預かるぞ。」
「殺すってんなら、させねえぞ。」
「相変わらず甘い野郎だ、コイツは気に入らんが、戦力になる。この俺がコイツを最高の戦士にしてやる。」
クックックと悪い笑みを浮かべるピッコロ。
その様子は悪人というよりは、
過去の鬱憤を全部コイツにぶつけてやるぜへへへ、という
悪童さながらのソレだった。
「それと、貴様のガキも鍛えておけ。」
「悟飯は関係ねぇだろ。」
「惚けやがって、アイツの潜在能力ははっきり言って貴様以上だ。知らんとは言わせんぞ。」
図星、そんな様子の彼にピッコロはわかりやすい奴めとせせら笑う。
「いいか、サイヤ人とやらより更に恐ろしい連中がいる。そんな中、″子供だから″と貴重な戦力を遊ばせてる余裕なぞない。ソレこそ、ガキの未来を憂いているのならな?よく考えておけ。」
それだけ言うと、ピッコロはラディッツの襟首を掴んで彼方へと飛び去って言った。
後に残された悟空は、何も言い返すことができず、様々な感情をないまぜにした彼の心情を語るかのように、拳が静かに握りしめられた。
ピッコロ
基本最大:5500
脳筋ピッコロさん。
もちろんこんな程度では大猿をどうにかできない。
いつでも小籠包を殺せる癖に、そうしないのは、いつの間にか孫一家の影響で丸くなったから。
ていうか、元々殺す気なんてないだろとか言ってはいけない。
図らずもBSKとなってしまった。
何の略かはご想像にお任せします。