ドラゴンボールAT   作:澄ましたガール大好きおじさん

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 修行パートの締めくくりなので初投稿です。


其之六十 奥義習得…失敗…?

 

 あれから更に2ヶ月が経過した。

 小籠包は界王の指導の下で新たな奥義開眼を目指した。

 

 界王が打ち立てた奥義の一つ…界王拳。

 パワー、スピード、凡ゆる能力を倍加させる。

 その代償としてスタミナをゴッソリと持っていかれるのが最大の弱点。

 気の解放に次ぐ、更なる気の解放。

 彼女の気功法を編み出した時のミス。

 己の気の制約を取っ払い、ただただエネルギーを放出するだけの行為。

 その極致が界王拳である。

 

 界王は、望むのなら…どちらか片方でも実現してくれればという淡い期待を込めて彼女を育てた。

 

 その期待は良い意味でも、悪い意味でも叶うこととなる。

 

 まず、彼女は界王拳を実現させた。

 彼の技が机上の空論ではない事を証明して見せたのだ。

 しかし、技として成立するかは別問題。

 彼女のスタミナは急激なパワーの増加に極端に弱い。

 下界にて彼女が技を使ったのならば、それは数分だけのパワーアップとなる。

 それならば、常駐できる気功法を使った方がまだマシというもの。

 

 そう、気功法との併用ができないのだ。

 正確には…界王により使用が禁じられている。

 

 「お前さんには昔ながらのその技が一番スタイルにあっておるな。」

 「…すみません。」

 「なにを謝る!わしの夢に描いた奥義の一つを形にしたんじゃ、よくやったぞ、是非下界でこの技に見合う使い手を、探してやってくれ。」

 

 彼女は技をモノにすることができなかったが、界王は満足している。

 なにせ、夢に描き実現できなかった事を下界の若人(死んでいるが)が成し得たのだ。

 そのうち彼女の力になるかもしれない。

 その希望が界王へ満足感を与える。

 

 もちろん、来る決戦に使えないのは残念だが…今の彼女なら地球の戦士と力を合わせればなんとかなるであろう。

 それからじっくり、技を伝授するなり、極めるなりすればよい。

 界王はそう考えた。

 

 「それよりじゃ、残りの期間…お前には元気玉を覚えて貰う。」

 「はい、次こそ、モノにして見せます。」

 

 そんな決意に満ちた活きの良い返事。

 それもまた、虚しく散ってしまうことになる。

 

 更に2ヶ月近くが経過して、サイヤ人が来るまで幾許もなくなったころ。

 遂に技の完成が迫る。

 何度目かの失敗。

 頭上に掲げた両腕が力を集める事なく虚しく時間だけが過ぎる。

 

 しかし、此度の彼女は一味違った。

 

 ーーー心を、静かに。

 

 力を抜き周囲の生命を感じ取る。

 あれからスピリットの制御能力は更に向上し、

 モノ言わぬ草木の気をも感じ取れるようになった。

 

 「私に、元気を貸して…!」

 

 両手を掲げ…彼女の全身が膜のように淡い光で包まれる。

 これまではいつも通り、ここからが上手く行かない。

 共鳴した草木達は決して彼女に力を貸そうとはしないのだ。

 まるで「お前に与える力などない」とでもいうように。

 

 当然である、彼女の本質…魂は悪性のモノ。

 この技は善性に働きかけ、同意を得られたことで初めて成立する技なのだ。

 そんな彼女の呼びかけに答えるモノなどいない。

 これは界王の予想通りの結果だった。

 

 しかし、共鳴ができたのなら、少しは彼女に協力してくれる生命がいるかもしれない。

 彼女の在り方を神として否定するわけには行かない界王は、あくまで「心を静かにかまえよ」そうアドバイスを送ったのだ。

 

 ーーーこれだけじゃ、ダメ。もっと周りに溶け込む様に…。

 

 彼女の顔立ちは力みによる緊張から穏やかなリラックスに変わっていく。

 そして…変化が訪れた。

 

 ーーーヴン…!

 「!!」

 

 その両腕に確かに集まる生命の伊吹。

 自分のモノではない力を感じ、彼女の表情が驚愕に揺れる。

 元気玉、ここに成したか…!

 

 しかし、界王の顔は穏やかではなかった。

 その両腕の先には既にスイカ大程の球体が出来上がっていたのだ。

 この星の規模で…しかも彼女に力を与えるのはごく一部…そんなエネルギーを一体どこから集まったというのか…?

 

 「…これは…!?」

 

 界王の嫌な予感は的中する。

 彼の背後にある木の一本が突然ひび割れ始める。

 青々と茂っていた葉の全てを散らしていた。

 

 「い、いかん!小籠包!技を止めろ!集めた元気を解放するのだ!」

 「…?はい。」

 

 生命との共鳴を強制的に停止する。

 頭上に集まったエネルギーは瞬く間に萎んでいく。

 元の持ち主のところに帰って言っているのだ。

 先の枯れ木から朽ち木になりかけていた木も少しずつ…その形を戻していく様を見て、界王は胸を撫で下ろす。

 

 「あの、界王様。何か問題でもありましたか?」

 「お前、何を願ったのだ。」

 「…ただ力を貸してくれ、と。」

 「ふむ…。」

 

 界王は思考に耽る。

 心を静かに、無にしながら生命と共鳴していたとこまでは良かった。

 しかしその先だ。

 彼女へ力を貸し与えようとした木が己の命を代価に、彼女へ力を与えていたのだ。

 これは界王の望む形ではない。

 本来、元気玉とは生命から少しずつ力を分け与えて貰うのだ。

 それを少しずつ濃縮して行くことで、元気はより活性化し小さな力がより大きくなっていく。

 しかし、今の技はそうではない。

 まるで()()()()()()()()()()()()()()木は萎れ、枯れていった。

 

 「あの、…界王様…?」

 

 修行の時もなんだかんだとユーモアを忘れない師が難しい顔をして黙っているのはなんとも居心地が悪く、声をかけた小籠包の言葉も届いてはいない。

 

 ーーー嘘をついておる様には見えん。だとしたら小籠包は意図せずして元気を()()()ことになる。

 

 界王は更に思考の奥へ沈んでいく。

 彼女の本質は悪ではあるが、そのあり方は善である。

 この歪さが、元気玉を本来あるべき形から変質させたのではないか?

 と、界王は考察する。

 

 ーーー悪人ではないのだが、やはりその在り方は変えられん、という訳か。

 

 こほん、誤魔化すような咳払いに加えてダメ押しに笑って見せた。

 

 「やーソーリー剃ーりー髭剃ーりー。すこーし考え事をな?」

 「っ…w、す、すみませんw不意打ちはやめてください。」

 

 やはり、と界王は微笑む。

 自身のギャグの良さを理解するこの若き才人が悪人であろうはずがない。*1

 なんなら、自身のセンスを引き継ぐ後継者にでもしたいところである。

 

 「冗談はこれくらいにしよう。…小籠包、どうやらお前に染みついた気功法が、悪さをしておるようだ。」

 「…はい。」

 

 界王は、事実を隠すことにした。

 これを包み隠さず話したところで、意味はない。

 であれば、この技は彼女にとって優位な技ではないと説明する方が、彼女は納得すると考えてのことだ。

 

 界王は後一歩で枯れかけた木を指差した。

 

 「アレを見よ、お前に限界まで協力を試み、後一歩で完全な枯れ木となる所だったのだ。」

 「…それが気功法とどう関係するのでしょうか。」

 「うむ、あの技は気を集約させる技。お前、あの技を何年使い続けておった?」

 「5年ほど、ですね。」

 「それほど自分の気を集約した奴が他者の気を与えられれば無意識にでも気を集約させてしまったのだろう。それに合わせ…元気玉は形を変えたのだろう。」

 

 淡々と話す内容は完全な思いつき。

 しかし、これは可能性としてはあり得る。

 本筋は先ほどの界王の予想の通りなのだが、彼女に染みついた癖がそうさせてる可能性もゼロではないのだ。

 

 「…理屈はわかりました。私は、どうすれば?」

 「使っても構わんが、地球を滅ぼすかもしれんぞ。」

 「そ、それは困ります!」

 

 きらり、と界王のグラサンがきらめいた。

 

 「であれば、これ以上技を教える訳にはいかん。この技はお前には危険すぎる。」

 「…わかりました。いつか、使える可能性はあるのでしょうか。」

 「そうじゃな、気功法を捨てればできる様になるかもしれんな。」

 

 ありもしない悪癖をでっちあげる神。

 それを当然の様に信じる小籠包はぐぬぬ、と歯噛みした。

 彼女にとってこの技は上を目指す為に必要不可欠な技なのだ。

 

 「そう残念がるな、下界にて相応しい使い手を探す。これも立派な奥義保持者の責務だぞ?」

 「はい、わかりました。必ず、見つけてみせます。」

 

 拳をぐっ!と界王は密かに握り込む。

 作戦、大成功だ。

 

 そんな、厳しくもどこか愉快な界王との修行も終わりの時が近づいている。

 どこかの歴史では蛇の道を逆戻りする時間を計算から抜いていた界王だったが、事ここに至って、そんなミスはない。

 界王を通じて、下界の亀仙人へと語りかけるべく、彼女は意識を下界へと向けた。

 

 『老師…聞こえてますか?小籠包です。』

 

 何度かの呼びかけの末、漸く彼女の言葉が下界の…トイレでスケベ本を読みムフフしているスケベ爺さんのもとに届いた。

 

 『しょ、小籠包か?…ど、どこから語り掛けているんじゃ』

 『界王…いえ、訳あってあの世から…』

 『お、お主いつの間に死んでおった!?』

 

 え?知らされてなかったの?

 そんな感想を抱くが、サイヤ人の事を考えればそんな事を共有している暇もなかったのだろう。

 背中越しに界王から若干冷ややかな視線を感じる気がするが、恐らく気のせい。

 

 『…えっと、一年ほど前に…お手数ですが、今すぐドラゴンボールを集めて、私を生き返らせて欲しいんです。』

 『わかった、そうしよう。しかしお前の亡骸はないと生き返らせることはできんぞ?』

 『大丈夫です。肉体もあの世にあります。生き返り次第、下界へ瞬間移動しますので』

 『…そ、そうか。わかった。直ぐにドラゴンボールを集めよう、そこで待っておれ。』

 

 妙な他を感じるのは気になるが、今はそんなことを言ってられない。

 地球全土に散らばったボールを集めるのにどれほど時間がかかるか分かったモノではないのだ。

 

 『…?ありがとうございます。よろしくお願いします。』

 

 界王から手を放して対話を終える。

 グラサン越しにも分かるなんとも言えない哀愁を漂わせている。

 

 「…なんでしょう?」

 「お前、気づいたら野垂れ死ぬタイプだな。」

 

 うぐ、…と痛いところを突かれる。

 しかし、しかしだ。

 

 「…悪党には相応しい末路ではありませんか?」

 

 精一杯の強がりを見せる若人に、界王は小さく首を振ることしかできなかった。

 

 サイヤ人襲来まで…あと1日…!

*1
作戦成功、小娘に踊らされる最高神の図





戦闘力更新
 小籠包
 基本最大5000
 気功法25000
 界王拳3倍 15000
 気功法+界王拳 37500

 界王様との修行の成果。
 ベジータくらいには勝てるな!ガハハ!
 気功法+界王拳は実現したら可能性の塊。
 ただしこれこそ机上の空論。
 仮に20倍界王拳に気功法が併用できたら、インフレの波に飲まれないかもしれない。

 元気玉(悪)
 ※筆者の独自解釈を含みます
 元気玉とは他の生命体から元気を少しずつ【ご厚意】で分けてもらう行為。
 これをそのご厚意につけこんで、「分けてくれるって言ったよね?じゃあ全部なw」
 そういう詐欺みたいなノリで生命力を全て搾り取る。
 しかも術者の無意識でやっているのがタチがわるい。
 小籠包目線では、「なんか知らないけど命を代価に助けてくれた、ありがとう。」となる。
 彼女自身も割と簡単に命をベットするサイコパスなので、なんて高潔な…この力で絶対勝って見せるとかそういう発想の為、マジで悪気なし。
 超元気玉より更に多くの元気を搾り取る為、万一ソレなりの生命体が彼女に共鳴した場合、地球くらいなら簡単に消し飛ばすし、もしかしたらフリーザも倒せるかもしれない(第1形態に限る)。
 …のだが、こんな危ない技を使うのは「無益な殺生をしてはならない」という大師父()であり偉大な()殺し屋の桃白白の教えを踏み躙ることになるため、そんなやべー技は絶対に使わない。
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