ドラゴンボールAT   作:澄ましたガール大好きおじさん

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 閲覧ありがとうございます。
 
 平成初期特有のミーハーノリ書くの楽しかったので初投稿です。


其之六 誇り高き殺し屋(?)桃白白

 

 

 第二試合が始まるまでの時間。控え会場にてシャオランは頭を抱えていた。

 「サインくださーい!」

 「キャー!可愛いー!」

 「応援してるわ♡頑張って♡」

 「は…はぁ、ど、どうも…。」

 

 ミーハーな格闘技のファンに取り囲まれて、小籠包はオロオロとしていた。その様子が彼女らの母性を刺激したのか…しまいには抱き抱えられる始末。

 

 「照れちゃってるー可愛いー!」

 「あの、そういう訳じゃ…!」

 ーーーふ、大した人気者だなシャオ

 ーーー見てないで助けてよ!天兄

 ーーーすまんな、先程の試合で疲れ切ってる自力でなんとかしろ。

 ーーー嘘つけ!!!!!!餃兄助けて…!

 ーーー僕も疲れた、シャオ、自分で頑張れ

 ーーーそっちは試合にも出てないでしょうが…!!

 

 女性陣三人に取り囲まれ、″可愛い″の洗礼を受け、どうしていいか分からない。かつてこの容姿で煙たがれる事はあっても、この様な愛玩対象になったことなど一度もない。こういう″ファン″の相手をどうすべきなんてわからない。

 そんな和やかな空気をぶち壊す勇者が現れた。

 

 「殺す…!お前を…!殺す…!!」

 「ちょっとちょっと…男狼さん!!」

 

 そんな獣の雄叫び、2回戦が始まってすらいないというのに、男狼がジャッキーに襲いかかっているところだった。

 なんとか、アナウンサーの仲裁で矛を納めたようだが、先ほどまでキャーキャーと黄色い声をあげてた三人娘はすっかり萎縮してしまった様子。

 

 「じゃ、じゃあ私はこの辺で…」

 「そ、そうね〜…」

 「小籠包さん!が、頑張って!」

 「は、はい…ありがとうございます。」

 

 蜘蛛の子を散らすように退散したことで漸く解放された彼女は一息つく。

 

 ーーー酷い目にあった…。にしても″殺す″…ねェ?

 

 どう見ても男狼もジャッキーもカタギの人間。殺すとは実に穏やかではない。おまけにジャッキーの方は何故因縁を付けられているかもわかってない様子。

 まるで自分と孫悟空の関係のようだと、彼の姿に自分を…

 

 ーーーないない、あんな殺意剥き出しにする馬鹿がどこにいるのよ。

 

 重ねられなかった。しかし彼の殺意の根っこには興味がある。

 あれほどまだに恨みを抱いているのだ、のっぴきならない事情でもあるのだろう。

 アナウンサーに連れていかれるなか…彼の尻のポケットから何かが滑り落ちる。餃子の超能力で手繰り寄せたそれは、新聞の切り抜きが貼られた彼の決意表明だった。

 

 ーーージャッキーさんのおかげで我々は二度とお月見ができなくなった。

 

 新聞の切り抜きは…ジャッキー・チュンの優勝を飾る一面の記事と、彼が月を破壊したことを報じるモノだった。その横に書かれた、お世辞にも綺麗とは言い難い彼の筆跡にはこう書かれている。

 

 ーーーさらば、お月様…また会う日まで。

 

 要するに、彼が満月を破壊したことで人間に戻れなくなった、どうしてくれる。…そういう話だ。

 

 「え?それだけ?」

 「みたいだな。」

 

 動機を理解した小籠包の態度は実に酷薄だった。

 同情はできる、自分自身もこの異形の容姿でそれなりの扱いを受けてきた。

 異形の容姿というのはそれだけで迫害の対象になるのは世の常だ。

 忌むべきは彼を無下に扱う世間様であり、ジャッキーではない。

 この記事から読み取れるに…()()()()()()()()()()()()孫悟空を止めるために仕方なく月を破壊したにすぎない。

 そうしなければたくさんの犠牲者が出ていたのだ。

 彼を責めるのはお門違いもいいところ。

 

 「アホらしい…まああの程度の力であのお爺さんが倒せるとは思えないけど。」

 「負け犬の遠吠え」

 「全くだな餃子、だが…あのジジイの力量を見るのに良い当て馬だったのは間違い無さそうだ。」

 

 そろそろ試合開始の時間。

 既に二人は武舞台で向き合っている。

 舞台を仕切る壁を超えて見下ろす為に三人は静かに宙に浮き上がった。

 

 さて…試合の展開は、予想通り一方的だ。

 男狼の攻撃は彼に擦りもしない。それに逆上して力任せに技…とも呼べない暴力を振り回す。当然力任せの攻撃が当たるはずもなく、渾身の一撃をあっさりと交わされる。

 

 大きく呼吸を乱す男狼は慟哭のように叫んだ。

 

 「貴様のおかげでぇ〜!俺はギャルに見向きもされなくなっちまたんだ〜!!わかるかぁ…この辛さがぁ…」

 

 ーーーあほらし…

 

 見ていられない。少しでも彼の境遇と自分の境遇を重ねたシャオランは心の底からため息をつく。

 

 「どこへ行く。」

 「あの男狼って奴、見てて不快なの。あっちで休んでるわ。」

 

 彼にとって女遊びがどれだけ重要かは知ったとことではないが、()()()()()()()お前を殺すなどと宣う奴は実に不快。

 自分の殺し屋としての矜持を鼻で笑われている様で虫唾が走る。

 

 控え会場にて坐禅を組む。乱れた心を鎮ませる。

 

 ーーー先生…。

 

 心を乱してはならない、これも師である桃白白の教え。

 彼が小籠包のもとから去ってから5年が経つ。

 桃白白は、彼女を連れては行かなかった。

 

 ーーー未熟者め、それで私についてくるなどよくぞ言えたものだな。

 

 別れ際にもらった師の厳しい言葉。あの言葉があったからこそ、今の自分があると言っていい。

 

 あの日のことを思い返す。

 

 ーーー私も、連れていってください!老師に教わらねばならないことが、たくさんあります!

 

 今思えばあれこそ甘ったれの言葉だったとわかる。

 桃白白はそれをわかった上で自分を拒絶した。

 だからこそ、″未熟者″と彼は嗤ったのだ。

 

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 ーーー時は、およそ10年前に遡る。

 

 

 

 ある日、天津飯と餃子が行脚の末に一人の娘を拾ってきた。聞けば、両親を殺されて尚闘志を燃やし、野盗に襲いかかった凶暴性を秘めているという。何の気まぐれか…あるいは年の功からの勘でも働いたのか。

 

 ーーー面白い、ちょうど桃白白が来ている。奴の下で修行をさせろ。

 

 鶴仙人はそんなことを決定し、当時自分の下で修行をしていた桃白白に、これをおしつけた。

 さて、当の本人である桃白白は頭を抱えた。こんな子供に何を教えろと言うのか。肌の色は赤く、目は黄色い。どう見ても怪物の血を引く気色悪い小娘。

 おまけにこいつの真っ直ぐとした瞳は気に入らない。とはいえ、実兄の頼みを無下にするわけにもいかない。

 その内兄も飽きて存在を忘れるだろう。それを見計らって野山にでも捨ててくるか。彼はそんな適当な想いでその子を引き取った。

 

 彼女を引き取って一週間、ベビーシッターにでもなった気分。屈辱だ、この自分がこんな小娘の世話係など、やはり今からでも谷底に突き落としてやろうか。やっと昼寝で寝静まった彼女を放置して、憂さ晴らしの鍛錬を行なっているときだった。

 

 ーーー何をしてるの?

 

 面倒な、大人しく寝ていればいいものを、舌打ちを隠しながら目線を合わせる。

 

 ーーーシャオラン…おじさんはね、今忙しいんだ、向こうで遊んでなさい。

 ーーー私もやる!

 

 さて、ここに奇妙な師弟関係が生まれた。

 …これはこれでおとなしいから好都合だと自分の真似をさせることにした。1ヶ月ほど適当に相手をし…修行の最中に不幸な事故にでもあってもらおう。そんな物騒な企みをよそに桃白白の真似を真剣にする少女を放置する。

 

 しかし、この娘は…天才だった。

 

 気づけば構えはサマになっている。そして何より

 

 ーーーどどんぱ!

 

 奥義の一つをあっさりと習得した。無論、実戦には到底使えぬ威力。しかしそんなことは問題ではない。自分の稽古を見様見真似で覚え…気の扱いをごく短期間で習得する。

 常人が一生かけて辿り着けない境地を齢2桁にも満たない小娘がたった数ヶ月でたどり着いた。

 

 桃白白は実に現金な男だった。

 

 少女の才覚を見出せば師匠面をする。

 これまで大した指導をされなかった少女は目を輝かせる。

 

 ーーーせんせい!つぎはなにを!?

 

 ーーーせんせい!できました!

 

 ーーーせんせい!つぎをおしえてください!!

 

 桃白白は実に現金な男であった。

 

 まるでスポンジのごとく彼の教えを吸収する天才児を、″自分の教えが素晴らしいから″と言うことにした。

 そして少女も彼を″素晴らしい師匠″だと信じて疑わなかった。

 彼女は益々、桃白白を慕い。

 懸命に彼から技と教えを吸収していく。

 

 一つ、ここで彼に大きな誤算があった。

 

 それは彼女が…″鶴仙流は世のために戦う物″と信じていたことだ。

 

 無理もない、絶体絶命の窮地を救われた挙句、身寄りのない自分を養い、戦う術まで教えてくれる。

 彼女にとって鶴仙流とは正義の味方に他ならなかった。

 

 これはマズイ。

 

 桃白白は実に姑息な男であった。

 

 自分のやり方は正義などとは程遠い。

 むしろ卑怯上等、勝てばよかろうなのだワハハ。

 さて、これを彼女に知られたらどうなる?

 

 失望しました。先生のお弟子やめます。ていうか鶴仙流やめます。

 

 である。…実際そうはならなかったのだろうが…浅慮な彼はそう考えた。

 

 実兄に自慢話をした手前、ここで逃げられましたなどとなったら

 何をされるかわかったモノではない。

 

 よくない。実によくない。

 彼は悩んだ、悩んだ末…

 正義の殺し屋桃白白(空想)が爆誕した。

 

 桃白白は学んだ、必死に聞こえの良い言葉を学んだ。

 漫画やアニメから反吐が出る様な綺麗事を。

 心理学からその使い所を。

 時に哲学を学んだりもした。

 

 その過程で彼も真人間になってしまう可能性もあったが、生憎と彼は生粋の悪党、出来上がったのは理想の師匠(ハリボテ)である。

 時折、ボロを出し掛けもするが…

 

 ーーー殺し屋たるもの、時に冷酷でなければならぬ。

 

 などとかっこよく言って押し通した。なんだかんだで口の上手い彼は純粋な少女の前では…悪しきモノを陰ながら抹殺し…その罪を飲み干すダークヒーロー…になりきれていた。

 彼女の師匠となって5年。それなりに稼いだしそろそろ独立しようと考えるようになった。ついでに彼女にも独り立ちしてもらおう。

 決して師匠をやるのが飽きてきたとかそういうのではない。

 そろそろあの真っ直ぐな視線がうざくなってきたからというわけては断じてない。

 というか5年も面倒を見たのだ、そろそろ(言い出しっぺ)が引き取るべきなのでは?などと思い始めたわけでは断じてない。

 

 少しずつ疎遠になり…万一自分の素顔がバレたときには…悪いことしすぎてなんだかんだ本当に悪人になっちゃいました☆

 とやれば辻褄は通るだろう。

 

 無理筋も良いところだし、人生舐めてるとしか思えないが。

 

 桃白白はかなりいいかげんな男であった。

 

 

 「5年間、よくぞ厳しい修行を耐え抜いたな」

 ーーーここ最近自主練ばっかりさせてたけど

 

 彼が殺し屋として独立する旅立ちの日、最後の稽古とカッコつけてから出ていってやろうと少女を呼びつけた。稽古場に行儀良く正座をして真剣に自分を見上げる様は実に鬱陶しい。

 

 「最後にお前の成長を見せてもらおう。構えろシャオ。」

 「老師…お願いがあります。」

 

 嫌な予感がする。偉そうに無言で頷いて見せる。

 

 「私も、連れていってください!老師に教わらねばならないことが、たくさんあります!」

 

 いや教えることないよ、ここ最近のキミ、勝手に強くなってるよね。

 なんて言えない、彼の演ずる老師はもうちょっとかっこいい。

 

 「ならぬ…殺し屋とは孤独、お前もいつかは独りで戦わねばならん。」

 

 決まった。

 かつてない以上に決まった。

 これならこの馬鹿も納得するだろう。

 

 「…私には背中を任せられない。そう仰りたいんですね。」

 

 …納得しなかった。

 違うよ、キミがいると邪魔だっていってるの。

 

 「構えよシャオ、私から最後の手解きだ。しかと目に焼き付けておきなさい。」

 「では…私が貴方に届いたあかつきには、私を連れて言ってください!」

 

 連れていくわけがない。

 組み手は一方的に桃白白がシャオランを叩きのめす形で終了した。

 280歳を超える達人のジジイが思春期前の女の子にガチである。

 

 「参り…ました…!」

 

 改めて、倒れ伏した弟子を見下ろす。

 5年前までただの素人だった小娘が、今やその辺の達人が裸足で逃げ出すレベルにまで成長した。というかコイツを出汁に兄に独立を認めて貰ったまである。

 ボロが出る前にさっさと出ていかねばならない。

 

 「未熟者め、それでワシについて来るなどと良くもいえたな。」

 「はい、返す言葉もございません。」

 「ワシの教えをゆめゆめ忘れるでないぞ。」 

 「はい。″理由なき殺し″は御法度。老師のような誇り高い殺し屋に、なって見せます!」

 

 泣きながら何か言っている。多分感動的なシーンなのだが、桃白白にとってはさっさと立ち去りたいだけの無駄な時間だった。

 

 「では私はゆく…お前の遙か先にな…!縁があれば、また会うこともあろう。」

 「今まで…ありがとうございました…!」

 

 凄い泣いている。

 こっちも涙の一つでも用意しておくべきだったか。

 いや、泣いてない方がかっこいいからこれでヨシとしよう。

 

 桃白白は実にいい加減な男であった。

 

 桃白白の一番弟子、小籠包が敬愛する師匠の姿を見たのはこれが最期。

 天津飯たちと合流し、彼女は更に技を磨いた。僅か12歳で鶴仙流の皆伝に到達し、冷酷な″鬼姫″として頭角を表していく。

 

 この道を歩けば、いずれ敬愛する師匠の背中に追いつける。そう信じて彼女は技を磨きつづけた。ついぞ、師の背中を超えたことを知ることもなく、桃白白はこの世を去った。

 

 その最期は…″不意打ちで投げつけた爆弾を蹴り返されて…自滅する″という大変に情け無いモノだったが、彼女には知る由もなかった。

 





 桃白白の扱いをどうしようか死ぬほど迷った結果、こうなりました。
 こういうノリ結構楽しかったです。またやりたい。

 次話は、読み直して致命的なミスなければ明日投稿されます!
 よろしくお願いします!

 閲覧ありがとうございました!宜しければ感想などくれるとおじさん喜びますので是非是非!
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