ドラゴンボールAT 作:澄ましたガール大好きおじさん
何故かヤムチャは贔屓してしまうので初投稿です。
バータvsヤムチャ。
その戦いは…始めこそバータ優位に始まった。
大口を叩くだけあり、自慢のスピードについて来るとはなかなかやるじゃないか。そんな風にまだ格下に彼を見下ろしている。
隊長の見込み通り、ヤムチャと名乗った男は確かに素晴らしい戦闘力を有していた。
その数値、脅威の5万!
単純なパワーだけなら自分たち特戦隊にも匹敵する。
しかもこの男は、パワーで劣りながらも奇手、奇策を打ち、何度もバータを驚愕させる。
正に好敵手と呼ぶに相応しい力量であった。
「田舎者の割には、良いスピードしてるじゃねえか。」
「お前もな、だが宇宙一を名乗るには少し役不足だぜ。」
「なんだと…?」
「ランキングを更新するべきだぜ?5本の指にだって入らないな。」
「テメェ…殺す!」
ぴきり、とこめかみに青筋を立てたバータは、正しくヤムチャの術中である。
宇宙一のスピードを自負している彼のプライドを敢えて刺激する事で、動きのキレを落とそうというのだ。
彼のスピードは確かに恐ろしい。
その気の保有量からは考えられないスピードだ。
しかし、それだけである。
このくらいのスピードなら悟空にも出せるし、そのスピードにかまけて技を一切磨いていない。
それは武道を追究する彼にとって素人同然と言わざるを得なかった。
最初こそ面食らって、一発二発、イイモノをもらってしまったが、それだけである。
「ほぁぁぁぁぁ!!」
「ッ……!いちいちうるせえんだよ!!」
独特の気迫のこもったヤムチャの掌打を何度か受け止め、カウンターに拳を返すも、あっさりと受けられてしまう。
ぴぴぴぴ!!
スカウターから警告音が鳴り響く。
ーーーせ、戦闘力…5万3千…!?ば、ばかな…!
今の今までまだ実力を隠していたっていうのか…!
そんな風に驚愕する。
相手が攻撃を打つ度にその切れ味は増していく。
こちらの攻撃をまるで未来予知しているかのように受け止め、的確にカウンター決められる。
ぴぴぴぴ!
これで2度目となる警告音。
遂にその数値は信じられない数値に到達した。
ーーーろ、6万2千…!?
少なくとも、今自分の戦ってる連中は格下と侮るサイヤ人未満の雑魚オブ雑魚のはずだ。
だと言うのに…自分のパワーは愚か、特戦隊随一のスピードすら、ヤムチャの技の前に翻弄される始末。
ーーーあ、ありえねえ…スカウターの、こ、故障だ…!
それが誤った認識なのは自分が一番よくわかっている。
事実、もう自分の攻撃は目の前の強敵に擦りもしなくなっている。
雄叫びをあげながらその巨体に見合わない極スピードでヤムチャに迫り…拳を何発も何発も撃ち放つ。
しかし響くのは虚しく空を切る音のみで、敵の肉の砕く音は愚か…薄皮一枚を切り裂くこともないのだ。
空振りが積み重なる度に、彼のプライドが余計なフラストレーションを生み出し、フラストレーションは彼の本来の技のキレを失わせていく。
遂には得意のスピードを活かした超高速のジャブの連打ではなく、力任せのストレートを打ち始める始末。
これがパワーに傾倒したリクームが相手であればヤムチャにとって脅威だっただろう。
しかし、バータは彼と同じくスピードタイプの戦士。
分不相応な力任せの攻撃など一瞬で見切ってしまう。
「隙アリ…!」
「な…!」
バータの視界からヤムチャの姿が消える…!
正確には、消えたのではない。
瞬間的に全身をバータの死角へと潜り込ませる。
それはかつて、小籠包が悟空に用いた戦術と同じだ。
格上相手にはただの小細工にしかならない。
しかし、今のヤムチャは格上。
この不意打ちはこの上なく有効だ。
ーーー狼牙風風拳!!!!
達人同士の時間の中でこのコンマ数秒の戸惑いは致命的である。
誇り高き狼の牙が驕り高ぶった異星の戦士の喉元にくらいつく!
コンマ数秒の間に数えきれぬ程の拳を頬に、喉笛に、鳩尾に、脇腹に…彼の知る限りの急所に念入りに打ち込まれていく。
「ご…が、ふ…!?」
「ほォォォォあァァァァ!!!」
数十…あるいは百を超える爪と牙の餌食となったバータの意識が撓んだところを当然見逃すヤムチャではない。
両手を振り上げ…トドメの一撃にと…彼の肩目掛けて叩き落とす。
さながら…巨大な牙が彼の身体に突き立てられるかの様。
「ぐ…あァァァァ…!」
ふゥ……と昂った体の熱を吐き出す深い深い呼吸。
体の底から湧き上がる様なパワーにヤムチャ自身困惑していた。
一打毎に自分が限界を超えていくのを肌で感じていたのだ。
ーーー感謝します、最長老様。
己の力を見出し、引き出してくれたナメックの長に心の底から礼を。
特別なことはしていない、と彼は言った。
つまり、ヤムチャのこれまでの修行は徒労に終わってはいなかったことを彼は証明したのだ。
ーーーさて、これで倒れてくれるなら、助かるんだが。
倒れ伏した青い戦士は死んではいない、いくら相手が悪人といえど、無益な殺生は亀仙流の教えに反する。
立ち上がるのならば、何度でも何度でも叩きのめすまでだ。
できることならこれ以上無駄な戦いはしたくない。
そんなヤムチャの願い虚しく、白目を向きながら、青いハリケーンはフラリと立ち上がった。
ーーー全く、タフな奴だぜ…!
再び構えを取るヤムチャ、バータはそんな彼にワナワナと震えながら怒りを顕にした。
「て、テメェ…舐めてやがるのか…!」
「何のことだ。」
「とぼけんな…殺さねぇように手加減してやがるな!?」
「悪いが師匠の教えでな、こればっかりは譲れん。…そんな余裕を出せないほど俺を追い詰めたらどうだ…。」
ぎぎぎ、と奥歯を噛み砕く勢いで歯軋りをする。
しかし過ぎた怒りは逆に彼の頭を冷やした。
この生意気な地球人を黙らせるには、己の最高の速さで打ち破る他ないと。
「悪いが、お前では俺には勝てんさ、目で俺の動きを追っているお前ではな…!」
「ふざけんな…この俺が宇宙最速だ…!貴様の様な下等種族に…このバータ様が…負けるかぁぁぁ!!」
直後、目の前の異星人の気が急激に膨れ上がった。
元々邪悪だったその気配はより一層どす黒く、全身から漆黒のオーラを噴き出す。
「ちィッ…!
「青いハリケーンの真の力を見せてやるぜ…!」
ベジータの時と同じ吐き気を催す様なドス黒い気配。
彼の宣言通り、そのスピードは何段も上へと跳ね上がった。
先ほどまで瞬間スピードはヤムチャと同等。アベレージはヤムチャの圧勝だった。
しかし今は違う。瞬間スピードはバータが圧勝し、更にはアベレージすらも一歩先んじた驚異的なスピードを彼は身につけたのだ。
そう、またも彼らの見ていないところでトワがこの歴史に介入したのである。
やっと本調子を取り戻したと言わんばかりに今度は悠々と、彼を上回るスピードでヤムチャの周囲を駆け巡る。
「お望み通り、殺さざるを得ないほど追い詰めてやるぜ!地球人!」
「っ…舐めるなよ!!」
今度はバータがヤムチャへと肉薄する。
人智を超えたスピード繰り出されるジャブの数々。
常人ならば残像で無数の拳がヤムチャに降りかかっている様に見えるだろう。
それをなんとか軌道をそらしなんとか自身に当たらない様に回避を続ける。
地球人特有の相手の気配を読む特異な戦い方でなんとかこの力の差を補っていたが、それもついに限界が訪れた。
実力以上のスピードに対して全力で相対していれば当然、ヤムチャには隙が生まれる。
徐々に上がる呼吸スピードと、蓄積する疲労。
休みなく全力疾走を続けた結果、体幹をクルリと回した瞬間、勢い余ってバランスを崩してしまう。
「しまーーー」「そこだぁぁぁ!!」
「ぐ、ォ…ーーー!?」
好機とバータは最高速度による突進!全体重の載せられたエルボーが鳩尾を正確に捉えた。
今度は彼が弾丸の様に吹き飛ばされて岩場に叩きつけられる。
クレーターを作りながらめり込んだヤムチャへ更なる追撃。
「うぉぉぉぉぉらぁぁ!!」
「が、は…ァ!?」
無防備なヤムチャの腹部に膝がめり込む。
咄嗟に気を高めて防御に回したことで事実上の直撃は避けたものの、やはりダメージは大きかった。
胃の中から逆流する鉄をピシャリと吐き出しながら、カウンターにと気功波をゼロ距離で撃ち放つ。
「遅ェよ!」
それすらもなんなく回避されて、今度は彼が岩場にめり込んだヤムチャの体を滅多打ちにし始める。遠くで仲間の声が聞こえた気がしたが、誰の声かは分からない。
ーーーい、意識が、遠のく…!
ダメだ、今気絶したら確実に殺される。
そう直感したヤムチャは必死に意識を保ち全身の気を循環させて殴打の瞬間に合わせて、気による防御を繰り返した。
気の察知能力の有無は彼に取って最高のアドバンテージだ。
攻撃の瞬間、昂る気配を察知し、それに合わせて防御の姿勢を取れば良い。
「気による」防御を選んだのは…敢えて打たせることでバータの油断を誘うため。
事実、先ほどまで粋がっていた相手を一方的に叩きのめすことでバータは己のプライドを慰め大いに自分の力に酔っていた。
「どうしたどうしたァ!さっきまでの威勢の良さはよォ!!」
それでも、彼のパワーはヤムチャの防御を上回っていたか、やはり受け続けているだけではヤムチャの方が参ってしまう。
徐々に迫る自分の死を感じながら、暗転しかける視界を凝らして彼の動きを徹底的に観察する。
左右で攻撃タイミングが僅かに違う両の拳。
出だしのスピードが右の方が僅かに速い、利き腕が右なのだろうか。
拳を突き出した後は左脚から技を繰り出す癖が彼にはあった。
拳で十二分に痛めつけた上でより効果的なダメージを与えることを目的としてるのだろう。
が、それがわかったところで、基礎スペックで負けてしまった以上、この状態からの逆転は難しい。
ーーーッ…す、すまん…!クリリン…!
そんな風に自身の中で諦観がよぎる。
諦観を察したバータがトドメの一撃にと拳を振りかぶりパワーを溜める。
その動きは…地球に襲来したサイヤ人…戦友とピッコロを殺した巨漢…ナッパの姿と重なる。
同時によぎるのはかつての戦いで散っていった仲間達の顔。
味方を守る為に敢えて好機を逃してまで攻撃し、命を落とした戦友。
大魔王の生まれ変わりでありながら、弟子を守る為に命を投げ打ったかつての敵(?)
あの時、自分は何をしていた?
安全な場所から不意打ちをしただけ、もっと強くあれば…!
そんな言い訳をしたにもかかわらず、この体たらく…!
ーーーふざ、けるな…!俺はまた、何も出来ずにいるのか!!
彼の中にたぎる怒りの炎は蓄積するダメージを上回る。
萎えかけた闘志に再び火がついた!
「トドメだ!死ねェ!!!」
コンマ数秒後に迫る確実な死。
それをヤムチャは決死の覚悟で掴み、押し留めた!
ここにきて、ヤムチャは更に己の気を解放したのだ。
いや、正確にはこの戦いで更に己の殻を破ったと言っていい。
最長老はあくまで「キッカケ」を与えたにすぎなかった。
彼の力によりヤムチャは己の限界をまた一つ破ったのだ!
ーーーピピピピ!
三度反響するスカウターからの警告。
その数値がみるみるうちに上昇を開始する。
「な、…んだと…!?」
片目に入り込む驚愕の数値…!
10万5千…!!
意味不明、あり得ない。
隊長にすら迫るその驚異的な数値に彼は目を見開く。
バカな、あり得ない、スカウターの故障だ!!
またそうやって自分を偽る。
しかし、目の前の現実がその逃避を許さない。
掴まれた片腕がびくともしないのだ。
「いつまでも、背中を見てなんか、いられるかよ!!」
掴んだ腕を引き寄せて強引に青い巨体を引き寄せ、力任せの頭突きを額目掛けて打ち込む。
「ぅグァ!?」
「ほァァァァ!!」
裂帛の気迫を込めた両脚が腹に食い込み、今度はバータが後方に吹き飛ばされる。
無様に背中から地面に落下して、2回、3回とボールの様にバウンドして転がる。
「見せてやるぜ…。この俺の必殺技をな…!」
彼の全身から夥しい量の気が溢れ出る。
眼前に構えた掌から放出された特大の気の塊。
ーーー繰気弾!!!
その大きさはこれまでの比にならないほどの巨大さ…*1
自身の体躯を優に超えたそれは特大を超えたヤムチャの新たなる境地!
強いて名をつけるのなら、【新・繰気弾】。
立ち上がるバータ目掛けてそれを一直線に射出する。
「バカめ!そんな見え見えの挙動…この俺様に効くと思うのか!?」
真っ直ぐ自身目掛けて飛来する巨大な気弾、それをあっさり回避したと共にまっすぐ術者目掛けて突進する。
ヤムチャの口角がスルリと持ち上がる。
「間抜けはお前だぜ…!は!!」
「ごぁ!?」
直後、バータの背面に迫る激痛。
避けたはずの敵の必殺技がタイムラグ一切無しに真反対へ軌道を変えて無防備な彼の身体を打ったのだ。
「まだだ!」
ここで終わりではないのがこの技の真に恐ろしいところである。
彼の指先が複雑な軌道を描く。その動きに合わせて繰気弾がバータの体を前後左右から何度も何度も叩きつける。
狼牙風風拳とは比較にならない気のエネルギーによる連続攻撃。
例えるのならば特大かめはめ波をその身に何度も叩きつけられることをイメージしてほしい。
バータの瞳から凶悪な光が失せたその瞬間、ヤムチャは容赦なくその脳天に奥義を叩きつけ、彼は完全に意識を刈り取られた。
「…や、…やったぜ…!」
満身創痍の彼は、限界を超えたダメージをようやく自覚する。
戦闘によって溢れ出たアドレナリンが薄れて身体中の痣からの激痛に倒れ込んだ。
しかし、この勝利の余韻を味わうべく、彼はなんとか仰向けに体勢を変えて、意識だけはなんとしても手放すまいと、はは、ははは…!と乾いた笑いを1人あげたのだった。
戦闘力更新
ヤムチャ
基本最大5万
最長老によって力を引き出された地球人。
フリーザの精鋭部隊に迫る戦闘力。それに対するのは
バータ
基本最大:5万1千
ギニュー特戦隊きってのスピードスター。
初めこそ、ヤムチャ相手にそのスピードで翻弄していたものの、
ヤムチャの変化に状況は変わっていく。
ヤムチャ
基本最大 5万=>5万3千
まるでギアが上がる様にヤムチャのパワーとスピードは底上げされていく。
しかもヤムチャの進化はここで止まらない。
基本最大:5万3千=>6万2千
最長老は言った、「キッカケを与えたにすぎない。」
その言葉通り、最長老は硬い硬い彼の殻にほんの少しひび割れをいれたにすぎなかった。
その殻をヤムチャは戦いの中で打ち破っていく。
バータ(凶悪化)
基本最大:7万6千
しかし、ここで終わらない。
どこからか流し込まれたエネルギーによって、唐突に彼はパワーを上げた。
パワーバランスは一変し…圧倒的な力の差によってヤムチャは追い詰められていく。
ヤムチャ
基本最大:6万2千=>10万5千
ここに来て完全に自らの殻をぶち破った。
更なる潜在能力の開花。
一度は力負けしたバータを再びひっくり返して、新たな必殺技で見事、特戦隊を打ち倒したのだった。