ドラゴンボールAT 作:澄ましたガール大好きおじさん
ギニュー隊長との戦いはどうしても長丁場化するので初投稿です。
「つァァァァ!」
「おォォォォォォ!」
「甘い!」
ターレスとギニューの猛攻が続く。
互いの蹴りが左右からハサミのごとく繰り出されるが、ギニューはソレをものともしない。屈強な両腕あっさりと受け止めると、気迫だけで彼らを吹き飛ばした。
「ぐ…!」
「ちッ…!」
「ははは!素晴らしい!素晴らしい肉体だ、湯水の様に力が湧いてくる…!」
己の肉体の試運転とでも言いたげに彼はその有り余るパワーを少しずつ少しずつ引き出していく。
今も尚、そのパワーを青天井に引き上げていく。
既に彼のパワーはスカウターの数値でいうところの50万を超えている。
「さぁ、もっとだ、まだこの身体からはパワーを引き出せるとこの肉体が言っている…!俺にはわかるぞ…!この肉体の…声が…!」
「…俺の身体で気色の悪い発言を…するな!!」
両腕に気を集約させ、その間に生み出された強烈な気功波が強烈なパワーを発するリングを形成する。
肉体ではなく、彼の魂に染みついた大技…キルドライバーを大きく広げてギニュー目掛けて狙いを定めた。
モノの数分でギニューの体を…それも傷ついていながらそのパワーを引き出すターレスにゆっくり首を振る。
「…全く惜しい、俺の肉体をそこまで使いこなせるほどの戦士…。ターレスよ、戻ってこい。貴様の居場所はやはりフリーザ軍だ。お前ほどの戦士を失うのは…我が軍の損失だ。」
「生憎、フリーザにヘコヘコと頭を下げるのにも飽きてきたんでな!退職させてもらうぜ!」
高め切ったパワーをギニュー目掛けて投げつける。
その技の特性がわからないギニューではない、避けるでも防ぐでもなく、彼の渾身の技目掛けて無造作に気功波を放つだけでそれを無力化してしまう。
「この愚か者がァ…!かあァァァァつ!!」
ギニューの瞳がくわ!と見開く。
同時に空をもビリビリと震わせる咆哮により、渾身の必殺技はあっけなく砕け散った。正に気合い!こうしている間にも彼はターレスの肉体を少しずつ使いこなしていく。
その上々な展開に彼はくくく…と笑みを抑えきれず、しまいには高らかに笑い声をあげる。
「…ッ〜!!!」
さて、ここで怒り心頭なベジータ。
無理もない。サイヤ人きっての超天才と持て囃され、自他共に一族最強だったはずの自分が、フリーザ軍の精鋭相手とはいえ手も足も出ない上に、その敵は自分のことなど眼中に無いと来た。
ーーーど、どいつも…こいつも…この、ベジータ様を…!!
どこまで怒りに震えたところで、その戦闘力は上がらない。
6万から毛の生えた程度の力ではギニューは愚か、体を奪われたというハンデを背負ったはずの下級戦士にすら遅れを取るのだ。
握りしめた拳から皮膚がさけて血が滲む。
気づけば彼は大技を打って体力を消耗した大男を突き飛ばしていた。
「退け!ターレス!こいつは俺様がぶち殺す!」
「ベジータか、ちょうどいいお前にはドラゴンボールの隠し場所を吐いてもらわねばならん。」
「ふん、サイヤ人を、舐めるなよ…!」
大人しくベジータの後ろに下がるターレスはその意図を理解する。
ギニューは、油断をしている。
そして自分たちの最高戦力ならばギニューをなんとかできると踏んでいるのだ。
加えて、今のターレスは大きく疲弊している。
この間に少しでも体力を回復しろ。
そういっているのだ。
彼はプライドが超々高い男だが、馬鹿ではない。
勝つ為に、己の野望の為に、ここは屈辱を飲むつもりなのだ。
ーーー或いは、ここでしこたま痛めつけられるつもりかな?
くくく、と背後で気色悪い笑みを浮かべる同胞にベジータは唾を吐く。
自らを打ち倒した下級戦士兄弟の片割れと同じ顔をしているのがなんとも彼の神経を逆撫でするのだ。
「本当にむかつくやろうだぜ…!」
その鬱憤を発散するかの様に、ベジータは飛び出す。
舞空術で最高速に達していながらその体をぐるり、と回転させてそのスピードと全体重を乗せた回し蹴りをギニューの顔面目掛けて打った。
「ふ…だいぶ腕をあげた様だなベジータ。」
しかしこれをギニューは片手で易々と受け止めてしまう。
彼らを中心に衝撃波が迸る、その中央でニヤリと笑うギニュー。
無理もない、今のベジータでは文字通り逆立ちしたってギニューに勝てはしないのだ。
「たった一発の蹴りを受けただけで得意げだな?ダダダダダダ!!」
それで終わるベジータではない。
今度はこの至近距離から無数の気功弾を連射撃ちする。
瞬く間にギニューの体は気弾による爆煙に包み込まれていく。
たっぷり互いの姿を爆煙の中に隠した上でベジータはギニューの位置を気で感じとり、先の場所から微動だにしていないことに舌打ちを溢す。
それで終わるベジータではない、余裕たっぷりに攻撃を受けてくれるというのならその余裕につけいるまで。
全身の気を解放して、高め、充実させていく。
かつて地球を吹き飛ばす為に放った彼の大技…ギャリック砲…!
「喰らえ…!ギャリック…砲…!!」
溜め込んだエネルギーを両腕に集約させて、ベジータは目標目掛けて渾身の技を叩きつけた。
…手応えはあった、しかし同時に爆煙の中で未だ健在のギニューの気を感じ取れる。
「ッ…フリーザはこいつより強いってのか、クソッタレ…!」
あのターレスですら恐れた宇宙の帝王、そのターレスより今のギニューは弱いのだ。
「当然だ!!たかがサイヤ人程度が…フリーザ様に敵うはずもなかろう…!」
高らかな笑い声と共にギニューがおニューのファイティングポーズを決めながら爆煙の中から飛び出す。
その余りにもあんまりなポーズは、ターレスのことを心の底から同情するベジータだった…。
V字開脚を決めながら片腕で全体重を抱え…シャキーン!!!…などという効果音すら聞こえかねないキレのあるポーズ…!*1
もし、もしもだ…自らの体であんな恥ずかしいポーズをされたとあれば、死んだ方がマシである。
あまりに突拍子もないポーズにあのベジータですら攻撃を躊躇い数秒意味不明な沈黙の時間が流れた。
「ふ、やはりサイヤ人には品性がないな、このおニュー!のファイティングポーズの美しさを理解しないとは…。」
ターレスの肉体はニヒルな笑いがよく似合う。
しかしポーズがポーズなために台無しである。
「ではそろそろこのギニュー様の本当の力を見せてやろう…!かァァ!!」
「!?…が…は。」
一閃。
ギニューの拳が綺麗にベジータの鳩尾に入り込む。
当然のごとく手加減された一撃、しかし急所に綺麗に攻撃を受けたベジータはたった一発でその場に沈み込む。
ーーー…み、見ることも…できなかった…!
あの瞬間、ベジータは全神経を集中させてギニューを捉えた。
視覚、気配、音、ありとあらゆる情報で彼の攻撃を受けきるつもりだった。
だというのに、このザマである。
「すまないなベジータ、少し強くしすぎたようだ。お前にはドラゴンボールの在処を聞かねばならんというのにな。」
崩れ落ちるベジータの上から癇に障る含み笑いが聞こえてくる。
口から大量の血液を吐き出す。
勝負ありだ。…いや戦いにすらなっていない。
これは単なる蹂躙、拷問である。
しかし、これで条件は満たした。
このダメージでは下手をすると死ぬかもしれない。
これほどのダメージならば死の淵から蘇った際には想像を絶するパワーを手に入れられるはずだ…!
「…何がおかしいベジータ。このギニュー様の途方もないパワーにおかしくなってしまったか?」
「ふん…ヒトの身体で、良い気に…なってる…貴様が……最高に無様で、な…!」
安い挑発だ。
その程度ではギニューの心は動かせない。
彼はいたって冷静にベジータの胸ぐらを掴んで持ち上げた。
「さぁベジータ、話して貰おうか。貴様の隠したドラゴンボールの在処をな。」
「…さぁな…!」
ペッと吐き出した血痰がギニューの頬に付着する。
それに対するアンサーにと今度は彼の頰めがけて拳が食い込む。
「がふ…!?」
「いいかベジータ、貴様に許された発言はドラゴンボールの在処と、ファイティングポーズへの賞賛、そしてフリーザ様への敬意のみだ!…言葉には気をつけろよ?」
「ふん!…ドラゴンボールで不老不死になるのはこのベジータ様だ…!貴様のその無様なポーズも、フリーザもこの俺がいずれ踏み潰してやる…!」
「くく、良い啖呵だ、だがな!実力の伴わない大口ほど無様なものはないぞベジータ!」
特大の気功波がの腹に沈み込む。ゼロ距離で起爆したそれが小柄な彼の体を吹き飛ばしたその直後だった。
ーーーーぴぴぴぴ!!
ギニューのこめかみに装着されたスカウターが放つ警告音、彼に迫るパワーを持った戦士の接近。
「私が殺したいのは貴方じゃないんだけど?」
「…グルドでは荷が重かったか。」
「素晴らしい能力者だったわ、勉強になった。あの世で彼にそう伝えてくれる?」
「ほう?もう勝ったつもりでいるのか?貴様はターレスよりも弱いのだろう?」
知っているぞ?
そんな風に不敵に笑うギニューに対して異形の瞳をパチクリさせる。
「そうね、彼から結構もらってるし、
「ほう、面白い言い方をする。このギニュー様が、コイツの体を使いこなせていないとでもいいたいのかな?」
よく気を探る。
彼から感じる気配には淀みのようなモノを感じるのだ。
ベジータ達が突如邪悪な気配を纏った時に感じたモノと同じ。
「今や俺は!フリーザ様!クウラ様!コルド大王様を除き、全宇宙一のパワーを持っているのだ!…ふっ、宇宙一の強さなど、興味はないがな…!」
彼から感じる深い深い自己陶酔。
これはまともな会話などできない。
「もういい、面倒だ。」
そう判断した彼女は己の全てを曝け出した。
纏う紅蓮の焔。界王拳をその身に宿す。
ーーーービー!ビー!ビー!!
スカウターから響く警告音。
その音が今度は示すのは「危険」を意味するモノ。
驚くギニューの視界に入り込むそのパワーは…
「せ、戦闘力…は、80万…だと…!?」
フリーザの自称する戦闘力を遥かに超えるパワーに戦慄する。
彼の身につけているモノは新型。
何より、フリーザから与えられたこの装置の出す数値を疑うことなど彼にはできなかった。
ぐしゃり。
瞬きのうちに間合いに踏み込んだ小籠包による鉄拳が、片目を覆う小型装置ごと、ギニューの顔面が叩き潰される。
「いつまでジロジロ見てるの?不愉快だわ。」
一撃でダウンしたギニューの後頭部を容赦なく踏み付ける。
ぐり…!と憎悪滲む踏みつけを捩じ込ませながら彼女は吐き捨てる。
「ふ、ふふ…!なんということだ…!このギニュー特戦隊のパワーを超える奴らが…がは!」
だまれ、と言わんばかりに脇腹に食い込む爪先、一体どちらが悪人なのかわからない絵面である。
さて、と悶絶するギニューの背筋を踏みつけて一考する。
このいけすかない男の中身が戦隊ヒーローかぶれの変態が入っているのは間違いない。
このまま彼の肉体を殺した場合、本来の中身はどうなるのか?
あの肉体の持ち主が誰のものなのかがわかれば良いが、それは考察するだけで無意味だろう。
もしそうでなければ自分の体をあそこまで痛めつけることはないはすだ。
ならば、彼の魂だけを引き摺り出したらどうなる?
ーーー試して、みようか。
先ほどサイキッカーに実践した、スピリットを捕まえる荒技。
アレをやってみる他ない。
「さて、問題はどうやってコイツを捕まえるか、か。」
「隙あり!!」
「!」
込めている力は変わらないが、彼女の意識が確実に自身から離れたのを察し、全身の筋肉をバネの様に跳ね飛ばして彼女の体を押しのける。
「貴様はヤードラット人だったな。相手にとって不足はなぁい!!」
「ぶ…!」
びしぃ!!!っとキメる見事でクールなファイティングポーズ。
ターレスの体でのアンマッチさ、笑わずにはいられなかった。
「ふ、ふふ…ははは…!ターレス!いいじゃない!よく似合ってるわ!これが終わったらターレス特戦隊でも組んだらどう?」
「ふん、俺にはクラッシャー軍団がいるからな丁重にお断りさせて貰うぜ。」
そんなやり取りを大袈裟に肩すくめてニヒルに笑う。
それは己の信じる美を笑われながらも、逆にそれを哀れと笑う自己陶酔激しい芸術家のそれだった。
「…ヤードラット人のような文化人なら我がファイティングポーズの美を理解するかと思ったが…残念だ。」
「綺麗なポーズだとは思うよ?かっこいいかは置いといて。」
「最早は問答は無用!」
コミカルなやり取りにふさわしくないドス黒い邪悪なオーラを噴き出しながら、ギニューは生意気なヤードラットの女に飛びかかった。
最終ラウンド、開始である。
戦闘力補足
小籠包
基本最大:2万8千=>2万
グルドとの戦いで受けたダメージにより戦闘力低下。
しかしダメージはあっても技の発動に支障なし。
気功法:40万
これが今にできる彼女の全力。更に更に、パワーを上乗せすることで…
界王拳2倍:80万
ターレスより弱い…という認識は誤りだ。
そもそもそういう認識であるなら彼は小籠包にここまで入れ込んではいない。
実際は力の制御が不十分なために起きた状況不利によるもの。
たかが30万程度のギニュー相手では勝負にもならない。
最終ラウンドの行方は…皆様の想像した通りになるだろう。