ドラゴンボールAT 作:澄ましたガール大好きおじさん
待たせた挙げ句、内容薄くてもうしわけないので初投稿です。
「とぉぉぉぉぉ!!!」
勇ましい気迫と共にギニューが飛び出す。
その声だけでみるのなら正義の戦隊ヒーローそのものだ。
彼が立ち向かう女の容姿と異形の瞳から放たれる冷たい光もあって、絵面は完全に怪人 vs ヒーローである。
舞空術により滑空しながら更に加速するギニュー。
目の前の怪人に片脚を突き出す、これまたヒーロー然とした実に格好つけた飛び蹴りである。*1
これが日曜の朝にやる様な良い子の為の作品なら、例え怪人側が圧倒的に強くともしばらくヒーローを泳がせたであろう。
が、事ここにいたりその怪人はそんなお約束などクソ喰らえと踏み躙る空気の読めない女である。…そもそも怪人ではないのだが。
使い手が使い手ならば正義の焔になり得る界王拳のオーラも、彼女が使えば即座に邪悪なオーラに早変わりだ。
高めた焔の火力を最大限に用い、無形の構えから半身を翻すだけで腹部を狙う大仰な飛び蹴りを直撃のコンマ数秒直前、紙一重で回避する。
更に、翻した半身を元に戻す動きのまま拳をギニューの鼻っ面に叩き込み、拳をめり込ませたままその後頭部を容赦なく大地目掛けて叩きつける。
「がぁ!?」
仰向けに倒れた彼の眼前に気を集約させた指先を突きつける。
勝負、アリ。…いや最初から勝負になどならなかった。
80万という数値を機械の故障と断じて信用せず、己がパワーでそれを証明しようとした奢り昂った戦士、特戦隊の隊長といえど凶悪化の狂気には抗えなかったか?
…否、断じて否。
これも、ギニューの作戦の一つ。
彼女は自分を殺さない、殺せないとわかっている。
故にこの一撃は致命傷ではなく、限りなく戦闘不能に近い一撃だとギニューは見込んでいる。
その判断は正しい。
「……。」
「がは…!?」
なんの感慨もなく放たれたどどん波。
それは脳天目掛けて確実に脳を破壊する一撃ではなく急所外し腹部を貫通することだけに終わらせる一撃だった。
大きなダメージを負った、普通の戦士ならばこれで戦闘不能だ。
しかし、彼は特戦隊の隊長なのである!
隊員二名の尊き犠牲を前にこの程度で戦闘不能になるはずがないのだ!
ーーーふ、ふふ…バカな奴め…!今度は貴様の体を奪ってやるぞ…!
ギニューの口角がニヤリ、と持ち上がる。
この肉体は素晴らしいが、少々血の気が多くなるのが玉に瑕だ。
サイヤ人などという野蛮な種族の体が、きっとそうさせるのだろう。
だかしかし…!目の前の女は美しい。
彼女の体からこれまでとはことなる!
ファンタスティックなファイティングポーズを開発できるだろう…!
勝利を確信したギニュー。
それが最大の過ちだと知るのはこの1秒後だった。
「チェーーーーーンジ!!」
これを。待っていた…!
そう言わんばかりに異形の口角が歪に吊り上がる。
彼の口から放たれる気功波。
これが数十分前の小籠包が相手ならなすすべはなかったであろう。
しかし、彼女はこの数分でスピリット制御への新たな境地に踏み込んだばかりなのだ。
飛び出す己の魂、相手の肉体を乗っ取る反則技。
それを、右手を突き出してガシリと鷲掴みにしてしまったのだ。
ーーーなん…だと…!?
先ほどのグルドの超能力とは比較にならないほどの
先ほどのグルドとの戦いと違い、なんの制約もない状態でそれを捕まえらことなど造作もないことだった。
「おォォォォォォ!!」
ーーーうァァァァァァァァ!?
その華奢な身体からは想像もできぬ気迫が込められる。
界王拳の出力を更にあげて3倍!!
圧倒的な膂力を用いて彼女はギニューの飛び出した魂をターレスの体から引き摺り出したのだ!
まるで人魂の様な炎をその手に掴み取った彼女は先ほどまで放っていた気迫と対照的に冷たくそれを見据えていた。
手に握ったのはギニューの体から射出された魂そのもの。
ーーーき、貴様…!このギニュー様になにをした!?
「言ったでしょう?勉強になったって。彼を私にぶつけたのは失敗だったわね。」
言っている意味が全くわからない、この状態は初めてのことだが考察するまでもなく、危険だと彼は直感的に察する。
何せ今の自分は肉体から離れた魂だけの存在。
そしてそれを握り込む、華奢な指先。
彼にはわかる、この女は敵を排除するためなら容赦しない。
ボスであるフリーザがここにいたのなら確実に勧誘していたであろう。
ーーーくッ…少しばかり見せすぎた様だな…!
なぜか冴えていくギニューの意識。
溢れ出るパワー、そして謎の高揚感…やはりサイヤ人の体は自分にはすぎた代物だったらしい。
確かにこれまで幾度となく強者から体を奪った時に高揚感はあった。
しかしそれは陶酔する様なものではなく、気が緩むとうっかりファイティングポーズをキメたくなる様なものだ。
今回はたった2回しか新たなファイティングポーズをキメていない。
ーーーちぃ…乗っ取る相手を間違えた様だな…!
彼の技、ボディチェンジは初見だからこそ効果を発揮する。
1日にそう何度も放つような技ではないのだ。
ーーーこのギニューともあろうものが…!こんな単純なことに気づけないとは…申し訳ありません…!フリーザ様…!
しかし、ここで諦めるわけにはいかない。
なぜなら女は自分を殺すか決めあぐねている様子。
ここは、賭けに出るしかなかった。
ーーー名も知らぬ女戦士よ、取引をしないか?
「…聞くだけ聞いてあげる。」
やはり。
顔が存在したのであればその口角はニヤリと吊り上がっていたであろう。
ーーーターレスに肉体を返そうじゃないか…!見ろ…貴様の攻撃により奴の肉体は死にかけている…!すぐにでも中身を入れねば本当に死んでしまうぞ!
サイヤ人の肉体は屈強だ、今はまだ瀕死であってもしばらくは生命維持できるだろう、それを知っていながらギニューは多少の嘘を交えて彼女を煽る。
ーーーどうだ…!この俺を肉体に戻してはくれないか、そうすれば奴にまたチェンジしなおしてやる…!
嘘偽りない、あの肉体は確かに素晴らしいパワーを持っているが、いつか自分の精神を蝕み破滅するだろう。
そんな肉体よりはやはり長年使っていた肉体の方がまだマシといえる。
そして、唯一の勝機ともいえるこの女へのチェンジも完全に見切られてしまった。
そして残りのメンツとチェンジするのなら、大人しく自身の体に戻った方が良い。
ーーーわ、悪い話ではないだろう…!
異形の瞳が細く、鋭くなる。
ゴクリ、とないはずの生唾を呑み下す。
「余計なことをしたら今度こそ殺すから。」
ーーーわかっている…!お前とターレス以外の体に興味はない。
「気持ち悪い表現やめてくれる?」
解せぬ!肉体と机があるのなら力いっぱいに叩いて抗議してたであろう。
掴んだスピリットを彼女は漸く手放した。
ふよふよ、と頼りない動きで彼は肉体へと戻っていく。
白目を向いて倒れた彼の口の中に入り込む様子をターレスは舌打ちをしながら見守っていた。
のそりと、ゆっくりとおぼつかない様子で立ち上がる。
途端に訪れる恐ろしいまでのドス黒い情動。
それを持ち前の精神力で押さえ込みながらゆらりとターレスの前にたった。
「ターレス…俺の前に来い…!」
「天下のギニュー特戦隊の隊長殿も、あの女には敵わないようだな?」
「黙れ、貴様のこの体…返してやろう。」
ーーーチェーンジ!!
再び彼の体から迸る気功波…互いの口から放たれる魂強制交換の光。
互いの魂が元の肉体に帰った。
次の瞬間、ギニューの視界に映ったのは真っ赤な焔を身に宿した悪鬼だった。
「なッ…!?」
界王拳を使ってフルパワーの急接近、彼女の拳が何の躊躇も躊躇いもなくギニューの胸元へと迫る。
今の彼がフルパワーであれば防御に転じ、致命傷は避けられたかもしれない。
しかし、この身体はターレスが痛めつけ、続いて自らも痛めつけた挙句、サイヤ人というインチキによって強引に潜在能力を引き出され、ボロボロの状態なのだ。
「がは!?」
当然彼はノーガードで自分より遥かに格上の戦士から急所攻撃を受けることになる。
胸を貫く細く華奢な腕、人体が地球人と同じ構造とは限らないが、この一撃が致命傷なのは明らかである。
「…きさ…ま…!」
卑怯な!!約束と違うぞ!!
そんな抗議すら出せない、今この瞬間にもギニューの命は流れ落ちていく。
まだ意識があるのかと異形の女は冷たい視線を落とす。
指先を自身に向けるその姿は敬愛するボスの姿と重なる。
それが、ギニューがこの世で見た最後の光景だった。
「見込み違いね、貴方達と同類なの。」
辞世の句すら許さない容赦ない追撃により、フリーザ軍の最高戦力であるギニュー特戦隊隊長はあっけなく地獄に堕ちた。
ギニュー特殊戦隊討伐完了!
ジースとバータだけ生き残ってます。
状況整理
ターレス
ギニューと小籠包にボコされて割と瀕死
ベジータ
ギニューにボコられたが、思ったよりダメージを負えなかった。
小籠包
戦闘継続可能、ただし戦闘力は4割減
ヤムチャ
戦闘不能、ダメージ加減ではターレスとどっこい。
クリリン
戦闘不能、ヤムチャよりは軽傷、無理な界王拳な反動で動けないだけ