ドラゴンボールAT   作:澄ましたガール大好きおじさん

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 オリ主と原作主人公の初対決なので初投稿です。


其之八 決戦!小籠包 vs 孫悟空

 

 第四試合:小籠包 vs 孫悟空

 

 いよいよ、鶴亀合戦ともいえる本大会の事実上の第三試合が始まろうとしている。

 

 試合開始数分前、会場への入口…シャオランは静かに瞑想をしていた。坐禅の様な構え…それだけで言うなら普通だが…異様な事に彼女は()()()()()()()

 

 「あいつ、不思議な術を使う奴だな。」

 「ふむ、鶴仙流の奥義、″舞空術″じゃな。あの年で会得しているとはの…。」

 「じっちゃん、良く知ってんなぁ。」

 「ご、悟空、女の子だからって油断すんなよ。」

 「なんで女だから油断するんだ?アイツ強ェぞ、油断なんかできねぇ。」

 「それでもだ悟空、アイツから得体の知れない何か嫌なモノを感じる。十分気をつけろ。」

 「なんだよヤムチャまで…オラいつだって全力だ、心配すんなって。」

 

 悟空は静かに瞑想をする小籠包を睨む。彼女が放つ独特の威圧感に武者震いを抑えられなかった。

 

 「悟空よ、あの餃子のように、連中は術に長けておる。十分気をつけるのだぞ。」

 「おう、ありがとなじっちゃん!オラ早くアイツやりてぇぞ!」

 

 腕を振り回し気合いを十二分に高める悟空と、静かに闘気を高める小籠包、二人の様子はまるで対極的だった。

 

 「一回戦、第四試合、孫悟空選手 対 小籠包選手!ご入場ください!」

 

 実況アナウンサーのよく通る声が会場に響き渡る。二人の戦士が武舞台に上がるのを三人は見送った。

 今大会唯一の女性枠に会場は大いにいろめき立つ。

 

 「おいおい、悟空の相手はあの女の子だぜ。」

 「一回戦が孫くんなんて可哀想ね〜せめてヤムチャかクリリンなら手加減してくれたかもしれないのに。」

 

 半ば弛緩しているブルマ達の気配、少し離れた位置で鶴仙人は不気味な笑みを讃えている。

 

 ーーーくくく、精々油断をしろ孫悟空、我が弟の仇、貴様はここで死ぬのだ…!

  

 

 「孫く〜ん怪我させないよ〜にね〜!!」

 「悟空〜そいつは女だからな〜!パンパンするんじゃねぇぞ〜!」

 

 特等席からの応援、それは当然武舞台の中央で向かい合う二人の耳にも届いた。

 

 「ですって、手加減してくれる?」

 「バカ言え、オラはいつだって全力だ。」

 「残念。少しは油断してくれると思ったんだけどな。」

 「ヤムチャの仇を取んなきゃならねーんだ!そのためにオラ負けられねぇ!!」

 

 悟空が身構える剥き出しの闘志に対して小籠包は冷ややかに彼を見下ろし、静かに半身をずらして応える。

 

 ーーーそれはこっちの台詞だ…孫悟空、貴方はここで死ぬのよ。

 

 互いの裂帛した闘志を感じとり…アナウンサーはそれだけで彼らの心に覚悟灯ったことを察する。

 

 「始め!」

 

 最初に弾けたのは悟空だった。

 体格の差をものともせず残像すら残す速度で拳を、脚を、肘を、膝を繰り出す。

 

 「だぁぁぁぁぁりゃりゃりゃりゃりゃ!」

 

 会場中に響く悟空の闘志溢れる絶叫。一見悟空が一方的に攻撃を仕掛けている。小籠包の動きは必要最小限に身体をずらし紙一重で交わしている。反撃が出せないのは悟空の繰り出す打撃の嵐が彼女の想像を遥かに超えているからだ。文字通り…避けるのに手一杯と言ったところで、一見悟空に分がある様に見えるがそうではない。

 

 「はァ!」

 「ご…!?うォぁぁぁ!?」

 

 活動に必要な酸素は有限だ、つまり悟空の嵐の様な打撃も無限ではない。彼が一息ついたコンマ数秒の僅かな隙間に細い腕が悟空の鳩尾をうちぬく。その瞬間、停止した悟空を見逃すほど彼女は甘くない。

 

 「はァァァァァ!」

 

 今度は少女が打撃の雨を降らせていく。それを防御する暇もなく小さな拳は悟空の頬を、腹を、胸を、鼻を、容赦なく打ち込んでいく。余りにも一方的な試合展開に観客は動揺を隠せない。天下一武道会の準優勝者が年上とはいえ、少女相手に一方的に打ちのめされているのだ。

 

 「う、嘘でしょ…あの子、あんなに強かったんだ…。」

 「お、おい…悟空のやつやばいんじゃねえか…?」

 

 先ほどまでの楽勝、弛緩した空気は一変し悟空の打ちのめされる様子に顔面蒼白のブルマ達に鶴仙人はほくそ笑む。

 

 ーーー今頃気づいても遅い。シャオよ、もう少し甚振ってやれ。

 ーーーはい老師。

 

 悪趣味、姿勢を崩されていまだに体勢を戻せない少年を一方的に殴りつけるながら毒づく。一方的な蹂躙の中思う。…この少年の身体は()()。まるで岩石…いや鉄鋼を殴っているかのようだ。一体どんな鍛え方をすればこんな肉体が出来上がるのだろう。

 だが、自分とて生半可な鍛え方はしていない。相手が鉄だろうとダイアモンドだろうと…ぶちこわすまで殴り続ければいいだけのこと。

 

 「ヤぁッ!!」

 

 殴られ続け、まともにガードもできない悟空の下腹部に槍の様に脚を突き出す。

 

 「がは…!」

 

 決まった。先ほどまでの硬い感触ではなく、柔らかな肉を破壊する感触。内臓まで響いただろう、しばらくは立っていられまい。

 

 「桃白白様を倒したというから、警戒してたのに。拍子抜けよ。」

 「ァ、…ァ…ッ。ぐゥゥ。」

 「あの世で彼の方に謝りなさい…死ね…!」

 

 気を高め、手刀に注ぐ。ただの打突が鋭利な刃と化して…倒れ伏す悟空の無防備な首筋目掛けて振り下ろされーーー

 

 「!」

 

 ることはなかった。彼女の手刀が断頭する前に尻尾が彼女の手首を掴んでいる。細いソレの何処にそんな力があるのか、シャオランの片腕はぴくりとも動かせない。その数秒間は悟空の呼吸を再起動させるのに十分な時間だった。

 

 「ッ…小癪な…はな…せぇ!」

 「ほっ!」

 

 彼女の蹴りを文字通りボールの如く回転し跳躍しながら回避した悟空は、背後に着地する。勝負は仕切り直し…いや、大きく息を切らせている悟空がやや不利か。観客の目にはそう見える…が、小籠包は全く別の感想を抱いていた。

 

 ーーー仕留め損なった…!

 

 彼我の戦力は明白…ここで殺せたなら鶴仙流の完全勝利であった。が、それももう望めない。

 

 ーーーアレを、使おうか…!

 

 彼女が再度構えをとる。力を漲らせて奥の手を出そうというその瞬間、悟空が口を開いた。

 

 「おめえ…やっぱり悪いやつだったんだな!あの桃白白と一緒で」

 「…桃白白様を悪く言うな…!あの方は高潔な殺し屋…!私をここまで育ててくれたんだ!」

 「何言ってんだ!アイツは卑怯モンだ!」

 「減らず…口を…!」

 

 許さない、敬愛するヒトに対してその様な暴言を吐くこの小僧を。

 冷たい憎悪を激らせて全身に力を張り巡らせていく。

 

 ーーーはァァァァ!!!

 ーーーアレを使うつもりか、くくく、孫悟空め死んだな。

 

 武舞台が大きく揺れる。華奢な彼女の身体から膨大な気が立ち昇る。

 

 「な、な、な、…なんですかあれ…!」

 「凄まじい気の嵐じゃ…!」

 

 彼女を中心に全てを吹き飛ばすような爆風が吹荒ぶ。高まった気は彼女の中に集約されて、充実していく。

 

 「カカカカ!見たか!これぞ極意″気の解放″じゃ!遂にモノにしたかシャオ!ゆけ!孫悟空を殺せぇ!」

 「悟空…やれ!今やらねば取り返しのつかぬ事になるぞぉ!!」

 「じっちゃん…!」

 

 ーーーか…め…

 

 彼女に併せて悟空も気を集中する。悟空の手にも彼女と同等の力が集約されていく。互いに発する力の大きさはほぼ同じ…しかしその本質は大きく異なる。

 

 ーーーかァァァァ…!

 ーーーは…めェ…波ァ!!

 

 小籠包の気が一際大きく膨れ上がる。光の柱のごとく、高々と彼女のエネルギーの余波が天高く放たれたと共に悟空のかめはめ波が彼女を飲み込むのはほぼ同時だった。

 

 ーーーバシュ!!!!

 

 それは着弾することなく、力任せに振るわれた細腕によって、彼の渾身の必殺技はあっさりと弾き飛ばされ、空の彼方へと消えていく。

 

 「お、オラのかめはめ波が…!」

 「そんなこけ脅し、私には通じない。」

 

 彼にとって最高の技、それを弾かれたショックを隠せない。

 対して、殺し屋鬼姫の瞳は実に冷たかった。一歩踏み出す。

 なけなしの慈悲として目一杯の殺意を彼に突きつけた。

 

 「もうお遊びは終わりよ…殺してあげる。」

 「く…!うぉぉォりゃぁぁぁ!」

 

 やぶれかぶれ、雄叫びをあげて飛びかかる悟空が渾身の拳を突き出す。それを冷ややかな目で見つめるシャオラン。動かない、彼の拳は吸い込まれる様にシャオランの頬を撃ち抜く。…しかし、彼女は微動だにしない。

 

 ーーーか、硬ェ…今まで殴った、どんなもんよりも…!

 

 「しッ…!!」

 「ぐ…!ァァァァァァァァ!」

 

 孫悟空が()()()に弾き飛ばされる。殴られた悟空にすらも知覚できない凄まじい正拳突き。吹き飛ばされた先が武舞台の外ではなく、壁であったのは幸か不幸か。

 

 悠々と倒れ伏す悟空に歩み寄る小籠包。

 数秒前とは完全に別人のそれであった。何が起きたのかわからない。武の神様と言われた武天老師ですら。

 

 「老師様…気の解放とは、一体…!」

 「わからぬ…。一つ言えることは、今のままでは勝てん…!」

 「そ、そんな…!ご、悟空…!」

 「悟空ゥ!!棄権せい!それ以上はやってはならぬ!殺されるぞ!!」

 

 ジャッキーの悲痛の叫び、しかしやっとダメージから復帰した悟空には届かない。立ち上がった悟空はその口角を無意識にあげていた。もう外野の言葉など彼に聞こえてはいない。

 

 「何がおかしいの?気でも触れた?」

 「おめぇ…ほんっとスゲェ…!」

 「!」

 

 心の底から闘争を楽しむ狂気、敵わぬ相手の胸を借り、思いっきりぶつかる。かつての自分を彼に幻視した。

 なんだこの少年は、自分の殺意と殺気が本物と理解した上で笑っている。

 

 「死ぬのが、怖くないの?」

 「怖ェさ!でも…今は、お前ェと、戦いてェ!!」

 「そう、ならお望み通り…叩きのめしてあげる!」

 「!」

 

 瞬き一つ取った僅かな隙、そのコンマ数秒の隙間を縫ってシャオランは悟空の懐に入り込む。彼が視界に捉えた頃には顎に迫るアッパーカットがそこにあった。

 

 「が…ぁぁ!?」

 

 小さな身体が宙に浮き上がるほどの衝撃、崩れ落ちる悟空の腹に下から放たれる容赦のない膝蹴り。そのまま悟空は天高く打ち上げられるが…その闘志溢れる瞳が未だ自分を捉えている。無防備な所に何発も急所攻撃を与えたのに仕留められない。常識ハズレの頑強さに舌打ちする。

 

 「おォォォォ!!」

 「ぐあァァァァァァァァ!?」

 

 天高く舞い上がる彼を舞空術で追い越す。空を飛べない彼にかめはめ波を出す隙は与えない。そのまま胸元目掛けて両手をハンマーの様に振り下ろす。武舞台の中央に隕石の様に叩きつけられ…砂埃が舞う。まるで悟空が見えているかのように迷いなくその中を突っ切り。

 

 ーーーガァン…!

 「うァァァァァァァァ!?」

 

 重い打撃音と共に響く悟空の悲鳴。観客のほとんどが彼の死を予感する。普通の人間はあんな攻撃を受けては生きていられない。

 彼女は本当に彼を殺すつもりだ…!

 もうだめだ…ここで彼を死なせるわけには行かない。クリリンとヤムチャが身を乗り出した。

 

 「もう、見てられん!武天老師様…!俺助太刀にいきます…!」

 「俺もいく…!」

 「ならん!」

 「ど、どうしてですか!!」「何故ですか老師様!」

 「悟空はまだ闘う気でおるからじゃ、見よ。」

 

 巨大な土煙が晴れたそこには…明らかに怯えを見せるシャオランと肩で息をしながらも必死に構えを取る悟空の姿がそこにあった。

 

 「何故…死なない…!アレだけ打ったのに…どうして…!」

 「お前ェ…やっぱり…悪ィやつじゃねぇな、オラ…なんもしてねぇ!」

 

 ーーー急所を外したのはお前ェなんだからな!

 

 そんな馬鹿な…。

 彼女は本気で悟空を殺す気だった。無意識にそうしたというのか、幼い頃の自分と重なってしまった彼に、躊躇したというのか。

 

 「ふざけた事を…!私はお前を…先生の…!仇を…!」

 「嘘じゃねぇ!!」

 

 狼狽える彼女とはあまりにも対極、凛とした彼の声が武道会場を静まり返らせた。

 

 「だってオラ、お前の攻撃が()()見えてねえからな!」

 

 圧倒的な力の差、それでいて彼はまだ、勝利を諦めていない。

 この巨木の様に高い障害を、乗り越えるつもりなのだ。

 

 「ッ……なら、お前が死ぬまで叩きのめすだけのこと。」

 「やってみろ、お前にオラは殺させねぇ!オラ耐え切って、絶対ェお前に勝ってやる!」

 「!」

 「が……!?」

 

 悟空の頬に鉄拳が食い込む。1秒と立たずに弾け飛んだ悟空の身体が再び武道会場の壁を粉々に破壊する。変わらぬ展開、やはり勝てない。

 誰もがそう思った矢先、今度はケロリと立ち上がった。

 

 「馬鹿な…!?」

 「…へっへーん!受け方がわかってきたぞ…!」

 「黙れ…!」

 

 立ち上がった悟空に容赦のない連撃が叩き込まれる。顔を滅多打ちし…腕、腹、腰、胸…身体中の急所を徹底的に念入り打ち込む。先ほどの焼き回し…しかし悟空の体幹が微動だにしていない。

 異変を感じたシャオランがとびのく。ダメージはあるはず…しかし悟空は先ほどよりイキイキしてる様に見える。

 

 「化け物ね…!」

 「今度はオラの番だ…!」

 「!…う…ァ…!?」

 

 悟空のスピードが急激に上がる。想定外の速度に面食らったのが致命的だった。ガードを貫通した彼女の身体に悟空の拳が突き刺さる。

 

 ーーーこふ…!?

 

 内臓にダメージがいったか、喉の奥から鉄が逆流する。

 立って、いられない。地面のなくなる、不快な浮遊感を覚えて…そのまま地面に崩れ落ちる。

 

 「や、やったー!」「す、すごいぜ悟空…!」

 「ご、悟空め…この短期間でまた成長しおった…!」

 

 先の速度は爆発的に…エネルギーを放出し瞬間的に力を大幅に増強させた、気の集中による瞬間的な能力強化。

 

 ーーー受け方がわかってきたぞ!

 ーーーあれは、その前段階だったという訳か…!

 

 弟子の驚異的な成長速度に舌をまく。崩れ落ちた小籠包にアナウンサーがカウントを開始する。

 

 

 「シャオ!立て!たたぬか!馬鹿者!」

 

 薄れゆく意識の中…老師の叱責が聞こえる。なんとか意識を握りしめる。なんて、重い攻撃…!後一発貰えば確実に…!

 

 ーーー負け、られ、ない…!!

 

 「ッ……ォォォォオオ!!」

 

 自らを叱咤するかの様な雄叫びで漸く彼女は意識を繋ぎ止めて、気力だけで立ち上がる。目の前の敵を血走った目で睨みつける。

 

 「…負けて、たまるか…!私は…桃白白様の…誇り高い殺し屋の弟子だ…!負けられない…!」

 「やい!桃白白はな!不意打ちしたり()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 「嘘を、言うなァ!!」

 「嘘じゃねぇ!!」

 

 間髪入れず叫ぶ悟空に、殺し屋の動きがついに止まった。

 

 「オラ、嘘は嫌いだ。」

 

 彼は恐らく…彼女の言葉のほとんどをわかっていない。だがこれだけは理解してる。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。これが孫悟空には理解できない。

 

 「違う…桃白白様は…先生は…そんな人じゃない…!」

 「友達の父ちゃんはアイツに殺された。何も悪ィことしてねーのにだ!」

 「……!?」

 「レッドリボン軍っちゅー悪ィ奴らの味方をしてた。だから、オラが倒した。」

 「うそ、だ…だって…だって…先生は…!」

 

 悟空は嘘をつける少年ではない、しかしそれは転じて…()()()()()()()()()()()()

 あったばかりの小籠包にもわかる。孫悟空は嘘をついてない。彼は自らの師に害された…それは、彼女の信じる″殺し屋の信念″を踏み躙るも同義だ。そして…そんな彼を殺そうとした少女は…自分の忌み嫌う下衆な殺し屋と同じだ。

 

 「ぁッ…ァァ……!」

 

 観客席は静まりかえる。

 先ほどまで激しい攻防をし…大いに盛り上がっていたはずなのに。

 彼女がダウンから奇跡の生還を果たして立ち上がった事でこれ以上無い歓声があがっていたというのに。

 

 「…だ、大丈夫ですか…?続けられますか?」

 

 もう、彼と戦う理由がない。

 なにより…もう、シャオランにはその気力が、ない。

 

 「こ…降参「シャオ!!小籠包よ!何をしている!そやつは貴様の師の仇だぞ!殺せ!」」

 「できません…!」

 「なに…?

 「彼の…彼の殺しは正当です…!それを…否定、できません!」

 「ふん、もういい、餃子、やれ。」

 

 あまりに冷たい、感情のない一言。瞬間…武舞台の対戦相手が苦しみ始めた。…超能力…兄弟子の超能力が彼の腹の中をねじきろうとしている…!第三試合でクリリンにしたのと、同じ技。

 

 「ァガ……!?なんだ…これェ…!?」

 「待って…餃兄…!お願いやめて!!」

 

 恥も外聞もなく、叫ぶ彼女の言葉にその手を一瞬緩めてしまう。それを仙人は許さない。

 

 「奴を殺せ…そうすれば…妹弟子の失態は見逃してやる。」

 「…!…シャオ、ごめん…!」

 「うァァァァァァァァ!?」

 

 再び悟空の悶絶が加速する。もうダメだ…止められない。自分との戦いでダメージを負った悟空に、この超能力は耐えきれない。どうしたらどうしたらどうしたら!?彼を、自分たちのエゴの為に死なせる訳には行かない。遅すぎる覚悟を決める。指先を…向けたくもない力を…兄弟子に向ける。

 意を決して、気を放とうとしたそこには餃子を止める天津飯の姿があった。

 

 「止めるんだ餃子。…もういいでしょう老師。」

 「天…にィ…。」

 「なんのつもりだ天津飯?」

 「孫悟空の底は知れました。仮に失敗しようと、俺が奴を始末すればいいだけのこと。それとも老師は…こんなやり方で桃白白様の無念が晴らせると?」

 

 天津飯は冷静に言葉を選ぶ。この場を納め…なんとか自分に責任が回るよう…いざとなれば…自分がその責を被るつもりで。

 

 「奴らの好む″正々堂々″とした試合で葬り去る…それが奴らにとって最も屈辱的なこと…それこそ、桃白白様もお喜びになる処刑方法では?」

 「それもそうじゃが…」

 

 鶴仙人の逡巡は続く…確かにこれでは我々の格好がつかない、この様な形で仇を打っても気持ちよくないのは確か、であればこの馬鹿弟子のいう事にも一理ある。

 

 「この様な騒ぎを起こしました…しかし、それでも我らが優勝をすれば…一気に名声も高まるでしょう…()()()()()()()あの鶴仙人のお弟子たちと。…綺麗事ばかりの哀れな敗北者…亀仙流…。」

 

 溢れ出る冷や汗を必死に押さえ込む。この偏屈でプライドの高い老人を説き伏せるのに、何が必要かを…必死に手繰り寄せる。

 

 「どうかここは、我々…いえ、不甲斐ない弟弟子どもではなく…この私におまかせを…!」

 

 衆目を気にせず、彼は深々と頭を下げる。

 その頭を冷ややかに見つめる仙人…氷の様に冷たい時間が流れる。

 

 天津飯は、賭けに勝った。

 

 「…そこまでいうのならば、やってみせよ。好きにせい。」

 「無論です。決勝の舞台であの小僧の息の根を止めて見せましょう。」

 

 

 ふん、と鼻を鳴らして試合など知らぬと観客席を去っていく。

 照りつける太陽の中、絶対零度の空気。

 視線を妹分に向ける。

 

 ーーーシャオ、お前の思う通りにやれ…後始末は俺がなんとかする。

 ーーーで…でも…それは…!

 

 念話の聞こえぬ観客たちにはわからない。この見つめ合いの意味が。

 会場には相変わらず冷えた空気が流れている。

 

 ーーーあの〜試合は?

 

 盤上にはキョトンとした悟空と、蹲る小籠包。アナウンサーがどう切り出すべきか、そんなことを悩みに悩んでる中。

 

 「なぁ、続きやってもいーんか?オラ待ちくたびれちまったぞ。」

 

 そんなモノを意に介さず、能天気な小僧が語りかける。涙でぐちゃぐちゃになった顔をキョトンと見上げた先には実に退屈そうな少年の姿…

 

 ーーーぷっ…はハ!アハハハハハ!

 

 気がつけばシャオランはお腹を抱えて笑っていた。

 この小僧は状況を理解してるのか?

 いやしていないな。

 馬鹿なのか?

 うん、馬鹿なんだな!

 

 「なんだよ?オラの勝ちでいーんか?」

 「…ううん、やる。まだ全部、出し切ってない。」

 「よーし、そーこなくっちゃな!なぁおっちゃーん、悪ィけんどー試合開始…もっかいやってくんねぇかぁ!?」

 

 え?やるの?この空気で?

 茶番(訳のわからないやり取り)を見せられて試合放棄かと思いきや急にやる気を出した選手、しかも試合開始の音頭を丸投げされる理不尽…

 

 「か、会場のみなさん!た、大変お待たせいたしました!え〜…多少のアクシデントはありましたが…試合再開といたします…!」

 

 多少…??

 観客席にいる者全員が首をかしげる言い回しだが誰も責めはすまい、なにしろこの状況下で、あんな高らかな実況ボイスを出したのだから。

 

 ーーーそれでは、試合!再開!

 

 

 

 

 





戦闘力更新

小籠包 120=>180(気の解放)
孫悟空 160


 Q.10年師匠を信頼してた割にシャオランちゃんちょろくない?
 A.それが、孫悟空の不思議なところじゃい。(老界王神並の感想)

 迷いましたが、悟空ならこれくらいやってくれると思います。
 なんせ、数100年殺し屋やってる伝説の殺し屋ヒットをバトルジャンキーにしちゃうくらいには人たらしですからね。ウチのオリ主くらい楽勝よ。

 では、引き続き後半戦をお楽しみください!
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