ドラゴンボールAT 作:澄ましたガール大好きおじさん
ラディッツ君が立派になって涙ぐましいので初投稿です。
※重ねて言いますが、本作の戦闘力、気の概念などは筆者の独自解釈が含まれます。
時遡って少し前……。
小籠包に不意打ちで吹き飛ばされた宇宙の帝王。
本日二度目、肩についた土埃を払いながら先の敵に憎悪を昂らせる所に、見知った気配が背後に立つのを感じた。
ただでさえイラついているというのに、この宇宙で最も出会いたくのない男が現れたのだ。
「…珍しいこともあるね、兄さんの方から僕に喧嘩を売って来るなんて。」
実兄のクウラである。
「そろそろ、この宇宙最強を決めてやろうと思ってな。不老不死などというくだらない願いに縋る愚かな弟に、この俺自らが引導を渡してやる。」
相変わらず癪に障る薄ら笑を浮かべる兄が自分を見下ろす。
低い身長がコンプレックスである彼にとってこの目線の高さは実に腹立たしい。
しかし、ここでいちいち目くじらを立てるほど彼は浅慮ではない。
これが大仕事の最中でなければ、今すぐにでも全てを放り出して、裏の帝王と呼ばれるこの男を始末しにかかっただろう。
「今は兄さんの相手をするほど暇じゃないんだ。この僕の邪魔をする連中を皆殺しにしないといけないんだ、後にしてくれないかな?」
「良いだろう、暫し待ってやる。雑魚に気を取られて本気を出せなかったなどと、要らぬ風潮を流布されるのも、俺のプライドが許さん。」
それは言外に、お前のことはいつでも殺せる。
そういう宣言だ。こめかみがうずくのを抑えてフリーザはわざとらしくため息をついた。
「交渉成立だね、じゃあ、宇宙船でのんびりミルクでも飲んでるといいよ。それが兄さんの最期の晩餐になるだろうけどね。」
「貴様を殺す前のウォーミングアップくらいさせろ。何人かは貰っていくぞ。」
「仕方ないね、でもおかしな髪型のサイヤ人は僕が貰うよ?この僕から逃げた奴を見逃したら、ソレこそ僕らのプライドに泥を塗ることになるからね。」
外したスカウターをどこからか取り出したフリーザは早速その電源を入れ直す。
どうやら多少の損傷はあるがまだ使える様だ。
そして…ギニュー特戦隊の反応…そのほとんどが消えていることがわかった。
「ギニューさん?特戦隊の皆さん?応答なさい。」
通信を入れてもなんの反応もない。
おかしい、彼ならば通信を入れて1秒以内には返事がある。
過去に彼が眠ってしまったであろう時間帯に連絡を入れてしまい、起床後に号泣ながらの謝罪から始まったこともあった。
そんな彼が、連絡を無視するなどあり得ない。
ギニューが何者かに敗北した。或いは応答もできないほどの傷を負ったか…そのどちらか。
特戦隊の全員が応答がないと言うことは…そう言うことなのだろう。
ーーー何か、あったようですね。
自らに匹敵する戦士がいる。
その事実が…ギニューを超える戦士が存在してもおかしくない。
そして、不意打ちとはいえ最終形態のフリーザを殴り飛ばせるほどの戦士がいる。
ギニューが勝てないのも無理はなかろう。
「僕は一度宇宙船に戻るよ。ネズミが何匹か、僕の宇宙船に入り込んだようだからね。」
兄さんはどうするのかな?その問いかけにクウラはみしり、と拳を軋ませた。
「ならば、俺はもう一つの心当たりへ向かう。俺の部下では少々力不足かもしれんからな。」
「部下…嗚呼、クウラナントカ戦隊とかいう趣味の悪い連中のことか。」
「勘違いするな。アレはサウザーが勝手に名乗ってるに過ぎん。」
「どうだかね?」
その割にはギニュー顔負けのおかしなポーズにご満悦な兄であるのを彼は知っている。何よりギニューがフリーザ特戦隊などと名乗ろうモノなら即座に却下している。
あんな恥ずかしいポーズを決めながら
みんな揃って!フリーザ特戦隊!!
などと荒野を背景に爆発なんてされたら、それこそ恥ずかしくて死ぬ。
「俺は部下の様子を確認する。…逃げても無駄だぞ?不老不死だろうが必ず貴様を踏み潰してやる。」
「はいはい、さっさと行きなよ。物凄いパワーが、サウザーさんの近くにいるみたいだよ?」
ふん、そう鼻を鳴らしながらクウラは凄まじい速度で機甲戦隊の元へと飛び去った。
「今日は本当にイライラする日ですね…猿共め…皆殺しにしてやるぞ…!」
宇宙船に接近するサイヤ人の反応…十中八九、先ほど殺し損ねた狂ったサイヤ人だろう。
フリーザは全速力で母艦目掛けて飛行した。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
更に時は変わって、現在。
「サイヤ人にしては中々やるじゃねえか。」
「…ッ」
小籠包が打ち落とした三人組の1人に追いついたラディッツは早々に実力の差を見せつけられた。
無理もない、戦闘力では2倍近い開きがある相手だ。
格上(小籠包)と戦うことに慣れているラディッツだからこそここまで食い下がれたと言ってもいい。
「あの女はやばそうなんでな、早々に撤退させてもらうぜ。お前を殺した後にな!」
「な…放せ…!ぐぁぁぁぁぁぁ!?」
唐突に伸びた両腕に構えた両腕を捕まえられる。
直後流れる強烈な電撃、ネイズの得意技である。
どんな相手でも彼の電撃の前では黒焦げになるのだ。
が、相手はサイヤ人。
流石の戦闘民族故の肉体の頑強さか…焦げた肉の匂いを充満させながら…ラディッツは気を失うことなく舞空術を継続していた。
「褒めてやるぜ、この俺の攻撃を受けて立ってた奴はドーレぐらいだからな。」
最早ほとんど決着はついた。スカウターに示される戦闘力は大きく低下して行っている。
最早遊んでいても殺せるほどに敵は弱った。
ここで、ネイズの悪い癖が出た。
さっさと殺せばいいものを目の前のおもちゃで少しばかり楽しんでやろうというのだ。
スカウターから2人の気配は消滅した。
それはあの女にやられたことを意味する。
しかし同時に今あの女はボスであるクウラが相手をしている。
万が一にも女が自分を追ってくることなどない。
「…サウザーとドーレの分まで、きっちり痛めつけさせてもらうぜ?」
「ゲス野郎が…。」
忌々しげに吐き捨てるラディッツの言葉すらネイズを喜ばせる。
悪党にとって、弱者の悪態ほど気持ちの良いものはない。
「ほら、もっと楽しませてみろよ。」
「舐めるな!!」
ラディッツが飛び出す。しかし、遅い。
やはり先ほどの電撃が彼の戦闘力を大きく落としているのだろう。
しかしここで反撃をするほどネイズは優しくない。
紙一重で回避し…後少しで当たるぞ…?
という悪辣な餌を吊り提げる。
ラディッツの猛烈なラッシュをものともせずに息一つ乱さないまま、やり過ごす。
対するラディッツは大きく体力を消耗したようで肩で息を繰り返す。
勝負は見えている。
「さて、そろそろ遊びは終わりにしてやる。クウラ様に叱られちまうからな。」
「へ…、そうは行かねえな?」
「なに…?」
深呼吸を大きく一つして息を整えたラディッツが不敵に笑う。
「お披露目相手が彼の機甲戦隊というのならちょうどいい。」
「へ、強がりもいい加減にしろ、お前の戦闘力は5万を切っている。俺様は16万…お前に勝ち目はーーー」
ピピピピ!
得意げに語る彼のスカウターから警告音が出力される。
目の前のラディッツから夥しい量のエネルギー溢れ出始めたのだ。
ーーーかァァァァァァ……!!
片方の視界に映される計測結果はみるみるうちに上昇していく。
「10万…15万…ば…バカな…!まだ上がって行く…!?」
「ずぁ!?」
裂帛の気合いと共に彼を中心に気の爆風が迸る。
思わず両腕で顔面を庇った後…彼のスカウターの数値には恐ろしい数値が表示されていた。
「せ、戦闘力…25万…だと…!?き、貴様は…サイヤ人だろう!?何故それほどまでの力を!?」
「これから死ぬ奴に教えて何の役に立つ?」
「…ッ、舐めるな!!」
ノータイムでネイズの手のひらから放たれる気功波、それを愉快げに一瞥するなり
「つァ!!」
大きな腕を振るってあっさりとそれを弾き飛ばす。
軌道の逸れたエネルギー波は放物線を描き海上へと叩きつけられる。
海中で爆裂したエネルギーは海底が見えるほどの大津波を引き起こした。
「くく、効かんなぁ?…攻撃とはな…こうするのだ!」
彼の両腕に禍々しいエネルギーが充填されていく。
それだけで先ほど彼が放った力任せのエネルギー波とは一線を画す威力だとわかる程。
「ひッ…!?く、クウラ様…お助けーーー」
「死ねェ!ダブルサンデー!!」
機甲戦隊の誇りなどあっさりと捨てて背を向けて逃走を図る彼に、容赦のカケラもないフルパワーの気功波が包み込む。
断末魔すらあげる暇もなく、ネイズはあっさりと消滅した。
不敵に笑みをたたえるも、その直後…全身に走る虚脱感。
迸る彼のエネルギーは瞬く間に霧散していった。
「ちッ…やはりまだ調整が必要だな。」
彼が使ったのは…サイヤ人の潜在能力の根源とも言える大猿化である。
1700万ゼノを超えるブルーツ波を浴びることで彼らは大猿に変化し、その戦闘力を10倍に引き上げる。
本来尻尾がなければ大猿になることはできない。
しかしその力そのものを失ったわけでは無い。
現に遠い未来、あるいは別の世界のお話。
局所的に1700万ゼノを超えるブルーツ波を浴びることで尻尾を失ったベジータは大猿に変異している。
つまり、力を引き出すトリガーが存在していないだけなのだ。
ないのであれば作ればよい。
では、どうするのか?己の中にある「大猿の気」を解放すればいいのである。
これは
これらを併せ持つラディッツだからこそ出来る技だ。
研鑽に研鑽を重ね、彼はついにそのとっかかりを掴むことに成功した。
人間の体でいながら大猿の恐ろしいパワーをその身に宿すことに成功したのである。
…が、ここで彼にとって克服し難い課題があった。
大猿化により理性を保てないラディッツはそのパワーの全てを引き出すことができないのである。
本来…彼の生まれながらの戦闘力ならこれをコントロールする素養のある「上級戦士」のはずなのだが…どうしても彼は大猿の力を使いこなすことはできなかった。
さて、本題に戻ろう。
そんな理性を失うようなパワーをその身に宿せば形は人でありながら見境のない獣に変わってしまうのだ。
ここで小籠包のあり方がこの力の向き合い方へのヒントとなる。
彼女の気功法は最初はごくわずかな強化の術だった。
それを少しずつ、体に馴染ませていき今やその強化倍率は大猿すら超える。
…彼女の基礎体力が小さいが故にその術の恐ろしさを十全に使い切れないのが玉に瑕だが…ここでは関係ないため割愛とする。
要するに何を言いたいかといえば…少しずつ、心を失わない程度に力を引き出せば良かったのだ。
その結論は改めて言うこともないだろう。
いつまでも、弟や敬愛する相手に遅れを取ってなどいられない。
そんな彼のちょっとしたプライドがこの境地へと誘った。
しかしこの力も万能ではなく、いつでもどこでも引き出せる便利な超パワーでは無い。
本来は1700万ゼノを超えるブルーツ波を安定供給しなければ発現しない力。
しかもその大元は下級戦士を凶戦士に変えてしまう狂気の力だ。
まだまだ発展途上、小籠包の言葉を借りるのであれば「未完成の欠陥技」である。
だからこそラディッツはこの力を使う為に、罠をしかけた。
安全に変身する時間を確保した上で、安心から脅威に転じることで発する動揺をついた上で確実に殺す。
王子が聞けば卑怯者と罵るかもしれない。
…しかし、小籠包からの教えはそうではない。
勝てばいい、そしてこれは卑怯ではなく狡猾。
戦いの中で油断する方が間抜けなのだ。
閑話休題。
「やはり、消耗が激しいな、クウラ相手にこの力が通用するとは思えん…!」
一度「大猿の気」を使ってしまった。
後一回使えるかどうか…それもクウラのような強者には通じまい。
今自分が行っても彼女を救うことができないことはわかっている。
しかし、好いた女が甚振られているのを見捨てるほど、ラディッツは男を捨ててはいなかった。
いや、それを見捨てられない男になれた、というべきか。
最早今の彼を「弱虫ラディッツ」と馬鹿にするサイヤ人はいないだろう。
「ッ…小籠包…!今度こそ死なせんぞ…!」
オーラを噴き出してラディッツは死地の中へと飛び込んでいった。
戦闘力更新
ネイズ
基本最大:16万3000
一応公式数値。
小籠包の見立て通りラディッツでは歯が立たない相手。
ネイズも彼がサイヤ人と見るやなかなかの戦闘力だけど、所詮自分の相手ではないと彼を痛めつける。
ラディッツ
基本最大:10万
ダメージによる戦闘力低下?:5万
ネイズの想像通り、戦いは一方的な展開だった。
唯一の誤算はサイヤ人が思ったより頑強であったこと。
そしてスカウターの数値を当てにしすぎた。
大猿の気(ダメージ):25万
ここに来てラディッツは友にすら隠している奥の手を初披露する。
ほんの僅かな間の極パワー。
努力の天才ベジータ、天性の武を持つ悟空、ドーピングのターレス
彼らとは全く異なる方向で彼は進化の糸口を掴んだ。
大猿の気:30万
なお、万全の時の戦闘力。
やはり受けたダメージは痩せ我慢で頑張っていた様子。
うちのオリ主よりヒロイックで草生える。