ドラゴンボールAT   作:澄ましたガール大好きおじさん

92 / 120

 そろそろサイヤの日が近いですね、初投稿です。


其之八十六 無慈悲な凶光

 

 「はぁぁぁぁ!!」

 

 紅のオーラが何度も何度も軌道を変えてクウラへと襲いかかる。

 その悉くが弾かれ、避けられ、防がれる。

 実力の差は明白。

 どう罷り間違っても小籠包が勝利する未来はない。

 

 そして今の紅蓮のオーラが長続きしない事をクウラは看破していた。

 女の攻撃が一発ごとにほんのわずかだがキレを落としているのがその証拠。

 このまま黙っていても彼女は自滅する。

 戦わずして相手を制圧する。

 相手に実力を見せつけるのにこれほど効果的な戦法は存在しない。

 もちろん、その攻撃先は肉体にではなく、精神にだ。

 しかもそれが、相手の力量を正しく理解してる。

 それがどれほどの絶望を与えるかは言うまでもない。

 

 「防戦一方じゃない!宇宙の帝王さん!!」

 

 このまま無意味な攻撃を続けていては戦意を保つことは難しい。

 それを誤魔化す為に、彼女は偽りの優勢を演出し、自らを鼓舞する。

 

 「くく、ウォーミングアップが終わっていなくてな。今手を出せばお前を殺してしまうかもしれん。」

 「ッ…、馬鹿にして…!」

 

 彼女の気配が…ヴン…!と大きくなる。

 これまではただの肉弾戦、気功波の類はほとんどない泥臭い戦い。

 まともな技は界王拳くらいしか披露してない彼女だったがここに来て何か技を打つつもりらしい。

 

 「だったら…これを受けてみなさい…!!」

 

 無造作に立ち尽くし一方的に攻撃を捌き続けるだけの存在となったクウラ目掛けて…掌を向ける。

 右腕を限界まで引き絞り…紅蓮の焔を更に燃え上がらせる。

 

 「界王拳…ッ〜〜10倍!!」

 

 明らかに体に無茶を敷いた倍率。可憐な顔立ちをくしゃくしゃに歪めながら全身のエネルギーを右腕一点に集中している。

 さぁ打ってみろと言わんばかりに体を差し出すクウラに対して限界まで溜め込んだエネルギーを拳に乗せて撃ち放つ。

 

 「死ね…!!気功崩!!!」

 

 無防備な腹部目掛けて、己の気を最大に乗せた拳を叩きつける。

 戦闘力の開きは比較するのも馬鹿らしい。

 しかしこの技は相手の気配が大きければ大きいほど効果を発揮する。

 スピリットによって相手のスピリットを叩き壊す。

 殴るのはクウラではなく、クウラのスピリット。

 相手が大きく強固であればあるほど、それは脆く叩き割れる。

 彼女の持つ格上キラーの新たな奥義。

 

 「ぐ…ぉ…!?」

 

 これまで涼やかに自身の攻撃を受け、捌いていたクウラの全身がくの字に折れ曲がる。

 澄ました顔で軽薄な顔立ちがやっと、苦悶の表情へと変わった。

 効いている、確実にダメージを受けている。

 

 「が…は…!?」

 

 それは無茶な界王拳を使った小籠包にだって同じことだ。

 ごぽ…と夥しい量の体液を喉奥から逆流させて吐き出す。

 普通の人間とは異なる色の体液がナメック星の大地を汚す。

 

 自身もダメージを負ったが相手だってそれなりのダメージを与えた筈…。

 

 目論見通り彼は腹部を押さえながら、一歩、二歩と後退りをする。

 そのまま崩れ落ちる…ーーーことはなかった。

 

 「今のは痛かったぞ、ふふ弟以外からダメージを負ったのは初めてだ。次はどんな奇手を撃つつもりだ?」

 

 一度大きく咳き込んだ彼はそのまま何事もなかったかのように無防備な立ち姿を晒した。

 

 「うそ、でしょ…。」

 「これは快挙だぞ、このクウラにダメージを与えたのだ。それもこの俺が痛みに悶絶する程度のな。この倍ほどの威力なら流石の俺も、膝を屈していたかもしれん。」

 

 何の慰めにもなっていないクウラの言葉。

 体力とスピリットの大半を使ったのにも関わらずクウラには僅かばかりのダメージを与えた。それだけだというのだ。

 しかも、彼にまだまだ余裕を与えるほどの。

 

 「ッ…!!」

 

 再び紅蓮のオーラを纏い今度は回し蹴りで彼の側頭部を狙う。

 全身にスピリットを纏わせた気功崩による回し蹴り…ガード不能の一撃。

 しかし彼女の攻撃を受けてなお、クウラの首は微動だにしない。

 続く腹部へのボディブローも、顔面へのストレートも、横っ腹へのフックも…あらゆる攻撃に気功崩を乗せて殴りつける。

 

 手応えはあるのだ、あるはずなのだ。

 なぜ、何故効かないのか!

 ……それもそのはず、この技はつい先ほど考案した未完成な技。

 精度もさることながら彼女自身も体にダメージを負っている。

 フルパフォーマンスなど望めるはずなどない。

 

 界王拳が霧散する。

 相手からは何の攻撃も受けていない。

 しかし彼女の体は限界だった。

 無理もない、彼女の体には戦闘民族の血は流れていない。

 ヤードラット人と地球人のハーフなのだ。

 彼らは総じて…頑強な肉体を持つ生物ではない。

 今の彼女では、これが限界なのだ。

 

 「はー…はー…!」

 

 しかし、その目は未だ死んでいなかった。

 もう既に彼女はギニュー達と渡り合えない程度には弱体化している。

 彼女最大の弱点、フルパワーでの長期戦闘はできない。

 それが完全に露見した形だ。

 

 ーーー考え直す必要があるかな…もうすこし、身体を鍛えるべきだったかも。

 

 ふふ、そんな狂気じみた微笑みが彼女の唇に浮かび上がる。

 

 「何がおかしい、余りの戦力差に気でもふれてしまったか?」

 「いいえ?自分の弱点がわかっておかしいのよ。」

 

 この弱点を補えば、更に上へとステップアップできるはず。

 まるで未来を見据えたかのような発言にクウラは高らかに笑った。

 

 「くく…はははは!はーはっはははははは!!この俺を前に生き残る事前提か!」

 

 抱腹絶倒、何かのツボに入ったかのように爆笑する。

 それが、決して自分を褒め称えている訳ではないことはわかる。

 彼はこちらを嗤っているのだ。

 

 「…界王拳!」

 

 体に鞭を打って再びスピリットを全身に巡らせる。

 スピードは一段も二段も堕ちてしまったが、やらないよりマシだ、

 真っ赤な光の線を引きながらクウラ目掛けて一直線に飛来する。

 

 「この期に及んで未だ勝機を望むか?」

 「が…!?」

 

 視界は急転直下。

 気づけば自分の顔面は地面にめり込んでいた。

 足を振り上げる動作も、振り下ろす動作も見えなかった。

 

 「どうした?攻撃したつもりはなかったのだがな?」

 「…っ!!」

 

 ぎり…!と屈辱に奥歯を噛み締める。

 確かにクウラが自分を踏みつける足には「気遣い」が感じられる。

 彼ならこのまま自分の頭蓋をペシャンコにすることもできるだろう。

 敢えて、自分をおとなしくさせる為に力を緩めているのだ。

 

 「もうおしまいか?俺を楽しませられないのならお前はこのまま死ぬことになるぞ?」

 「ぐ…がぁぁぁぁぁ!!」

 

 尽きたはずのスピリットをかき集める。こめかみにいくつもの青筋を立てながら再び界王拳を纏い、のしかかる片脚を持ち上げていく。

 その甲斐甲斐しい努力も、更に力を片脚に込めることで、あっさりと彼女の顔面は地面へと叩きつけられてしまう。

 

 「うぁぁぁぁ!?」

 「そうだ、足掻け、俺を楽しませろ。弟を殺す前の良き前座になる。」

 

 勝てない、そんな絶望が小籠包の心を支配していく。

 それでも、彼女は諦めることはしなかった。

 何より、人の脚に踏みつけられて甚振られて喜ぶような趣味は持ち合わせていない。

 

 「ッ……その脚を…退けろォ!!」

 

 思い出すはあの天下一武道会のマジュニアとの一戦。

 この油断した相手には通じるだろう。ただただ相手を吹き飛ばすことだけに重点を置いた爆風。

 

 ーーー爆裂、魔波!!

 

 見よう見まね、ただでさえ残り少ないスピリットをかき集めたイタチの最後っ屁にも等しい一撃。

 これをクウラは防ぐでもなく彼女の攻撃にしたがって大人しくその巨体を吹き飛ばされてやる。

 

 「はー…はー…。が、ふ…!?」

 

 立ち上がる小籠包、しかしその体はもはや戦える状態にはなかった。

 それでも彼女は半身を下げていつもの無形の構えでクウラを睨みつける。

 

 「まだやるつもりか?そろそろ諦めたらどうだ。」

 「じゃあさっさと殺したら?私の心臓はまだ動いてるわよ?」

 

 もはやその顔に先ほどまでの恐怖などない、

 絶望は感じている。しかし脳内に溢れ出ているアドレナリンが彼女の心をぶち壊す。

 壊れた体で凶悪な微笑みを見せてクウラを挑発する。

 

 「そうか、そこまで挑発されては黙っているわけにはいかんな?」

 

 右腕を上げ、指先が向けられる。彼の肌の色と同じ凶悪な紫の光が凝縮していく。

 

 「良い余興だった、褒美に苦しまずに、一撃で楽にしてやろう。」

 「散々痛めつけておいてそのいい草はないんじゃない?」

 「くく…本当に惜しい、このクウラをそこまで馬鹿にできる奴など、この宇宙には二度と現れんだろうな?」

 

 今度は心の底から愉快そうに笑っている様に見える。

 サウザーは良き臣下であったが、己の想像を超えないという点ではつまらない男だったといえる。

 その点この女は、自身の失敗もあけすけに指摘するだろう。

 自分がミスをするなどとクウラは毛ほども考えてはいないが。

 

 「防御も回避も無意味だぞ?この一撃は確実に貴様の心臓を貫く。」

 「本当にお喋り好きなのね?友達がいないの?」

 「ふふ、口の減らないお前の様なやつは初めてでな?死ね。」

 

 指先の光が収縮する。

 その光はまっすぐ彼女の胸元目掛けて直進。

 回避はできない、もはや彼女には視認ができないからだ。

 できたとしても体は動かない。

 防御はできない、その光は彼女のスピリットだろうと腕だろうと彼女を破壊するからだ。

 

 せめて、殺される瞬間の景色は拝んでやる。

 異形の瞳はまっすぐクウラを捉え続けた。

 

 ーーーサタデー…クラァァァァシュ!!

 

 響く見知った男の裂帛の気迫。

 放たれたクウラのデスビームはサタデークラッシュによりその場で爆裂し、その先端が彼女の胸を貫くことはなかった。

 

 「小籠包、無事か!」

 「ごめん、死んでる。」

 「そうか、安心した。ここは俺がなんとかする、お前はさっさと瞬間移動で逃げろ。」

 

 自身とクウラを挟む様に現れた長髪の相棒の背が大きく感じる。

 

 「アイツが逃してくれると思う?」

 

 今日初めて技を見せた姿勢のまま自分たち二人を視界に収める自称宇宙の帝王へ視線を寄越す。

 

 「貴様らの隠れ場所はもう割れている。お前が逃げるなら隠れ家ごと吹き飛ばせばいいだけのこと。」

 「ほらわかったでしょ?退いてラディッツ。まだ勝負は終わってない。」

 

 ラディッツの身体を押し除けて再び構えを取る。

 どう見ても戦闘不能な彼女を戦わせるはずもない。

 そもそも選手交代の為にここに現れたのだそれを認めるはずもなかつまた。

 

 「おま……!そんな体で無茶をするな!」

 「あぁ…もう!うるっさいな!そんな大きな声で言わないでよ!」

 

 ギャアギャアと騒ぎ立てる二人に対して溜め息を出す。

 そして、目の前の自分を差し置いて痴話喧嘩の様に騒ぐ二人の下等生物の狼藉を許すほど、クウラは寛容ではなかった。

 

 「くだらんな。」

 

 強烈に立ち昇る殺意。

 放たれる凶光。

 飛び出す小籠包。

 一筋の光が二人の戦士の胸を貫いた。





 戦闘力更新
 クウラ
 基本最大:1億4000万

 弟の100%フルパワーと同等以上の力を常に無理なく制御している。
 戦っていても消耗なんてしないし、時間経過による弱体化もない。
 原作悟空より遥かにハードモード。
 しかもご存知の通り…クウラにはこのうえが存在する。
 え?これ勝てるの?

 小籠包
 基本最大:2万8000
 気功法(20倍):56万
 界王拳10倍:560万

 そんな宇宙最強に相応しい男には小籠包の新必殺技は通用しなかった。
 いくら防御貫通の技とはいえ、ここまで戦闘力の開きがあっては通用しない。
 クウラの言う「膝を屈する」もせいぜい「タンスの角に小指をぶつける程度」のモノである。
 とはいえ、彼に「痛み」を与える存在は初めてであり(同族を除き).
 文字通り桁違いの敵にも通用する可能性を示した。

 小籠包
 ダメージ:1万2000
 気功法(20倍):24万
 界王拳:32万
 
 そして10倍の反動は彼女に深刻なダメージを与えた。
 クウラがノーダメージなのは当然のパワーである。
 彼女の界王拳は3倍どころか2倍すら引き出せてはいなかった。
 いくら気功崩といえど100倍以上の開きは覆せない。

 とはいえ、それでもそれなりの衝撃をクウラには与えていた。
 軽く小突かれた程度のモノではあるが、同族以外が此処まで食い下がること自体、稀も稀だったりする。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。