ドラゴンボールAT 作:澄ましたガール大好きおじさん
ドラゴンボールの花形!!!解禁!!!!!!
身体が勝手に動いていた。
サイヤ人の可能性に賭けた。
あの宇宙人に一矢報いたかった。
死場所くらいは自分で選びたかった。
ついでと言わんばかりに友を殺されるが癪だった。
だが一番は
なんだかんだとともに過ごした男を目の前で見殺しにできなかった。
そんな…殺し屋には不相応な感情が働いたからだ。
しかも、それは無駄な足掻き…自分ごと守りたかった相手を撃ち抜かれた。
致命傷だ。
慣れないことはするもんじゃない。
ーーーせんせえ、の、いった、とおり、だ。
未熟者、お前に殺しは向いていない。
幼少期に言われ続けた言葉、その言葉の重さを痛感する。
ーーーせんせえの、いうことは、いつも、ただしい。
界王拳なんてとっくに消えている。
気功法どころか、気の解放だって満足にできていない。
もう、指先一つだって、動かせやしない。
もぞり。
ーーー??
懐の中に何かが入るのを感じる。
まだ辛うじて布擦れを感じ取ることはできるらしい。
なんとか瞳でその動きを追った。
見知った手が自分の懐から小さな小さな豆を取り出している。
……仙豆だ。
いつからかヤジロベーに握らされていたモノ。
すっかりその存在を忘れていた。
「ん、…ぐ。」
誰かの腕でソレを自分の唇の中に捩じ込まれる。
それをなんとか拒絶しようと抵抗しようにも…身体が動かない。
ーーー冗談じゃ、ない…!
指先で強引に口の奥に捩じ込まれていくソレ。
自分が、小籠包が辛うじて生きていることを知っている。
この僅かなタイムリミットの間にこれを飲み込めば、助かる。
そんな慈悲深い行為。
ラディッツらしい、彼はいつだって自分に恩義を感じていた。
自分に何かを返そうと悩んでいる様に見えた。
それを「こんな形」で返そうというのだ。
それに、なんの意味があるというのか。
ーーー…ふざ、けん…な…!
消えかけていた意識が蘇る。
命の火、消滅前に彼女は死力を振り絞る。
感覚の無い腕に力を込めて彼の肩を握りしめる。
「…!?」
視界に映るのは死人でも見たかのようなラディッツの顔。
ーーー要らない…!そんな無駄死に…
口の中に含んだそれを…彼がしたように、同じく死にかけた男に無理矢理流し込む。
生涯で初めての口付けが仙豆の口移しとは、なんとも自分らしい。
動揺するラディッツはなし崩しにそれを飲み込む。
途端に敵から受けた傷が治っていく。
本当に、どう言う原理なんだろうか。
ーーーヒトの口に、指を突っ込んだ、お返しだ。
ンベ、と舌先を出す。
できる限りの邪悪な顔で口角を吊り上げ、ニヒ…!と渾身の笑み。
やりきった、そんな達成感とともに今度こそ全身から力が抜けていく。
ーーーあ、やばい。
一度死んだからこそわかる。もう自分は助からない。
今見えている景色だって、眼球を通してのソレなのかも怪しい。
ラディッツが必死に何かを呼びかけているような気がするが、何も聞こえない。
と言うことは自分の意識、魂は辛うじて肉体の中にあると言うことだ。
なんて上等な死に様。
一度は彼に無造作に握りつぶされて死んだ。
アレも上等だ。間接的にとはいえ死に様を誰かに見てもらえたのだから。
自分のような極悪人を自称する子悪党は、その辺で野垂れ死ぬのが道理である。
それを今度は、信頼できる誰かの腕の中で味わえる。
こんな幸福なことはあるだろうか。
ーーーらでぃっ、あと、まか、せ
そこで小籠包の不適な微笑みはゆるりと崩れ落ち、黄色の瞳孔は今度こそ大きく見開かれた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
小籠包が、死んだ。
あれほど強かった存在が、あっさりとその命を散らした。
しかも、しかもだ。足手纏いである自分を庇おうとして。
腕の中で不敵に…超がつくほどの嫌味な笑い顔は崩れて、みるに堪えない。
守れなかった。
一度は、無意識の内に恩人であるはずの彼女を握りつぶした。
そして二度目、不甲斐ない自分を庇いきれずに互いに致命傷を負った。
彼女なら、仙豆の一粒でも隠し持っている。
そう信じて懐を探ったまではよかった。
彼女の口に捩じ込んだまではよかった。
まさか半死半生の状態から生き返って、口移しされるとはおもわなかった。
敬愛する女からの口付け、こんな事態でなければ顔から火を吹いていたのかもしれない。
しかし、今は…彼女を救えなかったという自信の中の無力感。
それが何よりもラディッツを支配していた。
「ゥ…あァ……!」
目元から熱い何かが溢れ出す。
久しく忘れていたソレ。
かつて、少年の頃、戦闘力の低さから同年代の連中にリンチされ…悔しさに何度も何度も流した。
「弱虫ラディッツ」と呼ばれる所以ともいえる熱い熱い、忌々しい体液。
しかし、止めることはできない。
彼女を救えなかったのは自分だ。
彼女を殺したのは自分だ。
何が誇り高き戦闘民族サイヤ人か…!
愛した女1人守れない弱い男に、そんなモノを名乗る資格なんてない…!
いつもそうだ、自分は誰かから何かを奪われる。
同族からは誇りを、侵略者からは母星を、そして今度は、今度こそ失うまいと心に決めていた物すらも…自分自身で奪ってしまった。
心が、ざわつく。
「うォォォォォォ!!」
体温を失った華奢な体を抱き上げながら慟哭が薄緑色の空へと響き渡る。
「ほう、サイヤ人に仲間の死を悼むような奴がいたとはな。…その女に免じて暫し時間をやろう。」
その様子を薄ら笑いを浮かべて静観するクウラ。
これは小籠包に対する慈悲だ。
己が実力を正しく見極めながら、最善を尽くしてなお愚かに散っていった素晴らしき戦士への手向けである。
溢れ出る涙がおさまっていく。
それは悲しみが失せたわけでは無い。
それを超える感情がラディッツの中で芽生えつつあったのだ。
怒り。
それは目の前にいる彼女を殺した仇敵にではない。
自分自身への、怒り。
守る、死なせないなどと大層なお題目を掲げておきながら、
結局は彼女に守られておめおめと生き残ってしまった自分への、怒り。
心が、ざわつく。
彼女の亡骸の瞼をそっと下ろして、幾らか離れた場所に横たわらせる。
迫る何かから避難させるように。
力なく眠るような亡骸が、自責の念を更に煽る。
「俺が…見殺しに、した…!」
ギリ…と握りしめる指先…爪先が食い込み皮膚を破る…指の隙間から真っ赤な体液がぽたり、ぽたりと滴り落ちる。
ーーーあとは、任せた。
そんな幻聴が、聞こえた気がした。
「…ああ、任せろ。」
心が、ざわつく。
ばちん、と青白いスパークが一瞬だけ彼のこめかみを走った。
この不甲斐ない男に彼女は託してくれた。
ならば、これを完遂するのが、彼女への手向けであろう。
「う…おォォォォォォォォォォォォ!!」
半ば本能的に喉奥から雄叫びと黄金の気を放出する。
よせ!やめろ!
貴様は黙っていろ!
狂ってしまうのなら望むところ!
大猿にでも何でもなってやろう!
アイツを倒す力が手に入るのなら!
その覚悟とともにぶちん、と彼の中で何かが千切れた。
同時に緑空を両断する勢いで登る金の柱。
一千年に一人現れる伝説の戦士、スーパーサイヤ人の姿が、そこにはあった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「く…ふふ、はははは!!」
気がつけば彼…未来の宇宙の帝王であるクウラは高らかに笑っていた。
目の前の存在はなんだ?
サイヤ人が変化したのだ、彼らは大猿にしか変わらないというのに…!
そこでクウラは思い出す。
一族に伝わる宇宙海賊チルドの遺言
「金色に変化する……に気をつけろ。」
その言葉を聡明な頭脳が一瞬で補完する。
金色に変化するサイヤ人、それこそが祖先チルドを葬った存在だったのだ!
まさか、まさか、自分たちが下等な猿と呼んでいた存在が一族を脅かす唯一の存在であったなどとこんな笑えるジョークはない。
これは油断ではない、感動だ。
生まれてこの方、彼は同族以外に…いや同族にすら本気で立ち合いをすることなどなかった。
それが、それが…今目の前にいる存在は、弟をも凌駕し得る可能性の持ち主なのである。
「サイヤ人、名前を聞いておこう。」
「ラディッツ…、サイヤ人ラディッツだ。」
ベジータ王子でもないただのサイヤ人がここまでの進化を遂げる。
なるほど弟の判断は確かに正しい。
こんな進化をする種族は根絶やしにするべき、弟ならば彼には勝てなかっただろう。
「素晴らしいパワーだ。それが音に聞く《スーパーサイヤ人》とやらか?」
「かもしれんな、この溢れ出るようなパワー。こんな形でなければ高笑いの一つでもしていただろうよ。」
び…!!
直後、ラディッツの姿がクウラの視界から消え去った。
それを自覚するとともに、彼の顔面を狙う拳が眼前に迫る。
「…!!」
ほとんど条件反射的な腕を上げ、拳を受け止めた。二人を中心に強烈な衝撃波、そして時点には半円のクレーターが出来上がる。
「女一人守れん俺が…スーパーサイヤ人だと!?」
彼の拳が防御に徹するクウラの脳天目掛けて振り下ろされる。
それを両腕で受け止めながらクウラの両足がめき…!と地面へと減り込んでいく。
「ふざけるな…!そんな弱い男が…!伝説の戦士なわけ…!!」
今度は空中にて錐揉み回転しながら…片脚が鉄槌の如く振り下ろされる。
これは受けられない。そう判断したクウラは地面に減り込んだ両足にエネルギーを放出させ…残像拳よろしく超高速でクレーターの外へと移動した。
「ないだろう!!!」
それを見て尚、スーパーサイヤ人の錐揉み回し蹴りは地面を両断する。
爆音とともに地面が割れる、地割れは遥か水平線の彼方まで続き…この星を真っ二つにするのではないかという勢い。
恐ろしいパワーである。
間違いなく、フリーザを超え、通常状態のクウラに匹敵する力の持ち主だ。
力任せに、あるいは八つ当たりに地面を叩き割った金色の戦士を見下ろす。
「血に飢えたサイヤ人とは思えんな。お前のような甘ったれた奴がそのようなパワー持つなど許すことはできん。」
「同感だ、俺もアイツに託された以上、お前を殺さなければならんのでな。」
「殺す…殺すだと?猿風情が…この俺をか!はははははは!!傑作だ、その程度のパワーで俺に勝った気でいるとはな。」
「何だと…!」
「いいだろう、冥土の土産に見せてやろう、このクウラの真の姿をな…!」
ずん…!!
惑星全体にのしかかる強烈なプレッシャー。
それは比喩などではなく、クウラが変身の為に気を高めたことで物理的に重力が増幅されるほどのパワーが彼を中心に迸っている。
今直ぐにでも彼の変身を止めねばならない、しかし…彼の迸る物理的なプレッシャーが、ラディッツをその場に縫い付けて離さない。
そして…クウラの体躯が一回り大きく、変形した。
「…!噂は、本当、だったのか。」
ボディアーマーを思わせる彼の甲殻が膨れ上がる。
逞しい両腕両足は更に太く膨張し、
丸い彼の頭部からは4本の角が伸びる。
何より…ただでさえ巨大だった彼の気配は何倍にも大きくなり、
その顔をマスクのように外殻が覆い被さる。
「さぁ、始めようか…!スーパーサイヤ人!」
この宇宙で誰も見たことのないクウラの真の姿。
今ここに、最強vs最強、とびっきりの最終決戦が始まろうとしていた。
戦闘力更新
ラディッツ
基本最大:10万
愛する女諸共胸を貫かれた。
瀕死の状態で服の中を探りすぐに仙豆を拾い出せたのも地味に彼女への理解が深いからである。
そして、せめて彼女だけは救おうと…仙豆を口の中に捩じ込むが…
復活パワーアップ:300万
その目論見は外れる、彼女の命を賭けた口移しで返品され、あえなくゴクン。
彼女の命を犠牲にして悲しみのパワーアップ。
そして…この時点で彼は同時に資格を得た。
超サイヤ人:1億5000万
1千年に一人現れる伝説の超戦士。
地球での暮らしで穏やかな心を手に入れた。
そして大事なヒトと引き換えに力を手に入れた。
その怒りにより彼は扉を開いた。
さぁ、反撃の時間だ。
クウラ
最終形態:5億6000万
とは行かなかった。
ここまでの余裕の証、そもそも彼はもう一つ変身を残していた。
フリーザが可愛く思えるような戦闘力。
伝説のスーパーサイヤ人であっても、この差は覆らない…!