ドラゴンボールAT 作:澄ましたガール大好きおじさん
明日の朝に投稿するつもりが即時投稿になってたので初投稿です。
フリーザ軍の母艦にあるメディカルマシーンから機械的な通知音が鳴り響く。
大量の治療液を滴らせながら治療を終えたターレスが現れる。
彼の顔は大変複雑なものだった。
ーーーあの女の気配が消えた。…クウラにやられたか、惜しいな…あれほどの良い女はそうは居ない。
地球の戦士ほど精度は高くないが彼も気を感知する能力を備えている。
治療カプセル内の暇つぶしに観測していた小籠包の気、それらが消えたのだ。
正直、彼女が死んだのであれば…こいつらに付き合う義理はない。
ダイーズの蘇生は諦めてさっさとここから逃げるに限る。
ーーーいや、奴らの保管してるボールを奪えば…ダメだな、
やはり、諦めて撤退が吉か。
そんなことを考えている、その時だった。
ずん…!!!
地鳴りの様なプレッシャーが突然惑星全土を襲う。
フリーザやクウラに次ぐ強大な気。
それは間違いなくサイヤ人のものだった。
「こいつは…ラディッツ…!?なんだ、何が起きてやがる…?」
一度は困惑するターレス。
大猿以外の超パワーアップとなると、一つ思い当たる節があった。
ーーーまさかこれが「スーパーサイヤ人」と言うやつか?…くだらんお伽話だと思ってたのだがな?
サイヤ人ならば誰でも知っている伝説。
一千年に一度現れる伝説の超戦士。
嬉しい誤算。
ならばもう少し様子を見てみるのもありだ。
今のラディッツのパワーはクウラを明らかに超えている。
ーーーくく、これなら…勝算があるかもしれんな。
己が身の振り方を思索している中、隣のメディカルマシーンも治療完了を通知する。
同じようにざぱり、と治療液を掻き分けながらあがってくるベジータもこのパワー感じ取った様子。
「…少しはサイヤ人が残っていたようだな。」
殊勝な様子だが、その拳は血が滲むのではないか?と思えるほどに固く固く握りしめられている。
下級戦士と見下していた存在にここまで差をつけられているのは彼にとって大いなる屈辱だろう。
「全く、サイヤ人の未来は明るいなぁ、王子様よ?」
それをわかっていながら、声をかけるターレスの心根は当然慰めなどではない。
肩を優しく叩いていながら、その表情は実に愉しげであった。
「気安く触れるな!」
上から添えられる手を振り払う。
どこか弛緩した空気のなか、更にデカい気がナメック星全土にのしかかる。
そう、真の姿を現したクウラの戦闘力だ。
「おいおい…クウラの気まで更に膨れ上がったぜ?全く…いつからこの星は大怪獣バトルの会場になったんだ?」
緩んだ空気から一点、二人の表情が軽く絶望に染まる。
ただでさえ手に負えない怪物が更に進化したと言うのだ。
ーーー災難だったなラディッツよ。貴様と小籠包が残したこの情報は有効に活用させてもらうぜ?
更に一転、ボディアーマーとスカウターを装着しながらやはり撤退を選択する。
スカウターの電源を入れごくごく小さな声で通信機に声を流す。
ーーーアモンド、聞こえるか。
ーーー聞こえてまっせい、撤退ですかい?
話が早くて助かるぜ…!
部下の状況把握能力に感謝しながら、当然yesと返した。
ーーーラディッツの様子は記録していたか?
ーーーはい、あとで見せまっせい。
そいつは重畳、スーパーサイヤ人覚醒のヒントは大方想像はつくが、念の為何が起きたのかは確認する必要がある。
ーーーすぐにそちらへ戻る、こんな化け物共が跋扈するところ、さっさと逃げるぞ。
ーーーダイーズはどうするつもりでっせい?
ーーー……また後だ。
一拍おいて、はい、と返事があったところで一方的に通信を切る。
さて、哀れな伝説の戦士が怪物を足止めしている間にここから逃げねばならない。
勝てぬ戦いにムキになるほど彼も愚かではない。
「さて王子様…俺はお暇させていただくぜ?クウラとフリーザの相手をーーー」
ずん!!!!
またも響く、気の膨張のプレッシャー。
今度は、ラディッツのパワーがまたも何倍にも膨れ上がったのだ。
そしてこの気の膨れ上がりかたはよく知っている。
神精樹の実だ…!
彼は実を食べたことにより極パワーを会得したのだ。
ーーー…くっくっくっ…傑作だぜコイツは…!
一体いつ自分たちから実を掠め取っていたのか、その狡猾さに舌を巻く。
ーーーおいおい…我が同胞ながら二度もこの俺を出し抜くとは、見直したぜラディッツ。
これなら勝てる。
流石のクウラもこれ以上の隠し玉は持ってはいまい。
スカウターを操作して、待機するアモンド達に一言、「経過観察」を指示する。
「了解」の返答と共に再びスカウターの通信を切った。
「どうしたターレス、尻尾を巻いて逃げるのではなかったのか?」
「意地悪を言わないでくれよ王子様、俺が逃げ帰る理由がなくなった事くらい分かるだろう?」
「ふん、サイヤ人の面汚しめ。」
「命欲しさにフリーザ様へ従属していた王族の言葉は身に染みるねえ。」
そのような安い挑発に乗るほどターレスも短気ではない。
卑怯上等、勝てばいい。
安いプライドなどさっさと捨てて勝ちに走るべき、ターレスはそう言う男である。
「ち…!」
「さて…お喋りの時間はないみたいだな。伝説の戦士様が来てくれるまで…精々時間稼ぎといこうじゃないか。」
そう、迫るはクウラに次ぐ脅威であるフリーザだ。
ここで隠れる訳にはいかない。
そしてターレスの最終目的が更新された。
ーーー予定変更だ。ダイーズのついでに、
小籠包の復活である。
目にかけた女がこんなところで散るのは本意ではない。
二人のサイヤ人が死屍累々の母艦の中を歩きながら外へと向かう。
さて、既に出口には悟空が二人を待っていた。
ラディッツに隠れて気づくことができなかったが、彼も大きくパワーをあげていた。
「ほう、お前も随分と力をつけたなカカロット。」
「ああ、オラも驚いてる。」
「…ちっ…!」
ギニュー達との戦いで深手を負い…ベジータは治療により大幅に進化した。
今度こそ、忌々しい下級戦士どもを超えたはずだった。
だが、悟空のそれは自分のものより一歩も二歩も先を行くものだった。
そう、このナメック星にいる純血サイヤ人の中で…自分が一番戦闘力が低いのだ。
サイヤ人の王子であるはずの自分がである。
「カカロット、貴様の兄がスーパーサイヤ人に目覚めた。」
「ああ…すげえな、遠くですげえ気を感じた。流石兄ちゃんだ。」
ーーーな、何故だ…オレは超エリートだ…!何故…こんなクズどもに遅れを取る…!
これでは、たとえ不老不死になったとしても…こいつらの背中を追うだけの存在になる。
そんなのは王子としてのプライドが許さない…!
そのプライドが彼らの最大の弱点でもあるのだが。
「…お、おい…何だアレは…!」
ヤムチャの示す方向…地平線の彼方に現れる巨大な火の玉。
この星を容易く吹き飛ばす程の莫大なエネルギー。
しかし、恐れ慄く地球人達とは打って変わり、サイヤ人達は落ち着いていた。
「すげえパワーだ…。」
「嗚呼、だがアイツの敵ではないな。」
一度は大地に着弾しこの惑星を吹き飛ばそうと、超強烈な地震が全員の足元を奪う。
サイヤ人の想定通り…火球を貫く黄金の閃光がそれを彼方へと吹き飛ばしていく。
「…し、信じられん…あのクウラを…たかが…ラディッツが…!」
屈辱に震えるベジータ、同胞の可能性に笑いが堪えられないターレス、そして…超えるべき背中にワクワクが止まらない悟空。
「全く、とんでもない奴だな…」
「そうっすね…敵じゃなくて本当に良かったですよ…」
三者三様の反応を示すサイヤ人とは正反対に…危機を乗り越えたことに安堵する地球人。
凶悪な気が太陽の中に溶けて消えていったことに、どこか緩んだ空気が流れる。
希望が見えてきた…これなら生きて帰れるかもしれない。
「クウラはラディッツが始末したあとはフリーザだけーーー」
そんなターレスの言葉は見事にフラグとなった。
言葉は最後まで語られることなく、彼方から飛来する光線が…ターレスの胸を貫く。
「かは…!?」
「誰を…始末するって?…猿風情が、思い上がったものだね?」
着地をした宇宙の帝王。
咄嗟に身構えるZ戦士とベジータ。
しかし、最早フリーザに慢心はなかった。
指先を真っ直ぐベジータに向ける。
彼の防御を無慈悲な紫の閃光が貫通し、正確無比に心臓を破壊する。
「ぐ…ぉ…!?」
一瞬で生命力を持っていかれながら、サイヤ人の王子は哀れにも膝から崩れ落ちる。
そこに対して何の感想もないまま、宇宙の帝王が口を開いた。
「これで
まるで虫でも捻り潰すかのようなテンション。
彼にとってはサイヤ人などゴミ同然、その態度は正しいモノなのだ。
「ふ、フリーザ…!」
「また君かい?二度も僕に見つかるなんて馬鹿な奴。今度は容赦しないよ。」
「ッ…!」
今度は先ほどのようには行かない。そう思っていた。
しかし…今の一撃…二度も機会があったと言うのに見ることすら叶わなかった。
仮に界王拳を10倍…いや20倍にしても、通用しないかもしれない。
後ろで身構えていたクリリンたち目掛けて視線を送る。
「お前ェ達…ブルマ達のところへ行け…!オラが時間を稼ぐ…!」
「逃す訳ないだろう?」
「がは…!?」
凶光は呆気なくヤムチャの腹に風穴を開ける。
生命力の高いサイヤ人二人はまだ辛うじて息がある。
しかし、倒れ伏したヤムチャは既に死んでいた。
向こう側の景色が覗けるほどの風穴を胴体に開けられては…地球人は生きてはいられない。
「おや、こんなので死んじゃうのかい?特戦隊を倒したと言うのだからもう少し頑丈なのかと思ったよ。」
捕まえようとした虫を握りつぶしてしまった、そんな様相。
やはり、彼にとっての生命とは、同族と、それ以外なのだ。
「ヤムチャさァン!!この野郎…!」
あっさり大事な友を殺されてクリリンは黙ってなどいられなかった。
片腕を上げて気を集約する。
円盤状に鍛え上げた気の刃…気円斬。
「よ、よせ…!やめろ!クリリン!」
「気円ーーーぁ……。」
彼の技が掌から投げ飛ばされる直前、既にクリリンの体はふわり…と上がっていた。
舞空術で動こうにも何かに掴まれたように…クリリンは気円斬を頭上に掲げたまま高く高く上げられる。
「あ…ァァ…!!」
先ほどの裂帛の気迫はどこへやら、1秒後に迫る死を意識して顔を真っ青に染めるクリリンの顔に帝王は実に楽しそうに笑った。
「ほーほっほっ、どうしたのですか?お友達の仇を討つのでしょう?」
既に彼のサイコキネシスによって全身を完全に固定されたのをわかっていながら嘲笑う。
もう我慢できないと、界王拳を20倍、マックスパワーにまで引き上げた悟空がノータイムで突進する。
「やめろぉ!フリーザァァ!!」
それを一瞥し、長い尻尾が悟空の死角から飛び込み、あの時のように後頭部を叩きのめされ、ダウン。
その頭を容赦なく踏みつけた。
「ぐぁ!?」
「そこでお友達がゴミになるのをみているといいよ。」
「く…クリリン!!!」
ヤムチャは最悪、ドラゴンボールで生き返ることができる。
しかし、クリリンは一度死んでいる…!
二度目の復活は、ない。
「…が…ぁぁぁ…!」
「うるさい猿だね…静かにしてなよ。」
足元で騒ぐ悟空に心底うんざりして今度はその腹部を蹴り飛ばす。
何の手加減もない足蹴り、界王拳を使っていなければ粉々に砕け散っていただろう。
「がは…!クリリン…!やめろぉ!フリーザぁ!!」
当然そのダメージは計り知れない。
空中に放りなげられながら、親友目掛けて届かない指先を伸ばす。
二人の絶望的な反応に先ほどの屈辱、その溜飲をおろしたというのに、フリーザは残酷にもその指先をばきり、と握り潰した。
「悟空ゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…!!」
断末魔と共に、その肉体はバラバラに弾け砕け散る。
文字通りカケラも残さない木っ端微塵。
目の前で親友を殺され心優しいサイヤ人の頭の中は真っ白に漂白される。
地面に激突し転がるも…立ち上がれない。
久しく忘れていたドス黒い感情の奔流が頭の中を支配する。
幼少期の頃…魔族、タンバリンを怒りのままに打ち倒したあの頃の記憶が蘇る。
心が、ざわつく。
「さて、あとは君だけだよ?簡単には殺さない。僕をコケにしたツケは払って貰わないとね?」
あの異星人が何かを言っているが、孫悟空の耳には何の言葉も受け付けていない。
既にクリリンは一度死んだ。
もう二度と、帰ってくる事はない。
いつからか、悟空は立ち上がっていた。
先ほど誰ぞやに蹴り飛ばされた腹の痛みはとっくに消えている。
心が、ざわつく。
「流石に頑丈だね、こんな形でなければ君を僕の軍にスカウトしていたところだよ?」
でも、流石にやりすぎた。君を生かしておく理由はないね?
生かしておく理由、まるで生殺与奪の権を握る傲慢な権力者のよう、そんな、そんなくだらない理由でクリリンは死んだ。
心が、ざわつく。
「ゆ、…許さ、ねぇ…よく、も…!」
「君たちは本当に仲間想いだね、でも安心しなよ、君も同じところに送ってあげるからさ。」
…同じ、ところ…?
感情の砂嵐の中、辛うじて聞き取れた仇敵の言葉。
やっと、やっと悟空は目の前の薄ら笑いを浮かべる異星人が、親友の仇であることを明確に理解した。
ゆらりと、彼の髪が動く。
「よくも……クリリンを…!!!」
ぶちん…!!
孫悟空の中で何かが千切れ、金色の柱が天高く迸る。
この日、一千年に一度の奇跡がナメック星で同時に起こった。
孫悟空、覚醒。
戦闘力更新
ターレス
基本最大:95万=>475万
復活パワーアップにより大きくパワーアップ。
もう既にサイヤ人のレベルを完全に逸脱した。
これで彼も有資格者の一人。
しかし、肝心なキッカケを手に入れることはできなかった。
ベジータ
基本最大:6万2千=>120万
復活パワーアップにより超大幅パワーアップ。
しかしこれでは足りない。
例え穏やかな悪であろうともだ。
とはいえ、彼もターレス同様そんな時間は残されていなかった。
孫悟空
基本最大:300万
界王拳20倍:6000万
間違いなく地球勢最強角の一人。
油断も慢心もなく2名のサイヤ人を瀕死(通常であれば即死レベル)の重傷を与え、ヤムチャをあっさり殺害したフリーザ、彼に対して何の躊躇もなく切り札の界王拳を使い、親友の殺害を阻止しようとするも、あっさりあしらわれてしまった。
フリーザ(最終形態)
基本最大:8000万
見え見えの攻撃をあっさり叩き潰してしまう。
それでも大きな戦闘力差はない。
あっさり封殺できたのは一時的なパワーアップと精彩を欠いた攻撃が故だろう。
悟空の健闘虚しく、クリリンはその命を文字通り木っ端微塵にされてしまった。
孫悟空
超サイヤ人:1億5000万
二度目の奇跡の覚醒。兄の背中を確実に追い続ける。
親友の絶命、二度と生き返らない、その怒りが悟空に臨界点を超えさせた。
ベジータが(画面外にて)吹聴していたスーパーサイヤ人という概念。
それを本能的に会得できたことを確信した。