幻想偽典 ~Dies irae Rosenkavalier Kaziklu Bey~ 作:時杜 境
「中尉―。トマト買ってきてくださーい」
時刻も昼過ぎに差し掛かったころ、レイシアがそう言った。
ソファでだらけていたヴィルヘルムは、はあ? と声をあげる。
「なんです。どうせ暇なんでしょう? お望みの仕事ですよ、仕事。それともお使いもできないんですかー?」
「おまえな……」
「はいこれお財布ー。トマト売り場は分かりますよね?」
「主人をナメ腐るのもいい加減にしろよ……?」
従者が財布を手渡しにやってくる。煽り口調に、いつもの反射で舌打ちする吸血鬼だったが、
「──、」
垣間見た従僕の顔色を見て、気が変わった。
苛立ちは消え、思うのは困惑と呆れ。財布を受け取ろうとした姿勢で、手が止まる。
「ベイ中尉―?」
「……おまえ、どうした。顔色悪いぞ」
「顔色ぉ? 何言ってるんですか、幼女は永久不変ですよ。ワケ分かんないこと言ってないで──、っ!?」
知った事かとその腕を引いた。軽い体重はいともあっさり引き込まれ、適当に体の方角を変えてやると、その頭がヴィルヘルムの膝上に乗っかった。
「……な。なん……ですか」
「てめえ、俺に言いたいことがあるんじゃねえのかよ?」
見下ろしながら追及すると、あからさまに少女の目が泳ぐ。
容赦なく額を指で弾けば、ぐはぁっ、と呻きながら涙目になった。
「言えよ。俺に捨てられた日から一人で寝てる事も含めてな」
「それはむしろ人として当然の権利では」
「黒円卓にてめえの人権はねえだろうが。飼い犬が何を人間気取ってやがる」
横暴に言い捨てるが、レイシアからの反論はない。
ただし、半目になりながら、じとっ……と此方を見上げている。
「き……気まずかったんですよ」
「ほお」
「ほお、じゃなくて! 何だったんですかアレはー! 新手の嫌がらせかッ! 幼女をいじめてなんか愉しいのかあんたはぁー!」
もう状況に吹っ切れたのか、威勢のよくなった従僕に主人は感心する。ああ、その方がおまえらしいよ、──とは、一切口に出さないが。
「ありゃ正確に言えば俺の本意じゃねえ。中の……
「……それは……」
「ああ、俺の母親だよ。姉でもあるが」
そういえばこの従僕とは一年近い付き合いになるが、過去に関して話したことはなかったな、と彼は気付く。
「といっても、それも本人じゃないがね。俺の記憶を元にした、聖遺物の意思ってやつだ。まあ、どっちにせよ大して変わんねえ奴だが」
「……はあ。私、イマジナリーお姉さんに嫌われているのですか」
「それもあるだろうが、怯えてたな。ああ、普通はありえねえ事だぜ。おまえ、なんかしたか?」
「してませんがー。まったく心当たりありませんがー!?」
心外な、とでも言いたげに抗論するレイシア。まあ、だろうな、とそこはヴィルヘルムも頷く。
「どんな幻想とも同調できるクセして、その幻想からは恐れられる……か。おまえ、一体何だ? メルクリウスの野郎に、何を買われて使い魔なんぞやってやがる」
「……それこそ、私の人生の課題というか、命題ですねえ。私自身も、さーっぱり分かっていないのですよ」
教えてほしいくらいですとも、と瞑目するレイシアは降参状態。どうやら本当に何も知らないらしい。……まぁ、メルクリウスの野郎が何を考えているか読めないのは、今に始まったことではないか、とそこで思考を切り替える。
「おまえ、一応は人間から生まれてんだよな?」
「ええ、はい。父親も母親も、平々凡々な方たちでしたとも。──まあ、私と関わりは薄かったですが。無関心そのものだったし、誰からも
「……誰からも?」
奇妙な証言に思わず問い返す。
親に疎まれていたなら、まだ無関心に理由はつく。だが誰でもそうだった、というのは異常だろう。透明人間か。
「まあ、なんかそういう存在だったんですよ私は。ルサルカさんに言わせれば、『虚無』って言うんですかね──実際、まともに会話が成立した第一号は水銀でしたし」
「──、」
……その状況、その環境は確かに、第三者が気付いたならば興味をひかれるものだろう。
だが所以がさっぱり不明だ。因果関係の謎が、すっぱり吹き飛んでいる。
「ですから、ベイ中尉を始め、誰かと話すことは、とても楽しいです。気にかけてもらえるのは、こんなに嬉しいことだったんですねぇ」
誰からも愛を受けたことがなかった娘。
愛などそもそも知らないから、寂しさも飢えにも鈍い。
こうして明るく振舞っているのは、単に、「誰かと関われること自体」に幸福の比率が大きすぎるからか。しかし──
「……じゃあ、なんだって全部を幻想視してんだよ」
そう、その矛盾が浮き彫りになる。
現実が幸福なら、そのまま浸ればいいものを。
何故、どうして、そんな満たされた世界を、「幻だ」と断じているのか──?
「──なんか、ね。これも生まれた時からの症状だったんですけど、私には、『私のいない世界の知識』があったのですよ」
「いない世界?」
「私にとっての現実。史実と言い換えてもいいんですかねえ。まあ、実際のところ、あちらとこちらがどういう関係かは私は正確に計れないんですが。だから、そう思うのは道理でしょう。“こちら”でも全く認識されないのなら、つまり、“あちら”こそが現実なのだと」
……知識だのどうのは、正直、理解の外だ。
だが誰からも認知されない人間が、「自分のいない世界」を知っていたとしたら。
その上で、“こちら”で誰かに認識されるようになったとしたら──
「────だから、
自己存在の曖昧化。
人は皆、「自分が生きている世界」しか知らないから、そんな精神はまず持ちえない。
だけど少女は違った。「自分がいない世界」を知っていた。そして誰にも認識されない生活を送っていた。やがて関わることができるようになった。であれば、一体どちらが彼女にとって、「現実の強度」が高いのかは────言うまでもない。
「……ややこしい奴だな……」
「あはは。すみません」
事情にしても複雑怪奇だ。
その感覚は、やはり、余人が理解できる域にない。
だが本質は掴めた。
つまり、レイシアが最も輝く、咲き誇るような時とは──現実を解し、本当の幸福を味わい、
……既に現状、満足しているとも言えなくもないが。
しかし──幻想を抱いている以上、そうとは言えないだろう。幻想をまとって、夢に干渉する。
消えたくない。生きていたい。夢を見ていたい。
「全ての幻想を抱くものでありたい」。
その恐怖から解放された時こそが──ヴィルヘルムも望む、至高の瞬間に違いない。
で、あれば。
望む「満足」を与えるために、とる手段はといえば一つくらい。
「……おまえ、俺が欲しいか」
──惚れさせること。愛させること。
愛を知らないのならば教えればいい。
飢えに鈍いのなら自覚させればいい。
まずはその一歩を刻まなければ、話は始まらない。
「……そう、かもですね。でも」
でも、と少女は目を伏せる。
少なくとも、恋をしているのは確実だ。後はそれを発展させるだけ。それだけの、話なのだが──
「──貴方が、それに応える必要性はありません」
「……は?」
それは。
ヴィルヘルムでも、聞いたことのない
思いつきすらしない返事。
意図することが、思惑が、さっぱり分からなくなる。
「何故だ」
故に問いかけた。──僅かな戦慄を覚えながら。
「恋をしただけでこんなに嬉しいんだから、それ以上っていうのは、罰が当たるでしょう?」
「──、」
「何も持たない私ではつり合いませんし。愛を押し売りする趣味もない。貴方は貴方のままでいる方が素晴らしい。──私が中尉を愛してしまったら、貴方、更生する羽目になりますよ?」
夢を見ているままでいいと、女は言う。
恋を以って立ち止まる。愛を以って変容させたくはないのだと懇願する。
──だが、それは。
「面白ぇ。させてみればいいじゃねえか」
「……はい?」
「要は俺を落とす自信がねえって話だろう。日和ってんじゃねえよ。俺を惚れさす度胸がねえから恋します、だあ? 萎えることほざいてんじゃねえ。それをどうするか分からねえからこそ、面白いんだろうが」
レイシアは、しばらく、その目をまんまるに見開いていた。
一本とられた、と顔に書いてあるような表情だ。
「……さすが。恋多き男は、言うことが違いますね……」
「おちょくってんのか。キスするぞ」
「わーっ!」
そこで従僕が飛び起きる。が、すぐにぐらっとフラついて、頭を押さえた。
……体調不良、なんて症状はまずありえない。今日の少女の異変の原因は、おそらく。
「てめえ、一体どんな異能を引いたんだよ」
──自身の幻想が病状となって蝕んでいる。これ以外にありえない。
「いや、その……なんか常時『活動』状態になってしまうものらしくて、ですねえ……体の方は、まあスペック足りてるんですが、コレ、精神に結構クる…………」
説明は曖昧なもの。それだけ説明が難しいのか、それともあまり意識したくはないのか。
ひとまず、安静にさせておくのが最善だろう。仕方がないので、財布を奪って彼はソファから立ち上がる。
「買い出し、とっとと行ってきてやるよ。できる事がねえなら寝てるんだな」
「ぇ……あ、ありがとう……ございます……」
従僕からの礼を、当然のように受けながらヴィルヘルムは屋敷を出ていく。
明日はトマトを使った料理を死ぬほど作らせよう、などと考えながら。
※
扉が閉まる。
行ってしまう。
行かないでと言いたかったけども、それはすべきでないことは、分かっていた。
「……、はあ」
視界に映るのは死の世界。
一秒後に崩壊し、壊れ、死ぬ結末を見せ続ける呪いのような魔眼。
……こりゃあ、こんなのを一生持ち続けるなんて、無理だわ。少なくとも私は無理だ。目を潰したとしても脳がある限り認識してしまう。かっこいい、なんて思っていた異能筆頭だけども、実際持つとなると地獄だぜこりゃ。
『──レイシア。いるかい?』
「なんかの妖怪?」
コンコン、とベイ中尉の不在を図ったように外からノックの音が。怖いよう。
起き上がって、扉を開けるとそこには予想通りルートヴィヒ。いつもなら、うんざり顔と共に出迎えるのだが──
「ハロー、待ってましたよ。随分と待たせてしまいましたね」
「……というと。もしや」
うん、と頷き返す。
「
体調不良などと言っていられない。今日こそ、大当たりの日だ。「空想具現化」が出るまで、待っていられない。そもそもこいつとの決着は、黄金錬成が始まる前までにつけなければいけないのだから。
……チャートも大詰め。
タイマーストップまでの
※
──ヴィルヘルムが帰宅した時、屋敷には何の気配も残っていなかった。
「……?」
従者のいない無人の空間は、時間でも停止したかのようにガラ空きの様相だ。
訝しみながらテーブルを見ると、そこには書き置きが一つ。
『少し出かけます』
必要最低限にもほどがある報告一枚。
なにがあったのか、どんな用なのか、どこへ行ったのか、一切合切が不明である。
「…………、」
そこで荷物を置いた彼は、とある情報を思い出していた。
以前、ベアトリスが来た時に言ってたことだ。「レイシアとルートヴィヒが市場で歩いていた」、という目撃情報。それはもう仲良さげだった、なんて余計な感想付きで。
「あいつ……」
瞬間、内心が平穏から遠ざかる。
……胸騒ぎがする。ここに来てようやく、彼は何かを見逃していたことに気が付いた。
ルートヴィヒについては、レイシア本人にさっさと聞き出そうと思っていた。だがこの数日、どうしてもできなかった。
──百年の恋も一瞬で冷めますよ。これからは気を付けてくださいね?
そんな事を訊けば、まるで嫉妬しているようではないか。
実際少女が何処でなにしてようが知ったことではない。ハイドリヒ卿? いいじゃねえか、尽力しろよ。所詮あいつは黒円卓の犬だしな。適度に遊ばせるのも飼い主の務めだろう。
──だが、黒円卓の一員でもねえ男と遊ぶってのはどうなんだ、オイ。
そいつは盟約違反なんじゃねえのか? 叛意と捉えられても仕方ねえだろうが?
「……クソがッ!」
怒りの衝動のまま夜へ飛び出していく。
ここまで来て横から掻っ攫われるなど、堪ったものではないのだから。
※
とりあえず気の赴くまま、ルートヴィヒが満足するまで付き合ってやることにした。
共に過ごす最後の時間だ。こっちを見るたび幸せそーに語る彼には、まあ、微々たる罪悪感がなくもなかったが、大半の本心はうんざり一色である。
いちいち言い回しの厨二濃度が高すぎるんだよ。
言い回しも水銀に近いし。甘々というか鬱々だったよ。暗いしさ。
現代の口説き文句ってやつを一から学び直してから出直せと言いたかった。
──だが。それでも水銀による、~マルグリットの愛を語る四十八時間~みたいなのに付き合わされてきたこっちからすれば、この程度のウザさ加減、どうということもないわ。
なので耐えた。気分はもはや獲物が動く瞬間を待つ狩人の気持ち。絶対的な、致命的な「隙」ができるまで、とにかく耐え続けた。
そしてその時は来た。
最後に寄ったのは教会。時刻は軽く深夜をまわっている。日が変わる前に、事は終わらせたかった。
「人はここで永遠の愛を誓うのだと聞いた。まさに、最後に二人で巡る場としてこれ以上に相応しいものはあるまい」
「……おう」
ドン引きすぎてロクな返事を言えやしねえ。
しかしそれを、やはり都合よく──こっちが照れたのだとでも──受け取ったのか、ルートヴィヒは祭壇の前まで歩いていく。
「嗚呼、我が光の伴侶よ……愛しの君とならば悠久無限の時間の彼方でも、我が冷たき深淵は祝福と共に、」
「いやぁスッゲェ細かい造りの内装だなー! 確かにこんな場所で式を挙げられるならそりゃあ人生絶頂だろうなぁー!!」
始まった厨二濃度1500%を誇る口説き文句を強制的に切り上げてしまった。
こんなの毎日聞いてられるかァ!! 平凡な男子高生にでも生まれ変わってからにしてくれよ!
「やはり、君も本心のところでは乗り気になってくれているのだね」
「ん?」
「だが、そう素直に頷けないというのが乙女の心。私と戦って、私が君より強いと証明されたなら伴侶として受け入れる──実に、分かりやすい、率直かつ明確な判定法だ。君自身はどこかで己を捻くれ者だと卑下しているようだが、そんなことはない。実直で即決、竹を割ったような気持ちのいい心根の持ち主だ。それが君という光の在り方。そこは、理解してほしい」
「……」
やばい。今、初めてこいつの言葉にキュンときたかもしれない。
偶には良いこと言うな。変態だけど。
「──そう、ありがとう。その褒め言葉は心に留めておくよ。よく見ているんだね」
「無論。初めて会った時から、君だけを見ていた。……だから、少し気になることがある。君がベイ中尉と呼ぶ白髪の男……彼とは、本当はどのような関係なのだ?」
「──、」
それに答えれば、彼にもはっきりと此方の目的が分かるだろう。
本当は、どういう考えでここにいるのかを。
「
はっきりと、言ってやった。
この程度の問答は想定内。むしろ、今ここで問われて良かったとさえ思う。
「──なるほど。そういうことだったか。では君は今、──本当に私を殺そうとしているのだね」
ルートヴィヒの瞳に、悲し気な色が浮かぶ。
それを私は、笑みを浮かべたまま見つめ返す。
「最初に、私があの男に刃を向けた時からか」
「ですねえ」
「それは申し訳なかった……と謝って済む問題ではないのだろうな。不覚だ、まさかあのような男に、君は命を捧げるほどの価値があると思っているのか?」
「価値とか、意味とか、そういうのはいいんですよ。気に入ったから守りたいと思う、尽くしたいと思う──これって、そんなに変な感情ですかね」
「……いいや。君らしいと思うよ、レイシア。だがまあ、感心はしないな。アレは君のためにはならない。どれほど尽くしたところで、返ってくるものは何もない。──最終的に、殺されるかもしれないぞ」
「それは仕方のないことかと。それに、愛しい者に殺される最期っていうのは、一人で死んでしまうよりは多少、上等なものだとは思いません?」
クッ、とルートヴィヒは笑って瞑目する。
静かな笑いは、やがて大笑へと変わっていく。
「ハハハハハハハハ──いや、すまない。嘲るつもりはないのだよ。だが確かに……そんな終わりか、愛する者の手にかかるか……もしもその二つの選択肢しかないのなら、私もそちらを選ぶかもしれないな」
「と、いうと。別にそんな結末は好きじゃないみたいですねえ」
「然り。私は光たる伴侶あってこそ、この生涯に意義を感じて逝きたい。添い遂げたい。だからお願いだ、レイシア。──どうか、私と戦うなんて言うのを止めてほしい。君では、私には勝てない。傷つけたくはないのだよ」
切実な懇願である。
そしてこれが、最後通牒でもあるのだろう。だから、
「いいえ。ごめんなさい
真名を言い当てたことに、彼はやや目を開いたがそれだけだ。まあ、私の目の前で水銀がそう呼んでいたし、不思議なことじゃあない。
「──何故」
「納得ができないから。というか、私を光として認識しているのが気に入らないというか。ええまあ、それだけです。ぶっちゃけ言えば? 好みのタイプじゃない、ってことですねえ」
その一言には若干メトシェラも傷ついたような顔になったが。
「そうか……だが、私は諦めるつもりはないよレイシア。このまま君に黙って殺されることも、君を殺すようなことも、私は嫌だ。認めない。私はただ、君を愛している。それさえ分かってくれれば、それでよい」
「──そりゃあ面白い発言だね。だったらお前、私を惚れさせるつもりとかあるの?」
「──、」
突然の口調の切り替わり。
突然、明後日の方向へと飛んだ問い。
そのダブルパンチを喰らったメトシェラは、やや面食らったようだったが……何も、答えることはできなかった。
「
「っ、それは──だが、」
「自己嫌悪が根幹にあんのは分かるよ? オタク、暗いし? だからってなぁ、愛しい女に向き合う勇気もないヘタレに、なんでこっちが合わせる必要があるんだよ?」
言っている間にも、徐々に距離を詰めていく。
完全に図星を突かれた今の奴は、うろたえながら、一歩、後退した。
「うん。私がお前をフる一番の理由はそれ。愛してるくせに対等に見ないから」
「ッ……!」
彼の告白は一方的なのだ。
ただ、愛しているから
此方の意思などお構いなし。恋をしたから恋し続ける、が可愛らしいほどの粘着性。
愛しているんだから愛し返せ、ですらなく。
ただ傍にいてほしい。ただ添い遂げてほしい。
「そこまで言うなら、愛する伴侶の手にかかって死ねメトシェラ。それで晴れて本懐叶うだろうよ」
「ッ、違う! それは私の望む終わりでは──!」
サクッ。
その胸に、ナイフが刺さる。突き刺した。
なんの変哲もない攻撃に過ぎない一撃。だがそれを、彼は驚愕の目で見つめている。
実際、これがただの攻撃だったなら、「闇」そのものである彼に通じる理はないが、
「──出典:直死の魔眼」
今の私には、死が視えていた。