1日目:欺瞞
・・・
──おじさんは魔法少女である。
ちょっと意味がわからないと思うが、文字通りなので他に言いようがないのだ。
おじさんには前世の記憶的なものがあって、前世では普通のおじさんとして生涯を全うしていた。
といっても結婚もせず趣味らしい趣味もなく、割と適当に生きてたのでちゃんと全うできてたかは少し疑問なのだけど。
まあでも普通に仕事をしてお金を稼いで旨い飯を食って、平均的に見ればそんなに悪い人生とは言えないんじゃないかなぁ。
死因も病死だったけどあんま苦しんでないし。
そんなこんなで死後の世界に旅立つかと思われたところ、気づいたら人生2周目みたいなのが始まっていたというわけ。
とはいえ最初は前世と大した違いもなかったので至って平和な青春ライフを送っていたのだけどね。
この世界に違和感を感じたのはおじさんが女子中学生になりたての時。なんかこの言葉の違和感のがすごいかもしれないが気にしない。
ともかく、全力で第二の人生を謳歌していた時、ふと頭に変な映像が浮かぶことがあったんだよね。
それはこれから先に起こりそうな出来事がダイジェストみたいに順不同で流れていく、といったようなもので。
そして実際に、その出来事は、現実に起こった。
まぁありきたりな表現をすれば未来視みたいなもんよ。
きっかけはあんまり覚えてないけどおじさんは気づいたら未来が見えるようになっていたのだ。
そんな、降って湧いたようなチート能力におじさんの中の少年の心が少しだけ興奮したものの、残念ながらおじさんはネタバレというものが世界で一番嫌いだったりする。
なのでこんなチートやっぱいらん……! 封印……! ってしたかったけどしばらくは能力の制御ができなかったので頑張って訓練したんだ。
その過程で色々わかったこととして、この力はいわゆる魔法的なもので、魔力という不思議パワーを使っているらしい。
少し説明が長くなったけど、そんなこんなでおじさんはいつの間にか魔法少女と呼べるような存在になっていたわけ。
といっても魔法少女によくある変身みたいなものも特にないので見た目は何も変わらないし、そもそも力を使わなきゃならない機会なんてほとんどなかったから、結局のところ表面上は生活は何も変わらなかったんだよね。
あと訓練してたらなんか手からビームとかも出せるようになったけど、こんなん日常のどこで使うんだよと。
せっかくだからちょっとだけおじさんが使える魔法についても紹介しておこう。
おじさんは『未来』属性の魔法少女だ。こう名乗るとかっこよかろ?
特技は手からビーム。
それと未来を見ること。
そして、
よくわからない? そうだなぁ……。
例えば、空き缶を適当にゴミ箱へ投げるとする。ゴミ箱は2つ投入口がある蓋がついたタイプのアレだ。
普通に考えればまず入らないだろう。だけど、入る可能性はゼロではない。
可能性が存在するなら入る未来は必ず存在する。そしておじさんはその未来を観測して選択できる。
そうすると、あら不思議。傍目には百発百中で入ってるように見えるんだな。
まぁ実際は裏で大量に入らない未来を見せられてるからけっこう疲れるのだけども。
もっと簡単に言えばリアルTASみたいなことができる。未来視はあくまでそのための手段にすぎないってことだ。
というか能力が万能すぎて草も生えんのよ。文字通り、不可能なこと以外はなんでもできてしまう。
きょうび無双物の主人公でもこんなチートもってないやろと。こんなん日常生活のどこで必要になるんやと。
いや、日常で悪用しようと思えばいくらでもできるけど、そんななんでも思い通りになるようなズルして人生楽しいか? っていう話。
理由は他にもあるけど、とにかくおじさんは第二の人生をそんな虚しいものにしたくなかったので、こんなチートは封印して平和に生きていたんだよね。
……でもね。
こんなおじさんみたいな変な存在がいる時点でこの世界が単なる平和な世界のわけなかったんだよね。
他にもおじさんみたいな、でもおじさんとは決定的に違う、
本当の青春を送るべき年若い子供達が、血を流し、命を落とし、
平和の裏で何も知らない人々のために、世界を守るため戦っている。
そんな現実を知ってしまったら、おじさん大人だから見て見ぬふりはできないんだよ。
おじさんが何もしないで日々を過ごす間に、
そんなの、受け入れられないでしょ。だから、さ。
おじさんが魔法少女たちのハッピーエンドを目指すRTA、はぁじまぁるよー!
はい、よーいスタート。
とゆうわけでですね。ひと気のない真夜中の砂浜にやってきました。
唐突に始まったけど、とりあえず魔法少女が何と戦ってるかというとまぁ、魔物です。ありきたりだね。
見た目はなんか禍々しくて、くそでかい動物っぽいなやつが多い。例えるならミノタウルスとかグリフォンとかみたいな?
大体そんな感じだけど、たまにキメラみたいな形容し難い変なやつもいる。あと触手とか。触手とか。
こいつらが魔界的な異世界から侵略しに来ているらしいよ。しらんけど。
別に悪魔たちがどんな姿形でどういう目的で攻めてきてるのかとかはぶっちゃけ興味ないしどうでもいい。
なので無差別に殺戮を行いまーす。(無慈悲)
ちなみになんでこんな場所に来たかっていうと、ここに魔物が現れる未来を見たからです。
未来が見える範囲って割と融通が利いてて、基本的にはおじさんの近くの未来が見えるんだけど意識すれば違う場所の未来も見れたりする。
いうなればあれだ、地図アプリで現在地から画面を動かして、このエリアを検索ってするみたいな感じ。
未来を見ている間は現実時間は経過しないので、頑張ればこうやって予め魔物が出現するポイントがわかるわけですねー。
そんで魔物がどんなふうに魔界から現れるかというと、
唐突に目の前の空間が一瞬、歪んだかと思うと、
ずるり、と、巨大で、濡れた毛と触手で覆われたグロテスクな何かが産み落とされ、
それは、湿った地響きを立てながら、砂浜に着地した。
……ちょうどこんな感じですね。前もって見てきたのでタイミングはバッチリ。
どうでもいいけど魔物はこの世界に来た瞬間だけ何故か湿ってたりする。気持ち悪いね。
多分、魔界とこの世界と環境が違うからこんなふうになるんだろうね。
なんだろう、近いイメージとしては出産とか産卵みたいな?
向こうの世界の魔力が濃すぎて、結露みたいに液状化して羊水っぽい感じになってるんだね。
どっちにしろ気持ち悪いね。
さて、目の前におわすは3メートル級のけむくじゃらな触手の化け物。
対しておじさんは1メートル45センチの美少女。
薄い本なら確実にこれから酷い目に遭ってしまうのだろうけど、残念。
これは別におじさん好みのエロシチュでもなければ、そもそも戦いですらないのだ。
何ならもう終了してる。
掌から放たれた強大な魔力の光。巨体を貫く一直線の曳光。魔物の分厚い肉体を、急所である核もろとも正確に貫いていて……。
そして、砂浜に大きな爆発音が轟く。
やったぜ。
魔物は魔力核を中心として魔力で肉付けされてるって感じの存在なので、核をぶち抜けば爆散して即死する。
あとおじさんの魔力ビーム明らかに威力おかしくね? って話だけど、これは意図的に無理やり魔力を注ぎ込んで暴走させてるからである。
そして、普通ならそんな全力投球暴投じみた攻撃がピンポイントで当たるはずもないのだけど、おじさんはこれを
魔物は大体出てきた瞬間は棒立ちなので良い的でしかないし、ぶっちゃけヌルゲーですね!
問題らしい問題といえば魔力効率がうんち極まりないってことだけなのだけど、魔力変換をフル回転させりゃ一週間くらいは全力で戦えるので問題ナッシング。
そんなわけでこのRTAは一週間チャートで組んでます。
少し具体的にチャート解説をすると、まず魔物が現れる特異点ってのがあって、それが徒歩くらいのスピードで世界中を回ってる。
500年前くらいに現れたそれは世界に10個あり、現在は日本に8個ほど存在しているというわけなんだけど……いや、この国に固まり過ぎだろ。
これは多分、特異点が自力で動き回ってるわけじゃないから長い時間をかけてどれも同じような動きになってて勝手に集まってしまってるんだろな。海に浮かぶゴミみたいな感じで。実際ゴミみたいなもんだし。
で、その特異点が魔物を生み出してる、ていうか向こうから送り込んできてるのだけども、この魔物を送るっていうのが逐次補充な感じなのね。
つまり、特異点から出てきた魔物を全部倒すと追加してくるって感じ。インターバルは数十秒から約一日ってところ。
この追加プロセスは特異点間で共通らしく、同じ特異点からおかわり!が来ることもあれば、違う特異点からこんにちわ!したりもする。
インターバルの時間差は次の出現ポイントとなる特異点との物理的な距離に比例しているみたいで、すぐ近くであればすぐ出てくるのだけどもそうでなければ結構時間がかかる。
この、出現場所がころころ変わる特性のせいであっちいったりこっちいったりの追いかけっこが発生して、魔法少女たちと魔物の戦いがすごく長引いてるってわけなのである。
ちなみにこのプロセスに魔物の意思は介在しないようで、そのためか出現直後の魔物は隙だらけだったりするわけだ。
それと、特異点は魔物を生み出す前後では移動しない。魔物が暴れ出してからようやくその場を後にするっていう感じで動き出す。
まとめると、特異点は魔物を生み出してるときは動かない。次の出現特異点はランダム。魔物を倒すと勝手に補充される。大事なのは、この3点だ。
さて。さて。ここまでの話で要するに何が言いたいかというと。
出てくる魔物をリスキルし続けられたら、こいつら全滅するんじゃね?
ということ。
出てくるの違う個体だからリスポーンじゃなくてリポップだろっていうツッコミは受け付けない。
あとリスキルって言った方が個人的に分かりやすいのでこっちで通します。
実は魔物たちの数ってのはそれほど多くない。それどころか意外な話だけど、なんと絶滅の危機に瀕していたりするのだ。
魔物の中には意思疎通ができる個体もいたりして、そいつが魔法少女たちに色々語る、みたいな未来もあったりしたので主にその知識なのだけど。
ちなみに余談で関係ないけど、その未来ではこいつ味方ポジションみたいな面して魔法少女と共闘してたりする。おじさんのRTAチャートでは関係なく経験値になってもらうけどね。慈悲はない。
さておきそいつが言うには、どうやら魔界の環境が戦争やら何やらで荒廃しきってしまい、生き残りをかけた新天地としてこの世界を開拓しにやってきているというわけらしい。
でも、この世界には魔力がない。魔界とこの世界では魔力濃度に差がありすぎて、下手に繋げると魔力差で世界がぶっ壊れてしまう。なのでまずはちょっとずつ世界に魔力を満たしていくしかない。
その方法として、魔力を直接送り込むのはそれが呼び水みたくなって勢い余る可能性が高く危ない。なので魔力を蓄えている魔物が現地に行って魔力を使ってばら撒いて、使い切ったら帰ってくるというピストン輸送がコスパ的に最適と考えたらしいけど。
しかし基本的に魔物どもは血気盛んなアホしかいないので、数少ない頭かしこな魔王的存在がいくら働きかけてもアホどもは上手く動いてくれない。
だったらもういっそのこと、強制的にこのアホどもを送り込む仕組みを作ってやろう!
魔力切れで強制帰還する術式も組んでとりあえず現地に送っとけば魔力を撒き散らすことくらいはやってくれるやろ!
魔力さえ向こうに満ちてしまえば環境の魔力差を考える必要もなくなるから、そしたら大型のゲートを作って一気に乗り込める!
と、魔王様(仮)が頑張って特異点の魔術を作ったはいいものの、第何次かわからん魔界での戦争が起きて開発者の魔王様(仮)はお亡くなりに。
その結果、よくわかってないアホを延々と送り続けるだけの特異点だけが残されて、この世界に災いをもたらし続けてるわけだ。
いやもうね。アボカドバナナかと。これ傍迷惑にも程があるでしょ。勝手に滅びてろよ……。
こんなんこいつらどう考えても滅びて当然でしかないだろ……。
そんなわけでほっといても勝手に滅びそうだけど、それまでにこっちが被る被害がデカすぎるのでおじさんが駆逐してあげようって話。
とりあえずはそういうこと。
ところで、このモグラ叩き一週間チャートには重大な欠点があったりする。
魔物をしばいたあと次の魔物が遠くの特異点から出現したら物理的に時間が足りなくなるという問題だ。
まあおじさんにはこれも関係ない解決済みの話なんだけどね。
……ほら、
さっきは1体だったけど今回は10体。大型犬を二回りくらい大きくした感じのやつら。
魔物の出現は1回あたり平均5体くらいで、上手くやれば全滅させるのに平均30秒くらい。
同じ特異点だった場合、次が出てくるのが平均30秒くらい。
じゃあ、1分あたり平均5体の討伐を一週間続けるとすれば?
約5万体。
魔物の総数は4万体程度しかいないみたいなので余裕でお釣りがくるね。
一日平均1100〜1200ウェーブくらいで済むので時間的には楽勝だ。
途中でわざと少し遠めの特異点をターゲットにして長めのインターバルを作り、そこまでの移動中に睡眠を取る余裕すらある。
まあおじさんもいくらチートとはいえ生身なので一週間ぶっ通しでやり続けるのは流石に無理があるし、作業と休憩は計画的にしなければ。
というか一箇所で狩り続けてると他の魔法少女が勘付いて寄ってくるのでどっちにせよ移動はしないといけないってのもあるんだけどさ。
魔力を持たない人は魔力関連の記憶を保持できない。なので普通の人目を気にする必要はないけど魔法少女は別。
目撃されれば確実に厄介なことになるし、こんな残虐ファイトな殺戮行為を子供に見せるわけにもいかない。
そもそも子供たちのハッピーエンドを目指してるのにその子供たちを戦わせてたら本末転倒ってのもある。
だからバレないように戦う。横殴りは許されざるよ。全部おじさんの経験値だ。
おじさんはソロプレイヤーだからパーティ申請も受け付けません。
さぁて。気を取り直して、次は直立するくそでかトカゲ5体だ。
おら! ビームくらえ!
……よし、これで3ウェーブ目終了。
ここでの予定は220ウェーブで小休止だからまだまだ先は長いけど、がんばるぞ!
・・・
初投稿です。性癖ゲージが溜まったのでぶっぱします。
ハッピーエンドを目指してますので対戦よろしくおねがいします。