・・・
本当は、もっと簡単に見つかると思っていた。
だってこの子は、明らかに
『察知』の魔法はそれを違和感として捉えるから、その方が逆に見つけやすいはず。
それなのに、掴めたのは遠い手がかりばかり。
ばら撒かれた情報の中から、作為的なもの。偶然のもの。
嘘と、本当のこと。それを選り分けていって探す日々。
不謹慎かもしれないけど、ちょっと面白いとも思っちゃったんだ。
突然の大本命の情報の痕跡に、少し興奮したってのもあるかもしれない。
……私が納得できない未来が待ってるって、嫌な予感は最初からしていたのに。
そんなバカなことを考えてた私のことをぶん殴ってしまいたい。
・・・
私は昔から勘が良かった。
気づいてはいけないことにもよく気づいてしまい、疎まれることもあった。
そのせいで危ない目に遭うこともあった。
それでも、私は追及することはやめられない。
それが、私にも変えられない私の性分だから。
年を重ねて少しずつ成長して、人のことを気にするのは、表向きやめられるようになった。
気になっても、それが重大なことでなければ気になってないふりをする。そう振る舞えるようになった。
流石に指摘した方が良さそうなことなら、それとなく指摘する。それ以外はそれとなく気に留める程度。
こんなの、みんな多少やってる当たり前のことだけど。
それで大体のことは円滑に進むようになる。
まぁ思わず、うずうずはするんだけどね。うずうずというかむずむずというか。
それも頑張って上手く誤魔化せるようになったと思う。多分隠せてる。多分。
そしてその代わりの反動で、個人的なこと以外の謎なこととか不思議なこととかを徹底的に追求したくなった。
人が死んだり行方不明になったりした災害。
そんなありきたりなニュースにある日、私は違和感を覚えた。
気になって現場を巡ってみるけど、何もない。ないはずなのに、なんだか納得できない。
その追求の果てに得たのが、魔法の覚醒。
魔物と特異点の発見。生まれて初めて死にかける経験。
そして、今はもう無くてはならない、新しい友達。
あの日、魔物から私を助けてくれた灯ちゃんはすごく不安定な子だった。
何も気にしてなさそうなゆるい雰囲気の裏で、いろんなことをずっと気にしてる。
責任感が強くて、自分のことが大嫌い。いつも自分の力不足を感じてる。
何かに執着しがちで、そのためには自分を顧みない。
最初はただ、この子を元気づけてあげなくちゃと考えて一緒にいただけだった。
まあ、最初の方はおせっかい扱いで邪険にされてたんだけどね。
でも私はしつこいので、引き時を見極めながらも押し引きぐいぐい関わって。
いつの間にか、気づいたら私の大事な、大事な友達になっていた。
弱くて柔らかいけど、私にはない、繊細さと静かな情熱を持っていて。
無鉄砲な私が振り回してるうちに元気になれるような、強い子だった。
……
一目見た瞬間は、灯ちゃんに似てるかもと思った。
でも、あまりにも歪すぎる。異常すぎる。
このおかしさの原因は何だろう。仮面が分厚すぎて、まだわからない。
これは、触れても大丈夫なのだろうか。
なんだか、違和感で硬く塗り固められて不自然に安定してて。
なのに、迂闊に触ってしまったら、すぐに壊れてしまいそうな予感もしてて。
「萌ちゃん」
近づこうとしたら、ぐいっと引き寄せられた。
なんだか灯ちゃんは、さっきからこの子のことをすごく警戒している。
今みたいに、私を自分より前に立たせないようにしているんだけど。
「
「ッ……!」
もうずっと前から確信してたけど、この子は灯ちゃんのトラウマの災害の、例の子だ。
この子と対峙している時点で、灯ちゃんはまた不安定になっている。
ちょっとまずい状況かもしれない……やっぱり私一人の方が良かったかな。
でも灯ちゃんセンサーがないとこれだけあっさりとは会えなかっただろうし。
うーん……もどかしい。まぁともかくとして。
私はほとんど戦えないから何かあったら危ないかもだけど、
「やめた方がいいよ。君程度じゃ
「馬鹿にして……!」
「灯ちゃん」
熱くなってきた灯ちゃんを、今度は私がぎゅっと引き寄せる。
本当は震えている。触れなくたって、怖がっているのがわかる。
手を優しく握り、背中に手を置き、それを少しずつ取り除いていく。
ほら、落ち着いて。いつものゆるふわガールに戻って。
「……いいね!」
なんか満足げな表情で頷かれた。何でそんないい顔してんの……?
いや、そんな軽いリアクションするくらいならその化け物みたいな魔力の圧をどうにかしてよね……。
そのせいで灯ちゃん、しょぼん……って一歩引いた気持ちだったとこから、一気に臨戦態勢に入っちゃったんだから。
いやまぁ、私も実はずっと警戒しているってのも、一つの原因ではあるんだろうけどね。
警戒してるってのはこの子に、ではなくて。
この子の後ろにある、
この子はずっと一人で特異点に張り付いて魔物を倒していたと思われる、私たちよりずっとずっと強い魔法少女。
それでも身体は普通の女の子なのだから、いくら身体強化してても一撃でも喰らえばタダじゃ済まない。
そんな近く、背後から急に魔物が現れたら、いくらなんでも危ないんじゃないか。
とにかく、そう声をかけようと、
「
……あれ、私以外に分からないはずの特異点に気付いてる?
ああいや、これまでのことを考えたらおかしいことでもないかな。そういう効果の魔法の可能性もある。
でも、もしそうだとしたら、なんでそんな危ないとこに立ってるんだろう。
あれかな。スリルというか危ないとこに立ちたがるお年頃なのかな?
私の『察知』は、ちげーよ馬鹿って言ってるけど。まぁそりゃ違うか。
でも、いつ魔物が現れてもいいように、注視する。そしてその時はすぐに動く。
この子が危なくなったら、灯ちゃんに対処してもらうつもりだ。
……そうだよ! 戦いはヒャクパー灯ちゃん頼りだよ!
いいんだって、それ以外のことで私役に立ってるから、たぶん!
えっと、役に……立ってる……よね?
……おっけー大丈夫、役に立ってる! うん!
本当は、この子を見つけることが出来たら協会に連絡して増援を呼ぶつもりだった。
この子の近くには絶対に特異点があるって確信があったから。
万一戦闘になったら、私が危ないし。特に私だけが。……なんか自分で言っててしょんぼりするね。
でも。
そのせいでこの場にいるのは、私たち二人とこの子だけだ。
出発した直後に使えなくなったから灯ちゃんがすごく憤ってたけど、この機を逃すわけにもいかない。
勘だけど、多分このタイミングを見過ごしたら、二度と会えない。そう感じたから。
いや、というか最初から最後まで指示を仰ぐつもりだったから割と行き当たりばったりで会っちゃったけど……。
このあとどうしよう……。
っ……!?
「灯ちゃん……!?」
「だから大丈夫だって」
特異点が開く!って思った、その時。
この子は、振り向きもせず肩越しに特異点を指差して。
レーザーポインターのような一瞬の光が、出現した瞬間の魔物たちを正確に穿っていた。
大きなタコみたいな魔物たちが現れてから、一瞬での出来事。まさしく、刹那。
何匹も、何匹も、何もできないまま地面に落ちて、破裂する。
今、魔物が、無音で、一瞬で殺された。
灯ちゃんも目をまん丸くしている。
すごく可愛い表情だけど、それは今は置いといて。
……いま明らかに、出現前に攻撃をしてたよね。
何の魔法だろう。出現が予め分かっていた……?
私の『察知』みたいな……いや、むしろ
干渉系だと思ってたけど、内燃系なのかな……?
でもそれはなんか少し違う気がする。なんなんだろう。
とりあえずこの時点で、この子の危険が無いことは確信した。
そしてこの子が危険じゃないことも既に確信している。だから、この場はある意味、安全圏だ。
この子はきっと、どんな魔物が出てきても自分のことはもちろん、私たちのことだって楽々守ってみせるだろう。
安心していい気がする。
だけど……。
「とりあえず何個か聞いていい?」
「どうぞどうぞ」
「その魔法って、予知?」
「うーん、サンカクかな」
ちょっと惜しいみたい。……どうアプローチしていこうか。
単純に好奇心が湧いてきたってのもあるんだけど。
たぶん、この子にはかなり強引にいかなきゃ通用しないのかもしれない。
「君は、私たちの味方?」
「敵ではないね。はっきり味方とも言えないけど」
「君のことはなんて呼べばいい?」
「おじさんでいいよ。私は魔法少女おじさんだからね」
「魔物のこと、どう思ってる?」
「異世界のゴミ」
「協会の彩芽さんって、知ってる?」
「
「君はなんのためここに?」
「
大体わかった。
とにかく、
「灯ちゃん」
「……なぁに」
「私も頑張るから、頑張って割り込んで」
「無茶いうなぁ……
「それはダメ、と言いたいけど無茶しない範囲でなら。私が見てるから、今回は特別」
「わかった、頑張ってみる」
ぶわっと、周囲の空気が熱気を帯びる。彼女の熱が伝播する。
「……今っ!」
「遅いよー」
私が察して、灯ちゃんの熱が襲う、そのもっと前の段階。
出現が始まった瞬間、魔力のレーザーが巨大なカニ3体を串刺しにしていた。
早い。早すぎる。
というかいや、ちょっとこれ、流石にレベル差があり過ぎでしょ……!
でも……、挑まなきゃいけない。止めなきゃいけない。
いくら私の勘が
この子を助けなきゃ。
そう思ってしまったんだ。
助ける? こんなにも強い魔法少女を? 何から?
多分、
保護される前後の様子、行方不明になってからこれまでの痕跡、今の彼女の振る舞い。
その中に感じた違和感。予感。直感。
私は、残酷な未来を察知し、確信していた。
この子は、
その犠牲を対価にして、
何がこの子をそこまで駆り立てているかまではわからない。
私の考えはいつだって、結論からの遡上だ。
直感に基づく結論から、後付けで理由を考えていくことが多い。
だけども私は、私の直感を100%信じている。
この子は死ぬ。それか、
間違いない。でも、そんなのは絶対に間違っている。
この子を支配しているのは、きっと責任感と罪悪感、そして自己嫌悪。
灯ちゃんの比ではない、極限まで煮詰められた地獄のような闇。
どれだけの絶望を味わえば、こんなことになるのか。
私には何もまだ分からない。想像するしかない。
これほどの力がある子の、絶望の源とは何なのか。
「大事な人……
ほんの一瞬だけ、仮面の隙間が見えた。
これでほとんどのことが繋がってきたと思う。
あとは……、
「やめなよ、無駄だから」
壊してしまわないように、最新の注意を払いながら、この子の感情を引き出す。
この子は表面上、感情豊かに振る舞って見せているけど、その実は無感情で機械的だ。
感情は、生きるエネルギーだから。まずはそれを取り戻さなきゃいけない。
私たちでは、到底この子に叶わないとは思う。
それでもこの子に、
諦めさせてはいけない。諦めさせないことを、諦めてはいけない。
「だからやめなって」
「やめないよ。私は君を諦めない」
「……ふーん」
見た目はさっきと変わらないまま。でも雰囲気が少し変わったように思える。
私のやってることが上手くいっているのかは、わからない。
「真実はそれ自体は醜いが、それを追い求めるものにとっては常に好奇心をそそり美しいもの、だったっけ?」
一瞬でとんでもない極光が迸り。
途轍もなく大き過ぎるクジラのようなものを、生み出そうとしていた特異点ごと飲み込む。
あまりにも作業じみた、最適化されすぎている戦い。この子はこれをずっと繰り返してきたんだ。
「私は君の努力が実を結ばないことを、
「私も薄々それは、
「では何故?」
「諦めたくないから」
君は知らないかもしれないけど、
「……そっか。いいね、嫌いじゃないよこういうの」
暴力的な魔力の威圧感が、より一層高まる。
「これは正真正銘、君たちの最後の戦いになる」
少女は翼のように両手を広げる。
「いうなれば私は君たちのラスボスってとこかな」
まるで役者のように大仰に私たちを見据えて。
「いいよ、こいよ」
少女の背後上空で、姿がほとんど見えないうちに魔物が爆散する。
「私は『未来』の魔法少女」
鈍く光る、降り注ぐ魔力残滓の中。
「君たちの全力で、私が決めた『未来』を否定してみせろ」
悲しい小さな少女が、不敵に笑って立ちはだかった。
「……いくよ!」
・・・
いや、行くのは灯ちゃんなのだけど。
そんな冗談抜きに、私にできることはそんなにない。
私ができるのは魔物の出現を察知すること。
それ以外には、この子とお話することしかできない。
「察してるかもしれないけど、この魔物の連続出現が終わったら、世界にもう魔物は現れない」
灯ちゃんは頑張っている。私も頑張って最速で察知している。
だけど間に合わない。
この、数十メートルの範囲に出てくる、魔物の出現全てに先回りされてしまう。
「だから別に、今更君たちが頑張る必要はないんだ」
握った灯ちゃんの手がまた少し冷たくなる。
大丈夫。私が見極めてるから、コアブレイクなんか絶対させない。だけど。
それでは到底足りない……どころの話ではない。
灯ちゃんには悪いけど、
「そして、今後も頑張る必要はない」
「だからって、何もしない理由にはならない!」
どうすればいい……どうすれば……!?
「これならっ!!」
「灯ちゃ!?」
「それは行き過ぎだ。しばらく寝てるといいよ」
正確に、的確に、手加減された魔力弾が灯ちゃんを地面に叩き伏せた。
……いま、灯ちゃんは切り札を使うために、使いすぎかけた。
遠隔焼失。普段使う熱波とは違って、離れた相手の熱を直接急上昇させて一瞬で燃やしきる、負担の大きい技。
たしかに、これなら割り込みにも間に合うかもしれない。なのだけど。
まだコアブレイクには至らないものの、相当な無理には違いなかった。
「子供に手をあげるのは心が痛むけど、失わせるわけにはいかないからね」
私も思わず灯ちゃんを止めかけてしまった。
まだ大丈夫だと直感は言ってるのに。思わず。
「大切なんでしょ。
……。
「君の大切な人は……」
「
もう、全て確信した。とっくにしてしまっている。
まだ、諦めたくない。なのに。
いや、本当はわかっていた。
私の直感は、さっきから
下手したら、
私たちがやってることだって、本当は何の意味もない。わかってる。
ただ、私が納得できない結末に、駄々をこねて邪魔しただけ。
私がやったことは、灯ちゃんに無理をさせただけだった。
ほんと、私ってバカだ。
全身の力が、抜けてしまった。
魔物はあれからもう、数百体は倒されている。
あと少しで、終わってしまう予感がしている。
私は、間に合わなかったんだ。
完膚なきまでに、私のエゴは、この子のエゴに負けてしまった。
一矢たりとも、報いることができなかった。
「……このあと、どうなるの?」
「
「……」
「魔物が全て消えたら、私も消える。魔法も消えて、君たちは日常に帰れる」
私たちは日常に帰って、この女の子を犠牲を見なかったことにできるのか。
そんなのできない。そんなのは嫌だ。嫌なのに。
「消える……」
「死ぬわけじゃないよ。世界の誰からも、忘れられて視えなくなるだけ」
なにそれ。そんなの、ある意味、死ぬよりも地獄じゃないのか。
「気にすることはないよ。安心して。少しの間は覚えてるかもだけど、君たちもいずれ忘れる」
「そんなのって……」
「これは清算。遅くなっちゃったけど、私は力の責任を果たしただけだから」
力には責任なんてない。そう言いたかった。
でもこの子には、決してその一言は救いにならない。
きっと、そのせいでこの子は全て失ったのだから。
彼女がそうだと思い込んでるだけだとしても。
「……君の魔法ってさ。『未来』を選ぶ魔法だよね」
「お、流石だね。そうだよ」
「君の未来って……」
「それを今から取り返すのさ」
きっと、その未来の中にこの子はいない。
わかってしまう。わかりたくもないのに。
「長く苦しい戦いだった。やっと終わるんだ」
見たこともないような、形容し難い凶悪な見た目の巨大な魔物が、現れた瞬間に光って消えた。
これで、本当に、終わってしまう……?
「君、自身の……未来はっ……!!」
「だから、それはもういいんだって」
そして、魔物が、現れなくなった。
終わったんだ。終わってしまった。
長かった私たちの戦いも。
これからのこの子の未来も。
……いや、未来は、まだ終わっていない。
私は、この子の未来を見てみたいと思ってしまった。
この子が生きて、幸せになる姿を。
できることなら、近くで。
……許される、かな。
「……あの、さ。一つだけお願い、いいかな」
「なんだい? まだあとちょっと時間あるから聞くよ?」
「厚かましいと思う。押しつけがましいとはわかってる。怒らせるかもしれない」
「なになに。おじさんいま気分いいから、大体のことなら叶えてあげるけど」
「私と……友達にならない?」
「────……」
「私は、君の大切な人の代わりにはなれない。でも、君の隣にいることはできる」
「……」
「一緒にお話をして、一緒に遊んで、一緒に泣いたり、悲しんだり、分かち合うことはできる」
「……」
「だからさ、これからも生きて、未来を作ろうよ」
「……」
「今は気絶しちゃってるけど、灯ちゃんだってきっと友達になってくれる」
「……」
「私は……君と友達になりたいと思うんだ」
わかってる。きっとダメだって、感じてる。
やっぱり……ダメ……なのかな。
「うん、私も君たちのことは嫌いじゃない」
……。
「いい未来だと思うよ。そんな未来も悪くない」
え……?
「────ばいばい。もっと早く会いたかったね」
「ぁ」
・・・
もしも本当に、世界に意思なんてものがあるのだとしたら。
多分、魔物という異世界からの異物を何とかしたくて、『私』を生み出したのだろう。
終わったよ。どうだっただろう。満足しただろうか。
これが私の辿り着いた未来。大人の『私』が視た最良の未来。
そもそもの世界の目的を考えると、過去改変なんか別に必要なかった。
魔物を殲滅した時点で目的は果たしている。
だからこれは単なるわがままだ。
無理を通すためにリスクを承知で道理を壊した。
世界は望む通りに変わってくれたように思う。
認めてくれたのだろうか。
魔物はいなくなり、魔物の被害は消え去った。
残った影響も、いずれ元に戻る。魔物が奪ったものも、全部返ってくる。
動かない臆病な『私』を動かすための罰は、とても辛かったけど。ちゃんとやり遂げられたんだ。
いっぱい頑張ったのだから、これくらいのこと、どうか許してほしいね。
この過去改変は厳密には過去が変わっているわけではない。
世界の現在を誤認させて、取り上げられたものを返してもらってるだけだ。
過去自体が本当に変わっているわけではないのだから。
だから、改変後の未来には、どの『私』も存在しない。
なんにせよ、異世界の異物を取り除くために『私』という存在が必要なのだとしたら。
そういうことなのかもしれない。
でも、いいんだ。
最悪のバッドエンドと比べたら、望外のハッピーエンド。
それまでにもう、身に有り余るほどの幸せを貰っていたんだ。
だから頑張ってそれを返した。それだけのお話。
魔法少女たちだって、これで普通の女の子になれる。
みんながこれから幸せになれるかどうかはわからない。
けど、生きててさえくれたら、きっと何とかなる。
だってみんなは、本当にすごい子たちなんだから。
そんなすごいみんなを、ようやく助けることができたんだ。
少年……。
私もこれで、やっと
・・・
「……探そう。いなくなっただけなら、どこかにいる。必ず見つけてみせるから」
始まって、終わり、失って、得たもの。
次回『黎明』
少女の新たな未来に、どうかありったけの祝福を。
(魔法少女おじさんの未来はこれでお終いです。ご覧いただきありがとうございます)