僕が最悪のメサイアになるまでの物語   作:カピバラバラ

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オムレツ

 

 

雄英高校試験同時刻。

 

 

 

「お邪魔するよ〜」

 

 

「……は?」

 

 

薄暗いBARに入店する。

 

 

そこに揃っているのは皆揃いも揃って不気味な見た目をした者ばかり。

 

 

全身タイツに全身手を引っつけた人間、途轍も無い火傷を負っているものも入れば、オカマも目が血走った女の子も、黒い霧も居る。

 

 

「ん〜…ビンゴ、本当にこの世界は最高だな、君たちみたいな主役がゴロゴロと転がっている」

 

 

「テメェ…誰だ…?」

 

 

「自論だけどね、主役ばかりで陳腐になる物語なんてものは無いんだよ、どうしてか分かる?石ころの様にごまんと散乱している『主役』が、どうして『石ころ』にならないのか」

 

 

「訳分かんねぇ事言いやがって、お前ら…殺れ」

 

 

「ああ」

 

 

青い業火が侵入者を包み込み、骨すら残さず灰にしていく。

 

 

だがその炎による苦しみの声も、痛みの声も聞こえてこない。

 

 

 

「それはね、君たちの主役は、『君たち自身』だからなんだよ、どんな舞台に上がって、どんな運命の糸に繋がろうとも、君たち自身がその意義を担保している」

 

 

「…は?」

 

 

…燃え盛る炎から、焼け落ちた侵入者とは別に、全く同じ見た目の青い肌を持つ男が出てきたのだ。

 

 

有り得ない光景、だがこの現代は個性飽和時代。それに呆ける時間を切り捨てて、5本指でその微妙に腹が立つ眼鏡と共に肉体を崩壊させんと死柄木が手を伸ばした。

 

 

ーーだが。

 

 

「でもそれじゃぁ満足出来ない、舞台に上がった主役が、見てもらって…可哀想だとか、哀れだとか、そんな解釈を当てはめられる……自分の人生、それを何一つ作者の意図と違わずに解釈する方法、知ってる?」

 

 

()()()()()()話している。

 

 

 

「自分が、自分の人生の視聴者になる事さ……まぁさっきと同じ事だね」

 

 

「お前、マジでなんなんだよ」

 

 

「つまり何がいいたいかっていうとね……僕もヴィラン連合、入れてくれないかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界には、救世主が居た。

 

 

 

絶対的な正義、運命の帰結、完全完璧な舞台装置。

 

 

 

「オー…ールマイト、彼はこの世界で最も完璧な救世主さ」

 

 

「彼と相対すればドラマは無い、待っているのは悪役の敗北、完全無欠の正義のヒーロー」

 

 

主役を脱ぎ捨てて『白い部屋』そのものになった救世主だ。

 

 

「正義と悪、どっちが先に産まれたと思う?正義が存在するから悪が存在するのか、悪が産まれたから正義も産まれたのか」

 

 

「………」

 

 

「……あ〜えっと、君、名前なんだっけ…ヴィラン連合のリーダーに名前ってある?それとも無し?ヴィランって読んだ方がいい?」

 

 

「…死柄木だ」

 

 

「あぁそう死柄木くん、どっちだと思う?」

 

 

「…………」

 

 

「あぁごめんね?少し問題が難しかったかもしれない、質問を変えよう」

 

 

 

 

「『卵が先か、ニワトリが先か』って話あるでしょ」

 

 

 

 

「君は、その答えを知ってる?」

 

 

 

「……っ」

 

 

顔に着けた手の隙間から見えてしまった。

 

 

バツの形をとったサングラスの奥にあるその『目』と、合ってしまう。

 

 

 

 

「オムレツさ、弔」

 

 

 

 

 

低く、宥めるような声がBARに響く。

 

 

黒霧が2人の間を遮って、その暗闇から声が響いている。

 

 

腕、足、そして全身が現れると…鉄仮面を被った奇妙な男性がBARに降り立った。

 

 

「先生……アンタまで来たのか、教えてくれ…コイツは一体何だ?」

 

 

「気にしなくていいよ弔、その狂人に付き合う必要は無い、そしてこの問題にも意味は無い、『貴方と私は違う』『ただ互いが互いをどう捉えるかだ』」

 

 

 

「そう、僕は何でもいいし、何だっていい…正義だとか悪が、だとか…どっちにしたとしても…」

 

 

 

「僕は…」

 

 

 

 

「存在している」

 

 

 

 

「…僕の弔に手を出さないで貰いたいね、ケイオスくん」

 

 

「話が噛み合わないなぁ、僕はヴィラン連合に入れてもらいたいだ〜け」

 

 

「どうしてだい?君は『満足』したんじゃ無かったっけな」

 

 

「ふははっ、『満足』の言葉の使い方が違うんじゃない?帝王」

 

 

「それは目的があって、成し遂げたから満たされるもの」

 

 

(蝋人形)はそんなものに興味は〜ないっ」

 

 

 

「「………」」

 

 

 

無言で向き合う2人。片や成人男性の背丈を大幅に越える巨漢と、本当に一般的なサイズしか持ち合わせていない青年。

 

 

だが、両者の圧は拮抗し、BARにいる全員が口を挟めないでいた。

 

 

「ん〜…」

 

 

「君、前よりイケメンになったね、その仮面似合ってるよ」

 

 

「……」

 

 

「僕はね、ドラマを大切にしている」

 

 

「それなのに……『個性終末論』こんな面白そうなものを見ないのは勿体ないでしょ」

 

 

空間からペラリ、と資料の束が出てきた。到底個性と言えるべきものでの行為では無いのが一目で分かる。

 

 

 

「君…それを何処で…いや、不思議では無いか」

 

 

「君とオールマイトは素晴らしい主役だった…最高の剣と、最高の盾」

 

 

「人の抗う様の究極さ、『あれ以上は無い』…って思ってた」

 

 

 

腰に提げた銃を引き抜いて、鉄仮面へと押し当てる。

 

 

 

「帝王、僕には進むべき道があると思うかい?人類の救済を唄いながら、その破滅を人類で最も先進的に行い、『人間』の救済を求め続ける」

 

 

「ただ抗う様を…この身体の『願い』を人間が踏み超えていくまで『剣』を作り続ける僕に、道はある?」

 

 

 

「………」

 

 

 

2度目の沈黙が部屋を満たしていく。誰でもない、でも誰かの唾が飲まれる音が聞こえた気がしたと同時に、銃を下ろした。

 

 

 

「おぉ!帝王くん正解!勿論…答えなんか無い」

 

 

 

「だって僕は、存在する為に存在しているんだから」

 

 

 

「…気狂いめ」

 

 

 

「で、どうだい?ヴィラン連合に入れてくれないの?」

 

 

 

「……」

 

 

 

下される判決は……ーー。

 

 

 

「分かった、弔…頼めるかい?」

 

 

「はぁ…?先生、冗談は辞めてくれ」

 

 

「冗談じゃない、これは僕からの頼みだ、彼の面倒を見て欲しい」

 

 

 

その言葉に対して顰めっ面を返す。当たり前だ、アジトに侵入してからは訳の分からないことをべちゃくちゃと話し、先生と顔見知りで、殺しても復活する。

 

 

それが先生の手駒であれば良かった、だがコイツは先生が制御していない。

 

 

そんな奴をヴィラン連合に入れれば……この先どうなるか…。

 

 

「志村転弧」

 

 

そうやって迷っている間に、ケイオスから名を呼ばれた。

 

 

「あ゛…?お前、それを何処で知った………?」

 

 

「君はドラマそのものだ、秩序、システム、安定…『普通』が『普通』である為の白い部屋の壁に、君は押しつぶされてしまったんだ」

 

 

 

「ずっと閉じ込められてきたんじゃないか?君が見てきた『マトモ』で『普通』の人間は、君の出口を塞ぎ、耳を、目を閉ざさせて『正しさ』の中に君を閉じ込めた」

 

 

 

そして紙芝居を言い聞かせる様に話す。

『ここから出てはいけないよ』『みんなここにいるからね』

 

 

空間に白い立方体が作られ、それが弔の前まで浮遊し、たどり着く。

 

 

 

「だけど君は選択出来るんだ」

 

 

 

「部屋は、部屋で在り続ける必要は無い」

 

 

 

「壁も、壁で在り続ける必要は無い」

 

 

 

「どう?君はヴィランなのかな?それとも狭い部屋で泣いてる子供?君の世界には、選ばされる選択しかないのかな?狭くて白い部屋の1番正しい選択なんて、無い事を理解しているのに」

 

 

 

「選択を取れるんだよ、志村転狐…君は一体どんな物語を僕に見せてくれるのかな」

 

 

 

…長々と喋るコイツに腹が立って仕方ねぇ……だが、言おうとしてることは分かる。

 

 

 

 

「…訳…わかんねぇが…」

 

 

 

「俺は…」

 

 

目の前の白い立方体に触れ……握りつぶした。

 

 

崩壊が広がるより、早く。

 

 

 

「俺は、ヴィランだ、ヒーローとヴィラン、壊すか、作るか」

 

 

「この世界を作った奴は、馬鹿だかどうだか知らねぇが…ただ壊したいだけのガキにそんな力を与えた」

 

 

「選択、だったよな?なら俺はそんな『馬鹿()』も、壊す」

 

 

 

「……」

 

 

「う〜ん良いね、気に入った、これから宜しくね、ボス」

 

 

ケイオスから片手が差し伸べられる。

 

 

【個性:崩壊】

 

 

それは、人と一生抱き合うことも、友愛を確かめる事も出来ない罪。

 

 

だが、そんな世界で…。

 

 

 

「……チッ…握手なんかするかよ」

 

 

 

2人目だが、手を差し伸べる人が現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4月

 

 

 

入学式後

 

 

 

「「「「個性把握テストォ!?」」」」」

 

 

 

相澤先生の宣告があってから、更衣室へと足を運ぶ。

 

 

 

「僕は……そうだな、ハッピーって呼んでくれるかい?」

 

 

「おお!なんかすげぇ縁起のいい名前だな!宜しくな!ハッピー!」

 

 

「宜しく熱血くん、個性把握テスト…一緒に頑張ろうじゃないか…運動は苦手なんだけどなぁ…」

 

 

「ヤベェじゃんか!最下位だと除籍だぞ除籍!!首席のお前が除籍になったら俺なんかどうなっちまうんだよ!」

 

 

「はは、さぁ行こうか熱血くん…ドラマを目の当たりにする時だよ」

 

 

「……なんかお前、ちょくちょく変な感じになるよな」

 

 

 

 

体操服を着てグラウンドへと向かう。

 

 

 

僕に体操服がここまで似合ってないのは言うまでもないだろう、でも、それでも見に行きたいものがある。

 

 

『抗い』の収束。『盾』を、『白い部屋』を託された少年。

 

 

 

ーー彼だ。

 

 

「46m」

 

 

「な……今確かに使おうって……!?」

 

 

「個性を消した。つくづくあの入試は合理性に欠くよ……」

 

 

相澤先生の眼が赤く光っている。【個性:抹消】彼もある意味では主役を喰う脇役だ。

 

 

「あぁ…彼も良いね、凄く良い」

 

 

「僕の実技の結果?どうでもいい事を聞くね、それって面白い?」

 

 

「君たちが見るべきはあの緑の頭のもじゃもじゃ君さ」

 

 

「……なんでお前一人で話してんだ?」

 

 

「少し僕の友人に話してたんだ、個性関連だから気にしなくていいよ」

 

 

「まぁお前…オープンカー出したり、変な個性使ってたもんな…使うのもムズいんだろ?」

 

 

「【個性:製図作成】やお…よろず…あの子に似てるけどね、頭の中にある設計図をそのまま物体として取り出せる、便利でしょ」

 

 

 

まっ、そんな話は置いておこう。

 

 

大切なのは『願い』の返却後、どれだけあの子が抗えるかだ。

 

 

今はまだ弱く、未熟でか細いけれど…人は可能性に満ちている。

 

 

 

「指…だけで……!!うぅあぁあ!!スマッッッシュッ!!!」

 

 

 

彼の手から離れたボールは天高く舞って、あのライバルの子の記録に迫っていく。

 

 

 

「テメェ…出久ゥッ!!」

 

 

 

「……」

 

 

 

 

良い、やっぱりドラマは『体験』してこそだ。入学して良かった。

 

 

今の君を僕が見れなかったら?その時はきっとこの感動もフィクションになるだろう。

 

 

空を見た事があるかな?夜空に浮かぶ美しい星々の光は、数百万年前に燃え尽きただけのものだ。

 

 

こうやって傍に居られなければ、君の輝きは結局数百万年に燃え尽きた夜空の星の光にしかならない。

 

 

 

 

「…本を書いてみたいな」

 

 

 

きっと、きっとだ。

 

 

僕がこれから書き上げる本は、どんな子供だって目を輝かやかせて見て、読むだろう。

 

 

 

究極の体験型ノンフィクション…な、本。

 

 

 

誰だって体験出来て、誰だってその光を…『過去』では無い星の光を見ることが出来るから。

 

 

 

「楽しみだ、本当に面白くて仕方ないよ、緑谷出久くん」

 

 

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