『1年A組の皆!改めて自己紹介をしておくよ、僕はハッピーケイオス、産まれは外国で籍は今は日本かな!雄英の寮を借りて通学してる、名前がヘンテコなのは気にしないでね』
『雄英高校に入学するのが夢だったんだ!学友である君達とこれから最高のヒーローになる為に頑張るよ!以後宜しく』
「ふんふふんふふ〜ん…ははは…」
「ケイオス君…随分と楽しそうだけど…」
「それは勿論、旅先のガイドブックを昨日の夜に沢山読み込んだからね!このバスに乗っているだけでも僕は楽しいのさ!芦戸くん!」
「そ、そっかぁ…あはは…」
(…入学の時から同じ異形系だと思って声をかけたけど…お茶子ちゃんの言う通り元気が過ぎる人だなぁ…)
「なぁケイオス!お前今日学校に来て、はしゃいでたけどさぁ…なんかあったのか?」
「特別な事は無いさ、強いて言うなら雄英高校自体が特別だからね」
USJ行きのバスに乗りながら談笑を重ねる姿は、本当に雄英高校の生徒としての姿しか見えない。
時期は既に4月中旬、相澤先生に在学の許可をもらったから、僕はもう毎日毎日が楽しくて仕方がない。
みんなとの交友を深め、みんなとの個性を話し合い、そして自分たちの趣味を晒しあって、物語を作っていく………なんて素敵な学校生活だろうね!!
「そうだ、芦戸くんに熱血くん、僕の個性が異形系じゃないのになんでこんな見た目か知りたいかい?」
「あ!それ知りた〜い!ずっと気になってたけど……まぁ触れずらいし、それになんで製図作成って個性で見た目が変化しているの?」
僕のことを好奇心で見る目が多い。それはどれも実験動物を見るようなものだけど…なんてったって青い角の頭に浮かぶ黒い輪っか、そして青い肌に謎の刺繍。
厨二心満載だねぇ!分かるよ、飛鳥くんとかを見たら誰だって真似したくなるカッコ良さがある、まっ、誰も彼の面白さまでは真似出来ないけど。
「ふふふ、僕の両親はね異形系の個性同士の結婚だったんだけど、それが突然変異で異形系じゃ無いのに、その見た目を持ったまま、別の個性を手に入れたんだ、奇跡って面白いでしょ?」
「まじかよ、そんな理由だったのか……」
「変化してるのは見た目だけ、特別な力も何もないよ」
「なるほどぉ…」
三者の間に少しだけ気難しい雰囲気が流れる。
「気を使う必要ないよ、言葉を言い淀んでも伝わるものは伝わるからね、本当に気にしなくていいさ、この見た目で苦労したことなんてこれっぽっちもない」
「お前……ほんとにつえー奴だな…!」
「ありがと、熱血くん」
「てかそろそろ切島って呼べよ…」
その後もバス内のみんなと会話を交わしながら、USJへと移動する。特にデクくんとの交流は、彼が必死になって僕の個性の研究を進めようとするから、ついつい言葉も世話焼きも多くなっちゃうんだ、本当に可愛いと思う。
爆豪君には驚くほど嫌われたねぇ…日々の授業訓練もしてくれないんだ、僕悲しいなぁ〜。
ちなみに、轟くんにも嫌われたよ!クラスの戦闘力トップ2人から嫌われるなんて光栄で仕方がないね。
一応、個性を抜きにすると、僕は年齢的に本当にただの高校生なんだ。『いろいろと』見て……そして生きているはいるけれど、この学校生活にワクワクしてるのは本当のことさ!これは嘘じゃなぁいよ、誓える。
「いらっしゃい!ここがUSJだ!」
バスから降りると、到着したドーム状の建物まで待機していた13号先生が音頭を取る。
「「「……」」」
「どこが!USJなんですか!?」
「水難事故、土砂災害、火事、その他あらゆる事故や災害を想定し、僕が作った演習場です!その名も、ウソの災害や事故USJル〜ム!」
「ナイスネーミングだねぇ、13号く…先生」
13号先生は巷ではスペースヒーローと呼ばれている、災害現場でのエキスパート、ブラックホールなんて個性を抱えてトップに立っている人だ。
ほら、もう緑谷くんや麗日くんが目を輝かやかせている。確かにヒーローだよ。
「えー、訓練を始める前に、お小言を一つ二つ…三つ……四つ……」
そんな彼女だからこそ話せる事、『個性』は使い様だという事。
オールマイト以上の説得力がある発言に、皆、真面目に学んでいた。
「君たちの力は人を傷つける為にあるのでは無い、助ける為にあるのだと思って下さい!以上、ご静聴ありがとうございました〜!」
まぁお話は終わりにしよう、皆騙されたとはいえ楽しみで仕方がないみたいだ。相澤先生も若い子の気力には苦労させられている。
早くドームに入って……
次の舞台に、上がろう。
■
「お前らー!順に並べ順に……ったく…」
足並みを揃えてUSJに入場する生徒を眺めながら、ここ最近ニヤケズラを続けているケイオスの表情が、更に大きく歪んでいるのを見る。
「……」
ため息をついて、意識から少しの間アイツを離して…ーー
「……っ?」
「なぁ相澤先生、アイツらは?」
上鳴が指差す先に見えるのは…黒い、霧
その黒い霧が渦を巻き始めたと思うと、その中から全てを憎む、破滅の目が覗く。
ーー判断は一瞬だ。
「全員一固まりになって動くなァッ!!13号!生徒を頼む!!守れ!」
広がり続ける霧からはどんどんと悪趣味な見た目をしたチンピラ、異形、どいつもこいつも悪意に満ちた目をした奴らばかりで、どう転んでも生徒に害を成す存在だと分かる。
だが中心に居るアイツよりは全員三流…縛布を握り締め出方を伺う。
「アイツらはヴィランだ!お前ら動くなよ!!」
「チッ…どこだよ、オールマイト…せっかくこんなに大衆引き連れてきたのにさ…子どもを殺せば来るのかな?なぁ…■■■■」
「さぁ?でも人が死ねばヒーローは現れるさ、きっとね」
(…っ、一人だけ、見た目すら見えねぇ奴がいやがるな…!)
身体中に手を貼り付けた男の鋭い殺意に貫かれ、生徒の皆は否が応でも理解してしまった、本当にヴィランが襲撃してきたのだと。
「ヴィラン!?バカだろ!?ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるぞ!」
「アホでも雄英の防犯センサーが反応してねぇのなら、向こうにそういう事が出来る個性ヤツがいるって事だ、バカだがアホじゃねぇ…!何らかの目的があっての襲撃、画策された奇襲だ」
緊張感が増した現場でも、指示力と判断力がものをいう。即座に状況が理解できた数名、轟、爆豪、教師陣は行動を開始する。
「13号、避難誘導を頼む、上鳴と口田は外部への連絡、電波の妨害出来る個性がヴィラン側に居ることも考えて物理的な手段も試せ、ケイオスと八百万も個性で通信機器の……ーー」
生徒を一人一人見渡し指示を出していくが、ケイオスに目を配った瞬間に思考が一瞬停止してしまう。
「待って!ケイオス君ッ!!」
「先生!ケイオス君が…!一人で!!」
「あの馬鹿ッ…」
緑谷が手を伸ばし、彼の手を掴むより前に階段を降り、ヴィランの目の前へと下っていっている。
どう考えても気が触れたのか馬鹿か英雄病が出たとしか思えない行動に皆困惑し、だが目の前のヴィランを前にして誰も行動を取れずに見送ってしまう。
「ケイオスッ!!」
「……」
先生の声を無視して、歩みを続けていく。
「…やぁ、ヴィランのリーダー」
「あ…?おい■■■■、どういう事だ…!?」
だが、ヴィラン側に訪れるのも困惑である。
その様子を見て生徒の数名も困惑したままの表情で固まっていた。
「あぁこれ?僕が悪役で、正義の味方役ってだけ、気にしなくていいよどっちも本気で真剣に全部を使って役に応じてるから」
「マジでいい加減にしろよ……クソッ…だから手網を握れと先生に…」
「本当に気にしなくていいよ、だってほら」
BANッ❕
「ぇ……?」
それは誰の嗚咽だっただろう。誰の心から盛れ出した悲鳴だっただろう。
ヴィランの前に立ったケイオスの左腕が、消し飛んだ。
そして階段に擦り寄って倒れ伏す。
「ぅがっ…とと…」
「ケイオス君!」
途端に生徒の心には冷たい水を掛けたように恐怖が浸透していく。
恐怖とは感情的なものというよりは、本能に近しいもの、自分自身の命を守る為に抱く原始的且つ原初的な防衛本能だ。
「よし、それじゃ僕は帰るね〜」
「はぁ!?おい待て、お前も参加しろ」
「ごめんねボス、ここで悪役は必要無い、必要なのは真剣味とリアリティーだ」
「…チッ…!! まぁ、いい…後は俺がやる、全員!生徒を殺せ!!」
「「「「ォォォオオオー!!!!」」」」」
生徒にとって、一番最初の試練が始まろうとしていた。