副業:連邦生徒会   作:杭打折

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プロローグ

 学園都市キヴォトス。

 

 数えるのも億劫な数の学園によって構成された大都市。私の住む場所の名前である。

 物心ついたとき、気づけば私はこの都市に住んでいた。それなりに大きいマンションの一室。読み書きは既に一通りできたので苦労はしなかった。家族は居ない。私はそういうものだと思っていた。

 初等部で知り合った子に姉がいるという話を聞いたときは、そういうものもあるのかと少し驚かされた。

 

 さて、私には生まれついて一つの力があった。

 私が望めば、私が望む場所に、私が望む物が現れる。

 この力のお陰で私は何不自由なく育つことができた。物質的に困ることはなく、必要なものは必要と感じた時に手に入った。

 

 何故このような力が自分にあるのかは気にならなかった。どのような力であろうと自分に与えられたものならば、遠慮なく使うべきだから。

 なにせ、自分のものなのだから。

 

 初等部に入る頃、私は実に味気ない生活を送るようになっていた。なにせ、欲しい物が手に入るお陰で張り合いというものが無くなっていたからだ。

 では欲はないのかと聞かれれば、私の心にも人並に欲というものが生じる隙間は存在していた。

 

 つまるところ、人生に張り合いを求めたのである。

 

 私は何かをしようと思った。まず最初に、周囲に存在していた三大派閥なるものを真似て自分の派閥を立ち上げてみたりもした。

 成果はあった。私の派閥はそれなりの規模となったが、しかし、足りていないものがあった。

 それは歴史である。歴史が古く、伝統を重視する傾向にある我らがトリニティ学区においては、新参というだけで一歩劣る。私の派閥に属していた生徒の多くが三大派閥からあぶれた者であったことからも、一つ下のカテゴリーに分類されていたのがわかる。

 派閥の者達は私を称賛するが、それで私が満たされることはついぞなかった。敗者たちの寄合所帯。私の派閥はいつしかそのようになっていた。私は派閥を切り分けて伝統的な派閥や勢力へと取り込ませた。

 所詮は目的もなく作った派閥である。手放すことに名残惜しさはなかったが、最後まで面倒を見るように振る舞うことである程度の名声を手にした。

 

 身軽になったところで、次に商売を始めようと思った。

 トリニティ学区ではなくキヴォトス全体に目を向けることにした。

 商売を始めるならば、売れる商品を取り扱わねばならない。幸いにも、私の神秘があれば調達ルートには困らない。

 では、このキヴォトスにおいて最も売れる商品とは何だろうか?

 その問いに対する答えはすぐに出た。

 

 それは弾薬である。

 

 オープンカフェで食事をしていたところを銃撃戦に巻き込まれた私はその事実を強く理解した。

 

 私は調べた。キヴォトスで一日に消費される弾薬の数はどれほとなのかを。結果は天文学的な数字へと至る。如何なる完璧超人であってもこの全容を把握することは不可能だろう。

 

 派閥の解体を終えた私はこの事業へと手を出した。

 事業を開始する際には、私の力が役に立った。なにせ、元手がなくとも品物を用意できる。価格破壊待ったなしのミリタリーバザールを好きなだけいつでもどこでも開くことができる。

 

 とはいえ、最初の一歩は大事にしたかった。

 私の取引は一つのケースから始まった。

 ケースの中にはサブマシンガン。更に初回購入特典として予備マグと使用可能なホローポイント弾をぎっしり詰め込んだ。

 

――上着の中に隠せるコンパクトサイズ。ただし、吐き出す弾は暴力的。一秒間の間に10発以上の弾丸をばら撒くが、片手でも扱える程度の反動だから初等部の生徒でも扱えるし実際扱っている。荷物で左手が塞がっていてもお構い無し。

 

 頭を捻って考えたセールストークを聞いた客はただ一言聞いてきた。「幾らだ?」と。

 私は価格を答えた。

 客は言い値を支払った。

 

 数日後、ネットニュースのトップを飾る銀行強盗事件の記事を眺める私のもとに届いた追加購入依頼を見て、少なくない手応えを感じると同時に理解した。

 武器は価値がある。

 言葉で飾り立てる必要はない。ただ武器であるというだけで良い。

 衝撃的ではあったが、その単純さは好みだった。

 

 私は一挙に事業拡大を計った。

 

 ケースからコンテナへ、コンテナから倉庫へと。個数指定はもちろんのことダース単位から一山いくらの注文まで受け付けるようにした。

 とにかく、とにかく売りまくった。一般市民、スケバン、ヘルメット団からテロリストまで。客は選ばず、連邦生徒会のブラックリストに入ってる連中でも気にすることなく取引をした。

 

 私の力を利用すれば調達価格は無料であり、末端価格はすべて私の儲け。末端で現物がいきなり出現するから流通ルートで足取りを追うことも不可能。ヴァルキューレの公安局も私の影に触れることすらできていない。

 

 成果を出しつつも、私の事業は作業へと変わりつつあった。

 

 そんなふうに過ごしていたある時、私の手口とネットワークに迫るものが現れた。後に連邦生徒会長と呼ばれる存在である。

 彼女が頭角を現し実権を拡大させていくにつれ、取引で妨害を受け利益を損なう事が増えた。

 想定外ではあったが、喜ばしいことだと私は思った。何せ、やり甲斐や手応えに繋がる相手を見つけたのだから。

 

 トリニティ総合学園へと進学するのとほぼ同時に、私は連邦生徒会からスカウトされた。応じるべきか悩んだが、最後はそのスカウトを受けることにした。

 その時には、既に私はキヴォトス全域における武器商人としての地位を手に入れていた。影響力も拡大し、ブラックマーケットにおけるシェアはかなりのものだ。

 私が流通させた武器弾薬で治安は悪化したが、お陰で懐は潤った。

 スカウトを受けたのは、悪化した治安に対して罪悪感や責任といったものを感じたからではない。私をスカウトした連邦生徒会長の思惑を知りたかったからというのが理由だ。あとは連邦生徒会に入り込めば新しい事業に使えるかもしれないという思惑も少々。

 

 そんな思惑を抱きながら連邦生徒会へと所属した私の配属先は防衛室と呼ばれる部署であった。

 

 

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