彼岸花の妖精と天使は死神のそばに。   作:美女り鯛

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んー話の区切り方が今だにわからない作者です。
近々文字数どれが読みやすいかって言うアンケートを取らせていただくかもしれませんので、その時はよろしくお願いします!!



11話

日も傾き始める。学校が終わり部活動の無い生徒たちが次々と下校していく時間。

そんな中で、静かに帰りたいがために人通りの少ない道を歩く雪音。

 

「ストーカー被害?」

 

『ああ、阿部さんのところに寄った千束たちが受けた依頼なんだが、どうにもそのストーカー相手が先日の銃取引の関係者の可能性があるらしい。被害に遭うことになった写真が千束から送られてきて、今ミズキが解析しているが時間がかかるようだ』

 

「ストーカー被害は警察だと動くのが遅いからな。それと千束達が相手をすることになったってことは相手は女性。大方SNSに写真をのっけてこうなったんだろ…。

それで俺は千束達のフォローに入ればいいのか?」

 

『そうしてもらえると助かるが、いけるか?』

 

「学校も終わったし問題ない。一旦家に戻ってから向かうぞ」

 

『分かった。準備が出来次第連絡してくれ、千束達の位置を送る』

 

「了解」

 

ミカとの通話を終わらせ少し歩くペースを速める雪音。

千束たちがお店の常連である警察の阿部からストーカー被害を受ける女性の依頼を受け話を聞くと、なんとストーカー相手は先日に雪音と千束が向かった銃取引の関係者である可能性が浮上した。

そのため、ミカはもしもの時を考慮して雪音に千束たちのフォローを頼んだのだ。

見える範囲で人影もなければ気配も感じないため、一瞬ですぐ近くの住宅屋根に飛び移ると、見られないよう注意しながら屋根から屋根へと飛び移り移動していく。

 

「流石にここらへんは人が多いか」

 

雪音は自宅付近に近づくと、同じ制服を着ている学生や仕事終わりなどの会社員など人通りが増えてきたことに気づき、すぐさま屋根から降りると裏路地から表の道へと移動する。

雪音はそのままエレベーターに入り自身の階を押しドアを閉める。

すると、マンションロビーから真っ直ぐこちらに駆けてくる一人の男子学生に気づいた雪音は開ボタンを押し、その男子学生を中に引き入れた。

 

「す、すみません」

 

やや戸惑いの籠った謝罪を発した男子学生に雪音は軽く会釈し、そのまま再度ドアを閉めた。男子学生はエレベーターに入っても目的の階を押さないことからどうやら同じ階に住む学生なのだろうと気づくと、目的階に着いたら先にその男子学生を譲った。

 

「…ありがとうございます」

 

「…いや」

 

今度のお礼には小さく返事をした雪音。先の男子学生の行先を見ると、どうやら真昼の隣に住んでいるらしく鍵を開けて最後に雪音の方へ再度頭を下げて入っていった。

 

(一人暮らし学生多いなここ…まあどうでもいいか)

 

雪音もこの後の任務のためさっさと家に入り支度を進めた。

今回はケースは持って行かず竹刀袋とジャケット裏のショルダーホルスターにある銃一丁だけの武装で済ませる。

支度も終わりミカに連絡を入れた。

 

「支度は澄んだ。位置を送ってくれ」

 

『流石に早いな。先ほど千束が見せに戻ってきてな。どうやらストーカー被害者を護衛するようで今晩は相手の自宅で泊まるらしい。千束がこっちに来るまでは新人のたきなが護衛している。千束に位置を聞いたからそのたきなの位置を送るぞ』

 

「わかった。頼むぞ…あ?」

 

雪音はミカと話ながら玄関を出ると、ちょうど帰宅してきたのだろう真昼が彼のドア目の前にいた。

これには真昼も驚いたのだろう、見るからに目を大きく見開いていた。

 

『どうした?ユキ』

 

「いや、たまたま玄関先で知り合いに会っただけだ。それじゃ忘れず送っといてくれ」

 

『…ああ、頼んだ』

 

雪音は通話を切ると鍵を閉めると先ほどから視線を送る真昼へと振り向いた。

 

「どうした?」

 

「い、いえ!その…これからバイトですか?」

 

「(流石にこの格好で喫茶店のバイトは無理があるか)…いや、今回は少し別だ。知り合いに呼ばれてな」

 

「そう、ですか」

 

どこか歯切れの悪い真昼に雪音は内心で首を傾げる。彼女の瞳はまるでなにかを訴えるかの様に強く雪音を見つめていた。

 

「なにもないならもう行くぞ?」

 

「えっと、その、会いに行かれる相手は…女性ですか?」

 

「ああ、それがどうした?」

 

「……」

 

雪音が答えた瞬間、わかりやすく動揺する真昼はそのまま自分の足元を見るかのように俯いた。

明らかに様子がおかしく容量を得ない真昼に若干のイラつきを覚えた雪音は一度大きく溜息を吐いた。するとそれを聞いた真昼の身体は大きく身体を跳ねさせた。

 

「言いたいことがあるならハッキリ言え。言わないと俺はわからない」

 

その場でしゃがみ真昼の顔を見上げる雪音。対して真昼はまるで自分の感情がコントロールできていないかのように戸惑いが見えた。

雪音を見つめる真昼の瞳が揺れる。

 

「…私もよくわからないんです」

「よくわからないんです。でもなぜかその服装(・・)の雪音さんを見ると、どこかに行って消えてしまうのではないかと、ここがざわつくんです」

 

真昼は悲しそうに自身の胸元に手を添える。言葉で表現するのが難しい感情にもどかしく感じているようだった。

そんな彼女の様子をただ静かに見守っていた雪音は、自身の最愛の妹の姿が真昼と被り、ゆっくりと彼女の頭に手を置いた。

雪音の行動に一瞬驚く真昼だったが、それ以上に優しく撫でるその大きな手が気持ちよくすぐに落ち着きを取り戻した。

 

「…別に俺はどこにも行かないし行く気もない。何を根拠にしているかわからないが真昼が心配することは何もない」

 

「…本当ですか?」

 

「ああ、本当だ。兄ちゃん(・・・・)が嘘ついたことあったか?」

 

「……え」

 

ごく自然に零れた雪音の言葉に、遅れて反応した真昼の表情は唖然としていた。そしてそんな真昼以上にわかりやすく戸惑い唖然としていたのは雪音自身だった。

誰もが分かるぐらいには瞳が揺れ動揺している。

 

「…雪音さん?」

 

先に調子を取り戻した真昼はうるさく鳴り響く自分の鼓動を無視して雪音を見つめた。

 

「な、なんでもない。今のは忘れてくれ」

 

「で、でも!」

 

「…ただ妹の姿が重なっただけだ。悪いが時間がない、もう行くぞ」

 

無理やり話しを切ると逃げるようにその場を後にする雪音。そんな彼の背中を真昼はただ静かに見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

(何バカなことを言ってんだ俺は…。真昼(アイツ)は陽菜じゃない。ただ似ているだけだ。重ねるな)

 

雪音は一人しかい居ないエレベーター内で先ほどの発言を後悔していた。

ハッキリと放った言葉は明らかに真昼ではなく陽菜というたった一人の家族に向けられたものだった。

 

(目的を忘れるな。彼女を重ねるな。…復讐を果たせ)

 

一度瞳を閉じて全ての情報を消す。雪音の世界が暗い闇に包まれた。

そうしてただの闇に浮き上がるたった一つの光景。

一面の大地を紅い湖が覆い、辺り一面に血を啜ったように真っ赤に美しく咲く彼岸花。

一瞬にして赤い世界へと塗り潰されたそこに、異質ともいえる一人の少女が眠っている。

もう一生起きることがない少女。最も大切にしていた、この世界で唯一生きる目的だった存在。

忘れてはならない。今はただその存在を奪った相手を見つけ、出来る限りの地獄をその身に刻ませること。

それだけのために生きていることを。

今一度認識させる。

 

「……そうだ。忘れるな」

 

エレベーターが一階に着き扉が開く。

雪音はゆっくりと歩き、そのままマンションを出た。

スマホを出し、目的地を確認する。

 

「…確かめるか」

 

スマホをしまった雪音。すると一切の音を立てることなく一瞬にして姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「取引した銃の所在を言いなさい!」

 

すっかり日も落ち夜になった現在、千束がお泊りセットを取りにリコリコへ戻りストーカー被害者であり護衛対象の沙保里と二人きりになったたきな。

たきなは沙保里の自宅へと向かう途中、後ろを付けていた怪しい車に気づき相手の目的が沙保里の命ではないと推測しそのまま彼女を囮にした。案の定、怪しい車は彼女の真横で止まり、中から現れた男性が沙保里の頭から布を被せ車内に押し込んだ。

まんまと車を止めたストーカー兼誘拐犯の前に立ちふさがったたきなは、そのまま彼らに向けて銃を乱射していた。

運転席に座る一人の肩と車のタイヤを撃ち抜き退路を塞ぐ。

そんなたきなの猛攻に誘拐犯たちは反撃できないでいた。

 

「無茶苦茶撃ってくるぞ!!」

 

「なんで取引のこと知ってんだ!?」

 

「アイツ武器商人を皆殺しにした奴らじゃないすか!?」

 

「あんなガキがかよ!?」

 

どうやら誘拐犯たちは千束達の推測通り、先日の銃取引関係者だったらしい。彼らもその取引で死者が出たことを知っており、その相手がたきな達ではないかと気づき始めた。

乱射して弾が尽きたたきなは、慣れた手つきでその場で空になったマガジンを捨てると、背負っているカバンから弾を取り出し補充した。

流れるようにリロードを終えたたきなは、素早く拳銃を車へと構える。

標準を合わせて再度撃とうとしたその時、横からたきなの拳銃を誰かが掴んだ。

すぐさま反撃をするために相手を確認するたきな。

するとそこにいたのは敵ではなく、先ほどまで一緒に街を回っていた千束だった。

 

「な~にしてんの!」

 

千束はそのままたきなを近くの曲り角に連れていく。

 

「尾行されていたのでおびき出しました。彼らが銃の在り処を知ってるはず…」

 

「ちょいちょい、沙保里さんは?」

 

「奴らの目的はスマホの画像データです。沙保里さんを殺す意図はないと思います!」

 

「えっ!!護衛対象を囮にしたの?!人質になっちゃうでしょ!」

 

千束は慌てたようにたきなの言い分を注意した。いくら相手の目的が沙保里さんの命ではなくスマホのデータだとしても、彼女自身の価値はなくならない。特に先ほどのような一方的な状況が続いた場合、相手が取る行動はほぼ決まっている。

 

「この女がどうなってもいいのかー!!」

 

「ホラァ…」

 

案の定、相手は沙保里を人質にした。あまりにもわかりやすい状況に千束は溜息交じりに言葉を溢す。

 

「あなたが止めなければもう終わってましたよ」

 

「沙保里さんに当たっちゃうでしょ!」

 

「この距離からでも射殺できます」

 

「いのち大事にだってば!」

 

たきなはリコリスらしく相手を射殺することを勧める一方、千束はそのたきなの考え、というよりもリコリスのやり方を否定した。

ずっとリコリスとして育てられ生きてきたたきなとしては相手を殺すことは当然のことであり、それが普通のことなのだが、同じリコリスである千束は違った。

相手がどれだけ悪人でも命までは取らない。それが彼女の行動理念でありそうなるに至った経緯があった。

千束は過去にある人物から命を救われている。それも二度(・・)

それから彼女は他人を救うことに憧れるようになり、その真逆の行為である殺しをしなくなったのだ。

 

「射撃に自身があるならさ、7時方向でこっち見てるドローンを撃ってくれる?あ、音出してね」

 

千束がたきなに小声で伝えると、たきなはバレないようにそのドローンの存在を認識した。

そして二人の呼吸が合わさった瞬間、たきなはバッと振り返り、空中を飛行するドローンへ標準を合わせた。

ピンポイントに合わさり引き金を引こうとした刹那、突如たきなが狙っていたドローンが真っ二つに斬り崩れた。

 

「千束さん!ドローンが!」

 

「…斬れたんだね」

 

「なんで見ないで分かるんですか?」

 

「ん~、だって張本人が出てきちゃってるしね」

 

「張本人?」

 

たきなは車の方を覗き見る千束に並んで同じ方に視線を移す。

すると、車の前には立つ刀を腰に差したスーツ姿に青年がいた。

夜の暗さと漆黒のスーツが美しく輝く銀の髪を際立たせている。

たきなは初めて見る実物の姿に思わず釘付けになった。

 

「綺麗…」

 

たきなから無意識に零れた言葉は、内心で千束も思っていた。

そもそもそんなこと千束は常日頃から口に出さないだけで思っている。

特にこういった夜の時間は、彼の美しさや儚さが際立つのだ。

 

「あの人が…」

 

「うん、あれが朝話した私たちの協力者─黒戸雪音だよ」

 

たきなはただその眼を大きく見開いて今目の前に広がる一枚の絵画のような幻想的な光景を眺めていた。

どこか伏し目がちな表情は切なそうに見える半分、決して揺るがない力強さを感じていた。

 

「数は…4人か。そして一人女性が布を被せられてる、なるほど、護衛対象であり人質か」

 

車の前でただ自然体に立つ雪音は、車内から感じる気配で人数と状況を割り当てた。

 

「な、なんだアイツ?」

 

「知らねえよ。ただ敵であることは確かだろ!さっさと殺して帰るぞ!」

 

「「「おう!」」」

 

犯罪者集団は目の前にのうのうと立つ雪音を見てすぐさま銃を向ける。肩を撃たれた一人はなんとか片手で構えていた。

そうして一斉に発砲を開始した。

亜音速で迫りくるいくつもの弾丸。その一発一発が確実に命を奪い取る威力を持っていた。

たきなは間に合わないと気づきながらも、思わずその場を駆けだし雪音に手を伸ばした。

このままでは目の前で人が死んでしまう。たきな自身、人を殺すことを良しとしているがそれは相手が犯罪者だった場合であり、善良な市民が無意味に死ぬのは良しとしなかった。

 

(間に合わない!)

 

確実に弾丸が雪音を撃ち抜く。極限まで研ぎ澄まされた感覚が無慈悲な未来を告げていた。

歯を食いしばるたきな。だが次の瞬間、たきなの目の前に起こった現実は全く別の結末だった。

 

カチャンッ!

 

甲高い音が数回、雪音の周りから放たれた後、まるで抜き出した刀を収めるかのような音が孤独に鳴った。

だがこの場にいる誰一人として、抜き出た刀の刀身を見た者は居ない(・・・・・・・・・・・・・・・・)

弾丸に撃ち抜かれて噴き出す赤い血どころか雪音の脚は一歩も変化がなかった。

 

「え…今、なにが…」

 

「たきな下がって」

 

たきなの伸ばした手は何も掴むことなく、ただその場に留まっていた。

するとその手を横から掴んだ千束はそのまま雪音たちから距離を取らせるよう元の位置まで引っ張り下がらせた。

 

「千束さん…今一体何が起きたんですか…」

 

たきなはなんとか力を振り絞って出した声は震えていた。

状況が読み込めないたきな、一方で千束はたきなの反応を見てまあそうなるよね、と言いたげにうんうん頷いていた。

 

「最初は信じられなくて当然だよ、たきな。でもこれは現実だし確かな事実」

 

千束はゆっくりと、ただ目の前で起きたことをそのまま伝えた。

 

「ユキはね、誰も視認できないほどの速さで銃弾を斬ったんだよ。自分に迫りくる9発の弾を全て、ね」

 

千束からあっさりと告げられた事実。その事実がさらにたきなへ衝撃を与えた。

 

(自分に迫りくる全ての弾丸を…斬った(・・)?ありえない。そんなのって…つまり撃たれた弾丸を視認できているということ。狙って避けることだって不可能なのに、そんな亜音速で向かってくる弾に合わせて刃を振るった?そんなのまるで…)

 

たきなはもう一度、静かに佇む雪音を見つめる。先ほどと何一つ変わらず自然体で立つ美しい青年。

作り物の様に整い、神秘ささえ感じるあの存在。

だが、たったいま千束から伝えられた事実にただただ戦慄し、そしてわずかながらに抱いたのは恐怖(・・)だった。

そしてその瞬間、たきなはつい最近までいたDA本部で密かに語られていた都市伝説を思い出していた。

 

曰く、DAには死神がいる。

どれだけ撃っても死なず、振るう刃は視認できない。

出会えば最後、残るのはまるで大鎌で振るわれたかのように、斬り離された胴体だけ。

 

たきなは目の当たりにした。あの都市伝説は真実だったのだと。目の前にいるこの美しい人物がその伝説そのものだったのだと。

 

「あれが……死神」

 

命を斬り取る執行者。その青年はただ静かにその場に存在していた。

 




雪音君の怪物っぷりが表現できていれば幸いです。
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