彼岸花の妖精と天使は死神のそばに。   作:美女り鯛

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お久しぶりです!
これからゆっくりですが書いていけたらと思いますのでよろしくお願いいたします!


4話

視線が集まる。それはそうだ。学校でこんな目立つことをしているんだから。

 

「おい、あれって…」

「女神が天使を抱いている…」

「絵画みたいだな…」

「…ああ、神秘的だな」

「素敵…」

「…あの二人、すごい絵になるね」

 

視線がうるさい。こんな面倒があるから学校は嫌いなんだ。…というか、こいつを運ぶ頻度多いな。なんて思いながら、雪音は真昼を姫抱きにして保健室に向かっていた。

雪音は先ほどの事を思い出す。

 

「体温が高い…大丈夫か?」

 

彼女の肩についているごみを取ろうとして手を掴んだ時、異常に熱かったことに気づいた。

これは明らかに平熱じゃない。あの雨の時とは違う。そう思った瞬間、まるで糸が切れた人形のように倒れ始める椎名。俺は彼女が床につく前に抱き寄せる。

その瞬間、周りが何やらざわつく。…うるさい。イライラとストレスが溜まっていく。そんな俺を察したのか、秋奈が逃げ道をくれた。

 

「…あー雪音、とりあえず椎名さんを保健室まで運んであげなよ。横にさせた方がいいと思うからね」

「…ああ。いってくる」

「はい、いってらっしゃい。椎名さんをよろしくね」

 

そして現在。ほぼ全校生徒に見られた気がするが、なんとか保健室についた。

ドアを開け保健医がいるか確認するも、人の気配がしない。仕方がないと割り切り、勝手にベッドを拝借する。

そのまま真昼を横にさせると、教室に帰ろうと振り返る雪音。

 

「っ…おい」

「…」

「はぁ…まあ今戻っても騒がしいだけか」

 

帰ろうとする雪音の袖をしっかりと掴む真昼。無理やりはがすことは造作もないが、今帰っても質問だなんだとめんどくさいことに巻き込まれそうだと思い、ベッドの横にあった椅子に腰を下ろした。

ずっと掴まれているのもなと思い、真昼の手を離させようとする。

 

(…無理にやると折れそうだな)

 

力加減を間違えたら大事故になりかねないと感じた雪音は、もういいかと諦め手を放そうとした瞬間、先ほどまで雪音の袖を放さなかった真昼の手が、今度は雪音の手を掴んだ。さらに指を絡めて自身の身体の方へグイっと寄せた。予想もできなかった状況に反応が遅れた雪音は抵抗もできずただ受け入れるしかなかった。

 

(…こいつ、見かけによらず千束と同じタイプか)

 

寝ぼけてるとき、明らかな無防備になるタイプ。千束もミズキも、そして椎名も、なぜ自分と関わりのある女性はみなこうなのか。いや、そういえばフキはそこまで寝相が悪くないな、なんてことを思い出しながら、目の前でスヤスヤと気持ちよさそうに眠っている真昼へと視線を移す。

 

(…フッ思い出すな。あの子もよく寝るときに手をせがんできたっけ)

 

身体が弱くてもいつも笑顔で太陽のように温かい、だれよりも大切だった双子の妹。性格は千束に似ているが雰囲気はどこか椎名に似ているか。良く抱えてるしな。…ああ、懐かしいな。よく、寝れるまでなでろと言われていたか。

 

雪音はスッと真昼の頭に手を添えると、そのまままるで大切なものを扱うかのように、優しくなでていく。

傍からみたらとても勘違いされそうな行動だが、今の雪音はそんな冷静な判断ができないでいた。

今、彼の脳内では過去に失った妹のことでいっぱいであり、なでている相手が椎名だということをすっかり忘れていた。

それからというもの、真昼は目が覚めることもなく、そして雪音も懐かしさからか頭をなで続けていた。

それはしばらく続き、保健室のドアがガラガラと開いた。

 

「雪音~そろそろ戻っておいd…どういう状況?」

 

あまりにも戻ってくるのが遅かったため、様子を見に来た秋奈。彼が今見ている光景は普段の雪音を知っているからこそありえないと言える。雪音は心を許している相手には基本甘い。だがそうでない相手にはとことん興味がない。文字通りの無関心。千束に対してはよく頭をなでてあげている場面を見かけるが、まさか学校の人でここまで距離が近くなるとは…。しかもめちゃくちゃ優しく微笑んで…頭でもぶつけたか?、なんて考えていると、秋奈が見ていることに気づいた雪音は一瞬のうちに固まる。

 

「…」

「…お邪魔しちゃったかな?」

「…黙れ、ただの気まぐれだ」

「あははっ!気まぐれか。珍しいね、雪音が学校の人にそこまで優しくしているなんて」

「…妹の面影をみた。それだけだ」

「陽菜ちゃんか。…懐かしいね、確かに椎名さんは雰囲気が陽菜ちゃんに似てる。これは納得だね」

「…もう忘れろ。ほら、教室に戻るんだろ。行くぞ」

 

帰り際、ポンポンと椎名の頭をなでた。どこか懐かしそうな、そして辛そうな表情を浮かべる雪音を秋奈は見逃さなかった。

 

 

それから二人は騒がしい校内に包まれながら午後の授業を無事に終え帰りの身支度を整えていた。

 

「雪音はこの後いつも通りリコリコかい?」

「ああ、そういえばミカから言伝だ。”たまには店に顔を出しなさい"だと」

「あははは!了解。確かに最近ミズキさんに会えていなかったしね。近々お店に行くと伝えといてくれ」

「…いい加減思いを伝えたらどうだ。お前からならミズキは号泣して喜ぶぞ」

「僕はまだあの人の隣に並べるふさわしい男になっていない。だからこの気持ちはまだ伏せておくよ」

「そうか…お前がそれでいいなら俺は何も言わない」

「うん、ありがとうね」

 

秋奈と別れた雪音はリコリコに向かう道中、先ほどの自身の行動を思い出していた。

 

(なんで俺はあんなことを…いや、答えはわかってる。椎名にあの子の…陽菜の面影を感じてるんだ。…これじゃだめだ。また失うぐらいなら、もうこれ以上大切な存在を作るな。自衛のできない相手との関わりは絶て。

俺の行動の邪魔になる…だからもう「…あれ!雪じゃ~ん!奇遇だね」…)

 

険しい顔で歩く雪音に勢いよく抱き着いてはそのままおんぶの体勢になった。

 

「…学校出たぐらいから尾けてきてただろ、感情が駄々洩れだ千束」

「えへへ~なんか隠れてるうちにスパイみたいだなって思ったらなんだか楽しくなっちゃって!」

「昔からほぼスパイみたいなもんだろ…てかいつまで乗ってるんだ、さっさと降りろ」

「えー!私は最初から降りるつもりだったのに、雪音がしっかり支えてくれたから降りたくても降りれないんですー!だからこのままお店まで連れてって!」

「…はぁ、どうせなに言っても降りないだろ。こんなとこ誰かに見られたらめんどくさいし、さっさと行くからしっかり掴まってろよ」

「やっふ~!いけぇー雪音号!風よりも速く!」

「…名前ダサいな」

 

その後町では、風よりも速い謎の人型白銀生物が噂された。

 

 

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