星核ハンターと共に行く   作:セフィム

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 コナンクロスオーバーでやってみたいことの1つ、蝶ネクタイ型変声機を使って真夜がホタルの声で「焦土作戦実行!!」「Action1実行」って言いたい。

PV Ver2.3「さよならピノコニー」視聴
 ホタルの焦土作戦実行、めっちゃかわいいじゃん!! よし、絶対使ってやる!!

PV「グラモスの余燼」視聴
 気軽に使えねぇじゃねぇか……!?

 遅くなって申し訳ないです……

 8/07 加筆修正 真夜が着ている軍服を変更しました、


身分を偽る者たち

 オレ、高校生探偵の工藤新一にとって一つ上の兄、工藤真夜は何とも形容しがたい存在だった。

 

 家族としては素晴らしく誇らしい兄だ。

 幼い頃は優しくて一緒にサッカーをしたり、両親には内緒でアイスを買ってくれたした。オレが気になっていたミステリー本を誕生日に買ってきてくれたりもした。

 中学生の時は自身も何かと忙しい中で時間を見つけては、サッカーの試合の応援や弁当を作ってくれたりした。兄貴が高校を入学と同時に家を出ると言って両親もアメリカに移住する話になった時は移住先を知り合いに任せて自分が中学卒業するまで毎日家事をこなし、料理を作って帰りを待ってくれた。だから、広い家の中でも寂しくはなかった。

 

 だが、探偵にとっては鬱陶しくも超えるべきライバルのような存在だった。

 兄貴は親父が一目置くほどの洞察力、推理力を持っていた。オレが頭を悩ませる謎も先に解いてしまう。

 だけど兄貴は親父とオレが事件現場に行くのを必死に止めに入って、逆に一緒に事件解決に連れて行こうとすれば拒否してきた。死体を見ては顔色を悪くさせて、酷い時には吐くこともあった。事件を解き明かして自慢すれば周りは褒めてくれるが兄貴だけは怒り説教をしてきた。

 中学生となって警察からも頼られ、多くの事件を解決してメディアもオレのことをたくさん取り扱うのに比例して兄貴は段々と自分を軽蔑していき(しま)いには愚弟と呼ぶようになった。

 

 理解できなかった。事件を解決することの何がいけないのか?

 何より理解できなかったのは、大勢の前で事件解決の推理を披露した際に説教してきた兄貴が言った言葉。

 

 ”謎は謎のままでいい、世の中には明かさなくても知らなくてもいい真実がある”

 

 バーロ、謎は解き明かすもので真実は明らかにするためにあるんだよ。

 

 そしてオレが高校に入学してから兄は一年遅れて移住先に向かった。

 それからは事件解決に忙しかったのと、説教をしてくるのが鬱陶しかったから家に帰っても会話はしなかったから移住先の住所も聞かなかったし、連絡先を交換してなかったからメールや電話すらやっていない。

 

 兄貴が居なくなった家はとても寒くて、オレは初めて孤独というものを味わった。

 いつも家事をしてくれた兄貴、埃一つなかった家は廊下の端の方にゴミが溜まりだした。部活のサッカーで使った練習着や体操服、私服も洗って何時でも使えるように畳んで置いてあった衣類は汚れて溜まっていく一方。事件で帰りが遅くなってもすぐに温かくて美味しい料理を作って出してくれたものはレンジで温められたコンビニ弁当に変わっていた。

 

 そんな孤独感と喪失感を埋めるようにオレは事件解決に奔走した。

 目暮警部達はとても感謝してくれて、学校のクラスメイトやメディアはオレのことを褒め讃えてくれた。幼馴染の毛利蘭とは喧嘩することはあっても何だかんだ一緒に過ごしてるし、偶にご飯を作りに来てくれる。

 

 高校二年生になって兄貴がいないことに慣れた頃、蘭が空手の大会に優勝した祝と水族館の帰りに事件のトリックを暴くために貸してもらった携帯を誤って壊してしまったお詫びにトロピカルランドに連れて行った。

 

 最初は楽しかった遊園地だったが、何故かホームズの話に蘭の機嫌が悪くなり気分転換も兼ねてジェットコースターに乗ったのだが、そこで事件は起きた。

 何と一緒に乗っていたジェットコースターの乗客の男性の首が切断され亡くなったのだ。

 

 高校生探偵であるオレは、同じくジェットコースターに乗っていた黒服の二人の男を怪しみつつ事件を解決してみせた。

 事件の解決に目暮警部達からはいつものように感謝され、周りの人達からもさすが高校生探偵の工藤新一と称えられた。

 

 空も暗くなりジェットコースターの事件のことをまだ引きずっている蘭を慰めていると、視界の端に怪しかった黒服の男が人気のない場所に走って行くのが見え、探偵として見過ごせず蘭に先に帰るように言って男の後を追った。

 男を追った先には何やら別の男からアタッシュケースに敷き詰めらえた大金を受け取る取引をしていた。

 

 スマホを使い取引の場面を録画し、彼らの取引に夢中になっていると背後から近づいてくるもう一人の仲間に気が付かず後頭部を殴られ意識が朦朧の中で何かの毒薬を飲まされた。

 

 男達が立ち去った後、オレは体中の骨がまるで焼けるような痛みに襲われた。

 あまりの痛みに思わず気を失い、気が付いた時には体が縮んでしまっていた。

 

 保護してくれた警察官を振り払い家まで戻ったオレは、隣の家に居る阿笠博士に助けを求めた。

 最初疑っていた博士もオレが工藤新一だとわかると、これからどうするか一緒に考えてくれた。そして博士はまず、兄貴に電話しようとした。

 オレに何かあった時のために博士には自分の連絡先を伝えていたそうだが……

 

「博士、兄貴には連絡しないでくれ」

「何を言っておるんじゃ新一! 真夜君に話せば何か妙案を出してくれるかもしれんのだぞ!?」

 

 博士の言いたいこともわかる。オレよりも頭のキレる兄貴に相談すれば何とかしてくれるかもしれない。

 だけどそれはダメだ! 兄貴が知れば必ず止めにくるし、事件は警察に任せろって言ってくる!

 これはオレの事件なんだ! オレが解決しなきゃいけない!

 

 博士には、工藤新一が生きていると奴らにバレたらまた命が狙われ、周りの人間にも危害が及ぶとかなんとか言いくるめて兄貴への連絡をさせないようにした。

 

 それからは家から子供の時の服を手に入れ、正体を隠すため変装用に書斎から親父の眼鏡を手に入れた。その時に何故か家に帰ったはずの蘭がやって来てしまい名前を聞かれ、後ろにあった本を見てとっさに江戸川コナンと名乗った。

 その後は、博士の機転でヤツらの情報を集めるために父親が探偵をやっている蘭の家に転がり込むことになった。

 

 まだヤツらのことは何もわかってねぇが必ず捕まえて白日の下にさらしてやる!

 

◆◇◆

 

 相変わらず殺人事件や銀行強盗、爆弾といった多くの犯罪の被害に巻き込まれる俺はついに高校三年生へとなった。一つ年下の愚弟は高校二年生になっているはずなので、ついに原作が始まる。

 これからより多くの殺人事件が起こる。季節は滅茶苦茶になって廻らず、時間はループして時は進まない。

 

 きっと多くの事件が俺を襲うことになるだろう。

 だが、素直に襲われる気などない。今日までにできる限りの対抗策を用意してきた。カンパニーの技術や資産、人脈。大岡家との繋がり。集めてきた刀剣。バイクに運転免許。

 そして……

 俺は窓の外に向けていた視線を部屋の壁に額縁に入れて飾られているつい先日交付された”探偵業届出証明書”に向ける。

 

 探偵業届出証明書とは、読んで字のごとく探偵業をするために必要な証明書。殆どの人は知らないが探偵にも運転免許証や医師免許証のように証明書が必要なのだ。

 とは言ってもコナンの連載が始まったのが平成6年の1994年に始まり、探偵にも証明書が必要になったのが平成19年の2007年なので先にコナンを描いていた青山先生は何一つ悪くない。前世(現実)とは違う青山先生の創ったこの世界(フィクション)では証明書など必要ないかと思ったのだが、調べれば普通に証明書は必要だった。先日毛利探偵事務所に赴いたときに飾ってあったしな。

 

 本当はこんなもの手に入れたくはなかったのだが、エリオの指示により渋々手にいれた。

 証明書の習得によってこの先俺の動ける範囲がだいぶ変わるらしい。まぁ将来探偵になる気などさらさらないが何かと探偵が優遇される世界なら持っていて損はないだろうし、証明書など持っていない愚弟と再会した時にマウントが取れるから損はないだろう。

 

 証明書から視線を外してクローゼットへと足を進めると中から星核ハンターとして活動する際の服を取りだして着替えていく。

 姿鏡には、傍から見ればかなり目立つ和洋折衷の服を身に纏った自分が居る。イメージとしてはFateに出てくる源頼光四天王の筆頭、日本最強の鬼殺しの異名を持つ渡辺綱の第二再臨時の服装に近い、というかそのまんまだ。

 

 漆黒の軍服風の西洋上着に右肩から左腰にかけて伸びた桜の紋章が入った大きなベルト、その上に白い狩衣と呼ばれる平安時代の公家達が着ていた着物のようなものに左肩に白いマントを羽織っている。

 しかし、きっちりと着てはいない。利き手であるみぎ腕は得物がしっかりと振れるように狩衣を片肌脱ぎし、長袖の黒い軍服を肘の所まで捲り上げている。

 

 最初はこんな和洋折衷の軍服では無かった。普通に町中を歩いて行けるスーツ、喪服を用意していたのだが銀狼からダメ出しをくらった。何でも「何かつまんない……もっとおもし―――かっこよくしようよ」とのこと。

 あれでもない、これでもないと着せ替え人形となっていると、途中からカフカとホタルも加わって最終的に今の和洋折衷の軍服へと変わった。

 

 途中刀をメイン武器にするから着物も取り入れようと言われたが着物だと身丈が長すぎるため、羽織で妥当しようとしていた所に刃から狩衣はどうだと言われ気がつけばこのような服装になっていた。

 そんなことを思い返しながら自分の手に目を向けると、震えていた。

 星核ハンターになってから約一年、今日初めて行う任務に緊張で手が震えてしまう。

 

 今回のエリオからの指示は、杯戸町のとあるサプリメント製造工場で作られている違法ドラッグの破棄と首謀者の殺害だ。

 与えられた脚本には麻薬製造人と麻薬商人との戦闘は避けられず、俺は麻薬製造人及び商人達、首謀者を殺害すると書かれていた。

 

 前世、現世含めて俺は初めて犯罪を犯す。しかも殺人だ。

 

 何度か深呼吸をして手の震えを抑えて、机の上に置いてある銀色のアタッシュケースを開ける。

 中にはカンパニーの技術を使って作られた黒いチョーカー型変声器、赤井秀一が沖矢昴の変装の時に使っていたのとほぼ同じ物と正体を隠す用の銀髪のウィッグが入っていた。

 

 変声器を首に装着してスイッチをONにすると「あ、あーあー」と声を出して自分の声が変わっているか動作チェックをする。機能に問題がないと分かると変声器がしっかりと隠れるようにハイネックシャツと軍服の上着の立襟をしっかりと正す。

 

 続いて自分の髪をしっかり隠れるようにウィッグを被って、違和感を抱かれないように変装だとバレないように入念に調整していく。本当はマスクとか用意したかったけどそんな技術など持っていないし、勘の鋭い愚弟や変装の達人達には一瞬で見破られてしまう。

 

 ウィッグと変声器だけでベルモットや怪盗キッドのような完全な別人とはいかないが、鏡に映るのは黒髪で巻き毛がある見慣れた自分ではなくナナシビトの銀河打者が居た。

 傍から見れば誰も俺が工藤真夜だとはわからないだろう。怪盗キッドだってモノクルと帽子だけで素顔を隠すことができてたし、ピンガもウィッグとメガネだけで変装できていたから恐らくいける。

 

 指紋を残さないように革手袋をしっかりと嵌めて、平安時代の人達が付けていた冠ではなく黒い軍帽を被って部屋に飾ってある刀剣とは別に星核ハンターの仕事用にと用意された一振りの刀を手に取る。

 

 チャキっと鯉口を鳴らし抜刀して刀身を確認するが、いつ見ても禍々しく異様な雰囲気を出す刀だと思う。

 一般的な刀剣の様な銀色の鋼ではない、カフカの持つ紫色の刀身のようにこの刀にも色がある。品のある美しい日本刀からかけ離れた禍々しくも気味が悪い薄暗い黄色の刀身だ。

 

 この刀の名は”ヨモツイクサ”。

 

 刃がとある刀鍛冶師から打ってもらったという刀だ。

 ”巡海レンジャー”を詐称した虚無の自滅者を連想させる名前に恥じぬ物凄い切れ味を持つ刀である。何だったら公式コラボしたルパン三世の一味、石川五右衛門の持つ斬鉄剣といい勝負ができるだろう。

 

 これから長い付き合いになるであろう愛刀ヨモツイクサを納刀し、自室を出てリビングに向かうと俺以外の星核ハンターが揃っていた。

 

「……準備できた。カフカ、刃、出発しよう」

 

 今回の任務は俺とカフカ、刃の三人で行う。

 ソファに座り不敵な笑みを浮かべながら紅茶を飲むカフカと瞳を閉じて姿勢を正して座る刃は、立ち上がって車が置いてあるガレージの方へと歩いて行く。その二人の後を黒猫のエリオがついて行く。え、お前も行くの?

 

「じゃあ銀狼、ホタル。行ってくるよ」

「行ってらー」

「……行ってらっしゃい、気を付けてね」

 

 スマホゲームに集中して返事が適当な銀狼に呆れ、どこかぎこちない陰のある笑顔で送り出してくれるホタルに心を痛めつつ先に行った二人と一匹の後を追いかけた。

 

 後部座席に乗り、刃の運転で車は発進した。因みに席は運転席に刃、助手席にエリオ。後部座席に俺とカフカだ。いや、何で猫が助手席なんだよ。

 特にしゃべることもなく車は進んで行き、違法ドラッグ製造が行われている杯戸町のとあるサプリメント製造会社の工場近くまで来た。

 

「あそこが今回の襲撃場所よ」

「見た目や社名は健全な工場だというのに……」

 

 立体駐車場に車を止めて襲撃場所たる工場を確認する。

 サプリメント製造会社の名を騙った違法ドラッグ製造工場。一年ほど前から十代から二十代、特に学生の間で流行っている違法ドラッグのサプリMAD。MDMA系の合成麻薬で強い幻覚作用と中毒性を持っており、値段も安い。

 

「東都大学や帝丹大学を中心にかなり出回ってる。最近女子剣道部の後輩からは奥穂高校の剣道部からサプリMADを渡されそうになったと報告を受けた。このまま行けば星穹学園や帝丹高校にも広がるのは時間の問題だ」

「ふーん、その女子剣道の後輩ってあなたに凄く懐いてる一年生のユリって子かしら?」

「そうだが……今はそんな事関係ないだろ」

 

 「ふふ、ホタルが愚痴を零してたわよ」と微笑むカフカは、俺の持つタブレット端末を覗き込む。画面にはサプリMADの写真と銀狼が工場の監視カメラをハッキングして見つけた違法ドラッグ製造の瞬間と袋に詰めてトラックに積み込んでいる映像が流れている。

 

 警察や麻薬取締官でもサプリMADの調査をしているが、手がかり一つすら掴めていない状況だ。彼らは海外からの密輸だと考えているようだが、まさか日本で作られているとは思ってもいないだろう。

 俺達はエリオの未来視を基に銀狼のハッキングなどをして製造場所を突き止めているので彼らの捜査不足ではない。あと一年か二年もすれば情報が煮詰まり海外から密輸されてない情報を掴んで日本で作られているのではないかと睨みをつけるだろう。

 

 しかし、それでは遅いのだ。

 

 このままサプリMADが蔓延し続ければ星穹学園やカンパニーにも被害が出て大きな損害へと繋がる。警察に情報提供して製造人と商人達を捕まえてもらうのも手だが、それだと首謀者を捕えるのに何年もかかる。

 トカゲの尻尾切りでこの工場が潰れても首謀者が残っていればまた麻薬が作らればら撒かれる。そんないたちごっこなどごめんだ。

 

「エリオの見た未来では首謀者の内一人が今日あの工場を訪れる。残りの首謀者は既に銀狼が突き止めてくれている、襲撃が終わったらそいつらも殺す」

「初仕事なのにかなり大変ね」

「本当にな」

 

 これが星核ハンターの初仕事、麻薬組織壊滅。まぁ、いきなり黒ずくめの組織とやり合うよりはマシだと思う。

 

 タブレット端末を車の中へと投げ、カフカを先頭に俺達は麻薬工場へと向かう。

 襲撃と言えば基本的に相手に気が付かれないように不意を突いて襲うイメージがあるが、俺達は真っ正面から堂々と襲う。

 

「おい、君たち何をしている? そんな仮装して、しかもおもちゃなんか持って?」

 

 そして案の定、工場入口にいる警備員に呼び止められた。

 数は二。一人は俺達に声を掛け、もう一人は警備室から様子を伺いつつ手には警報器を作動させるボタンが添えられている。

 

「ごめんなさい、ちょっとこの工場に用があるの。聞いて、仲間の警備員を拘束して」

 

 カフカの言霊によって目が虚ろになった警備員は、俺達のことを無視して警備室へと入る。中に居た仲間の警備員は何か叫んでいたが操られた警備員が持っていた警棒によって気絶させられた。

 

 俺も警備室に入り、暗示から解除された警備員を気絶させて銀狼から渡されたUSBメモリを監視カメラと繋がっている端末に接続する。すると画面に大量のミニ銀狼が現れ画面内で暴れている。

 USBメモリに入っているのはもちろんウイルスだ。これで監視カメラ映像及び警備システム全てが使い物にならなくなった。

 

 警備室から出ると刃がタイヤをパンクさせるスパイクベルトを設置していた。これで一応中と外からの車やバイクを使っての逃走もできない。でもこれはあくまで保険だ。

 

「じゃあ行きましょう。刃ちゃんは配達トラックや車、バイクや自転車といった乗り物の破壊ね。その後中に入る」

「わかっている」

「逢魔は私と中に入って目標の始末よ」

 

 逢魔、それが星核ハンターとしての俺の名前。

 ヨモツイクサとか言う化け物の名を関する刀に和洋折衷の軍服とはいえ日本を大きく連想させる服を着た俺にはぴったりな名前だと思う。逢魔ヶ時、黄泉の国からやってきた……と銀狼には中二病すぎだと笑われたが、他に思いつかなかったのだから仕方ないだろう。

 

 先を行くカフカの後を追い正面玄関へと足を踏み入れる俺達、するとすぐ近くから爆発音が響いた。しかも一度ではなく何度も何度も爆発音が響く。

 

「刃ちゃん、派手にやってるみたいね」

「急ごうカフカ、この爆発音で警察に通報される。エリオの脚本では今から23分39秒後には警察がここに到着する」

 

 いくら爆発が起きれば夜中であっても人の少ない隣の工場などから警察へ通報される。

 エリオの脚本で警察の到着時間はわかるし、犯罪都市に人員を取られてるから警察の到着はかなり遅い。犯罪者視点だと中々都合のいい町だな……

 

「わかってるわ、それに向こうから来たみたいよ」

「……俺がやるよ」

「ふふ、君のパフォーマンスを見せてちょうだい」

 

 爆発音を聞きつけて外の様子を見ようとこちら(正面玄関)へやって来たクリーンルーム用の白い服を着た三人の人間。彼らは俺とカフカの存在に気が付き動かしていた足を急いで止めた。

 

「お前達‼ 一体――――」

「ッ‼⁉ キャァ――――」

「うわぁぁ―――――」

 

 俺達が何者か問い質そうと叫ぼうとする一人を俺は一気に間合いを詰めてヨモツイクサを抜刀し切り殺した。

 目の前で人を切り殺された瞬間を見せられ悲鳴を上げようとする女性の頸動脈と喉を斬って黙らせ、続けて逃げようとする男の首を切り落とす。

 

 時間にして一分も経っていない。その間に俺は人を三人も殺した。

 廊下に転がる三つの死体と辺り一帯を染め上げる赤い血、酸っぱいような臭いが充満する。手には人を斬った感触が生々しく残り、膝近くまである真っ白な狩衣とマントには返り血がべったりとついている。

 

 初めての犯罪、殺人。死体など行く先々で巻き込まれた殺人事件で見慣れてしまったというのに自分が殺してしまった死体は過去見てきた死体よりも気持ち悪かった。

 

「うっ‼ ―――――‼‼」

 

 そして俺は吐いた。胃の内容物をすべて吐き、それでも吐き気は止まらず胃液を吐き続ける。口の中が気持ち悪い。

 それでも俺は何度も何度も深呼吸をして気を落ち着かせる。

 

 わかっていたはずだ。覚悟していたはずだ。カフカからも警告されたはずだ。

 星核ハンターになるという意味を理解していたはずだ。だから……

 

「……聞い「大丈夫だ‼」て」

「大丈夫だよ、カフカ。これは俺が乗り越えないといけないものだ、お前達と一緒に居るために俺が選んだ道だ」

 

 吐き気を無理矢理抑え、ヨモツイクサを床に突き刺して杖代わりにしつつ立ち上がる。

 これから先俺はまだまだ殺さないといけない、こんな所で躓いているわけにはいかない。

 

「行こう、カフカ……」

「……えぇ、行きましょう」

 

 止めていた足を再び進めて俺達は工場の奥へと進んでいく。

 途中何度も従業員と鉢合わせるが、ヨモツイクサで何度も切り伏せる。普通人を斬ると脂で切れ味が悪くなる刀だが、切れ味が悪くならない。むしろ切れ味が良くなっているような気がする。

 

 ヨモツイクサに疑問を抱きながらも逃げ回る従業員と売人達を切り殺し、箱詰めされている麻薬に火をつけ機械はカフカが持っている手榴弾や機関銃を使って破壊していく。

 

「た、たすけ―――‼⁉」

 

 また一人ヨモツイクサの錆にする。

 カフカとは別れて製造人と売人を殺し回っているが、目的の人物である首謀者の一人が見当たらない。カフカの方に居るのかと考えるがエリオの脚本では俺が殺すと書いてあったからこちら側にいると思うんだが……

 

 部屋を出ようとしたその時、廊下の窓ガラスに黒い陰が見えた。

 思わずバックステップで部屋の中に戻った瞬間、廊下からパンッ‼ と甲高い音、銃の発砲音が響いた。

 

 部屋の壁に背中を預けて、廊下の窓ガラスの反射を利用して発砲のした方を確認する。

 そこにはブランド物の服や装飾品を身に纏いつつ手足を恐怖で震わせ、涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながら拳銃を構えている二十代前半の男が居た。

 

「(……見つけた。あれが首謀者の一人)」

 

 探す手間が省けたことに安堵しつつ面倒な状況になったことに思わずため息をつく。

 何で拳銃持ってんだよ、ここはアメリカじゃなくて日本。銃規制の国だぞ、大方麻薬取引で知り合ったヤクザか何かの伝手で手に入れたんだろ。

 

 しかし、困った。相手は銃初心者だと思うが、首謀者との距離は大体7メートル近くある。この距離を刀と銃で戦ったらさすがに銃が勝つ、いくら初心者でも狭い廊下で乱発されたら下手くそでも当たる。

 俺は刃や鏡流のように飛ぶ斬撃など放てないし、ホタルのように銃弾キャッチや毛利蘭のように発砲してから弾を避けるなんて芸当できない。一応狩衣と左肩から覆うように身に着けているマントは防弾だが飛び道具ぐらい持っておけば良かった……次の任務の時には銃を用意してもらおう。

 

「お、おい‼ か、か刀をしゅてて出で来い‼」

 

 スマホを取りだして時間を確認すれば警察が来るまで十分を切っている。メッセージアプリからはカフカと刃からこっちは全員仕留めたとの報告がきている。

 

「き、聞いているのか‼ こっちには銃があるんだぞ‼」

 

 エリオの脚本では俺はこいつを殺すと書かれてた。なら俺はこいつを殺す手段があるということだが、部屋に使えそうなものはないし武器はヨモツイクサだけだ。

 一応倒す方法が無くは無いが、今は時間が惜しい……やるしかないか。

 

 俺はヨモツイクサを手に部屋を出て首謀者の男の方へと向く。男は手を震わせながら銃口を俺に向けている。

 

「さ、さぁ‼ 刀を捨てろ‼」

「何故? 銃を持っているお前の方が強いんだ。降伏させるよりも撃ったほうが得策だろ」

 

 相手を自信付ける言葉をかけながら降伏などせず体を横に反らして左肩をさらけ出し、両手で握ったヨモツイクサの切っ先を後方下段で構える。柳生新陰流、一刀両断の構えで迎え撃つ。

 この構えならば防弾性のマントが盾になってくれる。

 

 一切降伏する気のない俺の姿に血が上ったのか、首謀者の男も()る気が出たようで震えを徐々に納めて銃口を俺に向けてくる。

 

「おい、肘が曲がってるぞ」

「う、うるさい‼」

「俺を殺すんだろう? 肘を伸ばせ‼ しっかり俺の頭を狙え‼」

「ひぃ‼」

 

 小さく悲鳴を上げるも首謀者の男は、俺の指示通りに腕を伸ばして頭を狙う。馬鹿正直に指示を聞いてくれて助かる。しかしそれも仕方がない、辺り一帯は死体の山と川のように流れる大量の血というあまりにも非現実的な光景が広がり、目の前にはその惨劇を引き起こした張本人がいる。

 きっと目の前の男は恐怖と混乱、怒りと興奮で正常な判断ができない。だから俺の指示に順じてしまう。

 

 目の前の男を少し哀れに思いつつ、ゆっくり深呼吸をして余計なことなど一切考えず集中する。一瞬でも判断が遅れたら俺は死ぬ。でも大丈夫、京極さんが言ってた。銃口の向きと引き金の指の動きに集中していれば、弾はよけられるって……

 

 沈黙が廊下を支配する。そして痺れを先に切らしたのは男の方だった。

 引き金の指がわずかに動いたのを確認した俺は地面を勢いよく蹴った。進行方向は真っ直ぐではなく左側へと回って銃弾を回避する。移動したのと同時に右頬付近を風を切り、発砲音と後ろの壁に銃弾の着弾が響いた。

 

 移動した俺を追って男が銃口をこっちを向けて発砲するよりも先に間合いに入った俺の動きの方が速く横一文字に刀を振るった。

 

 目の前には首から上を無くした男の死体が立っており、首からまるで噴水のように勢いよく大量の血を噴出する死体は己の血でできた池に倒れ、打ち上げられた魚のごとく数度痙攣した後完全動かなくなった。

 

 何とか銃弾を避けることができたことに安堵の息を吐き、ヨモツイイクサに着いた血を振り払い納刀する。

 辺りを見回して他に生き残りがいないか時間が許される限り捜索したあと、工場を出て先に外で待っていたカフカと刃に合流する。

 

「お疲れ様、逢魔。ちゃんと任務は果たせたかしら」

「あぁ、首謀者の一人の男も始末した。そっちは?」

「こっちも問題ないわ、麻薬の破棄も完了よ。刃ちゃんは?」

「エリオの脚本通りトラックや車の破壊、外に逃げ出した者は一人残らず処理した」

 

 刃が炎々と燃えるトラックの方へと視線を向ける。俺とカフカも視線を追うと何人もの切り殺された人間が転がっていた。

 全員仕事はキッチリこなせたようだ。スマホで時間を確認すれば警察が到着するまでもう時間がそんなにない。

 

「なら、残りの首謀者を殺しに行こうか」

 

 遠くから聞こえるパトカーのサイレンを背に俺達は、エリオの待つ車に乗り込み残りの首謀者達の居る住所に向かって走り出した。

 

 翌日の新聞とニュースには、杯戸町で麻薬密造していたサプリメント製造会社が襲撃⁉ 工場の従業員や首謀者らしき人物らが全員殺害⁉ と大々的に報道されていた。




 ちょっとした真夜君の紹介
 容姿は母親の有希子似で黒髪長髪でくるくるとした巻き毛がある。
 新一と一緒でミステリー本も好きでお気に入りは東〇圭吾さんの作品、特にマスカレードシリーズが好き

真夜くんが 特殊能力を使うのはありなし?

  • 星核ハンターなんだし使ってイイよ!!
  • コナン世界で生まれたからなしで実力でいけ
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