冒険します。冒険者なので。   作:POTROT

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閃燕のような

「……ランクアップ出来るようになってやがるなァ」

「何だと?」

 

 ステイタス更新中、テスカトリポカが出し抜けに聞き捨てならないことを言った。

 ランクアップだと? 俺が? Lv5に?

 

「……心当たりがないぞ」

 

 ここのところ最近は迷宮に潜っていないし、冒険をしているつもりも無い。

 命を張るような場面も殆どなかったはずだが、一体何が偉業と見なされたのだろうか?

 

「ンー……元々階層主(アンフィス・バエナ)とか(アレン)との戦いである程度は溜まってたが……昨日で随分と稼いだっぽいなァ」

「昨日……ああ、(オッタル)か」

 

 そう言われてみれば、確かに昨日の戦いは偉業として見なされても可笑しくはない。

 俺としてはどうせ死にかけても治してくれるだろうから大丈夫かと、割と軽い気持ちで臨んでいたが、しかし俯瞰して見れば確かに格上(Lv6)との命をかけた真剣勝負(ガチバトル)である。

 そして結果的に勝負にこそ負けたものの、格上(Lv6)格下(Lv4)がある程度まで追い詰めたのも事実。

 少なくない上位の経験値(エクセリア)を得ていても、納得はできる。

 

「しかし……」

 

『カイ・グレイル

 

 Lv4

 

 力:E409→E454

 耐久:E427→E467

 器用:F378→E426

 敏捷:E498→D521

 魔力:I54→H112

 

【狩人】:G

【耐異常】:E

【精癒】:I→G

 

 魔法

 

 【ブラウフラムダス・トゥーダス】

 

 ・付与魔法(エンチャント)

 ・炎属性

 ・詠唱式【燃え立つ意志よ、湧き上がる闘志よ、我が大願を今、ここに】

 ・解放式【爆ぜよ】

 

スキル

 

 【英雄願望(ジークフリート)

 

 ・格上との戦闘時、全能力値(アビリティ)に超高補正。相手が竜であれば更に超高補正。

 

激戦熱闘(グランド・バトル)

 

 ・戦闘時間が長引くほど全能力値(アビリティ)上昇。

 ・戦闘開始から一定時間で【再生】【連戦】を一時発現。

 

乱斬連打(ラッシュ・ラッシュ・ラッシュ)

 

 ・任意発動(アクティブ・トリガー)

 ・前回攻撃時から一定時間内に攻撃が命中した時、精神力(マインド)消費で【力】上昇。効果は重ねがけ可能。一定時間攻撃が命中しなければ強制解除。

 ・効果継続中、装備武器に不壊属性(デュランダル)付与。』

 

 

「ま、こんな能力値(アビリティ)じゃァまだダメだなァ。少なくとも全部Sには入れてェ」

 

 テスカトリポカの言う通りだ。まだまだ俺のステイタスは低すぎる。

 ここ1週間、数時間おきに殺意全開で突っ込んで来る(アレン)のおかげで総成長値100オーバーは何度も記録し、先日のオッタルとの死闘のおかげで今日は総成長値200オーバーを記録したが、しかしこの状態からランクアップとなるとあまりにも勿体無い。

 これまたテスカトリポカの言う通り、最低でも全能力値(アビリティ)をSまでは持って行きたい。

 

「取り敢えず、フレイヤ神には引き続き猫を送ってもらうとして……いや、今は少し難しいな。となると、また迷宮に……いや、それもダメだ。推定Lv6、7との会敵の好機(チャンス)は逃せない……」

「ん? オイ待て、何だそれは。話せ」

「ああ、ちょうど昨日、オッタルから聞いた話なんだが────」

 

 テスカトリポカに昨日オッタルから聞いた話を伝える。

 

「……成程なァ。随分とまァ面白そうなコトになってやがる。確かにオマエの言う通り、それを逃す手なんざねェ。まだしばらく地上にいろ。だが能力値(アビリティ)を伸ばす手段が無いってのも事実だ。ってなると……」

 

 パチン、と。テスカトリポカが指を鳴らす。

 

「道場破りだな」

「何だと?」

 

 再び放たれた聞き捨てのならない言葉にバッと振り向く。

 その視界の先にいたテスカトリポカは、これ以上無いくらいに良い笑みを浮かべていた。

 

 

 ■

 

 

「……と言うわけなんだが、どうにかならんか」

「僕としては君がもう僕たちと同じ位階まで上がれると言う事実に驚きを隠せないんだけれど……まぁ、どうにかと言われても難しいよね」

「だよなぁ……」

 

 テスカトリポカから出された指令。それは、適当な派閥の門戸を叩き、適当に戦って来いというものだった。

 しかし、当然ながらそんな事を気軽に出来るはずもない。

 下手をしなくても派閥間の戦争待ったなしであるし、最悪ギルドからの懲罰(ペナルティ)も覚悟しなければならない。そしてそれは出来る限り避けたい。

 

 であるので、俺はアテのある派閥を回ってみる事にして、まず最初にこの【ロキ・ファミリア】を訪れる事にした。

 ここで受けてくれればそれで良いし、そうでなくてもフィンが便宜を図ってくれたり知恵を貸したりしてくれれば良いなと思ったからだ。

 しかし結果としてはこの通り。やはり無理であるらしい。

 

「まぁ、うん。提案自体は嬉しくはあるんだけどね。だが、時期がいけない。近頃闇派閥(イヴィルス)の活動が活発になって来ている上、例の強者の存在もある。この街の実力者には……それこそ、君と対等以上に戦えるような者には、いつでも動けるようにしていてもらいたい」

「だろうな。戦闘に集中していて事態に気付きませんでした、模擬戦中に負った怪我の治療をしていて動けませんでした、では笑い話にもならん」

 

 つまるところ、『今はそれどころではない』のである。

 昨日まで、あるいは一昨日までであれば、まだ俺たちにも余裕というものがあった。

 だが昨日になって敵にLv6、ないしLv7の敵がいると発覚し、状況は変わってしまった。

 

 敵がLv6だったならばまだ良い。フィンやガレス、リヴェリアなどと言った第一級冒険者でなくとも、第二級冒険者が集まれば十分に足止めはできるし、何よりこちらにもオッタル(Lv6)が居る。

 だがLv7となれば最悪だ。第一級冒険者でなければ、或いは俺とアリーゼのような格上補正持ちでなければ時間稼ぎにもならない。そして昨日のオッタルの証言から考えれば、可能性が高いのはこちらの方。

 故に現状は、俺たちのような存在には出動待機をしてもらうのがベストなのだ。

 

 そして常に最悪を想定しつつ、最善の選択を選び続けるべきなのは戦術の基本中の基本である。

 であるのならば、フィンにはそうしない理由など無い。

 

「それに、別件もあってね」

「……また何かあったのか」

「ああ。君のおかげで発覚した、撃鉄装置の窃盗……その使い道に、ようやく見当がついた」

「ほう」

 

 流石はフィン。俺ではさっぱりわからなかった事を思い付くか。

 きっと、これが年の功と言うやつなのだろう。頼りになる。

 

「で、何だ」

「爆弾さ」

「……ああ、成程、そうなるか」

 

 完璧に納得した。

 そもそもとして、闇派閥(イヴィルス)の構成員は我々と比べて低レベルの者が殆どだ。

 それはかき集めた構成員が戦闘の訓練も受けていないような一般人であったこともあるが、一番の要因は最も手っ取り早くレベルを上げる手段であるダンジョンを使えなかったからだろう。

 

 しかしそれに対して、俺たち冒険者はダンジョンの利用が可能であり、上級冒険者の数は闇派閥(イヴィルス)のそれとは比べ物にならないことは間違いない。

 故に闇派閥(イヴィルス)に求められるのは低レベルでも確実に上級冒険者に痛手を与える事の出来る手段であり、爆弾は確かにその手段として最適であると言える。

 

「だから上級冒険者の位置はなるべく隠しておきたい、と。そう言うことか」

「ん? ……まぁ、そうなる……のかな?」

「……歯切れが悪いな。爆弾を警戒しているのではないのか」

「いや、それもそうなんだが…………いや、待ってくれカイ。多分だが君の考えと僕の考えに相違がある。君の考えを聞かせてくれないか」

「別に構わんが……そうだな、俺が今考えているのは、閃燕(イグアス)のような運用法だ」

 

 下層域に出現する怪物、閃燕(イグアス)

 下層の壁や天井に留まり、ノコノコとやって来た冒険者目掛け、命をかけた一撃限りの突貫を繰り出す、まるで矢のような怪物だ。

 アレは一匹一匹はそこまで脅威でも無いが、数十匹数百匹が集まっていたのならば、Lv3、Lv4のパーティでも全滅しかねないだけの殺傷力を持つ、天然の即死罠と化す。捨て身の突貫とはそれほど恐ろしいのだ。

 

 そしてそれを恩恵を受けた人間が、十や百では利かない数で、爆弾を抱えてやって来るのだ。

 今までに盗まれた数の撃鉄装置がそのまま爆弾になっているとして、その被害はゆうに千を超えるだろう。

 

 そして何より恐ろしいのは、これの撃鉄を握るのが人間であると言う点だ。

 人間は知恵が回る。知恵を回す事で、あらゆる手段で以て目標に近づく事ができる。相手に最も痛手を与えられる瞬間に起爆する事ができる。逆に起爆しない判断もできる。

 無論、俺たちの行動次第で予防、阻止は出来るだろうが、それでも甚大な被害は避けられないだろう。

 

「……………………………………言いたいことはわかった。わかったが……しかしカイ、君自身も確かに言っただろう。それをやるのは人間であると。であるなら、仮にそうであるとして躊躇というものが生まれるんじゃないかい?」

「無いな」

 

 首を横に振る。

 

「……続けてくれ」

 

 勿論、全員が全員、躊躇いなく起爆できるかと聞かれれば否だろう。

 しかし、闇派閥(イヴィルス)の構成員は皆()()()()()()

 ここ一週間で……正確にはあの工場襲撃の時、実際に闇派閥(イヴィルス)の構成員と接触して理解したが、アレは俺の父親と同類だ。自分の信ずるものに狂ってる。

 だから正義が何だの、愛する人が何だの、使命が何だのと、自分がやっている事を正当化することで幾らでも悪虐を働くことができるのだ。

 

 だから人を焼く事もできるし、工場を焼く事もできる。

 そんな事が出来るのだからきっと自分ごと敵を巻き込んで爆破する事もできる。

 というかむしろ命を賭して正義に殉したとすら思うのではないだろうか。

 頭がおかしいのだから、そう思い込むことなど造作もないだろう。

 

「……成程、理に適っている。ありがとうカイ。やはり君という友を持ててよかったよ。今すぐ冒険者全体にこの事を告知しよう」

「秘密裏に、かつ必要最小限で、か」

「ああ、そうなる。……ところで一応聞いておきたいんだが、どうして君はその可能性に気付けたんだい?」

「……ん? ああ、まぁ……強いて言うなら知識……だな」

 

 父親のような人間を知っていた。

 閃燕(イグアス)のような怪物の存在を知っていた。

『炎』と『爆弾』の強さを俺自身が身をもって知っていた。

 これらの知識を組み合わせただけだ。

 

「ははは……やっぱり11歳とは思えないなぁ……」




Topic:カイもフィンも『構成員の善性を信じて自分から近づきに行く上級冒険者』の存在を想定していなかったので、多分普通にアーディは死ぬ。筆者の機嫌次第で生き残る。
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