冒険します。冒険者なので。   作:POTROT

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両親の影

「あ、【蒼き猛火(アズール)】だああああああああああああああああああっ!?」

 

 燃え上がる炎と血潮で赤黒く染まってしまった街を駆け抜ける。

 道を塞ぐように立ち塞がる闇派閥(イヴィルス)共を、蒼炎のうねりで以て薙ぎ払いながら、ひたすらに前へ。

 俺の通った場所が道になる。それは無辜の民衆や傷付いた冒険者達にとっての、救いの道だ。

 立ち止まる理由はない。立ち止まって良い理由はない。ただひたすらに前へ、前へ、前へ。

 

「【蒼き猛火(アズール)】ッ!? こ、こっちだ! 救援を頼む!」

「馬鹿な!? 奴はバベルに陣取っていたはず!?」

「【蒼き猛火(アズール)】!? 【蒼き猛火(アズール)】だと!? Lv4冒険者だ!」

「助かった! 助かったぞおおおお!!」

「ひっ、怯むな! 至近距離の爆破であればLv4と言えど────ぐあああああああ!?」

 

 剣を振い、敵の首を撥ねて殺す。瓦礫を吹き飛ばして下敷きになっていた人達を助け出す。

 炎を飛ばし、敵を焼き殺す。殺されかけていた同業者を救い出す。

 鎧の硬さを活かした蹴撃で以て、敵の頭蓋を粉砕する。囲まれ、嬲られていた民間人を助ける。

 

 走りながら並行して、殺し、助ける作業を無限回繰り返す。

 もはや殺した敵の数も助けた味方の数もわからない。

 ただわかるのは、【激戦熱闘(スキル)】がぼんやりと示す戦闘継続時間。

 

 それを信じるのなら、俺は既に三十分以上の時間をこれだけの事に費やしている。

 その間に一体何千回の爆発が起きたか? 俺の与り知らないところで何人が死んだか?

 

 湧き上がるのは焦燥と不安。

 この戦いは一体いつまで続くのか?

 この戦いで一体どれだけの人間が命を散らすのか?

 この戦いが終わった時、オラリオは『オラリオ』のままでいられるのか?

 

「【爆ぜよ】ッ!!」

 

 しかし、今はそんなことを考えている場合ではない。不安ごと吹き飛ばすように、俺は(ほのお)を振るう。

 既に疲労も精神疲弊(マインドダウン)も遠く彼方に置き去った俺の(ほのお)は、一振りごとに十人単位で闇派閥(イヴィルス)共を粉砕してゆく。

 

「とっ、止めろ! 止めろおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」

「まっ、魔法を撃て! 魔剣もだ!? これ以上、【蒼き猛火(アズール)】に暴れさせるなああああああああああああああ!?」

「殺せ! 殺せぇええええええええええええええええええええええ!!」

 

 数えるのも億劫になるような闇派閥(イヴィルス)構成員達が、俺目掛けて必死の突貫を繰り返す。

 それらを盾にするように何十と連なった魔法円(マジックサークル)が俺を向き、炎や雷、氷のような超自然的な暴威が、俺目掛けて放たれる。

 しかし、俺を仕留めるのにはまだ足りない。

 

【爆ぜよ】オオオオオオオオオオオオオオッ!!

 

 一切の出し惜しみもせず、最大火力の(ほのお)を、解放式と共に地面に叩きつける。

 

「「「ぎゃあああああああああああああああああッッ!?」」」

 

 吹き荒れるのは蒼い大爆発(ブルー・エクスプロージョン)

 壮絶な爆破音を伴った巨大な蒼い火柱が、瓦礫を巻き込み、人も魔法も纏めて灰燼に帰す。

 

「うおおおおおおおっ!?」

「なんだありゃあああああああああ!?」

「蒼い炎……【蒼き猛火(アズール)】かぁ!?」

「え、えげつねぇ……」

 

 火炎石による自爆とは比べ物にならない規模の大爆発と共に現れた、天まで届くほどの巨大な蒼い火柱は、赤く染まったオラリオの空をほんの一瞬だけ蒼く塗り返した。

 しかしほんの一瞬と言えど、天の異変には誰もがその意識を向けるもの。

 オラリオ中の注意が、俺の方を向いたのを確信し、俺は声を張り上げる。

 

「敵の数とて無限ではない!!! 俺に続け!!! 敵を粉砕しろォ!!!」

「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!!」」」」」

 

 鬨の声に、冒険者達が戦意を取り戻したのを肌で感じ取りながら、再び街を駆ける。

 

 

 ■

 

 

「……む? アレは……」

 

 男が、足を止める。

 全身を漆黒の鎧に包み、巨大な黒剣を提げた、真紅の外套(マント)を揺らす、偉丈夫。

 ただ悠然と、立ち塞がる冒険者(ごみ)の血と肉で以て作り上げた赤絨毯の道(レッドカーペット)を歩むその男が、蒼く染まった空を見上げて、初めて立ち止まった。

 

「よそ見してんじゃ────ごぉァッ!?」

 

 剣を下ろし、天を見上げた無防備な姿に飛びつくのは、銀の槍を携えた猫人(キャットピープル)

 アレン・フローメル。都市最強派閥(【フレイヤ・ファミリア】)の幹部の名に恥じず、Lv5の位階と都市最速の称号を持つその男は、しかし見るまでもないと言わんばかりに天を仰いだままの男の拳の一振りで、そこらのゴミと変わらないように吹き飛ばされた。

 

「……ッ、貴様……ッ!!」

 

 一部の隙もなく剣を構え、その一部始終を見つめていたのは、鈍色の猪人(ポアズ)

 都市最強。Lv6、オッタルだ。

 

「……おい。クソガキ。アレは何だ」

「答える義理などあるものか……ッ、アレン!!」

「ぐ、お……こ、殺す……絶対に殺す……!」

 

 プランと右腕を力無く垂らしながらも、戦意を漲らせて銀槍を構えるアレン。

 

「アレン! 逃げろ! そしてフレイヤ様にヤツの存在をお伝えしろ!」

「なっ、テメッ……!?」

「早くしろ! お前があの方の眷属であるのならば! この俺をほんの少しでも団長と認めているのならば! 早く!」

「……ッ」

 

 ギリ、と。歯を食い縛りながら。

 しかし初めて見る猪人(ポアズ)のその焦燥と危惧に満ちた顔に尋常ならざる気配を覚え。

 敬愛する女神と目の前の敵とを天秤にかけ、苦渋の決断の末にアレンは退いた。

 

「何度も質問させるなよ。アレは、何だ」

「答える必要は、無いッ!!」

「そうか。ならば……」

 

『黒塊』が、剣を構える。

 鈍重な威圧感が、オッタルの双肩にのしかかる。

 

「以前のように。貴様を打ちのめしてから向かうとしよう」

 

 

 ■

 

 

「この雑音……いや、あの炎、あの魔法は……」

 

 天を仰ぐ。

 静けさを纏う女が。

 爆音と剣戟。悲鳴と怒号。

 ありとあらゆる雑音の中で、ただ一人。

 まるで外界から切り離されたが如く、静けさを纏った女が。

 

「何をよそ見などしておる!」

 

 そこに振り下ろされるは、【重傑(エルガルム)】の放つ渾身の一撃。

 超重量の戦斧を、重力と遠心力の力を借りて叩きつけるそれは、紛うことなき必殺撃。

 防御などできるはずもなく、ここまで接近されればもはや回避も不可能。

 ほんの一瞬の後、女は肉塊と成り果てる。

 そんな確信を抱くガレスに、しかし女はその一撃を跳ね除けた。

 

「【福音(ゴスペル)】」

「────ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!?」

 

 たったの一言(ワン・ワード)

 それだけで、ガレス・ランドロックはゴミのように吹き飛ばされた。

 

「ッ……【吹雪け、三度の厳冬──我が名はアールヴ】!」

 

 瓦礫に埋まり、苦悶の声を上げるガレスを横目に、翡翠の長髪のハイエルフ。リヴェリアは魔法円(マジックサークル)を展開した。

 多大な魔力が込められたそれは眩い光を放ち、魔力を感じることが出来る者であるのならば誰しもが震え上がるような、凄まじいまでの『余波』を放つ。

 しかし、目の前の女はただ冷ややかにそれを見下ろすのみ。

 

「【ウィン・フィンブルヴェトル】!」

 

 放たれるのは三条の吹雪。

 射程内の範囲全てを銀世界に誘う猛烈な氷波が女に襲いかかる。

 だが。

 

「【魂の平穏(アタラクシア)】」

 

 再び一言(ワン・ワード)

 それだけで、リヴェリアの魔法はまるで幻影のように消え去る。

 本当に、最初からそこに無かったかのように。

 

「ッ……!?」

 

 あまりにも有り得ざる現象。

 しかし、リヴェリアはそれを知っていた。

 それを引き起こすことのできる、唯一の人間を知っていた。

 それは、たった今復帰したガレスも同様である。

 

「お前は……ッ」

「まさか……何故……ッ!?」

 

 答え合わせをするかのように風が吹き、女のフードを外す。

 現れたのは、灰色の長髪。顕になるのは、閉じられたままの瞳。

 

「私には用ができた。退け」

「何を……ッ」

 

 傲岸不遜に。まるでそうするのが当然であると言うかの如く、王族(リヴェリア)に命令する。

 

「【福音(ゴスペル)】」

「ぐああっ!?」

「おおおおおおっ!?」

 

 ささやかな抵抗は、鐘の音と共に肉体ごと吹き飛ばされた。

 

 

 ■

 

 

「かつての大神(ゼウス)の眷属にして、今は闇派閥(イヴィルス)の使徒! ザルドが最強の冒険者を討ち取った! 讃えるのだ、同志よ! そしてオラリオを、絶望に突き落とせえええええええええええええええええええええええ!!」

「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」」」

 

 信じ難い鬨の声が、オラリオ中に響き渡る。

 最強の冒険者の、オッタルの敗北。その知らせに多くの冒険者が動揺し、困惑し、絶望する中。

 俺は、声のする方へと全力で駆け出した。

 

 オッタルが負けたとなれば、それは決して雑兵の手では無い。

 ザルド。それがオッタルを打ち負かした男の名。かつてゼウスの眷属だったと言う男。

 

「……」

 

 成程、と。内心で納得する。

 男神(ゼウス)女神(ヘラ)。その両派閥の伝説は、よく伝え聞くところだ。

 ロキやフレイヤも、散々にやられたと言う。

 その眷属ならば、Lv7であってもおかしくは無い────

 

「ッ!!!?」

 

 突如、猛烈に嫌な予感が全身を駆け巡る。

 俺は自身の直感がそうさせるままに剣を上方に構え、そして曲がり角の死角から繰り出された大剣による一撃を受け止めた。

 

「ぐうっ!」

 

 オッタルのそれとは比べ物にならない程に強大な【力】に呻きつつ、しかし超向上した能力値(アビリティ)で以て横へと受け流す。

 しかし当然ながら、それで終わりのはずがない。その次の瞬間には第二の攻撃が繰り出される。

 規格外の【力】で、しかし相応の【器用】さを孕んだ、まさに『Lvが違う』攻撃。それを二発、三発と、着実に、堅実に、しかしギリギリで凌ぐ。

 五発目を防いだタイミングで、ようやく空いてくれた隙に反撃を叩き込む事も、しかし苦し紛れのそれが格上に通用するはずもなし。鎧を巧みに使って容易に弾かれてしまった。

 

「【爆ぜよ】……ッ!」

 

 蒼炎の爆発で以て距離を取り、剣を構えて目の前の男を観察する。

 黒い鎧に、黒い兜、たなびくマント、巨大な剣、ただならぬ雰囲気。

 間違いない、コイツがザルドだ。

 そんな確信を胸に、戦意を滾らせる俺だが、しかし男は静かにその剣を下ろす。

 少なくとも今この瞬間に、向こうからこちらへ攻撃を仕掛けるつもりは無いらしい。

 

「……」

 

 しかし、構えを解いていたとしても、向こうがその気になればいつでもこちらに対して先手を取る事ができる。

 Lv7とは、それだけの相手なのだ。

 故に、警戒は怠らないし、怠れない。一瞬の気の緩みすら、致命に直結してしまうからだ。

 

「小僧。名は?」

 

 そうして剣を構えたままに沈黙していれば、目の前の男がゆっくりと口を開き、俺に向けてそう問いかけた。

 

「……カイ・グレイル」

 

 嘘をつく必要もないと思ったので、正直に自らの名を名乗る。

 すると、男は得心したように頷いた。

 

「……成程、どうやら本当にあの二人のガキらしい」

「ッ! 俺の両親を知っているのか!」

 

 あまりにも聞き捨てならない台詞が飛び出してきた事に、思わず叫んでしまう。

 

「知っている。特にお前の父親とは何度も手合わせをした」

「……母は」

「……あまりそちらの方は口にしたくないのだがな。しかしまぁ、良いだろう。お前の母親は────」

「【ヘラ・ファミリア】」

「!」

 

 弾かれるように上を向けば、民家の上に、その女は立っていた。

 黒色のドレスを纏った、灰色の長髪の、瞳を閉じた若い女だ。

 

「【ヘラ・ファミリア】……? 俺の母親は女神ヘラの眷属だったのか!?」

 

 再び、叫ぶ。

 

「本当に知らないのか、お前は。自分の両親について」

「……母は顔も、声も知る前に死んだ。父親は俺に物を教える以外は惚気しか話さなかった。両親の名前すら俺は知らん」

「………………成程な。うん」

「……はぁ……」

 

 俺が両親について語ると、二人はそれぞれ呆れるような反応を示した。

 ……しかしどうやらこの反応から察するに、知り合いであったと言うのは本当の事らしい。

 

「……お前の父親の名はウルヴァン・グレイル。【テュール・ファミリア】所属。Lvは6、称号は【剣聖(ソードマスター)】。俺の膝を幾度となく土で汚した男だ」

「お前の母の名はエルナ・ミィルス……いや、エルナ・グレイルと呼んでやろう。所属は【ヘラ・ファミリア】。Lv7。称号は【天姫(てんき)】。縦横無尽に空を駆け、天の覇者とも呼ばれた女だ」

「ウルヴァン……エルナ……」

 

 噛み締めるように、その名を呟く。

 両親の名前をまともに聞いたのは、初めてだった。

 しかし、そんな俺の感傷など知った事ではないとばかりに、ザルドは剣を構える。

 

「さて、もう茶番はこの程度でいいだろう。さぁ、見せてみろカイ・グレイル……我が宿敵の置き土産! 貴様がアイツの子だと言うのならば、その力を存分に見せてみろォオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

「ッ、お、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

 グン、と。その衝撃で都市の石畳に放射状のヒビが入るほどの凄まじい勢いで踏み込んで来るザルド。そして繰り出すのは実にシンプルな横薙ぎだ。

 一段と炎を猛らせ、俺はそれに応じる。

 

「ッ!」

 

 横薙ぎに振るわれる剣の下を潜り、敵の懐へと入り込み……それに反応したザルドが空いた片手で俺を掴み上げようとする。

 俺はそれを回転するように回避して、ザルドの背面に周り、その無防備な背中に剣を叩きつけた。

 しかし、絶対的な【力】が足りない。俺の力ではその一級品であろう鎧には傷をつけることすら叶わず、出来たことといえば姿勢をほんの少し崩す程度。

 

「ほう!」

「ぐ、おっ!」

 

 振り向きざまに払われる剣を、今度はその表面に自らの剣を滑らせることででその軌道をずらし、その勢いを利用して攻撃に転じる。

 しかし、それもまた巧みな鎧捌きで以て弾かれた。

 それを認めた瞬間に、俺は全速力で以て後ろへ下がる。

 

「なかなか筋がいいじゃないか!」

 

 相当な速度で後退したはずの俺だが、しかしザルドは難なく追いついて来る。

 当然と言えば当然だが。完全に身体能力の差で負けている。

 とは言え、ペースがこちら側にある事は間違いない。

 攻撃。防御。攻撃。攻撃。回避。

 敵の攻撃を防御し、受け流し、回避し、そして確実に相手が嫌だと感じるであろう場所へと攻撃を叩き込む。

 時には重い一発を。時には軽い三発を。

 緩急をつけながら、拍子(リズム)速度(テンポ)を変えながら。

 ひたすらに自分本位に攻撃を続けてゆく。

 

「成程、懐かしい! アイツの剣だ! アイツの戦い方だ! 覚えている、覚えているぞ!」

 

 嬉しそうに声を上げるザルド。

 その声に、『覚えている』と言う発言に、俺は冷たい物を覚えた。

 そう、そうだ。ザルドは俺の父親と──俺の剣の師と何度も剣を交えたと言った。

 であれば、俺の剣に対する戦い方を、既に知っているはずなのだ。

 

「さぁ、これはどうする!」

「ッッ!!?」

 

 そう言ってザルドが繰り出すのは、ただただ力任せで乱雑な回転斬り。

 空気ごと喰らうようにして放たれたそれを、俺はバックステップで回避する。

 すると、それを読んでいたようにザルドはすかさず剣撃を繰り出した。

 体勢は崩れ、踏ん張りが利かない今の状態では回避不可能、防御不可能の一撃。

 恐らく父との戦いの最中生み出した、父を倒すための技なのだろう。

 

「ッ、【爆ぜよ】!」

 

 それを俺は、足元を爆破させて自分が後ろへ吹き飛ぶことにより回避した。

 瓦礫が飛び散り、爆炎の余波を喰らったザルドも大きく後方へと飛び退く。

 

「……成程、そう言えばそうだったな。アイツにしては物足りないと思っていたが、そうか。お前は【天姫(てんき)】でもあるのだった。ああ、良い。良いぞ。あの猪なんかよりもよほど美味そうじゃあないか」

「……」

 

 ザルドは兜から露出した口元に笑みを浮かべる。

 生命にとっての根源的恐怖を思い出させるような、凄絶な笑みだ。

 

「まだ、これからだ。お前はどれだけ持ち堪えられる? お前はどれだけ耐えられる? さぁ、俺に見せてみるがいい……!」

「持ち堪えられる、だと? 舐めるな。貴様に勝利し、次はあの女の番だ!」

 

 より一層炎を滾らせ、俺は再び一歩を踏み出し────

 

「────【福音(だまれ)】」

「ぐおあッ!」

 

 そして、吹き飛ばされた。

 

「……何のつもりだ。アルフィア」

「不快。不愉快極まりない。あまりにも粗雑。あまりにも粗末。あの女の炎はこのような物ではなかった」

「……何、だと……!?」

 

 瓦礫を押し除け、立ち上がる。

 

爆散鍵(スペルキー)など必要ない。あの女は何を言う事もなく縦横無尽に空を駆けた。飛竜(ワイバーン)よりも速く飛翔し、蜂鳥(ハチドリ)よりも自由に飛んだ。そして理不尽な空爆と砲撃で以て全てを粉砕した」

「……そうだな。ああ。そうだった」

 

 女が見下ろす。

 見る価値すらないと言わんばかりに。瞳を閉じたまま。

 

「貴様のそれは、ただの雑音だ。不協和音だ。期待外れにも程がある。実に不快だ」

「知るか……ンなモン……ッ!!」

 

 剣を振い、炎の矢を女に向かって打ち出す。

 

「【福音(うるさい)】」

 

 ゴーン、と。鐘の音が鳴り響き、俺の意識はそこで途切れた。




Topic:カイの父親は対人戦ならLv2つ差をひっくり返せるレベルの達人だったが、そのせいで母親(ヤンデレ)に目を付けられた。
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