冒険します。冒険者なので。   作:POTROT

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冒険者会議

「ああ、【煌く蒼(シリウス)】。ちょうど良い所に」

 

 探索から帰ってきた俺に、何やら出待ちしていたらしいギルド職員が声をかけて来た。

 一体何事かと身構えて話を聞いてみれば、何でもギルド長も交え、都市を代表する派閥の主要メンバーを集めた会議が行われているらしい。

 

「……流石に参加した方がいいんじゃない?」

「そうらしい。換金だの何だのは頼んだ」

 

 アーディに荷物の類の一切を任せ、ギルド本部の会議室へ。

 前回はギルド長が俺に責任を被せるために強制的に出席させられたが、今回は正式に都市主要派閥の長と認められての出席になるのだろうか、と。

 そんな事を考えながら扉を開けると、既に大体の面子は揃っているようだった。

 

 しかし、やはりと言うか何と言うか。

 前回の会議と比べ人数が少ないように感じられるし、今いる顔ぶれもかなり変わった気がする。

 いや、事実として変わっているのだろう。

 その理由については、今更考察する必要もあるまい。

 

「おや、カイ。参加できないかも知れないと思っていたが、間に合ったか」

「見た感じギリギリだったようだがな」

「まぁね。事前に通達しておけばよかったんだが、何せ急に呼び出されたものでね」

 

 と、フィンが横目でロイマンを見る。

 俺もそちらの方に視線を向けてみれば、見られている事に気づいたのか、ロイマンが唾を飛ばして喚き出した。

 

「し、仕方ないであろう! 事態が事態だったのだ! どこでひと段落付けられるかなど、分かったものではなく……スケジュールだって、これでも無理矢理空いた時間を使ってだな……!」

「まぁ、その辺に関しては仕方ないと思うが……それにしても時間がかかりすぎな気もするがな」

 

 2週間だぞ2週間。

 大抗争が終結してから、もう2週間以上も経っている。

 情報収集だの詳細な被害状況の確認だのに関しては神会(デナトゥス)時点である程度集まっていたらしいし、このような会議を開くのならもっと早く出来ただろうに。

 

「慎重にならざるを得なかったのだ! あのような事件が起こり、もはやどこに闇派閥(イヴィルス)の者が潜んでいるか分からん状況なのだぞ!」

「そうか……まぁ、うん。それで納得しよう。こんな下らない事で討論をする気は無い」

 

 そう言って、俺は空いていた席に着く。

 

「それで? 開始はいつだ?」

「……未だ席に着いていなかった主要派閥は貴様の所だけだ。たった今から始める。先ずは資料の配布からだ」

 

 と、そう言ってロイマンが手を叩くと、何やら冊子を持ったギルド職員達が入って来て、それぞれの目の前に置いていく。

 

「それは神会(デナトゥス)に提出した情報をより詳しく精査し、都市外の状況についても現状把握している事を纏めたものだ。まぁ、詳しい数値など貴様らにはどうでも良い事であろうがな」

 

 息を吸って吐くように毒も吐いたロイマンであるが、しかし実際どうでもいいので仕方ない。

 

「故に貴様らが把握しておくべきは冊子の後半。都市外における闇派閥(イヴィルス)の足跡と動向だ」

 

 言われるままに冊子後半のページを開き、そこに記された内容を見る。

 

「……広いな」

 

 そう呟いたのは、フィンの隣に座ったリヴェリアだ。

 事実彼女の言う通り、この冊子に書かれている範囲ですら闇派閥(イヴィルス)の活動範囲は規模にこそ差はあれど世界のほぼ全域にまで広まっている。

 よく見てみれば、一部のエルフの里にすら手を出しているらしい。

 

「その通りです。こうして調べてみると、連中の行動範囲はあまりにも広すぎたのです」

「……成程、言いたい事は理解できた気はするね」

「残党どもがいくらでも残っとる、って事か。厄介じゃのう」

 

 この資料を見て、世界各地に残党勢力が残っている、と考えないのには無理がある。

 連中は人心掌握に長けていた。

 それこそ各地の有力な者達を狂信させ、作戦に協力させる事が出来る程度には。

 

「……しかし、だからどうする。各地に残党勢力がいるかも知れない、それは理解した。その上で我々にどう動けと言うのだ、貴様は」

 

 高圧的な態度でロイマンに対し質問を投げつけるのは、【白妖の魔杖(ヒルドスレイヴ)】、ヘディン・セラルド。

 その側にオッタルは居ない。

 ……そう言えば、アイツは王国(ラキア)の侵攻の対処に駆り出されたのだったか?

 

「僕もそこは気になる所だね。まさか、怪しい人々を徹底的に叩いてこい、なんて言うつもりは無いだろうね?」

「当然に決まっておろう! ……というか、元よりこの件に対してこちらから行動は出来ん」

「……何だと?」

「黒と断定できん以上は泳がせるしか無いのだ。それが限りなく黒に近くとも、未だに灰色であるのなら、我々は手出しできん。我々が貴様らを集めたのは、水面下で動いているであろう奴らに気を付けろと警告するためだ」

 

 妥当な判断だな。

 怪しいから処罰する、なんて事が罷り通ってしまえば、法は機能しなくなる。

 となれば、決定的な証拠がない以上は静観するしかあるまい。

 

「うーん……アストレア様なら何とか出来ないかしら。こう、正義の威光的なパワーで」

「下界に降りた神々がなぜ全知零能と言われているのか理解してから発言しろたわけ」

 

 なんか戯言が聞こえてくるが、聞かなかったことにする。

 やりたい放題の主神を持つ身からすると耳の痛すぎる話なのだ。

 

「……で、ロイマン。君の言いたい事はわかったけど、まさかそんな事ひとつのために僕らを呼んだわけじゃないだろう?」

「当然だ。今回私が貴様らをここに集めた本命の理由は、貴様らに『強制任務(ミッション)』を課すためだ」

「……ふむ」

 

 ……これはまた、面倒な事になった。

強制任務(ミッション)』。文字通りの強制的な任務。

冒険者依頼(クエスト)』がお願いならば、『強制任務(ミッション)』は命令であり、達成できなければギルドから懲罰(ペナルティ)が加えられる。

 ここで嫌なのが、『強制任務(ミッション)』では『冒険者依頼(クエスト)』と異なり、依頼者側から報酬が出ない事だ。

 現在、金が入り用であるウチの派閥にしてみれば、金を稼げない『強制任務(ミッション)』など、最悪も最悪であるのだが……

 懲罰(ペナルティ)で金を持っていかれるのも嫌だ。真面目にやるしかあるまい。

 

「まず【ロキ・ファミリア】と【ガネーシャ・ファミリア】、【アストレア・ファミリア】だが、貴様らは連携して都市内の闇派閥(イヴィルス)残党について調査し、これを撃滅せよ」

「ええ! この私たちに任せなさい!!」

「……まぁ、頼まれずとも、ね」

「言われるまでもない。都市の安寧を守護する事が我々の使命だ」

 

 どうやらシャクティはすっかり立ち直ったらしい。よかったよかった。

 ……心当たりはあるからそう睨まないでほしい。

 

「【ヘルメス・ファミリア】は引き続き、都市外の情報収集に努めるのだ。オラリオと友好的な国の幾つかに関しては、より踏み込んだ調査をしても良いと、そう返事を頂いている」

「……もう過労死寸前なんですけど。ウチの派閥だけじゃ人員が足りないんですけど」

 

 ……ここに出ていると言う事は、アイツが次期団長か。

 リディスとは違い、何とも苦労人な雰囲気が透けている。

 あの神の下でやっていくのは本当に大変だろうが、頑張ってほしい。いや本当に。

 

「【フレイヤ・ファミリア】だが……貴様らには協調など望まん。しかし都市の警備くらいは出来るだろう」

「貴様らの指示に従うのは癪だが……このオラリオはあのお方の庭である。であるのなら、害虫駆除や雑草除去は我等の為すべき事とも言える」

 

 ……流石は【白妖の魔杖(ヒルドスレイヴ)】。自らの派閥の格を守りながらもギルドの指示に従う建前を作った。

 これがあのオッタルだったのなら無言を貫き通すか、『……それが、女神のご意志に沿うのなら』くらいしか言わなかった事だろう。

 

「【へファイストス・ファミリア】は、鍛冶師の一部を都市の設備修理に貸し出せ。【ゴブニュ・ファミリア】も同様だ」

「む……ううむ、まぁ、一先ず承ったが、主神様と相談であるな。その辺りは」

「ウチの場合、ゴブニュ様が率先してそう言う事やってるからなぁ……派閥総出になりそうだなぁ……」

 

 事実、ゴブニュ神に関しては大抗争の最中にも『英雄橋』の修理をやっていたらしい。

 この分なら本当に派閥総出で都市の修繕に奔走する事になるのかも知れん。

 

「そして、【テスカトリポカ・ファミリア】……と言うか、貴様個人に対してになるが……」

 

 む、いよいよ来たか。

 さて、いったい何が来る?

 よほどぶっ飛んだ事でさえなければ、大概のことは出来ると思うが……

 

「貴様には、幾つかの書状を現在海上にある『学区』に届け、返事を持って来てもらう」

「………………………え? 飛べと?」

「当然に決まっているだろう。貴様が飛べるからこそだ」

 

 ……………………まぁ、出来ないことは無いのだろうが……

 いや時間かかるぞ、これ……




Topic:この話に出て来た『黒に限りなく近い灰色』は、少なくとも都市内のは疾風事件の時に皆殺しにされるんじゃないかな。
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