さて、そんなこんなでいきなり学区行きが決定してしまった俺であるが、しかし流石に何の準備もなしに学区へ飛んで行けるわけではない。
ただ飛ぶくらいならば
そしていくら巨大船とは言えどあまりにも広大すぎる大海原を移動するそれを、確実に見つけられるかと言われればそんなわけがないので、学区の航海地図も必要だ。
後は学区には
「ほれ、これが試作品第一号と二号じゃ」
と言うわけで訪れたエルマーの工房で俺が受け取ったのは、二振りの長剣。
黄金色に輝くそれは、パッと見ただけでも並の第一級武装を遥かに超える力を持っている事は確定的であったが……
「……これで、試作品か」
とてもではないが、そうは見えない。
手に吸い付くような持ち易さは何より、重心の位置や振った時の感覚も完璧。
このまま【へファイストス・ファミリア】のテナントの店頭に並べるのなら、5億は下らないだろう。それだけの逸品だ。
だがしかし、エルマーにしてみればそうではない。
「今まで作った作品の中じゃあ、一番頑丈な事は保証するがのう。正直なところ、お前さんのスキルに耐えられるかどうかってなると、自信が持てん。つまり、その程度じゃ」
まぁ、確かに。
俺自身もこの剣が俺が
青天井に増大してゆく剣への負担が何千回、何万回分と重なり、それがほんの一瞬の間に解放されるのだから、理論上、このスキルを用いて壊せないモノは存在しない。
だからこれも壊れる。故に、完成品とは言えない。そういう話だ。
「……まぁ、いい。それで、俺はこの剣を折ればいいわけだな?」
「うむ、そうなるな。念の為言っておくが、破片の回収も忘れるでないぞ。無くしたらまた3000万じゃからな? ローンは組んでやるがのう、ウチの経営陣が色々と面倒臭いんじゃ。すぐにとは言わんが、この剣の代金もさっさと払えよ?」
「うぐ」
そう言えばそうであった。まだ支払いは完了していないのだ。
今アーディが換金している分で足りそうではあるが……俺もすぐに出発しなければならない。
後でやっておいてもらおう。
「……了解した。では、またな」
「うむ」
と、そんな会話を交わして、俺は【テスカトリポカ・ファミリア】の仮
【デメテル・ファミリア】に借りていたトウモロコシ畑が破壊されて、暇になってしまったテスカトリポカが寝ていた。全裸で。
相変わらずこのバカは自分が何の女神であるのか把握できていないらしい。
「起きろテスカトリポカ。そして服を着ろ。契約を忘れたか」
「……あァ? 別に何でもいいだろうがよ、家ン中なんだからよぉ……」
「事故が怖いと言っているだろういつもいつも。下界の民はそれ見たら死ぬんだぞ」
「へいへい……」
のそりと起き上がったテスカトリポカが服を纏う。
美神の裸体は下界には過ぎた美の暴力。マジで誰かが死にかねないので本当に注意して欲しい。
「そら、着たぞ」
「よし、では早速になるが学区へ移動することになった」
「おう随分とまた急だなァ、オイ。脈絡は迷子か?」
「知らん。分からん。俺とて詳しい状況を把握できているわけではない。文句ならロイマンに言ってくれ」
本当に急だったからな。色々と。
あの後も書状と学区の航海地図を持たされて即座に出立しろって言われただけだったし。
「そろそろしたらアーディが帰って来るだろうが……剣の代金の支払いを頼むと伝言してくれ」
「そりゃアまぁ構わねェがなぁ……学区……学区か」
「何か思う事があるのか?」
「まァな。とりあえずレオンとやらとは戦うんだろ?」
「そりゃあまぁ、そうだろう」
レオン。ナイト・オブ・ナイト。現在はもう世界に二人しかいないLv7の片割れ。
逆に戦わないなんて選択肢があるのだろうか。
向こうにも事情があるのならばその限りでは無いが、戦えるのなら戦うに決まっている。
貴重な
「だからそこは確定として……だ。知ってるか、カイ? 学区には冒険者志望の生徒連中がごまんといるんだぜ?」
「……察するに、有望そうなのに唾をつけておけ、と」
「そうだ。人材を集めるンだろ? だったらこーゆー機会も有効活用しなきゃなァ?」
まぁ、そう言われてみればそうだ。
優秀な人材がいるのなら、集めてみてもいい。
……ただなぁ、なんか
……いや、注意されたらその時はその時って事にするか。
「よし、というわけでもう出発するが……最後にステイタスの更新だけ頼む」
「あいよ」
俺が鎧を外し、安物のベッドに横たわると、テスカトリポカがその上に座る。
そして幾らかの操作をして─────完了だ。
「おらよ、確認しとけ」
『カイ・グレイル
Lv5
力:H123→H153
耐久:I78→I99
器用:H163→H182
敏捷:H108→H133
魔力:G294→F321
【狩人】:G
【耐異常】:E
【精癒】:F
【機動】:I
魔法
【ブラウフラムダス・トゥーダス】
・
・炎属性
・詠唱式【燃え立つ意志よ、湧き上がる闘志よ、我が大願を今、ここに】
・解放式【爆ぜよ】
スキル
【
・格上との戦闘時、全
【
・戦闘時間が長引くほど全
・戦闘開始から一定時間で【再生】【連戦】を一時発現。
【
・
・前回攻撃時から一定時間内に攻撃が命中した時、
・効果継続中、装備武器に
【
・
・
・竜種との戦闘時における、全
やはり常時発動している魔法の影響で、【魔力】は伸びるが……
「流石にLv5。全然伸びん。……まぁ、そこまで冒険ができなかったってのもあるが……」
「だから今回で伸ばしてこい。いいな?」
「あぁ。わかった」
もしもレオンと戦う事ができたのならば、その分ステイタスも伸びるだろう。
もしかしたらLv6に上がれるだけの分を稼げるかもしれない。
「後の事はアーディに頼む」
「おウ、行ってこい」
食料は持った。書状も持った。剣も確保した。
色々と後の事も伝えておいた。これでもう思い残す事はない。
炎を噴かし、飛び立つ。
目指すは、学区だ。
Topic:こっちの世界線の『覇竜の大剣』はエルマーが打った。
大学生活が始まりました。不安でいっぱいですが頑張ろうと思います。
ついでに、少し前になりますが、アーディとカイのR18小説をFANBOXにぶち込んでおきました。
読みたければぜひどうぞ。支援してくれたらそれが俺の食費の約一食分になります。