突撃から一転、俺は炎を噴射させレオンから距離を取ろうとする。
レオンの手中に出現した獅子色の光剣は、圧倒的な魔力の塊だ。
その効果、能力共に不明であるが、明らかに超第一級武器であるはずの大長剣を納刀してまで発動させた魔法だ。
少なくとも、
「で、出たッ! レオン先生の魔法!」
「これ……これって、ここに居て大丈夫なヤツ……?」
生徒達のどよめきが聞こえる。
という事はやはり、アレがレオンの切り札である事に間違いは無さそうだ。
超高火力か、はたまた厄介極まりない特殊効果か。
どちらであるにせよ、まずは魔法の効果を把握しない事には始まらない。
現状にそう結論づけ、牽制の
地面を蹴って飛び出したレオンが俺の眼前へと迫り、獅子色の片手剣を閃かせた。
効果もわかっていないうちからいきなり剣で受けるのはマズいと咄嗟に判断するが、しかしこの状況で
仕方がないので特殊効果への対策として全身に蒼炎を纏いつつ、これまた蒼炎を纏った剣で以て、光の片手剣を迎え撃つ。
「いッ!!?」
剣と剣が交錯したその瞬間、俺の手に響いたのは想像したような痺れではなく、何とも空虚な感覚だった。
目を見開く俺の視界の先で煌めくのは、粉砕された光剣の破片。
俺の剣はあっさりと、レオンの魔法を打ち砕いた────わけがない。
「『
光の破片がレオンの両手に集まったかと思えば、それが今度は光の双剣を成す。
そして今まで以上の速度と手数で以て、俺へと襲いかかってきた。
「うおおおおおおおおおおおおっ!?」
「流石だ、これにも対応するか!」
などとレオンが嬉しそうにほざくが、双剣による乱舞を捌く俺にその声に応える余裕は無い。
双剣ということで単純に手数が二倍になったというのは元より、先程までのそれよりも明らかに高くなっている【敏捷】と、レオン本人の
コイツ、複数の武器種の戦い方をそれぞれ極めてやがる!!
「〜〜〜〜ッ! 【爆ぜよ】ォ!」
俺はたまらず
不可避の爆風は狙い通りに距離を取る事に成功するが……
ほんの一息を吐けるだけの隙間を作り出すだけだ。
吹き飛ばした……と言うより、自ら地面を蹴って後退していたレオンは、ほんの瞬きの後には既に体勢を立て直し、こちらへ向けて突撃を開始していた。
「いい技だ! 使い方も正しい……爆風の威力が上がった時を考えると、末恐ろしい!」
「余裕たっぷりに言ってるんじゃねぇぞオラァ!」
再びの猛攻。
まるで独楽のように舞うレオンの攻撃を、辛うじて処理してゆく。
この辺に関しては、正直なところ感覚だ。
今まで
そして、嵐の如き連撃は、夥しい衝突を生み────その分だけ、俺の【力】は上昇する。
「……ッ! 成程、強化系のスキルか!」
「そうだッ!!」
いよいよ、俺の一撃が双剣を撃ち破る。
砕け散った光の破片は再びレオンの手元へ集まり────今度は、一振りの巨大な戦斧が出現する。
「『
「ッ!」
武器の形状からそう当たりをつけた俺は、即座に蒼炎を噴かしてレオンの懐へ潜り込む。
そして、胴体に張り付くようにして、
「素晴らしいッ!」
するとレオンはそう叫び、拳打を主体として俺の攻撃に対応して来るわけだが……
「強ッ!?」
「生憎だが、そういうスキルだ!」
マジかよコイツ。
そういえば、あの
それもこう言った殴打に対する補正が乗っているが故の効果なら、納得はできる……!
「クソッ!」
蒼炎を纏った俺の拳も絶対に効いてはいるはずだが、しかしそれ以上に俺の消耗が激しい。
このまま至近距離で戦っていては、大戦斧という重りを相手が背負っていても削り切られる。
何か別の方法で、レオンの徒手空拳の威力を殺さなければならない。
そう判断した俺は、踏み込んだ足元を爆発させる事で、自らをレオンごと打ち上げ────そのまま俺だけが蒼炎の噴射によって先に地面へと帰還する。
こうすれば、ヤツは空中で身動きが取れないまま、俺に翻弄されるしかない────無論、相手がLv7である以上、そんな甘い話があるわけないのだが。
しかし、それでもやはり空中という場所は人間にとってどうしようもない領域だ。
だからこそ、俺の母親は理不尽であったし、俺も先の抗争で活躍できた。
故に、流石のレオンとは言えど、空中に追いやられれば不利は免れまい……そう考えた。
だが。
「ふむ────これなら、撃てるな」
「ッッ!!? 【爆ぜよ】ッ────【
俺を襲った猛烈な嫌な予感に従い、自らに出せる最大威力の砲撃を直上へ向かって繰り出す。
天に昇る蒼炎の柱は、未だ中空を舞うレオンを呑み込もうとして────真っ二つに割れた。
「うおぉぉぉッ!?」
視界を獅子色の光撃が覆い尽くす。
俺は振り抜いた剣を咄嗟に掲げる事で何とか攻撃を防ぐが、しかし極蒼の火砲を以てしても殺しきれなかった威力が衝撃という形で俺へと襲いかかり、俺の足が地面を削りながら後退する。
「冗ッッ談じゃない!!」
アルフィアの【ジェノス・アンジェラス】程ではない。決して、決してだ。
彼女自身の命を糧に響き渡る破滅の音色とは、比べ物にならないほど、弱い。
それは、ほぼ
だが─────
「さぁ、カイ・グレイル! 凌いで見せろ! お前もまた、盗んで見せろッ!」
俺の頭上で。空中で。
笑顔を見せるあの男が、再び斧を振り下ろす。
瞬間、迫り来るは第二の光波。
「クソがァァァァァァアアアアアアアアッッ!!」
再び、
蒼炎の柱が、二発目の光撃を迎え撃つ。
だがしかし、先程よりも違う点があるとすれば────落下しているが故に、レオンと俺との距離が近い、という点であろう。
「があぁぁぁあああああああああああああッ!!?」
衝撃を防ぎきれず、吹き飛ばされ、壁に激突する。
すると、俺の居た場所以外の地面が、直線状にバックリと割れているのが見えた。
「……ッ、何だ……何なんだ、ソイツはッ!!」
「『残光』だ。私はこの技を、そういう風に呼んでいる」
地面に降り立ったレオンが、俺を見据えながら言う。
「かつて
「!!」
英雄の……一撃……?
「この技は、標的との距離を殺し、断ち切る。この技を極めれば、剣士とて魔法使いにも負けずとも劣らない砲撃を繰り出せる……まぁ、斬撃なんだが」
「……成程、成程……それで、使い方は?」
「
……まぁ、それはそうだが。
「ただ、条件は教えよう。私はこの『残光』を極めるには、二つの条件が必要だと考えている。一つは強化系の魔法、ないしスキルを保持している事。そして、剣や斧といった、斬撃系の武器の使い手である事……その点、君はその両方を満たしている」
「……まぁ、そうだな」
「先程の蒼炎による砲撃は素晴らしかった。あれも、極めれば黒竜には届くだろう……だが、足りない」
足りない、と来たか。
「カイ・グレイル。生徒の手前、少々恥ずかしいが……俺も、英雄になりたいんだ」
「何……?」
「俺はこの技を以て、『竜』を断ちたい。だからこそ、この『残光』を極めたい……だが、互いに高め合い、喰らい合う
「………………成程な。話は読めた。要するに────競争相手が欲しいってだけだろう?」
「ああ、その通りだ」
成程……成程なぁ……
そうか……そうかそうかそうか……
いい。いいじゃあないか。素晴らしいじゃあないか。
そうだ。そうだ。張り合いがなかったのだ。今までは。
敵がいなかった。争うべき相手がいなかった。
ただただ頂点に居座る黒龍だけを見据えて、ただただ遮二無二進んでいた。
だが、互いに競い、高め合える相手がいたのなら……一人でやるよりも、ずっとずっと早く強くなれるのなら……
「最高じゃあないか……!」
口角が上がる。
気持ちが昂る。
素晴らしい、素晴らしい事だ、それは。
であるのなら……
「安心しろ、安心してくれレオン・ヴァーデンベルク。お前の望み通り、俺がお前の競争相手だ。そして感謝するぞ、レオン・ヴァーデンベルク。お前のおかげで、今まで分かっていなかった事が一つ、理解できた」
『残光』とか言ったか。
いや、俺風に言うのならば……『
「上手く防げよ、レオン。俺とて、生徒を殺すつもりはないからな」
「……一応、この結界はそう言う時の為のものだが……そちらこそ、上手くやってくれよ?」
まずはサクッと、習得してしまおう。
続きは、それからだ。
Topic:今更ながら、カイのビジュアルはプーサー(fate)とアイク(fe)を足して割って幼くした感じ。