ターニャのキヴォトス奮闘記   作:ハルコンネン

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途中まで作っていたプロットがどうしても納得できず初期構想から大幅に訂正していた結果更新が遅くなってしまいました……。
お待たせして申し訳ありません。


十四、シスターフッド

「――業者を大聖堂に案内しての装飾選定と取り付けの監修、ですか」

 

 トリニティ総合学園の一角にある連絡事務所、その一室でターニャは手に持った紙を少し困ったような顔で見つめていた。

 そこに記されているのは古聖堂の修復工事を行う業者であるカイザーコンストラクションからの要請とそれを行うのに都合のいい日時の問い合わせ。

 それは何の変哲もないごく普通の業務連絡でありターニャにしても業務上それが必要なことなのは理解できる。本来ならすぐにでもスケジュールを確認し返事をするべきだとも。

 しかしそれを何故私が担当しなければならないのだろうか。

 そんな疑問を抱きながらターニャは紙を手渡してきた張本人であるイチカへと視線を向ける。

 

「……その要請がどうかしたっすか?」

「いえ、単に私が案内するよりも普段から聖堂が身近なトリニティの方にお任せした方が適格ではないかと思うのですが」

 

 トリニティ大聖堂。

 トリニティ自治区において最も大きく、まさにトリニティを象徴する場所。

 修復工事を行う場所もまた同じく聖堂の名を冠するだけに構造や内装デザイン、装飾などを参考にするため訪れたいというのは理にかなっている。どのようになっているかを写真だけで判断せず実際に確認したいというのは称賛して然るべき対応だ。

 しかしその要請が何故ゲヘナの生徒である自分に手渡されているのかが理解できない。

 案内ならトリニティの生徒に任せた方が間違いなく確実。宗教施設の内装や装飾に縁が無いはずのゲヘナ生に案内をさせる合理的な理由は無いはず。

 そして聞いた話では大聖堂はシスターフッドというトリニティの一大派閥の本部。普段からそこで過ごしていてターニャよりも詳しい生徒がいるのは確実。

 そのため遠回しにトリニティ側でやってほしいと伝えたのだが、イチカは困ったように少し眉をしかめて首を横に振った。

 

「その方が間違いないのは確かっすけど、修復する会場の参考にする以上はゲヘナ側にも同行してもらって意見が聞きたいとナギサ様から言われてるっす。ゲヘナの意見を聞かずに進めると確実に後々が色々と面倒になるっすから……」

 

 聞いてしまえばその理由はターニャとしても納得せざるを得ないものだった。

 社会人として報連相、互いの合意は極めて重要なもの。まして平和条約調印式の会場ともなればトラブル回避のために全力を尽くすのは当然。

 故にこれを断るという選択肢は無くなるのだが――。

 だからといって積極的に臨みたいかと聞かれれば話は別なのだ。

 

「シスター、大聖堂……。気が乗らんな」

 

 名称と建物名からして存在Xを信奉する宗教と何らかの関係があると考えるのが自然。

 信仰心が無いからと別の世界へと一方的に放り込み、信仰心を育むために戦乱を起こす。それに加えて生き延びるために必須の道具に勝手に存在Xを称える言葉を発するという呪いを付与し個人の意思を著しく侵害する。

 そんなあの悪魔の如き存在の本性を知らないとはいえ、あれが正しいと思い込み大真面目に信仰している人間などまったくもって近付きたくないというのが正直なところ。

 しかし外部の人間が少なからず関心を持って訪れる機会というのは絶好のアピールになることを考えればさぞかし熱心な解説があるのだろう。

 砲弾の降り注ぐ塹壕線でのピクニックや一般人のいる市街地へのキャンプファイヤーよりは安全で楽なのは間違いないが、気の滅入りようはマッドサイエンティスト謹製の九五式宝珠の起動実験を命じられた時と同等レベル。

 まあ帝国にいた頃と違い聖堂内でも銃を持ったままでいられる点だけは喜ばしいが。

 

「ふむ……。その大聖堂にいるシスターフッドという派閥について少しお話を伺っても? 今まで所属している方とお会いしたことが無いもので」

「シスターフッドっすか? 生徒の悩み相談に乗ったり争い事の仲介、自主的に建物や道路の清掃なんかをする慈善団体みたいな感じっすかね。色々な生徒の悩みを聞く都合上政治には関わらない中立の立場で通しているっす。だからこういった案件は私も少し意外っすね」

 

 イチカの言葉にターニャは真剣に考え込む。

 話を聞いた限りは思ったより親しみやすいと言えなくもない。少なくとも存在Xのように余計なお節介を焼いてくることは無いと思われる。

 ただ本来は政治的案件に関わらないはずの派閥に間接的でも協力を仰ぐというのはトリニティ的に大丈夫なのだろうか。これまでの慣例を破るということはどの組織でも問題につながりかねないのが常識なのだが。

 とはいえトリニティ側で問題が起きたとしてもそれはトリニティ内の問題、こちらが心配するのは筋違いというものだ。

 

「それにトリニティ側からの依頼、加えて業務上必要となれば受けないわけにもいかないか。業者が一緒なら問題を起こすようなこともあるまい」

 

 学園で最大の建物である大聖堂はトリニティの象徴でもあるらしい。そこにゲヘナの生徒が政治的案件を持って立ち入ることにどのような反応があるかは不安だが第三者である業者がいれば外聞を気にして下手な行動は起こさないだろう。

 まあ相手にとっての印象がどうなるかというのは諦めるしかないが。

 

「それでこの件はシスターフッドの方はすでにご存知で?」

「いやいや、さすがにそっちの了承を得てからじゃないと決められないっすよ。それで業者と行くこと自体は問題無いっすか? 全部事後承諾でいいならそれはそれで構わないっすけど」

 

 その言葉にターニャは小さくため息をつく。

 ここで行かないという選択肢があるだろうか、いや無い。

 円滑な進行のための意見のすり合わせを怠ればトリニティからの印象が悪化するに決まっているだろうに。

 

「いえ、ぜひお願いします。それとお邪魔するからには私から連絡しておきたいのですがシスターフッドの責任者はどなたでしょうか?」

「リーダーなら歌住サクラコ先輩っす。真面目でちょっと固いっすけどきちんと話を聞いてくれる人なんで安心してほしいっすよ! たぶん何もされないっすから

 

 ……ん?

 今何か変な言葉が聞こえたような気がしてターニャは思わずイチカの表情を窺うが、彼女はただ静かに笑みを浮かべているばかり。

 何か聞こえた気がしたのは空耳か、そう瞬時に気持ちを切り替えたターニャは零れそうな愚痴を飲み込んでマコトへの要望確認の文面とスケジュールをどうするかヘ思考を集中させる。

 その積極的な姿勢がどのような結果を招くことになるかはまだ知る由もなく。

 

 

 

 

 

 

「感謝の祭儀を終わります。行きましょう、主の福音を告げ知らせるために」

「「「神に感謝を」」」

 

 煌びやか、かつ荘厳な雰囲気の中で行われる祭儀。

 修道服に身を包んだ生徒たちが粛然と座る椅子が並ぶ光景は帝国の教会で何度も祭儀に参加したことのある私から見ても実に立派なもの。

 学園の象徴と言える大聖堂というだけあって建物内は隅々まで手入れが行き届いており生徒たちが愛着を持っているのが伝わってきます。

 そして当然そこで行われている祭儀もまた厳粛。もし何も知らない観光客だったとしても空気に吞まれてしまうのはほぼ間違いないでしょう。

 ですが今日の祭儀には普段とは明らかに違う点があると断言できます。

 何せ一見して周囲の黒い修道服に溶け込んではいるものの黒いスーツ姿のオートマタとゲヘナ生が一緒になって参列しているのですから。

 シスターフッドと共に祭儀中の大聖堂からご機嫌よう、ターニャ・デグレチャフです。

 そして私は祭儀の始まる前からひたすらにただ一つの祈りだけを捧げています。このような場で内心唱えるべき言葉としてはひどく不適切なのでしょうが──。

 存在Xに災いあれ

 

「周囲がどれだけ貴様を信仰しようと私は絶対に貴様の思い通りにはならんぞ、存在X」

 

 祭儀が終わり参列していた生徒たちが次々に席を立つ中、周囲とは真逆の敵意に満ちた眼差しで私は正面に飾られた神像を睨みつける。

 あくまで古聖堂の修復工事を行うカイザーコンストラクションの担当者が聖堂の内装や装飾などを視察することの同伴、それだけのはずだったのに何故存在Xを称える祭儀に参列させられる羽目になっているのか。まったくもって腹立たしい。

 よくもパルチザンの跋扈する前線並みに気の休まらない最低な日常がデフォルトなどというろくでもない世界に送り込んでくれたな。だが見ていろ、私は絶対に安定した地位と平穏な生活を手に入れてみせる──。

 そう周囲とは違った意味で真剣に祈っていると、やがて背後から近寄る気配が一つ。

 

「ゲヘナの方、カイザーコンストラクションの方もお疲れ様でした。このような祭儀の場としての聖堂はいかがでしたか? 古聖堂の参考になればよろしいのですが」

 

 穏やかな笑みを浮かべながら丁寧に声をかけてくる、先ほどまで司祭として祭壇で祈りの聖句を唱えていた修道服姿の生徒。

 彼女こそシスターフッドの長にして私をこの場に招いた張本人である歌住サクラコ。

 この大聖堂を本部とし修道服に身を包んでいる、こうして存在Xを称える祭儀を執り行っていることから分かる通りシスターフッドは実に宗教的な部活。分け隔てなく慈善活動に取り組み生徒の懺悔を聞く姿勢はこの崩壊しているキヴォトスの治安の中では貴重な人格者の集まりだ。

 しかし神を自称する存在Xがどれだけ話の通じない相手なのかを知っていれば祭儀の司祭をするほど熱心な信徒というのは逆にマイナスポイント。

 堂々と銃を持ったまま存在Xへの呪いの言葉を捧げられるというのは魅力的だが本来ならあまり近付きたくない相手、職務とはいえ接触は最小限にしておきたいのだが――。

 

「この度は誠に貴重な機会をいただきありがとうございました。名目こそ修復とはいえほぼ新築に近い聖堂です、式典にふさわしい内装に極めて参考となるものが得られたかと」

「こちらのゲヘナの生徒が言う通り。威圧感だけでなく威厳を出せるような採光と彩色のプランを詳しく検討させていただく。明らかにピカピカの新築という感じでは駄目そうだ」

 

 そんな内心を押し殺しつつ笑顔で感謝の気持ちを伝える羽目になっているのはどうすればいいのだろうか。

 一方で私の隣にいた業者にとっては大きな収穫だったらしく、そしてその返事を聞いたサクラコは嬉々とした様子で今度は装飾のモチーフやその意味について話し始める。

 あんなものに祈るより規則と実力を以って改善を目指す方がまだ確実だろうに。用が済んだならさっさと帰りたいのだがまだ長話に付き合わなければならないのだろうか。

 全く興味関心の無い不毛なプレゼンを聞かされるというのはいつだって辛いものだ。それでいてこの会話の中で新たに追加や変更点が生じる可能性がある以上聞き逃すことは許されず真剣に聞き続けていなければならない。

 これならゼートゥーア閣下、ルーデルドルフ閣下からの無理難題を聞かされる方が気分的にまだマシだ。あちらならまだ合理的で少なくとも納得はできたものを――。

 そんなことを考えながらそれと分からないように小さくため息を零す。

 今考えなければならないのはゲヘナの代表として内装のアイデアを聞かれた際にどの程度の返事をするべきか。

 うっかり口を出しすぎれば隣で行われている宗教談義に巻き込まれるし逆に意見を言えなければ代表として来ておきながら意見も言えない無能と見なされかねない。

 加点ではなく失点を防止した、ちょうどいい加減でのプレゼンの何と面倒なことか!

 それでもかつて自分が下していた人員削減のためのプレゼンを聞かされる側に比べればこの程度些事と笑い飛ばすべきかもしれないのだが。

 そんなことだけを考えていたせいだろう。ただ話が終わるのを静かに待っているだけだった私へサクラコが急に話を振ってきた時に思わず反応が遅れてしまった。

 

「それにしてもターニャさん、でしたか。ゲヘナの方にしては佇まいが非常に馴染んでいるように見えたのですが、こういったことに参加されたことがお有りなのですか?」

 

 唐突に会話の矛先を変えたサクラコに投げかけられた質問。それにほんの一瞬ではあるが思わず固まってしまう。

 確かに帝国にいた頃は休日に足しげく教会に通っていた、それは事実だ。

 しかしそれは存在Xが現れれば銃弾を叩き込むことを目論みつつ呪いの言葉を唱えていたからに過ぎない。何度も参加していると答えて逆に敬虔な信徒などと思われるのは心外極まる。

 故に私は反射的にそれを否定した。

 

「いえ、あくまで業務の内容上こういった場に来る可能性があったため振る舞い方を確認していた成果に過ぎません。本日お邪魔したのもカイザーコンストラクションの方が実際の内装を確認しに来た付き添いで誘われたからでして、小官が祭儀に参加したことはありません」

 

 敬虔な信徒と聞いて脳裏に浮かぶのはあのマッドサイエンティスト。啓示とやらを信じ自爆上等の起動実験を命じる自称天()と眼前の生徒が同じとは思わないが好印象など持たれたくもないのは変わらない。

 そのため業務上という言葉を強調してもっともらしく聞こえる回答を捻り出す。あくまで理由が無ければこんな所へは来ないし祭儀の経験も無いのだと。

 しかしそれが誤算だった。

 一般的にゲヘナ生はトリニティ生に好意的な態度を示すことは無く相手を理解して寄り添おうとする姿勢自体が異端。そしてそれがシスターフッドにとってどう映って見えるのかを私はまったく気付いていなかった。

 

「とても素晴らしい心がけです! 普段から慣れ親しんでいるかのような自然さが見て取れたことからすると、きっと何度もこの場を想定した振る舞いを練習されたのですね!」

「――は?」

 

 彼女は何を言っているのだろうか。何をどう解釈すればそのような結論に至る?

 何か受け答えを間違えたかと咄嗟に今言ったことを振り返るがそれを整理する間もなくサクラコは嬉しそうな様子で距離を詰めてきた。

 その様子に実は違いますと否定するのを思わず躊躇してしまい、そしてその一瞬の隙が私をさらに面倒な状況への追い込みをかけてくる。

 

「ターニャさんがよろしければ今度ご一緒に私たちの活動へ参加されてみませんか?」

 

 おそらくサクラコは純粋な好意で提案しているのだろう、しかしそれは一刻も早くこの場を去りたい私にとっては厄介極まりない話。

 合理的に考えれば誘いに乗るべきだと分かっている。トリニティからの信用を得られれば今後の交渉もスムーズに行くだろうし将来的なコネクションや地位の獲得にもつながる、出世街道を進むには恰好の機会。

 そして逆に拒否すれば取引先のトップ直々の誘いを蹴って機嫌を損ねられての監修や工事、式典の段取り設定などに支障が出、私の責任問題へつながるリスクもある。

 メリットとデメリットを天秤にかければどうするのが最善かは一目瞭然。

 そして相手が冬季攻勢という無謀を主張する北方方面軍なら指揮系統の違いを盾に拒否も批判もできたがこれに関してはそもそも拒否できる材料が無い。

 つまり。

 

「……小官が両校の親善の架け橋となれるのであれば、謹んでお受けいたします」

 

 結果、私は渋々ながらサクラコからの誘いを受諾することとなる。

 ただの内装の視察だけだったはずなのに……。

 どうしてこうなった。

 

 

 

 

 

 

 シスターフッドはトリニティにおける一大派閥である。

 様々な生徒から悩み相談を受け、各地で争いの仲介や清掃といった活動をしている結果彼らの元には日頃から多くの情報が集まる。

 トリニティ内の派閥同士やゲヘナをはじめとする学園外との揉め事はもちろん果ては生徒個人のダイエットの相談など内容は大小多岐に渡るがプライバシーの観点から表に出すことはせず内密に対応することが多い。

 結果トリニティ内部ですら何を考えているか分からない不気味な秘密主義の集団などマイナスのイメージが定着、まして外部であるゲヘナの人間からの印象など想像に難くない。

 最近では政治には関与しない方針を貫くサクラコもトリニティ生と協議をするゲヘナ生は何人も見るようになった。交渉役だけあり無礼な言動やトラブルは確かに無かったが、それでも必要以上にこちらへ歩み寄ってくる者はいなかった。あの積極的推進派である風紀委員長の空崎ヒナでさえ会話は最低限度。

 しかし先ほどのターニャ・デグレチャフはどうか。きっちりと神像への敬意を払いこのような場での振る舞い方を身に着け堂々と対応する彼女はまさにエデン条約の平和精神そのものを体現する貴重な存在ではないか。

 ただの建物ではなく歴とした聖堂として再建するためにはどう使うかを実際に見てほしいというささやかな要求がもたらした予想以上の出会いにサクラコは笑顔を隠せない。

 そして同時に思う。

 ――ターニャとより近付きたいと。

 

「それで、よろしければご一緒に次の安息日の活動へ参加していただけると両校の親善を示すことができて素敵だと思うのですが」

「ありがたい申し出に感謝します。ですがこちらのスケジュールを確認しないことにはこの場でのお返事が致しかねることは承知いただきたく」

「もちろんです。親善目的とはいってもそちらの都合を優先していただいて結構ですよ」

 

 さすがに急な話に即断するというのは難しいだろうと無理に引き留めはしない。こうして大聖堂に足を運んでくれただけでもこれまでのことを思えば大きな進歩なのだから。

 目的を共有して同じ場所に立つことが友好のための第一歩であることは間違いない。

 だからこそサクラコはターニャからの問いかけに対して素直に、満面の笑みで答えて見せる。

 

「ところでその活動とは具体的に何を?」

「ええと……。確かティーパーティーからのお願いで清掃活動でしたか」

 

 そしてそれを伝えた途端、ほんの一瞬ではあるがターニャの表情は見事なまでに固まった。

 もし予定がそれで合っていたか確認するためサクラコが視線を後ろの生徒に向けていなければ、その生徒が視線をターニャに向けていればその変化に気付けたかもしれないが、不幸なことに誰もそれに気付くことなく話は進む。

 

「ナギサさんから近頃邪魔な雑草が目立つから処分しておくようにと頼まれまして。少し大変かもしれませんがご一緒にいかがでしょうか?」

「……ナギサ会長から依頼が? こちらではそのようなことまでしているのですか」

「ナギサさんは校内をよく見ていますから。ああ、そういえば今日ゲヘナとカイザーの方が来た際には今後ともぜひよろしくと伝えるよう言付かっていましたね」

 

 サクラコからしてみればただの挨拶なのだが、何故かそれを聞いたターニャはそれを聞いてやや険しい表情になって黙り込む。

 まるで何か嫌なことを思い出したような反応に何かあったのだろうかと少し心配になるが、今の話の中で特段変なことは言っていないはず。つまりターニャ自身の問題だろう。

 そして関係ない外部の人間だからといって悩んでいるのを放置するサクラコではない。

 悩んでいる相手の悩みを聞き励ますことはシスターフッドの使命なのだから。

 

「何か不安なことがありましたらいつでも相談してくださって大丈夫ですよ、いつも皆様を陰から見守っていますから。……うふふっ」

 

 そうにっこり微笑みかけるサクラコに対し、その時にターニャが作った笑顔は何とも微妙なものだったという。

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