ターニャのキヴォトス奮闘記   作:ハルコンネン

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ゲヘナが8.8cm FlaK36を運用していると知って興奮を隠せない作者です。
アハトアハト、そいつは素敵だ! 大好きだ!



十九、修正案

 どうも皆様ご機嫌よう、ターニャ・デグレチャフです。

 唐突ですがここで一つクイズです。上司が平和条約を結ぼうとしている相手を殴ろうとしていると知ってしまった時、人はどうするべきでしょうか。

 そしてその方針が協調路線へと変わり一息つけるかと思いきやそのための情報、経済工作を立案せよと命じられ。まあそれでも当初よりは穏健で良かったと思いつつ打ち合わせのために出向してみれば今度はクーデター計画の存在を明かされる始末となれば?

 しかもそれは上司がその工作をする相手と結託して行う茶番。欧州情勢も真っ青な複雑怪奇ぶりと言わざるを得ないでしょう。

 そして先ほどの問いの答えですが──。

 そんな状況だからこそ努めて冷静に行動する、が正解です。ただし私個人としてはふざけるなと声を大にして叫びたいのが実情なのですが。

 

「不満か? トリニティは目的を遂行できる、我々はアリウスをこの地に追いやったトリニティへの復讐ができる、そしてゲヘナはトリニティの弱体化を後押しできる。全員の要望を綺麗に叶えているが」

 

 ああ、状況は最悪極まる。

 まるで当然と言わんばかりに真顔でこちらを見つめてくるサオリ。その表情や反応からしてどう見てもこれは確定事項だ。

 平和条約という話は、この最低の治安が少しでも改善して穏やかに過ごせるようになるという私のささやかな望みはどこへ行った?

 まったくもって冗談ではない。しかし悲しいかな、私の所属する組織のトップとその条約を結ぶ相手が合意していることに部下が口を挟むことなどどうして出来ようか。

 トリニティよろしくクーデターでも起こせば私の意見を通すことができるかもしれないがそんな真似をすれば平穏で安定した生活どころではない。安定と出世をしたいのならどんなに最悪なものだとしても阿諛追従か業務改善のどちらかと相場は決まっているのだ。

 

「……互いが合意しているなら素直に乗るべきでしょうな。分かりました、ではそれを前提として計画を修正しましょう」

 

 そしてここまでの展開、そして今の話を聞けば否が応でも理解してしまう。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだと。

 無理やりにでも会場を古聖堂に指定した件も、クーデターで樹立した新政権の妥当性を主張するのにトリニティ始まりの地を活かすためと思えば納得できてしまう。トリニティ内部からの提案でなかったのは反ナギサ派が表に出たくなかったためだろう。

 すでに大体の話がついているのなら事前に教えてもらいたかった、そうすれば必要以上に周囲に気を遣う苦労をせずに済んだものを……。とつい恨めしく思ってしまう。

 しかし今考えるべきはこれからどう行動するかだ。まず確実に当初の計画をそのまま実行するのは不可能。

 クーデター側との連携を前提とした内容に変更するのは当然だし、何なら正当性のためにゲヘナが動かないことが最適解となる可能性すらある。クーデターが中途半端ならアフリカ諸国やユーゴのような泥沼の内戦に突入しかねないし、かといって下手に介入してもアフガンへ侵攻したソ連やベトナムに浸かり込んだアメリカの再現になりかねない。

 だからこそマコト議長は詳細な内容を確認したうえで計画を適切な形に修正することを求めて私をここへ送り込んだのだろう。

 組織人として業務命令に従うのは当たり前。しかしだからといって進んで面倒事に首を突っ込みたくはない。できるなら理由を付けて拒否したい。

 まあこのキヴォトスの治安を思えばそんなことを言った瞬間に鉛製の解雇通知が届くに決まっているのだろうが……。

 そんな現状を嘆きつつもトリニティ側の動きについて問いかけてみれば。

 

「いや、そこまで難しい話でもない。式典の数日前から反対派の妨害を避けるためにナギサは極秘となっているセーフハウスに身を隠す予定になっている。そこを襲撃するだけだ」

「セーフハウスですか。ではゲヘナが協力するとすればその特定、もしくは作戦行動中の警戒任務が主となるのでしょうか?」

「いや、ティーパーティーの人間から情報提供と正義実現委員会の待機命令がある手筈だ。捜索と警戒は最小限で済むと思っていい」

 

 ──やはりそうだったか。

 ほぼほぼ予想していた通りの返事だったことに内心で盛大にため息をつく。

 校用車と経理に関する権限を持ち、クーデター後もトリニティをまとめられる立場。そんなものティーパーティーの人間しかいないだろうと思っていた。しかしそれを改めてはっきり示されるとどう反応するのが正解か困ってしまう。

 両校が長い時間をかけて調整してきた平和条約、それが校内を真っ二つに割る騒乱の種になると分かっていたからこそナギサ会長はあそこまで怯え隠れるように行動していたのだろう。

 初めて会った時にまるでクーデターを起こされる体制側のようだと思った印象はまったくもってその通りだったというわけだ。

 

「なるほど、それなら確実ですな。ですがそれだとゲヘナが直接介入するのはかえって悪手、それでも何かするとすれば……やはり情報操作か? 調印式典直前でティーパーティーのホストが襲撃されたと大々的に報じて警備とトリニティの新体制への不信を醸成できれば――」

 

 とはいえ私の仕事はこれに介入する計画を策定すること。内心でどれだけ面倒で嫌だと思っても責任は果たさなければ。

 だからこそ私は真剣にどう行動することが最適かについて思考を巡らせる。

 一番良いのは何もせず見守ること。相手が勝手に相争うのにどうしてこちらまで付き合う必要があるだろうか。

 しかしそれは平和条約を結ぶ必要があったほどに普段から仲が悪かった両校間での小競り合いが激化し治安が悪化することも意味する。何せ調停、治安維持をするトリニティ側の正義実現委員会が行動できなくなるのだから。

 それは結果として私の平穏、安定した生活という夢の破綻にもつながる。それは避けたい。

 つまり最低限何かをする必要があるのだが、極力関わらずに関わるという矛盾をいかに解決するかが問題だ。

 そしてゲヘナとして何ができるかを考えた時まず筆頭に上がるのは情報分野での工作。こちらが直接何かをすることなく大衆に印象を植え付けられるのは大きな利点だ。クーデター側を擁護する振りをすることで同盟を形だけでもアピールできる。

 しかも素晴らしいことに元々あった工作案だけに修正の手間は最小限で済む。

 直接介入する場合ならまともに動けないであろう正義実現委員会に代わっての治安維持業務代行だろうか。

 条約の調印がクーデターのすぐ後ならETOが発足する。その派遣ができれば条約を目に見える形で示すことができ、一時的ながらもトリニティ自治区の行政権を手に入れられる。

 これならば安全かつ合法的にマコト議長の方針に従えているはず、これで行こう――。

 そう考えた瞬間だった。

 

「そしてこれには続きがある。依頼主は同時に旧態依然とした組織そのものの刷新を図るとのことだ。要は実権を握った後の反対派、不穏分子をまとめて掃除したいらしい」

「掃除、ですか」

 

 ――掃除。

 またしても聞くことになったその単語。それが何を意味するか察している身としてはどうしても警戒せざるを得ない。

 今度は何だ、せっかく後方から安全に要求を満たせる計画を考えたというのにこれ以上何をするつもりだ。

 聞きたくない、しかし聞かなければならない。

 そんな絶望を覚えながらサオリの顔をまっすぐ見つめれば。

 

「そうだ。秘密主義の強いシスターフッド、そして秩序の維持に欠かせない正義実現委員会のうち新体制に付かないであろうメンバーを排除する。これはティーパーティーの権力でも合法的には不可能だから実力でな。そしてその組織の全員が一堂に会する機会がちょうどクーデター直後にあるだろう?」

「……まさか」

「参列者や警護の位置は当然ティーパーティーの人間なら把握できる。後はそこをまとめて盛大に吹き飛ばすというわけだ。マコトなら厄介者が減ると諸手を挙げて大歓迎だろうな」

 

 ――最悪極まる!

 トリニティ内で勝手に争う分には文句は無い、しかしその舞台が苦労して調整してきた調印式典の会場になるとなれば話は別だ。

 爆破の責任をゲヘナに被せられた場合これまでの苦労が水泡と化す可能性すらある。いや、会場の施工はゲヘナが担当している。疑惑の眼はこちらへ向けられるのは確実。

 そうなれば平和条約どころではなくトリニティがリメンバーパールハーバーよろしく反ゲヘナでまとまり戦争になるのが目に見えている。

 これを防ぐにはトリニティの新会長に頼んでゲヘナの仕業ではないと声明を出してもらう以外に方法が無いだろうが、そのためには日和見や最低限の協力ではなく全力で手を組む姿勢を示すことが必要となる。つまり積極的関与以外の退路を断たれたも同然。

 まさに肉を切らせて骨を断つ、さすがはティーパーティーの人間だけのことはある。まさか自分の学校の犠牲を前提としてこちらに協力を強制してくるとは思わなかった。

 ……まったくもって癪だが、こうなったらやるしかないのだろう。

 まったく、どうしてこうなる?

 

 

 

 

 

 

 呆気に取られた様子でポカンと口を開けたまま動かない少女。いかにも年相応といったその顔を見てサオリはようやく胸を撫で下ろす。

 ――良かった、こいつも人間だったか。

 サオリがマコトに伝えた情報はトリニティ内部でクーデターの動きがあること、自分たちが長年にわたってトリニティからの迫害を受けてきたアリウスの人間であり現トリニティへの報復としてこの動きに加わるつもりということのみ。

 決してトリニティとつながっていることは明かしてはいなかったがターニャの圧倒的な存在感はそれも見通されているのではないかという不安を抱かせるに余りあるものだった。

 しかし今話して確信する。主導権はまだアリウスが握れていると。

 

「不満か? トリニティは目的を遂行できる、我々はアリウスをこの地に追いやったトリニティへの復讐ができる、そしてゲヘナはトリニティの弱体化を後押しできる。全員の要望を綺麗に叶えていると思うが」

「……なるほど、そういうことでしたか」

 

 そしてサオリの問いかけにようやく再起動したターニャは苦々しそうな顔でそう呟く。

 なるほど、確かに不愉快ではあるだろう。トリニティを叩き潰すために作戦を考えていたというのにそもそもの前提をひっくり返されたのだから。

 それが蓋を開けてみれば実際にはトリニティの思惑で敷かれたレールの上を走るだけ。

 ゲヘナにしてみればこんな展開は聞いていないと怒るのも当然と言える。

 しかしだからといってじゃあやめますなどとあのマコトが手の平を返すだろうか。いや、それはありえない。

 トリニティだけでなくゲヘナ風紀委員会の空崎ヒナもまた排除対象。それが護衛として来る式典の場そのものも攻撃目標なのだから。

 そのためにエデン条約に関する交渉を犬猿の仲であるヒナから引き継ぎトリニティにETOの全権を売り渡すパフォーマンスまでして見せた。最終的に全てひっくり返すとはいえその努力と屈辱をマコトがそのまま受け入れるものか。ならば結果など分かり切っている――。

 そして。

 

「……互いが合意しているなら素直に乗るべきでしょうな。分かりました、ではそれを前提として計画を修正しましょう」

 

 思った通りターニャはその条件を呑んだ。

 それはアリウスにとっても望んでいた、そうなるだろうと予想していた通りの展開。しかしその様子を見たサオリはターニャに対する警戒をさらに一段引き上げる。

 アリウスを戦力として数えられるようにするための対戦車戦闘指導などはマコトの指示だったとしてもこれは絶対にマコトの知らない情報。共闘を呑むにしてもそれを報告してからになるだろうと思っていた。

 しかしそれを独断で即座にというのは予想外。これが意味するところは、ターニャはこの交渉に関してマコトの認可を得ずにその場で決定する権利を持っているということ。

 あのマコトがそれだけの権限と信用を寄せるのも頷けるが、その底知れなさに改めて感嘆と畏怖を覚えてしまう。

 そして、だからこそ確信する。

 ――確実に()()()()()()()()()()()と。

 

「ではそのクーデター計画の詳細を聞かせていただいても? トリニティがどう動くかによってはゲヘナがどう動くかも変わってくるでしょうから」

 

 そしてそんなサオリの内心など露知らずターニャは何事も無かったかのように姿勢を正して計画の詳細について尋ねてくる。

 その表情に先ほどまでの驚愕と困惑は欠片も残っていない。むしろ無表情と言うべきだが、淡々と変化した状況へ対応する冷静さと対応、放たれる雰囲気は真剣そのもの。

 つまりマコトに相談するまでもなくゲヘナはやる気、それで統一されているということだ。

 

「いや、そこまで難しい話でもない。式典の数日前から反対派の妨害を避けるためにナギサは極秘となっているセーフハウスに身を隠す予定になっている。そこを襲撃するだけだ」

「セーフハウスですか。ではゲヘナが協力するとすればその特定、もしくは作戦行動中の警戒任務が主となるのでしょうか?」

「いや、ティーパーティーの人間から情報提供と正義実現委員会の待機命令がある手筈だ。捜索と警戒は最小限で済むと思っていい。その間にアリウスが襲撃を実施、空席となったホストの椅子は合法的に依頼主の元へ、というわけだ」

「なるほど、それなら確実ですな。ですがそれだとゲヘナが直接介入するのはかえって悪手、それでも何かするとすれば……やはり情報操作か? 調印式典直前でティーパーティーのホストが襲撃されたと大々的に報じて警備とトリニティの新体制への不信を醸成できれば――」

 

 右手を顎に当てながらブツブツと小声で呟き始めるターニャ。

 真剣に作戦案を練り直している様子を見る限り、クーデターに一切関与しないということも無いと見ていい。いや、むしろどうやって介入するかと悩んでいるのは明らか。ゲヘナは十分やる気、完全に事を構えるつもりで統一されていると判断するべきだろう。

 それ自体は実に結構、しかし主導権は渡さない。

 夢や希望を抱いたところで結局は大人に振り回されて終わるのだ。所詮子供がいくら足掻こうと結局は無駄でしかない。

 それを徹底的に身をもって教え込もう。全てが自分の思い通りになると驕っているマコトにも、努力は報われると信じているであろうターニャにも。

 そんなどす黒い感情を隠し、サオリはまっすぐターニャを見つめてそっと手を差し伸べる。

 ──さあ、ここからが勝負所だ。

 

「そしてこれには続きがある。依頼主は同時に旧態依然とした組織そのものの刷新を図るとのことだ。要は実権を握った後の反対派、不穏分子をまとめて掃除したいらしい」

「掃除、ですか?」

 

 唐突に変わった話題に一瞬で顔を強張らせるターニャ。

 反対派、不穏分子という単語からろくでもない何かがあるのを察したのだろうが、しかしそれを聞かないという選択肢は取らせない。

 貴様が何を考えどう行動しようと思っていようがこちらへ引きずりこんでやる。

 

「そうだ。秘密主義の強いシスターフッド、そして秩序の維持に欠かせない正義実現委員会のうち新体制に付かないであろうメンバーを排除する。これはティーパーティーの権力でも合法的には不可能だから実力でな。そしてその組織の全員が一堂に会する機会がちょうどクーデター直後にあるだろう?」

「……まさか」

「参列者や警護の位置は当然ティーパーティーの人間なら把握できる。後はそこをまとめて盛大に吹き飛ばすというわけだ。マコトなら厄介者が減ると諸手を挙げて大歓迎だろうな」

 

 ゲリラ戦のプロとして爆弾設置などの工作は得意分野だからな、などと笑ってみせながら仕掛けられる毒餌。

 ただ聞いただけではトリニティが自分で起こす予定に思えるそれは、実際にはトリニティの一切与り知らないもの。伝えてあるのはあくまでクーデターに人員を出すということだけ。

 ではそれが虚偽なのかと問われれば答えは否。アリウスが内密に、そして勝手に決行するものとしてその計画は確かに存在している。

 しかし本来であればそれをわざわざゲヘナに教える理由は無い。

 では何故それを教えたのか、それはただマコトがより喜びそうな展開だからに他ならない。彼女ならこちらの思惑通りに、それは見事に踊ってくれることだろう。

 これまでの思惑と努力、自分たちの望んでいた状況が実現するという華やかな夢。それらが一瞬で全て潰える絶望。その結末こそがこの大舞台に相応しいのだから──。

 そう、全ては虚しい。どこまで行こうとも全てはただ虚しいものだ。

 

 

 

 

 

 

 斯くして協議の末に計画の修正案は完成する。

 調印式典の数日前から始まるトリニティ内の戒厳令、それに合わせ正義実現委員会への待機命令を出し妨害を排除したうえで桐藤ナギサを襲撃。

 その後はゲヘナが情報操作を行いナギサ体制下での策謀と腐敗を大々的にスクープ、同時に調印式典で発表される新体制を全力で支援するポーズを表明。

 式典当日にはシスターフッド及び正義実現委員会の新体制に従わないであろうメンバーの排除が行われ、調印と同時に即時発効するETOを派遣し実質ゲヘナによる治安維持を施行。

 騒動が鎮静した後はマコトのグループ企業が展開しトリニティ内の利権を確保する──。

 

「……まあ、悪くはありませんね」

 

 皆が寝静まった夜、アリウス自治区の一角にある建物。

 そこでサオリはアリウスの真の主である異形の女性に完成した計画書を手渡していた。

 それは所詮仮初、実行されることのないただの落書きに等しいもの。しかし同じものをマコトも見、そしてこれがゲヘナをアリウスの企みへと引きずり込む罠である以上おかしい点が無いか確認してもらう必要があった。

 そう、それはあくまでただの確認だった。しかしだからこそ、それまで険しい雰囲気だった彼女が予想以上の高評価をしたことにサオリは思わず瞠目する。

 

「ここまで貪欲にトリニティの利権へ手を出そうとするとは、ゲヘナはこの計画にずいぶんと乗り気なようです。この分なら成功は間違いないでしょう」

 

 ――ああ、そっちのことか。

 一瞬でもあの得体の知れないゲヘナ生がマダムに褒められたと思ってしまったことへの不愉快さを振り払いながら、サオリは小さく息を吐く。

 まったく、まるで嵐のような日々だった。

 唐突に現れたと思えばアリウスを慣れ親しんだ場所のように我が物顔で歩き、アリウスに対しての指導を始める始末。知識も行動力も洞察力もあり下手に動くこともできなかった。

 それだけにこうして計画案が無事に完成し、あのゲヘナ生がアリウスから出ていくのが決まった時の安堵もひとしおだった。

 しかしそんな安堵とは裏腹に心のどこかで少しだけ残念に思うのもまた事実。

 あれだけ日々の生活が大きく変化したからこそ思ってしまう。

 彼女がアリウスの人間だったなら、スクワッドのメンバーだったならこの日々も少しは変わったのだろうか、と。

 ゲヘナにあれだけ有能な人間がいるならトリニティにも同様に有能な人間はいるはずだ。それに出会えたなら、今トリニティにいる仲間も変われるのだろうか――。

 しかしそんな考えは甘えでしかない。所詮はどれだけ足掻こうと全て虚しいと最初から決まっているのだから。

 

「この計画案で問題ありません。しっかり進めるよう伝えておきなさい。……これを素直に信じてくれる純粋さ、とても素敵ですね?」

「……はい、マダム」

 

 そう、子供は大人に従うだけの存在なのだから。そして大人に従順に従っていさえすれば、自分たちは安全でいられるのだから。

 だからこそサオリは自分の心を押し殺してただ人形のように振る舞うのだ。

 その先に救いなど無いと分かっていたとしても。




マコトがクーデターとミサイル攻撃を知っていてその直後に爆破されるの、「いい夢見れたか? じゃあ次はお前な」としか思えないのです。
アリウスに愉悦部がいる……。
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