ターニャのキヴォトス奮闘記   作:ハルコンネン

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本日五月二十三日で本作の第一話を投稿してから一年になります。
気が付けば皆様より当初の予想を超える多くのお気に入り、評価、感想をいただき心から感謝しております。
今後とも本作をよろしくお願いいたします。


二十一、収拾

 ティーパーティーのホスト、桐藤ナギサにとってここ数日の状況は最悪の一言に尽きた。

 停電と断水は一週間が経過しても復旧する気配が無く、備蓄物資の乾パンや小麦粉なども目減りする一方。少なくなった在庫を平等に配ろうにも不良などによって略奪に遭ったというのももはや珍しくない。

 しかしその襲撃があるだろうと分かっていても十全な対応ができるかというのは別問題。

 炊き出し現場すべてに手厚い護衛など付けられるはずもなく、しかも戦車や榴弾砲といった武器の不法流通や炊き出しと関係の無い生徒に対する襲撃も急激に増加。正義実現委員会が総出で出動しても全部のカバーなど到底不可能。

 先日までなら電話一本、数分で済んでいた確認も今では直接現地に赴くか人を呼ぶかで数時間をかけなければ何も伝わらず、しかもそれを書面にまとめてナギサが閲覧する頃には一日遅れで指示を出しようもない報告になっているのも多数。

 しかしそのような状態であっても報告を受け取り指示を出すのは必要不可欠。たとえ手遅れだとしても指示を出して存在感を示さなければそれこそティーパーティーの権威は地に落ちる。それでなくても今のホストという地位はあくまで()()、ナギサにとってはこのような状況だからこそ結果を出さなければというプレッシャーは普段以上に重くのしかかっている。

 そんな状態で努力を続けてきたナギサだったが、次第にそれも限界に近づきつつあった。

 その原因は実にシンプルなもの。

 ──人手不足である。

 

「おはようございますナギサ様。……昨晩は十分にお休みになれましたか?」

「……おはようございます、体調でしたら何も心配いりませんよ」

「せめてその眼の下のクマと書類をお隠しになってから言ってください」

 

 朝の七時、ナギサは執務室を訪れた行政官から呆れたようにため息をつかれていた。

 眼の下にはクマが濃く浮かび机の上には処理が済んだ書類の束。何時に来ていたのか、そもそも寝たのかが心配になる有様なのだからそれも致し方ないことだろう。

 しかしトリニティの現状を鑑みればそうなったのもまた致し方ないと言える。

 如何に各現場に権限を委譲したとしても前述の通り携帯電話が使えない状況で自治区全域に指示を出すには人員を直接派遣するしかなく、事務処理に宛てられる人員は普段の半数以下。

 しかしそのような中でも減っていく食料を分配し、略奪をしてくる不良への対処に使った弾薬の補充をし、他の自治区や連邦生徒会とやり取りをするという業務は容赦なく発生する。そしてそれには漏れなく書類がセットで付いてくるのだ。

 では人員がいない中で誰がそれを処理するのか?

 そうして仕事の押し付け合いが発生した時、ティーパーティーに所属する生徒たちはあることに気付いてしまった。

 ──ほぼすべての案件を処理できる権限を持ち、その立場上外で動き回るということが無い人物がいるということに。

 結果としてナギサはほぼ軟禁状態で連日事務処理に追われることとなったのである。

 

「本日ですが正義実現委員会のハスミさんが自警団の方とD.U.へ行っております」

「そうですか。連邦生徒会がこの状況を解決する糸口を見つけていると良いのですが。せめていつ頃復旧しそうかという目途だけでも知りたいものです。……ミカさんは?」

「ミカ様は自警団の方との打ち合わせに。なお五番倉庫の弾薬をもらっていくからよろしくね、と伝言を預かっております」

「ミカさん……!」

 

 書類仕事が苦手だとしてもこんな時にいてくれれば。そう思いつつ同じティーパーティーの一員でありパテル分派の首長である聖園ミカの動向を問いかけたナギサ。

 しかし次の瞬間、ナギサはよりによって彼女が余計な仕事を増やしていたことを知り思わず頭を抱えた。

 ミカのことだ、頑張っている自警団を応援しようという善意での行動なのだろうが……。しかし事前の調整も無く勝手に動かれてはたまったものではない。

 ただでさえ補充の見込みが無いうえ使用量が増えているというのにどうして広い視野と責任感を持って動けないのか、思わずそんな怒りも湧き上がってくる。 

 とはいえ窃盗だと思い込んで警備責任者を問い詰める事態にならずに済んだことだけは良かったと思わなければ。

 そう自分に言い聞かせ、痛む気がする頭を押さえながらナギサは重い口を動かした。

 

「すみませんがミカさんが何をどの程度持ち出したか確認してくださいますか? それと他に何か報告することがあればお願いします」

「はい、昨晩クルセイダーが二十両紛失していることが発覚しました。正義実現委員会から万が一の場合に備え各員にPIATを配備する許可の要請が──」

 

 行政官から緊急性の高い報告を受け取りそれに対して指示を出す。

 やっていることは普段と変わらない。はずなのに。

 

「本当にどうしてこうも面倒ごとばかり……!」

 

 一両ならまだしも二十両が紛失、本来ならこれだけでも大問題だがナギサがこれに類似する報告を聞くのはすでに十回を超えている。

 一応紛失と言っているもののおそらくは確実に盗難。そして待っているのはその盗まれた車両で炊き出しが襲撃され配給計画が狂い弾薬が消費され書類が増えるという負の連鎖。

 一体いつまでこの状況が続くのか、そんな苛立ちからサインをする手つきが次第に乱雑なものになっていったのも当然なことと言えるかもしれない。

 そして行政官を怯えさせながら処理を続けること一時間。八時になれば他のティーパーティーの生徒だけでなくシスターフッド、正義実現委員会の生徒たちも姿を見せ始める。

 やがて人員が揃えばそれぞれが連絡事項の通達や予定の確認を交わし一気に慌ただしくなるのも見慣れた光景。

 それは昨日と同じ、この一週間で当たり前と化した普段と変わらない一日の始まり。

 ──の、はずだった。

 

「ナギサ様、一大事です!」

 

 しかしそこヘ唐突に響く大声。

 何事かと周囲から注目が集まるのと同様にナギサもまた視線を向ければ、そこには肩で息をする行政官の姿があった。

 今度は何だ、また胃が痛くなるような話なのか──。

 その様子からしてろくなものではないと察するが、衆目の前で一大事と叫ばれては聞かないわけにもいかない。聞きたくないと思いつつ、仕方なくナギサは何があったのかを問いかける。

 

「落ち着いてください、このような時こそティーパーティーの一員として気品ある行動を心掛けていただかなければ。……何があったのですか?」

「情報局から報告が、シスターフッドの歌住サクラコが──引退すると!

 

 その瞬間、ナギサの思考は完全に停止した。

 あのサクラコが引退? しかもまさに様々な支援が必要なこのタイミングで? 何がどうなったらそうなるのかまるで意味が分からない。

 誤報と言われた方がまだ納得できる。しかし本当に情報局からの報告ならばある程度の信憑性があるのは間違いない。かといって素直に受け止めるにはあまりにも予想外すぎる。

 そんな困惑で固まっていたナギサが我に返ったのは周囲の生徒たちが泡を食ったように行政官へ詰めかける怒号を聞いてのこと。それに慌てて加わりながらナギサもまた詳細な情報を求めて口調も荒く問い詰める。

 

「どういった経緯でそうなったのですか!?」

「詳しくは私も……。ですが関係するものとしてシスターフッドがゲヘナとの協力体制を構築したという報告もありました! おそらくは何らかの政治的取引かと!」

「政治的取引……? ゲヘナがよりによってこの事態の最中に動いたのですか!?」

 

 ティーパーティーが統治できていない状況下でゲヘナと手を結ぶ、それはつまりナギサの手腕が信用されていないということか。いや、ゲヘナが絡んでいるならば支援と引き換えにトリニティの混乱や弱体化を狙ってトップの交代を条件にしたという可能性もある。

 もしその予想が正しければこの混乱が収束した後も政治的な問題が残るのは確実。とにかく早急に詳細を確認しなければ。

 瞬時にそう判断したナギサは執務室を飛び出し、そして足早に廊下を歩きながら盛大に胸の内をぶちまけた。

 

「──どうして、どうしてこうなるのですか!?」

 

 

 

 

 

 

「──どうしてこうなった?」

 

 現場の状況を理解しきれないまま後手後手の対応を強いられる。それは古今東西どこでも起こり得ることです。

 平時はもちろん戦時ならそれはまさに命取り。私自身部下と共にその混乱を作るため敵のライン方面軍司令部を破壊しましたし、ゼートゥーア閣下やルーデルドルフ閣下ですら共和国軍の脱出という展開には翻弄されたものです。

 それを思えばゲヘナがトリニティに対する攻撃としてインフラを破壊し混乱に陥れたという情報を察知して暴発する前に対応できたことは幸運だったと言えるでしょう。

 誤解を元に両校間で紛争状態となる、そのような最悪の事態を避けるためにもイメージアップは必須。炊き出しや清掃活動、治安維持などに従事すると決断したのは決して間違った判断ではないはずです。

 しかし携帯電話もインターネットも使えない以上私一人が努力してもそれを宣伝してくれる手段は限られているのが実情。そこでシスターフッドの方々に宣伝を依頼したのもまた当然の帰結だと言えるはず。

 ですがその結果、盛大に困惑する羽目となるなどとどうして予測できるでしょう。

 今日もトリニティの市街地からご機嫌よう、ターニャ・デグレチャフです。

 現在私は昨日に引き続きシスターフッドの皆様と一緒に支援活動に取り組んでいます。

 ──ただこれが一緒に、と言うべきなのかは些か疑問ではありますが。

 

「ターニャさん、中央公園で活動中のシスターからです」

「……受け入れ人数が二十三人増えたことに伴う配給の増量要請ですか。分かりました、人数分の追加申請を次の定時報告で提出しておいてください。それまでは一人当たりの量を少し減らす対応を取ること、その周知も併せてお願いします」

「ターニャさん、複数の避難所から燃料の追加要請や街路樹を伐っていいかとの問い合わせが来ていますがどうしましょうか」

「街路樹ですか……。その木がキョウチクトウだった場合は燃やした煙も有毒です。種類が分かるまでは控えるよう伝えてください。それと椅子や机、棚など木製のもので使っていない学校の備品があれば使っても良いかの確認もしていただけますか」

「ターニャさん、戻ってきた五号車が襲撃を受けてパンクしているそうです!」

「くそっ、タイヤの取り寄せと交換にどの程度かかる……? 他に空いている車両があるかの確認を急いでお願いします! 無い場合は到着が遅れる旨の連絡を至急!」

 

 報告を受けそれに対して都度対応を指示する。それ自体に文句は無い。やっていることは日本や帝国軍にいた頃と何ら変わらないのだから。

 だが一体何故()()()()()()()()()のか。しかも衆目の前で。

 私が今いるのは駅前のロータリー。そしてこの場所は現在炊き出し現場兼物資集積所兼司令部として機能している。

 ハイランダー鉄道学園の車両で運ばれて来た物資が下ろされ、それぞれの現場にどの程度配るかが決定され、トラックに積まれ、その傍らでは料理が作られ、連絡係の怒声と書類がひっきりなしに飛び交うまさに重要な一大拠点。

 なるほど、ここなら必然的に多くの人が集まり私の存在と活動内容を認識される機会もこれまでと比べれば段違い。さすが地理や現地住民の事情に明るいだけのことはある──。最初はそう納得していた。

 しかしいざ活動をしているうちにいつの間にかここを統括するような立ち位置になっていたのは運命のいたずらと呼ぶ他に無いだろう。

 物資が滞留し遅配や誤配が生じれば士気の低下や戦闘能力の喪失につながる。それは二〇三大隊初の離脱者が腐ったジャガイモによる食中毒だった事実からも明らか。事なかれ主義による管理の怠慢は下手な敵よりも遥かに厄介なのだ。そして私が率いるはずだった戦闘団は戦車、砲兵を含む諸兵科連合部隊。魔導師だけと比べても圧倒的に管理スキルが問われる。

 そんな実体験からついトリニティ生に対し独断で戦場仕込みの指示と改善案のアドバイス、書類仕事の手伝いをしてしまったのだが……。

 そこから私が問い合わせや報告の窓口、そして指揮官になるなど誰が予想できるだろうか。

 

「本来私がする業務ではないのだぞ……」

 

 ゲヘナの生徒がシスターフッドや正義実現委員会の人間に指示を出し、彼女たちもそれにきちんと従っている。その光景からは労働させられている、保護されているといったマイナスイメージを受けるということも無いだろう。

 とはいえまだ問題が全て片付いたわけではない。

 現状を例えるなら子会社でも提携先でもない、それどころか会えば一触即発だったライバル企業の人間、しかも担当を外れた者が好き勝手しているようなもの。私が今しているのは管轄も権限も全て無視した越権行為に他ならないのだ。

 しかしいくら嫌だろうがトリニティ生からの信用と私が窓口、司令塔であるという印象はもはや拭えない。そしてこれを放棄すればそれこそ印象と信用は失墜し両校間の関係は戦争へ向かって一直線だ。

 結果として分かり切っている暴発を少しでも制御しようと魔力を注ぎ続け暴発の威力を上げるという九五式のテスト時のような負のループに囚われる羽目になっている。

 そんな現状に辟易しつつサインが済んだ配送の指示書や補修部品の報告書を運ぶため段ボール箱に詰めている時だった。

 

「ターニャさん、今よろしいですか!?」

 

 慌てた様子で飛び込んできたのは炊き出しの準備をしていたはずのヒナタ。

 焦っているようだが何かあったのだろうか。これ以上の面倒は勘弁願いたいのだが。

 心の底からそう思うがこの剣幕からして明らかに至急の要件であることは確実。故に私はため息が出そうになるのを堪えながら手を止めて口を開く。

 

「はい、今度は一体何でしょうか」

「ナギサさんが来てサクラコ様を出せと!」

 

 ナギサ会長が来ていて、責任者を呼んでいる?

 トップが現場の状況を理解しようと動く、実に結構なことではないか。書類だけで判断し現状にそぐわない命令を出すような人物より余程優れている。そしてそんな人物が責任者を呼んでいるというならさっさと出せばいいだけの話。

 そう判断して作業に戻るが、何故かヒナタは私の背後から動かない。

 まるで私のことを待っているかのように。

 ……まさか?

 

「でしたらサクラコ殿を呼べばよろしいのでは?」

「サクラコ様は今不在なんです。ですがそうお伝えしたら今度はここにいる中で状況を詳しく説明できる者を出せと」

「でしたらヒナタ殿が行くべきかと」

「物品の管理なら分かるのですが、申請や皆さんからの陳情に関してはターニャさんの方が詳しくご存じかと思いまして……」

 

 ──最悪極まる! 効率化のため分担した弊害がここで出るか!

 そもそも何故私がここの責任者扱いされている!? いくら暴発の抑制という大義名分を持っており現場で頼られていたとしてもあくまで私は指揮権の無い外部の人間なのだぞ!?

 いや、権限が無かったからこそ指示は口頭に徹して決済はトリニティの生徒に任せていた。私が関わったという客観的な証拠は無いはずだ。それなら誤魔化せるか?

 いや、こうしてヒナタが来ていることからしてトリニティ生たちの間で私が責任者だとの認識が広まっていることは十分考えられる。それがナギサ会長の耳に入れば逃げられない。

 どうすれば、どうすればいい?

 しかしそんなことを考えている間にも時間は着実に進む。なかなか戻ってこないヒナタを探しにその人が顔を出したのは当然と言っても良かった。

 

「ヒナタさん、ずいぶんと手間取っているようですがいつまで待たせるのですか?」

 

 ここは駅前にただテントを並べて机や椅子代わりに木箱を置いただけの仮設司令部。当然壁など一切無く、誰でも奥まで見通せて声も聞こえる隙間だらけ。

 だからこそ険しい顔でやって来たナギサ会長と私の視線は何にも遮られることなく当然のように直接交錯する。

 

「……すみません、私はこちらの状況が分かる方を呼んでくださいとお願いしたのですが。まさかそちらのゲヘナの方がそうだとは仰いませんよね?」

 

 ──ああくそったれ。

 薄い板壁一枚すら無いこの場所で今の会話が都合よく一切聞こえなかったなどというご都合展開は期待するべきではないだろう。確実に聞こえてしまっているはずだ。

 であるならばもはや現状を素直に認め、少しでも誠実だという印象を与えるしかない。

 

「はっ、小官が臨時でこちらの指揮を執っております。各種申請や受領書、炊き出しに関することでしたらある程度はご質問に答えられるかと」

「……何故ゲヘナの方がここに?」

「きっかけはサクラコ殿の気遣いであります。今回の停電がゲヘナの攻撃だとの噂が出回っているという情報があり、このままでは暴発から両校間の関係が悪化しエデン条約が破談となる可能性があると判断いたしました。それを防ぐためにゲヘナが無実であるとのイメージアップを図る必要が生じたのですが、その際にこちらでの活動が最適とご紹介いただきました。報告をしていなかったことについては謝罪いたします」

 

 堂々と、何も恐れていないかのように振る舞って見せる。

 嘘は言っていないと、ゲヘナとして正当な理由がある故の行為だと信じさせるために。

 ただそもそもが極秘任務でアリウスへ行っていた帰り、なぜここにいるのかという当然の質問を避けるために潜伏していたわけだが……。手伝うのであれば早めに報告だけしておくべきだったというのは私の落ち度だ。こればかりは責任を問われても致し方あるまい。

 

「トリニティの部隊の指揮をしていたようですが、本来の責任者であるはずのサクラコさんは何も言わなかったのですか?」

「はっ、小官がトリニティの皆様から信用を得ることが平和につながるのであればと好意的な反応をいただいております。むしろ積極的に活動し存在感を示すようにと皆様へ私の指示をできる限り聞くように声かけもしていただきました」

 

 これは紛れもない事実。

 確かに最初は外部の人間である私の指示をまともに聞いてくれる相手は少なかったが、サクラコが私の指示に合理性があると判断したならできるだけ聞くようにと説得してくれなければ今のこの状況は無かったに違いない。

 ──まあもっと詳細に言えば余計な一言があったというのも大きいのだろうが。

 

「サクラコさんがターニャさんの指示を聞くように指示を?」

「はい、正当な内容と納得できればという条件付きですが確かにそのように」

 

 しかし私が答えるに連れ、ナギサ会長の眉間の皺は次第に深くなっていく。

 まあそれも致し方無いだろう。現場が上司に無断でライバル企業の社員を登用し、しかもそれが幹部として裁量権を得ていたと知れば普通は大問題だ。

 

「ですが誓って小官は御校に不利益となるような指示はしておりません。それはこちらにいる皆様が証言してくださるかと」

「は、はい……! 私も近くで聞いていましたが、確かに的確なものばかりでした! サクラコ様が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言われたのも納得できるものです!」

 

 そしてヒナタがターニャを擁護しようと放った台詞。それを聞いた瞬間、険しかったナギサ会長の顔つきはまるで能面のように無表情なものとなった。

 その突然の変わりように思わず困惑し、そっと私とヒナタは互いの顔を見合わせる。

 上官の命令は天皇の命令だと思えなどとゴリ押ししていた日本軍ではあるまいし、そこまで反応するようなことを言っただろうか?

 

「サクラコさんの代わり……?」

「はい。ターニャさんはリーダーとして通用すると自分が認めている、だから私がいない時でも私の代わりだと思って接してほしいと皆さんに丁寧に頼まれていました」

「そういう、ことですか……!」

 

 ポツリと呟いた一言をヒナタが肯定した途端、一気に力が抜けて倒れそうになるナギサ会長。

 そしてそれに慌てて駆け寄った瞬間だった。

 何の前触れも無く突然駅舎の照明や駅前に立つ街灯が点き、同時に小さいながらも空調の機械音がはっきりと聞こえ出す。

 それは紛れもなくこの長く続いた混沌と不安の日々が終わったという証。

 これでようやく日常に戻れるならそれは確かに喜ばしい。喜ばしいのだが……。

 

「──何がどうしてこうなった?」

 

 崩れ落ちているナギサ会長を前に私はただひたすらに困惑するしかなかった。




謝肉祭イベントでコユキみたいな顔でミネ団長に振り回されていたサクラコ様可愛くて好き。
サクラコ様余計な一言被害者の会とかありませんかね?
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