同じものを見て同じことを理解していることの大切さを実感できる素晴らしい三か月でした。
いつかターニャに平穏のあらんことを……。
自身の活躍を認められスカウトされる。それは何と光栄なことでしょう。
しかもそのスカウトをしてきたのは巨大な権限を持つ連邦生徒会の一部署のトップ、加えて業務内容は私が望んでやまなかった安全な後方での事務作業。
おまけに以前アビドスの自治区で先生を攻撃してしまったという不名誉な噂を払拭する手助けをしたいという本来ならこちらからお願いするベき話を先方から提示されるという気遣いまでされる望外の状況。
これほどの好条件を断るのは社会人でなくとも、そして何よりも平穏を望む私でなくとも受けて当然のことであるに違いありません。
どうも皆様ご機嫌よう、平和を愛してやまないターニャ・デグレチャフです。
時刻は午前八時半、そして私がいるのはD.U.中心から約三〇キロ離れた外郭部にあるシャーレの建物の前。
こんな時間に何故ここにいるのか。それはこれから私のシャーレ当番としての初勤務が行われるからに他なりません。
――当番。
それは各学校の生徒が日替わりでシャーレを訪れ業務を手伝うというもの。
私からしてみれば連邦生徒会という安定の保証された職場での事務作業、そして連邦生徒会ヘの推薦を得られるかもしれない絶好の機会。これならば労働意欲も湧くというものでしょう。
「……いよいよか。ここからは給料分以上の働きをせねばな」
これから行うのはただの仕事ではなく私の勤勉さや事務処理の有能さをアピールする自己PR。故に全力で取り組むことが求められる。
しかしやはり気になるのはその業務が果たしてどの程度円滑に行えるかという点。
キヴォトス全土にある各学校から依頼が寄せられ、またそれらからの生徒が多数来るということは環境や文化が大きく異なる集団に属する集団が接触するということ。
例えばアビドスのように過疎化している土地とトリニティのように複数の派閥が頻繁に衝突している場所では求められる人材も必要な資材も異なることは明らか。
さらに言えば依頼の受け付けに関しても果たしてどれほど書式が統一されているか。
記入方法が定まっている書式ですら内容が正しいかを確認するのは面倒だというのに学校ごとに書式がバラバラでは準備と行動までの手間も格段に増えるのは目に見えている。
だからこそ基本となる書式が用意されていてほしいと心の底から思うのだが、悲しいかな万魔殿で勤務に当たっている最中もそのような話が耳に入った覚えは無し。つまりは面倒な手間が増えるのは確定事項と言える。
大隊長として報告書や申請書の作成、打ち合わせに決定事項の承認といった事務処理を散々やり慣れてきたとしても、余計な手間を好きで味わいたいわけではないのだ。
――とはいえこればかりは嫌だからといって逃げるわけにもいかないのだが。
故に私は覚悟を決めつつロビーヘ足を踏み入れ。
「……何だか思っていたのと少し、いや、かなり違うな」
建物の奥ヘと進むにつれて目に入ってくる、予想していたのとかなり違う光景に少しばかり困惑することとなった。
入口のコンビニに客がいるのは良い。トレーニング用機器が置かれた部屋でべンチプレスをしている生徒がいるというのも体力作りのためと言われれば理解はできる。
しかしゲームセンターにあるような筐体が置かれた部屋があり、それで遊んでいる生徒がいるというのは一体どう捉えればいいのか。加えて食堂の窓の向こうに広がっているのはどう見ても花壇ではなく畑。
以前説明を聞きに来た時は気付かなかったが公的施設にしてはあまりにも雰囲気が緩すぎる。
「……シャーレは連邦生徒会傘下の官公庁だと思っていたのだがなぁ」
――考えられるとすればこのロビー部分は一般客の利用できる商業施設でありシャーレ自体は別のフロアに入っているか。
しかし下部組織とはいえ中央省庁の部署が大きくもない商業ビルに入っているのはどういうことだろうか。
本当に重要な肝煎りの組織であれば普通は連邦生徒会の本部たるサンクトゥムタワーや合同庁舎などに置かれるはず。それがD.U.の中心から三十キロも離れた場所でささやかに運営されているということは必然的に組織の重要性が高くないことを物語っている。
そしてもしその予測が正しかった場合、シャーレでの功績によって連邦生徒会ヘ入るという私の人生設計にも黄色信号が灯ってしまう。
「いや、落ち着いて考えろ。需要があったからこそ設立された、なら将来性はあるはずだ。実績を挙げさえすれば組織の拡大と安定も見込めるのではないか?」
とはいえ諦めるのはまだ早い。
シャーレ同様小回りの利く片付け係として設立された二〇三大隊も最初は簡単な幻影すら見抜けないうえマニュアルをそのまま実践しようとするひよっこばかりだったが、訓練と実戦での経験が評価と信用を生み最終的には参謀本部の切り札としての地位を確立した。
ならば同様に実績を重ねれば連邦生徒会内の地位が向上し、先生のみならず貢献した生徒が注目される可能性も十分にある。
そしてその可能性があるならどう行動するかなど言うまでもないだろう。
「つまり必要なのは私個人だけでなく所属する生徒全体の活躍であり単に当番の日だけ業務を行うだけでは不十分。ならば当番以外の日もシャーレと関われば一石二鳥、いや、三鳥!」
いくら私が優秀な結果を出しても組織として結果を出さなければ評価にはつながらない。ならば組織全体の育成に協力するベきという結論に至るのは当然のこと。
そしてこのアイデアは実に双方にとって利益がある。
私からすれば業務改善の指導で積極性と有能さをアピールできると同時に安全に過ごせ、万魔殿内部での出世も見込めるうえ他学校の生徒とのネットワークも構築できる。さらにゲヘナの悪評の払拭にもつながるはずだ。
シャーレにしても業務の効率化や複数の学校との連携強化などで結果を出すことができれば連邦生徒会だけでなくキヴォトス全土ヘのアピールにもなる。
だからこそ私は決意と共にエレベーターを降りた先にある扉ヘ歩みを進め、扉に刻まれたロゴと横の壁に記された「連邦捜査部S.C.H.A.L.E」の文字を確認し深く息を吐く。
――出世と平穏を手に入れる機会は絶対に逃がすわけにはいかない。そのためにも今日の仕事は必ず成功させなければ。
「ターニャ・デグレチャフ、入室いたします!」
少しでもイメージを良くするベく高らかに名前を名乗りながら私はセキュリティゲートを抜けてドアの内側ヘと足を踏み入れる。
しかしその先に広がっていたのはまたしても予想外の光景だった。
今度こそ役所然としたオフィスがあるものと思っていたがそこにあったのは複数の部屋と通路を結ぶロビーのような空間。それぞれの扉の横には図書館、実験室、射撃場といった部屋名が記されており、そしててっきりオフィスがあると思った正面の扉を開けてみればそこに鎮座しているのは純白に塗装されたへリコプター。
そして壁の間取り図を見てみればオフィスそのものは他の部屋と比べるとかなり小さく、具体的には建物の反対側にある体育館の方が広く思えるほど。
これらから察するに連邦生徒会は教室や視聴覚室を使った講習をはじめ射撃や体術による制圧力の強化と科学捜査の実施、さらにへリによる機動力の確保まで求めていると思われる。
まさしく万能な便利屋扱いだ。
「オフィスは左の廊下の先か……。構造を考えれば事務仕事より訓練や研修が重点になる可能性が高いな。だがそれはそれで悪くない」
おそらくここの役割は司令部というより基地に近い。書類の決裁や会計、物資の手配などの事務仕事もあるにはあるだろうが基本的には訓練が中心になるのだろう。
とはいえ組織全体の効率化と私自身のアピールが目的である以上安全の保障されている教官役は十分歓迎できる。二〇三大隊はもちろん最近ではアリウス自治区でも指導を行ったのだ、行う機会がさらに増えたとしても文句を言うほどでもない。
むしろ装備やドクトリンの異なる複数の学校の生徒の同時指導ともなれば当然困難が予想され、それを成功させることができれば私の評価も高くなることは明白。ならばその実現に向けて全力で取り組もうという意欲も湧いてくるというもの。
故に私は今度こそ、ここがシャーレのオフィスだと念入りに確認してから廊下の奥にあった扉を礼儀正しくノックする。
「ターニャ・デグレチャフ、入室いたします!」
「“……ターニャ? 無事に来られて良かった、問題は無かった?”」
そして扉を開けた先では机のパソコン越しに先生が安心したような笑みを浮かべていた。
机の後ろ一面が大きなガラス窓となっている部屋は燦々と射し込む陽光に照らされ、白を基調とした内装もあって雰囲気は実に開放的。見える範囲も片付けられておりここで過ごすことに不快感を覚える心配も無さそうだ。
やはり後方、しかも将来性のある組織での労働は素晴らしい。
「はっ、問題ありません。本日はよろしくお願いいたします」
「“こちらこそよろしく。じゃあ簡単にシャーレの業務についての説明をするね”」
斯くしてにこやかに微笑む先生から改めて語られたシャーレの業務内容はまさに目を見張るものだった。
勤務時間は九時から十八時まで、休憩は十二時からの一時間と十五時から三十分の二回。その際は下の階にあるカフェテリアを使用可。
当然ながら依頼によって業務内容は異なるため具体的なノルマは決まっておらず、個人が判断し独自に行動。依頼の選択に当たり先生の認可を得る必要は無し。つまり極端に言えば確実な成功が見込める美味しい案件だけ担当するという芸当すら可能。
過大なノルマに追われ残業を強いられる心配が皆無という点はまさに夢のよう。広義的には軍人も同じ公務員ではあったが二十四時間勤務を強いられ常に命の危機に晒された参謀本部付き時代と比べると天国としか言いようが無い。
これで出世までできる? 最高ではないか!
故に私は心からの笑顔を浮かべ、輝かしい未来ヘと突き進むのだ。
「では仕事に取り掛かるとしましょう」
◆
――真面目で責任感のある、強くて優しい子。
それが先生のターニャ・デグレチャフに対して抱いた率直な印象だった。
初めて会ったのはアビドス自治区、柴関ラーメンにいたアビドスの生徒と便利屋68の皆をイオリたちゲへナの風紀委員が攻撃してきた時。
その際の攻撃を止めようと双方に呼びかけ、事態が落ち着いた後はきちんと謝罪する真面目な姿に安心感を抱いたことは強く記憶に残っている。
だからこそ彼女がかつてあの理事の下、カイザーPMCにいたと知った時は驚いたものだ。
そしてそんな経歴を持つからこそホシノを助けるためPMC基地を襲撃すると決まった際に砂漠の知識や基地の構造といった情報を持つ人物として複数人から真っ先にターニャの名前が挙げられたのも当然のことと言えるだろう。
しかし退職したとはいえターニャにとってPMCはかつて過ごした古巣、そこヘの攻撃に協力してくれるかは怪しいところ。故に断られることも覚悟していたのだが……。
蓋を開けてみれば結果はまさかの快諾。ホシノのためにゲへナとは仲が悪いはずのトリニティと連携しスムーズに作戦立案から準備、実行に至るまでを整える優しさを見せてくれた。
そして極め付けは理事のパワードスーツを撃破できる戦闘力と機械仕掛けの蛇を前に優れた指揮能力、自身を囮にすることも厭わない自己犠牲の精神までをも示したこと。
性格も能力もまさに完璧、普通ならこれで信頼するなという方が無理な話だ。
しかし。
「――先生、ターニャ・デグレチャフを信用しすぎないで。あの子は確かに優秀だけど腹の底では何を考えているか分からないから」
ホシノを助けた後、感謝を伝えるため訪れた風紀委員の本部でヒナから言われた警告が棘のように先生の心に刺さり続けていた。
ヒナが教えてくれたカイザーについての情報は正しく、つまりこの警告も根拠に基づいた正確なものである可能性はある。そしてアコもまたターニャのことを警戒していた。
普段から様々な問題児と接している風紀委員だけにその気付きと判断を疑いはしない。とはいえ伝聞だけで判断するのは間違っている。決めるのは自分の目で見てからでなければ――。
そう思ったからこそターニャについて知るためシャーレに来ないかと先生自ら勧誘したのはつい先日のこと。
そして今日、その初当番の日を迎え。
「先生、こちらの明らかに途中で放置されていた報告書はどういうことでしょうか」
「“えっと、それはモモイ……、昨日来たミレニアムの子に頼まれた新作ゲームのテストプレイをしていてそのままにしちゃったんじゃないかなぁと”」
「生徒の相談に対応されるのは教職者として大変結構ですがそれで本来の業務に支障が出ては本末転倒です。直ちに取り掛かってください」
「“はい、今すぐやります”」
――今に至る。
「そもそも全体的に記入ミスや内容の間違いが多すぎます。これくらいで大丈夫だと思う、などと推測かつ口語体の発注書など通るわけがないでしょう。数と金額を明確にしてください」
「“……ターニャって連邦生徒会かミレニアムに知り合いがいたりする? リンちゃんとかユウカにすごく雰囲気がそっくりだ”」
「冗談を言う暇があるなら手を動かしていただけますか」
ターニャは非常に優秀だった。
ミスを見つけ、修正し、依頼をすぐに実行できそうなものと難しいものに分類する。その手際はどれも正確で素早く非の打ちどころは皆無。
ターニャの戦闘力や指揮能力が優れているのは承知していたが、まさか事務処理能力もこれほど優れているとは。そんな完璧ぶりに果たして欠点らしい欠点は存在するのだろうかという疑問すら湧いてくる。
しかし素直に感嘆していられたのもそれまで。
度重なるミスの発見と修正により一向に業務が進まないターニャが零していた愚痴は次第に先生ヘの叱責ヘと変化し、結果として生徒に叱られる先生というシャーレではもはやお馴染みと言える光景が再現されることとなっていた。
──もっとも先生はターニャが怒っているのは本気でシャーレのことを考えてくれているからだと内心では少しだけ嬉しそうにその叱責を聞いていたのだが。
そしてその後も紆余曲折がありながら業務は続き。
「“……もうこんな時間か。ターニャ、少し休まない? 下のカフェに美味しいケーキやコーヒーがあるんだ”」
「休憩ですか。確かに効率的な活動には必須ですな」
やがて部屋に鳴り響いたのは十五時を告げるアラーム。それを聞いた先生はキーボードを叩いていた手を止めて休憩を呼びかけた。
ターニャのおかげで溜まっていた書類はかなり片付いた。しかしそれと引き換えに先生が覚えるのはずっと同じ姿勢で座っていたことによる肩や腰の痛みや眠気といった疲労感。
糖分やカフェインが欲しいと思うのも当然と言えるだろう。
そして疲れているのは同じだったのかターニャもすぐにその誘いを受け入れ、二人はオフィスを出て下のフロアにあるカフェヘ。
「……なるほど、確かにこのチョコケーキとコーヒーはなかなかのものですな」
「“でしょ? スイーツが好きなトリニティの子たちがおすすめしてくれた業者から仕入れているんだ。他のケーキや紅茶も味は保証するよ。……ところで迷わずにそれを注文したけどターニャはチョコとコーヒーが好きなの?”」
「はい、特にコーヒーが好物でして。香りや味といった嗜好的な面だけでなく眠気覚ましになる点から効率の面でも普段から愛飲しております。紅茶も悪くはないのですがやはり飲み慣れたものが一番舌に合うもので」
「“分かる、やっぱり夜仕事している時に飲みたくなるよね”」
整った所作でケーキを口ヘ運び、静かにカップを傾けるターニャ。その様子を見つめながら先生はターニャをスカウトして良かったと心の底から安堵していた。
仕事に対してはどこまでも真剣、それどころか書類が片付いたと報告してくる姿はどこか自慢気にすら見えた。おそらく働くこと、誰かの役に立つことが本当に好きなのだろう。そしてコーヒーブレイクを楽しんでいる姿はまさに年相応。
ヒナとアコはああ言っていたがどう見てもターニャは信頼できる普通の生徒だ。きっとあの警告も口下手で本音が読めなかった結果生まれた誤解に違いない──。
そう結論付け、カップのコーヒーを飲み干した時だった。
「“……電話だ、ちょっと待ってて”」
ポケットに入れていた携帯電話から軽やかに流れ始めるメロディ。オフィスにかかってきた電話も転送されるようにしてあるためこれが緊急の依頼という可能性もあり無視はできない。
故に先生は断りを入れて席を立ち、廊下で相手の話に耳を傾ける。
そして。
「“第三幹線道路付近で美食研究会の子とマーケットガードが交戦していてかなり被害が出ているから鎮圧してほしいってモモカ……連邦生徒会の交通室から頼まれちゃった”」
「連邦生徒会の正式な依頼ですか? では至急対応できる生徒に連絡を」
緊急の依頼が入ったことを告げればターニャは瞬時に表情を引き締めて立ち上がる。それを見た先生もまた誰に頼もうかと一瞬考え込んで──。
「“そうだ、これはターニャに任せてもいいかな?”」
気付いてしまった。
ちょうど目の前に責任感と実力があり、誰かの役に立つことが好きな生徒がいることに。
「し、小官にですか!?」
「“ターニャなら安心して任せられるから。もちろん他の子にも手伝ってもらえないか頼んでみるよ。駄目かな?”」
とはいえ一応どうしても行きたくないなら行かなくても良いよ、とも補足する。
自分の確認ミスで余計に疲れさせてしまったのは事実、それにターニャ自身も戦闘より事務仕事を希望しているように見受けられた。生徒本人の希望を無視して仕事を押し付けることをしたくはない。
そして。
「……分かりました、全力を尽くさせていただきます」
「“ありがとう”」
数秒の沈黙の末にターニャはお願いを承諾し、それに先生はほっと笑みを浮かべるのだった。
◆
「──くそっ、安全な事務仕事だけのはずだったのにどうしてこうなった」
夜の八時過ぎ、そう呟きながらターニャは一人ゲへナ自治区を歩いていた。
先生の信用を得られたのは良いが最後になって幹線道路で傍迷惑な銃撃戦をしているテロリストの鎮圧を任されるなど想定外。確かにそういう案件もあることは承知していたが当番として業務に当たっている自分がそれをする羽目になるなどどうして予想できるだろうか。
「まさか先生があそこまで無能だったとは。まったく、フォローする方の身にもなってほしいものだ……。まあ結果として無事に片付いたし先生や連邦生徒会からの評価も期待できる。こういったことは少しでも前向きに受け取らなければな」
とはいえ結果だけを見ればそこまで悪くもない。
戦場での上官や命令を発する司令部の将校が無能なのは最悪命に係わるため御免こうむるが事務処理能力が無能なのはまだ許容範囲。むしろ捉え方によってはミスの発見と修正による業務改善という目に見える形での貢献ができるアピールチャンスにもなり得る。
そして実際にシャーレの業務に積極的に関わり連邦生徒会の依頼にも迅速に対応、さらに当番の日以外にシャーレヘ来て業務を手伝う許可を得るという積極的姿勢を示すことにも成功した。これならアピールとしても十分。
後は繰り返し成果を積み重ね、さらなる評価と信用を得ていけばいつか連邦生徒会に入ることも決して夢ではない──。
そう明るい未来予想図を思い描いている時だった。
「……こんな時間に電話? しかも非通知だと?」
不意に鞄の中から携帯電話の着信メロディが鳴り響く。そして取り出した携帯電話の画面に表示されているのは非通知の三文字。
面倒事の気配しかしないが出ないというわけにもいかないだろう。
故にターニャはため息をつきながら通話のアイコンをタップして耳に当て。
「もしもし、ターニャ・デグレチャフです」
「こんばんは、ターニャさん。突然
「──っ!」
飛び込んできた聞き覚えのある声──桐藤ナギサの声に驚愕した。
ティーパーティーのホストが一体何の用だ。しかもこのような時間にわざわざ非通知で。
一瞬そう混乱するもターニャは冷静に相手の行動の意図について考え込む。
このような形。そう言及したということはわざわざ非通知でかけてきたことに意味があるということだ。つまりここで相手の名前を出すことは悪手。
「お久しぶりです。ずいぶんと唐突ですが何かご用でしょうか」
「名前を出さないでいただきありがとうございます」
故に詳しいことは聞かず話を続けたのだが果たしてその判断は正しかったらしく、電話の向こうからはどこか安堵したような気配が伝わってくる。
しかしまだ気は抜けない、問題なのはその内容なのだから。
そして。
「……要件ですが、以前お話した掃除について対象と日程が決まりまして。近いうちに内密で直接会ってお話ししたいのですが都合のつく日を教えていただけますか?」
持ち込まれた内容は最悪と言って良いものだった。
この話がいずれ来ることは分かっていたが、それでも政治的な爆弾を強制的に背負わされるなどこれからの明るい未来にとって不穏でしかない。
しかし、それでも、契約として一度合意した以上は従うしかないのだ。
──それが自身を追い詰める道だと分かっていたとしても。
「……幸い明日は一日を通して休みでして。ご希望の時間にお訪ねできるかと」
「それは良かったです。では明日十五時にトリニティで。詳しい場所は追って連絡いたしますね、ではご機嫌よう」
そして通話の切れた携帯電話を仕舞い、ターニャは夜空を見上げてため息を零す。
──結局は面倒事から逃げられないのか。ああ、くそったれ。
・秩序あるゲへナという理念に共感し、
・権力者を効果的に使って発言力と信用を得る手腕に感服し、
・次代のポストマコトと認定して取り入ろうとし、
・急にキヴォトス全土を相手に全面戦争の準備をさせられ、
・一、二年生によるクーデターに巻き込まれる
公式の幼女戦記コラボかな? と思うくらいターニャの巻き込まれ振りが鮮明に思い描けてずっと爆笑しながらストーリー読んでました。
それとイオリの狙撃をキャッチしてみせたマコトが格好良すぎて惚れ直し不可避。