暮雲春樹に駆られて   作:ひえしょう

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おじさんはまだ生徒会副会長になりません。
最早必要事項としてお伝えしますが、心で感じてください。読んでくださる皆さまのイメージ力にかかっています()


Memories
Memories.1


「カオルちゃん!聞いて!この間、新入生が入ったんだよ!」

 

「わお、こんな状態のアビドスに新入生なんて入るんですね・・・!」

 

「うんうん!生徒会に入ってくれないかな・・・

そしたら、書記?会計?のポジションを任せちゃおうかな!」

 

「雑だなあ(笑)」

 

 

軽口を叩きつつ、昨晩に急ピッチで仕上げたアビドスの環境改善に関する署名書を片手に校舎を出る。

ユメ先輩はアビドス高等学校の生徒会会長、私は生徒会副会長としてアビドスをどうにかしようと頑張っている。

最も、アビドスにいる学生の多くは相次ぐ自主退学と無断欠席でほぼいないに等しい。生徒は実質私たち二人だけ。

アビドスを変えていくために、様々な取り組みを進めようとしているが、アビドス市民はもう既に諦めているのか、私たちの活動には非協力的。

それでも、ユメ先輩が頑張っているってだけで、私も頑張れる元気が出てくる。

 

他の自治区よりも閑散としているアビドス内でそれなりに人通りの多い場所を選ぶと

お互いに顔を合わせて、よし、と頷く。

 

「「アビドスの環境を改善するために、署名を集めています!」」

 

「「皆さんの協力が必要なんです!」」

 

 

・・・頑張って声を出し続けていたが、成果は実らなかった。

__________________________

 

「うう、上手くいかないね・・・」

 

「ユメ先輩らしくないですね。今日はどうしたんですか?」

 

「ちょっとナイーブかも、助けてカオルちゃん・・・」

 

 

はいはい、と座り込んでグズるユメ先輩の頭を撫でていると、ユメ先輩の頭の方が擦り寄ってきた。甘えたがりはいつものことでもある。人に寄りかかれる、そんな所もこの人の長所の一つだと思う。

そんな彼女に私も支えられているのだから、流石生徒会長、やっぱり凄い人だ。

 

「あ!あの子!」

 

そんなユメ先輩が、何かを発見したのか、すくっと立ち上がり、その何かに駆け寄っていって声をかけた。

 

「あっ!ちょ、ちょっと待って!」

 

声をかけたのは、桃色の髪の毛で、少し背の低い学生さん。

 

「えへへ・・・最近入学してくれた子だよね?

えっと、たしか名前は・・・ホシノちゃん、だよね!

あれ、違った?

あ、待って〜!!」

 

顔と身振り手振りの慌ただしいユメ先輩を尻目に、その「ホシノちゃん」はどこかへ行ってしまった。

そんなやりとりが、彼女、小鳥遊ホシノとの、初めての出会いだった。

 

 

 

 

 

別のある日。

今度は自治区における治安維持の強化のため、その方針の説明会開催の呼びかけを日が暮れるまでしていた。

そんな日の帰り道、ユメ先輩と別れて少しした頃。

 

・・・めっちゃチンピラに囲まれていた。

 

 

「お前がアビドス生徒会副会長、柳カオルか!!」

 

「・・・そうですけど、どうしたんですか?」

 

「お前たちがお金を払わないせいで、上からとばっちりを受けたんだぞ!責任とれよ!」

 

うーんと、どうしよう・・・

アビドスに借金があるのは事実だし、アビドス高等学校の生徒会として活動している以上、その責任も取らないといけない・・・。

かといって、ここでドンパチやってもなあ、という心境。

ユメ先輩も、戦うのは嫌いだし、私も好きではない。

戦って、アビドスがよくなるわけではないし、次の争いを生みかねない。

 

どうしようかと返事に迷っていると、どっかから「かかれー!」と声が上がり、それに合わせてチンピラが一斉に襲いかかってきた。

やば、もうやるしかないか・・・

 

背負っていたアサルトライフルを抱えると、しょうがなく戦闘を始めた。

_________________________

 

 

「・・・強いんですね、柳カオル副会長」

 

適当にチンピラを追い払うと、影からひょこっと「ホシノちゃん」が顔を覗かせた。

 

「ホシノちゃん、だっけ。戦っているの見られちゃったね・・・」

 

「助けに入ろうかと思ったんですが、その必要はなかったですね。失礼しました。」

 

「ううん、ありがとう、気持ちだけでも嬉しいな

──ところで、心配で見に来てくれたの??」

 

助けてくれようとしていたことに感謝を伝えるのと同時に、様子を見に来てくれたのか聞くと、

少し照れまじりの呆れ顔で、否定してきた。

 

「違いますよ、ただ、今のアビドスは無法地帯ですから・・・」

 

そっか、と笑いながら返事をすると、ホシノちゃんもほんの少しだけ、表情が明るくなった。

 

「それに、こういうことは今までも結構あったんだよね。

会長よりは副会長が立場的にも狙いやすいのか、私のところによく来るんだけど・・・

幸い、少し荒っぽいことは私が全部やっちゃうから、それはそれで都合がいいというか・・・

ユメ先輩に隠れてではあるけどね・・・」

 

あんまり関係ないよね、ごめんねと付け足して伝えると、黙っていたホシノちゃんが口を開いた。

 

「・・・生徒会のお二人がやっていることは、はっきり言って無駄だと思います。

自分達が危険に晒されるかもしれないのに、成果の出ないようなことを続けて・・・

なんで、あんなことを続けるんですか?」

 

「・・・何でかって言うと、少し難しいかもしれないけど、やっぱり、アビドスが好きだから、じゃないかな。」

 

「だったら、なおさらもっと可能性のある方法があると思います。

柳カオル副会長は、もっと聡明な人だと思ってました。」

 

確かに、日々の呼びかけや署名活動は、身を結んでいない。

ましてや、その所為で今日のように絡まれることも少なからずある。

 

「・・・確かに、ホシノちゃんの言う通りかもしれないけど、やっぱり、ユメ先輩が頑張る限り、私も頑張るよ。それに、こう見えても、私もアビドスの人たちも信じてるから。」

 

これは本心だ。例えコスパやタイパが悪くても、こうして活動し続けることに意味があるのではないかと思っている。その行動が、いつかアビドスを変えて行くと、信じている。

そして、ユメ先輩を信じてる。

 

「そうですか、失礼しました。」

そういうと、神妙な面持ちでホシノちゃんは後を去った。

・・・これは、生徒会への勧誘は難しそうかもしれないと、若干頭を抱えた。

 

 

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