霊王宮。名の通り、霊王がいる場所で。霊王がいる場所を守ってるのか、霊王を守ってるのか知らないけど、零番隊とかいう化け物が住んでる場所でもある。さて。こんな説明をしたってことは、目の前がその霊王宮であることはわかりやすくて。下から選ばれたのは…私と、アスキンだけっぽい。目の前にはなんか機械の手をカタカタ言わせてる奴。
「私?」
「いや、僕で良い」
瞬殺。その二字が似合うような倒れ方をそのカタカタ言わせてる零番隊はしてしまった。私が出る幕はない。それどころか、私は雨竜の補佐だから、という点で選ばれた可能性がある。え、何それ泣いちゃいそう…
「で、リジェさん」
「なんだい?」
「ここから見える景色、本当に霊王宮なの?」
「何が言いたいかはっきり言わんか!」
「…さっき、リジェさんが撃った弾の衝撃か何かで、景色が揺らいだように見えた」
そして今度は、目に見える形で背景が揺らいだ。風に揺れる布みたいだなぁ…とか思ったら。さっき殺したやつが出てきた。そこから、零番隊が全員揃いましたよと言わんばかりに並び立ち、そんでもって、よくわからんグラサンみたいなのが降りてきて個性的な自己紹介もした。
「ご丁寧に。私はリーベ・クラング。」
「返さなくて良いYo。知ってるからNe。」
「だって、リジェさん」
華麗にスルーをされたところで、リジェさんが一発。弾かれたか、割れたのか、王悦と名乗った男の能力なのか。弾は当たらなかった。ジェラルドさんが王悦に向かって走る最中。私もなんかしなきゃなぁ、と思い行動。
「上からどーん!」
「おっと。味方を巻き込む気かNa?」
引き際に何をしたのか。ジェラルドさんは斬られていた。対象を確実に切る能力?ならなんで血液が吹き出すのに時間がかかる?間をおいて切れる能力ならリジェさんの弾が切れたことに納得できない。あとはなんだ、純粋に斬れまくる、とか?切れ味が良い…それなら納得もできるか。切れ味が良すぎて、血管が繋がりかけ…それを血圧が破るから一瞬遅れて血が吹き出してる。
「じゃあ、私と相性悪いじゃん」
「Ha?」
私の能力は再生。つまり、切れ味が良すぎて再生しかけているのであれば、私は血が噴き出る前に再生する。あんな刀より、切れ味の悪いカッターの方が天敵だね、私は。
「本当だNe。切った側から回復してる…じゃ、これはどうかNa!」
蹴りが飛んできやがった。刀使うなら足使うな、死神かお前は。…死神だったね、貴方。とまあそんなことをして。一応陛下が見ておられるので黙って蹴飛ばされるわけには行かず。王悦の足を体全体で受け止めて、しっかりと掴む。誰か私の意図に気付いて致命打を─
「ぁ…?」
「掴むなら、斬るまでSa。頭を切られて能力出せる奴なんかいねえYo」
ど正論…正論も正論、再生で調子乗ってた。確かに頭斬ればそれで終わりだ。滅却師完聖体も間に合わない…舐めてたな、零番隊。でも、もう…意識が…
「っ!」
「何だい…こりゃあ…」
何が起こった?私、確かに死んだはず…というよりも、この霊力が降り注いでいる状況は!?何、何が起こったの!?誰か説明して!
「聖別さ…なんでこれも知らないような君がここにいるのかは疑問だが、今は良い。」
「なるほど…それで蘇ったってわけね」
あーもう、考えるのが面倒なのに、考えなきゃ生き残れない。雨竜はどこ?あいつの側なら絶対安全で…あーダメだ。陛下がいた。困ったな…とりあえず完聖体になって、全力で戦うとしますか。私の目の前に立った、チョンマゲをとことん伸ばした髪型してる奴と。
「おいおい、一人でやるつもりか!?」
「しょーがないでしょ。私、多分この中だと一番弱いんだもん」
「足止めのつもりか?」
「まさか。─殺す気だよ」
今度こそ出し損はしない。滅却師完聖体、滅却師最終形態。この二つは合わせることはできない…恐らくその理由は、安全を求めた完聖体に最終形態の霊子収束能力を入れると、完聖体が保てなくなるから。ま、逆に言えば保てれば良いわけで。今は陛下に力を与えてもらってるし、滅却師最終形態の時間制限も消えてるでしょ。
「それで良いのかよ」
「これが安心安全に使えるってわかったら本気出すから大丈夫!」
距離を詰めて矢を投げる。躱された、というよりも余裕で避けられた。うわ、ムカつく。というわけで矢の上に乗って、移動を開始する。周りの大木っぽいのから、なんだか霊子が吸われている気もするが、それを上回る速度でこっちが吸えば良い話。そして速さは関係なしに、上から大量の矢を降り注ぐ。手数で速さに追いつくのは、遅い奴がすることだからね。
「これくらいで止められると思ってんのか?
「あぅっまぶしっ」
やっぱり私じゃ火力不足だよねぇ…というか、更木剣八は更木剣八だから足止めて聞いてくれたわけだっけ。じゃあ足りないのは素早さか。まあなんにしても、目眩しってさぁ…
「シンプルすぎない?」
「へっ!言うと思ったぜ!」
と言うわけで、刀を振り終えた瞬間の男に抱きつこうとする。空振り、さらに後ろを取られる。ここまでは想定済みである。足場にしていた矢の形を変えて拘束する。出来る限りガッチガチに。それで、もう一度抱きつく。抱きつくっていうか、のしかかりかな?
「リジェさん」
「な─」
「素晴らしいね」
気づいた時にはもう遅い、私は再生するけど、この男は何か鬼道とかいうのを媒介に回復している。ならば、それを使うまでもなく頭を打ち抜けば良いこと。下半身にしがみつき、足を固定させる。そして、リジェさんの弾丸が頭蓋を撃ち抜いた。
「ありがとう、リジェさん」
「自分自身で何とかならなかったのか?」
「早いから捕まんなくてさぁ」
「奴ならば速さで劣るのも必然だ。そう落胆するな、リーベ。」
気を回すべきではある。が、それだけなので、全く誰も触れない。