Guardian's Sword   作:常磐

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リリカルなのはViVidがアニメ化されるという情報を聞きつけ、昔妄想したネタを投稿。

Q.ただでさえ二作品の更新が止まっているのにさらに増やして大丈夫か?

A.しゃーないやろ!書きたくなったんや!





剣と盾

―――数年前―――

 

 

 

「ユーノ…これを、お前に託したい」

 

 

その男性は、目の前にいる少年――ユーノ・スクライアに()() を差し出した。

まだ年齢が二桁に達していない子供であるにもかかわらず、大人たちに混じって遺跡調査を行っているユーノは、()()がどれほどの物かを理解していた。

 

 

(僕なんかが、持っていい物なのかな…)

 

 

ユーノの心が大きな不安に支配されていく。

 

しかし、ユーノは見た。

自身をまっすぐに見つめる男性の瞳を。

ユーノにならば託せるという、ユーノへの強い信頼が込められた眼差しを。

 

 

その信頼に応えたい。

そう思ったユーノは、不安を振り払って男性から()()を受け取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――現在 新暦70年―――

 

 

時空管理局本局のとある訓練室。

その室内に張られた結界の中で、一人の騎士が剣を振るっていた。

 

 

「紫電一閃!!」

 

 

その騎士の名はシグナム。

守護騎士ヴォルケンリッターの『烈火の将』。

彼女は己の相棒である『炎の魔剣』レヴァンティンに火炎を纏わせ、正面の敵に必殺の一撃を叩き込む。

魔剣の一撃は敵のシールドを容易く破壊し、敵を地面に吹き飛ばした。

倒れるその敵の近くには、同じく戦闘不能となった者たちが五人横たわっている。

 

 

「残りは四人。さあ、次はだれが来る?」

 

 

シグナムは自身の周囲にいる四人の魔導師たちに向けてレヴァンティンを振りかざして言った。

魔導師たちは彼女の気迫に気圧されそうになる自分を奮い立たせ、フォーメーションを組んでシグナムに挑む。

 

 

「一気に来るか、面白い!」

 

 

一対四という状況下にあっても、シグナムは笑みを浮かべながら魔導師たちを迎え撃つ。

その様子を、結界の外から見ている少年がいた。

 

 

「やっぱりすごいな、シグナムさんは…」

 

 

少年の名はユーノ・スクライア。

優秀な結界魔導師である彼は、仲間が模擬戦を行う際に結界を張る役目を任されることが度々あった。

今回もシグナムと、彼女のライバルであるフェイト・テスタロッサ・ハラオウンに呼ばれて来ていたのだ。

二人が結界なしに全力で戦えば、訓練室が壊れかねないのである。

 

しかし今、この場にフェイトはいない。

先ほどユーノが訓練室にやって来て、いざ始めようとなったところで、義兄であり上司でもあるクロノ・ハラオウンから緊急の呼び出しを受けてしまったのだ。

所属が違うこともあって中々予定が合わず、久しぶりに模擬戦が出来ると思えばこれである。

申し訳なさそうに謝るフェイトを、緊急ならば仕方ないと言って送り出すシグナムは誰の目から見ても残念そうだった。

 

 

 

結局、対戦相手がいなくなってしまったシグナムは訓練室にいた他の魔導師たちに声をかけ、一対十の模擬戦を行うことにした。

フェイトと戦えなかったために体力が有り余っていたシグナムは魔導師たちを蹴散らし、そして――

 

 

「はああ!」

 

 

力強い声と共に最後の一人が斬り伏せられ、模擬戦は終了を迎えた。

ユーノは結界を解除し、空中から降り立ったシグナムに歩み寄る。

 

 

「お疲れ様ですシグナムさん。スッキリしましたか?」

 

「人を欲求不満のように言うな、スクライア」

 

「でもフェイトと戦えなくて残念でしたよね?」

 

「……」

 

 

図星だったためか黙ってしまった。

二人の近くでは、シグナムに撃墜された魔導師たちが床に座り込んでいる

そのうち、今回魔導師たちのリーダー役を務めた一人が立ち上がってシグナムに話しかける。

 

 

「模擬戦、ありがとうございました。流石ですね」

 

「いや、こちらこそ。中々の連携だった」

 

 

お互いに対戦相手を称賛する。

しかし、座り込んでいる青年が顔を歪めて言った。

 

 

「ちっ、何が『中々』だ。嫌味にしか聞こえねぇぞ」

 

「おい、失礼だぞ」

 

 

苛立ちながら言ったその青年は、先ほどシグナムの紫電一閃をシールドで防ごうとして負けた魔導師だった。

リーダーは青年を窘めようとしたが、青年はさらに怒り出し――

 

 

「こっちのランクは良くてA-だぞ!?束になったって敵うわけがねぇだろ!!」

 

 

シグナムの魔導師ランクはS-であり、今戦ったどの魔導師よりはるかに高い。

模擬戦であろうと勝敗にこだわる青年は不満を漏らしていた。

しかし、この場でシグナムに対して苛立っていたのはその青年だけだ。

他の魔導師たちは、S-ランクの相手と戦うという貴重な経験が出来たと考えているからだ。

場の空気が悪くなったところで、シグナムが口を開く。

 

 

「つまり…ランクが上の私には決して勝てるわけがないと、そう言いたいのか」

 

「あ?その通りだよ、当然だろ!?」

 

 

尚も怒る青年にとっては、ランクの差は絶対であるらしい。

ならば――

 

 

「スクライア、こっちへ来い」

 

「え?」

 

 

シグナムはユーノの腕を引き、魔導師たちから少し離れた位置まで誘導する。

そして、ユーノの正面にまわり、彼と向かい合う。

 

 

「スクライア、お前のランクは?」

 

「総合Aランクですが…」

 

 

ユーノの答えに魔導師たちは驚いた。

Aランクと言えば武装局員としては隊長クラスが保有するランクだ。

自分たちよりも年下の少年がそれだけのランクを持っているというのだから、驚くのも当然だ。

そして、次にシグナムが言い放った言葉が、彼らをさらに驚愕させる。

 

 

「これからお前に紫電一閃を使う。それを防いで見せろ」

 

「「「「「「「「「「はあ!?」」」」」」」」」」

 

 

十人全員が一斉に声を上げた。

先ほど青年のシールドを一瞬で砕いた一撃を防げと言うのだ。

いくらAランクといっても、S-ランクとははるかに差がある。

無理に決まっていると誰もが思う中で、ユーノは冷静に答えた。

 

 

「…分かりました。概ね予想通りでしたしね」

 

 

そう言って、ユーノはバリアジャケットを身に纏った。

胸の紋章とマントが特徴的なそのジャケットは、半袖短パンだった9歳までの頃とは違って長袖長ズボンになっている。

 

 

「あんな技防げるわけが…」

 

 

青年の言葉を気にかけもせず、ユーノは右手をシグナムに向けてかざし、掌に魔力を集中させる。

対して、シグナムはレヴァンティンを構えて命令する。

 

 

「レヴァンティン、カートリッジロード!」

 

≪Explosion!≫

 

 

爆発を意味する応答の言葉と共に、レヴァンティンから空の薬莢がはじき出される。

弾丸型カートリッジに圧縮された魔力によって魔法を強化するカートリッジシステムの恩恵とシグナムの持つ炎の魔力変換資質によって、レヴァンティンの刀身は燃え上がる火炎に包まれた。

その名の通り『炎の魔剣』と化した相棒を強く握り、シグナムはユーノに斬りかかる。

ユーノは右手に円形の魔方陣を展開して攻撃に備える。

 

 

「紫電一閃!!」

 

「ラウンドシールド!!」

 

 

燃え盛る魔剣と、翡翠色に輝く盾が激突した。

周囲の予想に反して、拮抗する剣と盾。

しかし、剣は次第に盾に食い込み始めた。

 

 

「はつ、見ろよ!やっぱり無理じゃ…」

 

 

罵倒の言葉を発しようとした青年の口は、途中で止まった。

ユーノがシールドを維持させている右手に左手を重ねた瞬間、破壊されると思われたシールドがその輝きを増し始めたのだ。

 

強化されたラウンドシールドは、レヴァンティンの勢いを押しとどめた。

それに対して笑みを浮かべたシグナムは、自らの剣にさらなる力を込めて対抗する。

 

 

「「おおおおお!!」」

 

 

二人の雄叫びが訓練室に響き渡り、炎とシールドの輝きがさらに増す。

それを見守る魔導師たちは余りの眩しさに思わず目を閉じてしまった。

 

やがて光が収まり、一同は再び目を開く。

彼らの前にいたのは、カートリッジの魔力を使い切り炎の消えた剣を持つシグナム。

 

そして、崩壊寸前ながらも未だにシールドを保っているユーノの姿だった。

ユーノはシグナムの一撃を耐え抜いたのだ。

 

 

「流石だな。なのはに全力でなければ抜けないと言わせただけのことはある」

 

「はぁ、はぁ…そ、それはどうも」

 

 

どこか嬉しそうに笑いながら言うシグナムに、ユーノは息を切らしながら答えた。

防いだとはいえ、やはり紫電一閃は辛かったらしい。

そんな二人の会話を聞いて、魔導師たちはどよめき始める。

 

 

「なのはって、まさか教導隊の高町なのはのことか?」

 

「あの高町が全力を出さなきゃ突破できないって?」

 

「マジかよ…」

 

 

驚くべき事態の連続に混乱する一同。

その中で先ほどから黙りこくったままの青年に、シグナムが話しかけた。

 

 

「見たか?Aランクの少年が、S-の私の一撃を防ぎ切ったぞ?」

 

「う、うぅ…」

 

「私から言わせれば、ランクなど他人につけられただけのただの目安に過ぎん。技術や努力、本人のやり方次第で覆すことが出来るものだ」

 

 

ランクに縛られる必要などないと、そう言い切るシグナムに青年は反論できなかった。

 

 

そしてシグナムの背後では、ユーノが魔導師たちに囲まれ矢継ぎ早に称賛や質問を受けていた。

 

 

 

 

その後、魔導師たちが解散し、ユーノとシグナムは本局内にあるトレーニングルームに来ていた。

ユーノの職場である無限書庫は内部が無重力状態になっている。

無重力の中に長時間いると、骨が細くなったり筋肉が退化するなどして人体が弱くなってしまう。

そのため無限書庫に勤務する者には、定期的なトレーニングが義務付けられるのである。

元々、ユーノは模擬戦が終わった後にトレーニングを行う予定で、模擬戦のために一日予定を空けていたシグナムは彼に付き合う形でここに来ていた。

 

その日の分のトレーニングを終えたユーノは、シグナムと一緒に部屋の壁際にあるベンチで休憩していた。

 

 

「はぁ、さっきは疲れました…」

 

「すまんなスクライア。どうしてもあの男の考え方を正してやりたくてな」

 

「その後が大変でしたよ。なのはの全力でなきゃ抜けないっていうのは本当なのかとか、防御魔法を伝授してくれだとか…」

 

 

称賛されるのは嬉しかったものの、多人数に囲まれたのは堪えたようだ。

汗をタオルでふき取りながらそう言うユーノを、シグナムは観察するように見つめる。

 

 

「な、何ですか?」

 

「いや、思っていたよりも鍛えられていると思ってな」

 

 

タンクトップ姿であるため、肩から露出しているユーノの腕には、細いながらも確かな筋肉があった。

 

 

「トレーニングは義務ですし、たまに行く遺跡調査もかなり体力を必要としますからね」

 

 

シグナムからの視線に少し恥ずかしがりながらユーノが答える。

管理局に来る前、ユーノはスクライア族の一員として古代遺跡の調査や発掘をしており、現在も稀にではあるが調査に行くことがある。

 

 

「体力があり、補助系の魔法も優秀か…あとは攻撃面が充実すれば、戦闘魔導師としても十分なのだがな」

 

「攻撃魔法は得意ではありませんからね…」

 

 

結界魔導師という名の通り、ユーノは結界魔法を中心に防御や回復といった補助系の魔法を得意としている。

一応基本的な射撃魔法や、防御・拘束魔法を応用した攻撃手段は持つものの、単純な攻撃力や破壊力に関しては戦闘専門の魔導師に劣っているのは事実だ。

 

 

「攻撃に特化したデバイスを持てばいいのだがな。デバイスを持つ気はないのか?」

 

 

シグナムは純粋な興味で尋ねた。

仲間内に戦闘魔導師が多いこともあってあまり目立たないが、ユーノにも素質はある。

かつて闇の書事件の中で、ヴォルケンリッターの一人である『鉄槌の騎士』ヴィータと空中戦を無傷で潜り抜けたのがその証拠だ。

 

そのままにしておくのは惜しいと考えるシグナムに対して、ユーノは苦笑しながら答える。

 

 

「期待してもらえるのは嬉しいんですが、僕にはあまり必要ないと思いますよ。僕はあくまで司書ですしね」

 

 

ユーノは自分が前線で戦うタイプではないことを理解している。

PT事件にせよ闇の書事件にせよ、彼は基本的に後方支援に徹することで仲間たちを支えていた。

だからこそ、現在は自身の能力を活かせる無限書庫で情報収集という手段で日々戦っている仲間たちを助けているのだ。

 

 

「今のままでも僕は十分ですよ」

 

「そうか…しかし、やはり惜しいな…」

 

「ははは…」

 

 

尚も勿体ないと考えるシグナムに苦笑しながら、ユーノは着替えるために席を立つ。

更衣室に向かう途中で、シグナムが声をかけてきた。

 

 

「よし、スクライア。今後のトレーニングの予定を教えてくれ。時間が合えば私も付き合おう」

 

「え?なんでまた…」

 

 

予想外の発言に戸惑うユーノ。

対してシグナムは笑顔で理由を言った。

 

 

「なに、お前の今後の成長ぶりを見たいだけだ」

 

「は、はぁ…」

 

 

どうやらユーノに対するシグナムの興味は、思っていたよりも強かったらしい。

 

 

 

その後、シグナムと別れたユーノは自室に帰った。

疲れが溜まったためか、服はそのままにベッドに仰向けで倒れ込む。

 

 

「ふぅ…あとは攻撃、か…」

 

 

トレーニングルームでシグナムに言われたことを思い出す。

攻撃に特化したデバイスがあれば、ユーノも戦闘魔導師として戦える。

まさかシグナムからそこまでの評価を受けていたとは。

無論それは嬉しいのだが、ユーノは少々複雑な心境だった。

 

 

ユーノは徐に、懐から()()を取り出した。

 

黒い表面に金色の紋様が入った()()は掌に納まるサイズの楕円形で、中心には縦に長く幅の狭い穴が開いている。

 

日本刀の鍔にも似た()()を見つめながら、ユーノは一人つぶやいた。

 

 

「君と話すことが出来たら、なんて言うのかな…ムラサメ」

 

 





ユーノはリリカルなのはシリーズの中で特に好きなキャラです。

新作が出るにつれて出番の減っていく彼をかっこよく戦わせたい、という願望から生まれたのがこのSS。

本当にかっこよく出来るかは分かりませんが、頑張りたいと思います。

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