──うおおおおおおおおお!! 私は《緋の騎神》の起動者アーヤ・サイードだ────!!! 舐めるなよ《猟兵王》──!! こちとらもう5日は寝ずに毎日10時間近くテスタ=ロッサ動かしてんだぞー!! 《千の武器を操る魔人》の強さを思い知れー!!
「行くよ! テスタ=ロッサ!」
「──うむ!」
「ハハ……! まさかこんなところで騎神同士。しかもまだ目覚めてねぇって話だった筈の《緋》と戦う羽目になるとはな! どういう訳かは知らねぇが……面白え。ちょっくら遊ぶとするか! ゼクトール!」
「──ああ、共に行くぞ《猟兵王》!」
私の声に応えたテスタ=ロッサを動かし、私は自らの得物に似た魔鋏サーシェスと魔針アリーと魔糸アルをそれぞれ生み出して構えを取る──なんで名前が焼け野原ひろしなのかはよくわかんないけど──そして相手の《猟兵王》ルトガー・クラウゼルも《紫の騎神》ゼクトールを駆って対峙する。まさかの騎神同士の対決だ! うおー! テンションあっがるぅー! 相克は条件が揃わないと発生しないからまだまだ先だけど機甲兵どころか騎神と戦えるのは戦いがあんまり好きじゃない私でもワクワクするね!
「テスタ=ロッサ! ゼクトールの情報教えて!」
「ああ。奴は素早くしぶとい。そしてかなりの曲者だ」
「スピード&テクニックタイプってことだね! 了解! それって普通に厄介──そおおおお!!? 危なーい! 本当に速かった! ねえ強いんだけど! 強いんだけど! 1回動いただけでわかった! もしかしてこっち不利じゃない!?」
「躱されたか! ハハッ、やりやがるな……!」
ゼクトールの持つ武装はルトガーさんと同じバスターグレイブってやつでゼクトールはテスタ=ロッサが教えてくれた通り、素早い動きで肉薄して得物を振るってくる。しかも連続で。怖い。速い。なんとかそれを回避したり受け流してみたりしたけどやっぱり危ない。
そして私は気づく。なんかテンション上がってつい戦いに望んじゃったけど、猟兵の中の上澄みも上澄み。最強に数えられる猟兵の1人である《猟兵王》が駆る《紫の騎神》に挑むなんて普通に無謀だったのでは……? 騎神や機甲兵の強さは操縦者の生身での強さに結局比例しがちなのもあるからヤバい気がする。というか負けたらおしまいじゃん!
「ど、どうしようテスタ=ロッサ!?」
「……落ち着くがいい、我が起動者よ。確かにゼクトールは素早くタフな機体だ。そして奴の起動者である《猟兵王》なる人物も──成程。かなりの強者なのだろう」
「それってやっぱ結構ヤバいよね!?」
「確かに決して油断できる相手ではない。だが、それほど恐れる必要はないだろう」
「なんで!? 理由を教えて! テスタ=ロッサ!」
「性能は圧倒的にこちらが勝っている。そして起動者の腕前も十分に比肩しうると私は見ている。その証拠に──アーヤよ。貴殿はまだ一発も被弾せず、敵の攻撃を捌けているではないか」
「……………………あれ? そういえば……」
私は自身の状態を改めて確かめる。……言われてみれば確かに……なんか思ったより余裕があるような……いや、というか、むしろ……ちょっと遅い? それに攻撃も軽く感じるような……。
いやまあ私自身の肉体で戦ってるわけじゃないからいつもより手応えが違うのはそうなんだけどさ。ただ騎神の場合起動者とある程度感覚は共有してるんだよね。それを思えばやっぱり軽いかも?
「…………あのー……ルトガーさん?」
「……! んん? どうした嬢ちゃん? 今更やめてほしいって相談か? こいつは一応、そっちから仕掛けてきた喧嘩だぜ?」
「いやまあやめてくれるならその方が助かるのはそうなんだけどそうじゃなくて……」
「だったらなんだってんだ?」
「ちょっと聞きたいんですが…………その、
私は相手の攻撃を躱し、少し距離を取ってからそう質問してみる。
するとルトガーさんは何やら驚いたような気配を一瞬だけ出して……そして可笑しそうに笑った。
「……! …………ハハハ……! 言うじゃねぇか……! 嬢ちゃんにはこの程度、余裕だってか?」
「あ、いや、違くて……!」
「…………だが、なるほどな。言われてみりゃ手応えに違和感がありやがる。確かに俺もまだ全力じゃないが……そっちは俺たち以上に余力を持ってるみてえだな?」
ルトガーさんがそう真剣な声色でそう言ってきたので私は誤解されそうなのを必死に訂正する。いや、別に弱いとかは思ってないよ? ただちょっとそんなに強く感じなかったから自分たちの能力を確かめるために本気を出してるか質問してみただけで! だからそんなにやる気というか闘気出して好戦的な感じになるのやめてもらえるかな!?
「機体の性能、出力は完全にこちらが上回っている。だが力で上回っていても技術や判断力を持ち合わせていなければ敵の攻撃をこうも容易く捌くことはできないだろう」
「テスタ=ロッサ……」
「故に自信を持つがよい我が起動者よ。私のことを貴殿が十全に操れば、他のどの騎神にも劣ることはない。少なくとも私はそう信じている」
そしてテスタ=ロッサが良い感じに私を励ましてくれる。……確かに……機体の性能はなんか勝ってるっぽい……というか間違いなく勝ってるんだよね……。
そして更に私とルトガーさんの強さも、初めて会った時よりは一応、差が縮まってはいるだろう。ぶっちゃけあんまり自信はないけど……でも戦えるくらいにはなってるし、しかも騎神に乗っての戦いだからやっぱりそんなに危なくはない。完全敗北したらヤバいってだけでそもそもこっちが有利っぽい。
それにもし負けそうになっても出力に物を言わせて逃げればいいわけだし……あれ? やっぱり全然怖がる必要ない? テスタ=ロッサの言うように、もしかして私たちってかなり強いんじゃ…………………………。
…………えーっと…………。
私はテスタ=ロッサで武器を構える。魔鋏サーシェス。私の使う《ゾルフシャマール》に似た得物。それを思いっきり振り回して──
「──よっしゃー!! 私最強私たち最強っ! 喰らえ“グリムシザー”!!」
「っと……! 急に調子が出てきやがったな……!」
「気をつけるがいい《猟兵王》! あの《緋》はどういう訳か正気に戻りながらも、以前よりも強い! 気を抜けばやられるぞ!」
「やっぱりか……! ちっ、気にはなるが、それよりも分が悪いとなりゃどうするか……さすがにここでやられる訳にはいかねぇ……! 全力で抗わせてもらうぜ!」
「抗うくらいなら逃げろこらー! ハーメルを荒らす奴らは許さない! 愛と正義のヒーローアーヤちゃんとその相棒テスタ=ロッサが相手だ! “カットアンドソーン”!!」
「っ……的確に体勢を崩してきやがる……! ハハ、本当にやりやがるな……!」
私はルトガーさんが駆るゼクトールに攻撃を連続で与えて追撃しながら感動した。うおおおおお!? 私、本当に強い! テスタ=ロッサめちゃくちゃ強い! こんな格上な感じで戦闘するの私初めて! だからテンションめっちゃ上がる! 痛くないし相手を殺す心配もないしこっちが死ぬ心配もあんまりない! 心配事があんまりないから戦いがすごい楽しい! こんなの初めて! たーのしー! 私ってもしかして騎神乗りが天職だったのかも!
「アーヤ……!」
「レーヴェ! それにシグムントさんも! あの騎神の相手は私に任せて!」
「団長!」
「心配すんなゼノ、レオ……! こっちは上手くやる! お前らも指定のポイントに向かってな!」
「了解した……!」
レーヴェが背後から声をかけてきたので私は大丈夫だよって力強く返事をしておく。これならレーヴェやシグムントさんの力も必要ないかも! とりあえずぶっ倒せばいいだけだし! ゼクトールをここで倒しちゃダメって誰も言ってないから別にいいよね? 多分! わかんないけど逃げるよりはマシだよね! ガン◯ムの主人公も言ってたし! 逃げれば1つ! 進めば2つ! そして!
「──奪えば全部ゥ! テスタ=ロッサ! 戦術B!」
「承知した!」
私はテンションを上げながらテスタ=ロッサに戦術を敢えて口に出す。別に口に出す必要はないんだけどね! 騎神は何も言わなくても私の意思を汲み取ってくれるから! だけどテンション上げて言ってみた! 魔弓バルバトスを作り出して頭上に放ち、すぐに消して魔鋏サーシェスで肉薄して攻撃だ!
「……! おいおい……騎神のくせに気配まで読みにくいのかよ……! そんだけの力がありながら……! お前さんの暗殺技術と組み合わさると随分と厄介じゃねえか……!」
「ふふん! これが《緋の騎神》と私の力だよ!」
私が駆るテスタ=ロッサの攻撃がゼクトールに命中する。鋏の振り下ろしは辛うじて防がれて鍔迫り合いになったけどそれでも押してる! すごい! あの《猟兵王》の駆る《紫の騎神》が相手だよ!? 私が勝ってるのすごくない!? これも全部テスタ=ロッサのおかげだ! ありがとうテスタ=ロッサ!
「なるほどな……大体わかったぜ……! 正面からのぶつかり合いは不利だな、こりゃ……!」
「正面から戦って強いとか新鮮! でもいつも通り私のやり方でも行くよ! 待てー!」
私はテスタ=ロッサの武器を生み出す能力を使って猟兵王とゼクトールを追い詰めていく。なんか常に後退して移動しながらの戦闘で煮えきらない感じだけど押してるのはこっちだ! なんか立場が逆になったみたい! 逃げながら戦闘するのは私の得意技なんだけどね! そして大体そういう時は本当に逃げたいか、別の狙いがあったりしがちなんだけど──って、あれ……? もしかしてこの方向って……。
私はなんかマズい気がすると思いながらも別の技を使うために得物を偶然、デフォの得物である魔鋏と魔針、魔糸のセットからテスタ=ロッサの基本の得物である騎士剣を作り出して小さい崖から降りて逃れようとするゼクトールに振り下ろす。すると見覚えのある姿が沢山見えた。
「なっ……!!?」
「あ、あれは……!?」
──その場所は、ハーメル村の直前にある間道の広場だった。
そしてそこには見覚えのある顔……《灰の騎神》ヴァリマールに乗ってるであろうリィンくんにフィーちゃん、ラウラちゃん、エリオットくんなどの旧Ⅶ組にドラッケンⅡに乗ってるであろうクルトくんや近くにいるユウナちゃんにアルティナちゃんという新Ⅶ組。そしてヘクトルⅡ型に乗るランディ兄に生身のロリコンアガット。
それに対峙するデュバリィちゃん、アイネスちゃん、エンネアちゃん。そしてシャーリィちゃんに《赤い星座》のガレスさん。リィンくんたちに倒されたであろう黒い煙をあげる神機アイオーンTYPE-γIIがそこにあった。
「馬鹿な……! あれは……!」
「む……《紫の騎神》……と……!」
「内戦時で見た──《緋の騎神》……!?」
私はそれを見て思う。そう、こうやって見てるのがマズい。私はこっそりとテスタ=ロッサに告げる。
(て、テスタ=ロッサ……外部への音声切って……! それで私の代わりに喋って……!)
「(む……承知した)……音声を遮断した。コックピット内の音声は外部へは流れぬ。安心して喋るがよい」
「ふぅ……と、とりあえずこれで即バレはないけど……ってかルトガーさん、まさかこれが狙いだったんじゃ……!」
「──クク、まさかここまでやって来ちまうなんてなぁ」
「……ぇ……?」
うわっ、しかもなんか妙なシーンに混ざってしまった! ルトガーさんが声を出したことでフィーちゃんが気付いた! いや、私は言っとくけど声出さないよ! というかバレたらヤバいし! なんかルトガーさんが敢えて騎神から一度降りてみせるけど私は顔出しNGだから! 挨拶は大事だけど挨拶しない! なんか戦闘する感じじゃなくなったのもちょっと解せないけどみんなが見てる前で騎神バトルするわけにもいかないし、ハーメル村前だからあんまり激しいバトルはできない! きっとそれが狙いだったんだな!? フィーちゃんたちや結社に挨拶しながら私からも逃れられるし! くっそー! またしてやられた! これだから嫌なんだよこの人! 戦闘というか戦術が上手いからやりにくい! 私の天敵まである!
──そしてルトガーさんのことをシャーリィちゃんやランディ兄が気づき、改めてルトガーさんが《西風の旅団》の団長として名乗ってみせるのを私はじっと見守る。……できればこのままとんずらできないかなぁ……と思いながら。
「はぁ……どうしよう。この空気の中そのまま逃げるってのもなんか不自然だよね……?」
「──起動者よ。それよりも少々マズいことになった」
「え? これ以上……一体何があるの……?」
「どうやら力を無意識に出しすぎて地脈を活性化させてしまったようだ。
「……へ……? ──って、うわっ!? 本当だ!?」
私がコックピットの中で周りの警戒の視線を受けながらどうしようかと独り言を呟いていると突如テスタ=ロッサが私にだけ聞こえるよう内部に声を送ってくれた。なんかマズいことが、しかも魔煌兵が召喚されたとか意味不明なことを言われたので周りを見てみると、確かに魔煌兵が召喚されてた!! しかも5体も!!
「なっ……!? 魔煌兵だと……!?」
「煌魔城の時に見た……!」
「5体も……! しかも囲まれてる……!」
(──ご……ごめ────ん!!? なんか私が《緋の騎神》使って魔煌兵を操ってるみたいになっちゃってるー!!? これじゃ私が突然現れた敵みたいじゃん!)
突然大量に出てきた魔煌兵に私はコックピット内で頭を抱える。あーもうめちゃくちゃだよー! 全然収拾ついてない! 突然紫の騎神と緋の騎神が戦ってて死んだはずの《猟兵王》が出てきて今度は魔煌兵まで襲ってくるとかどんなシーンだ! リアルだからいいけどこれがゲームだったら突然過ぎる!
(ど、どうしよう……)
「何やらおかしな挙動をしているが……」
「ほ、本当ね……!」
「あれは……何かの踊りでしょうか……」
(え?)
そして今度は新Ⅶ組の3人が魔煌兵に言及してたため、私は視線を周囲にいる魔煌兵に向ける。すると確かに、魔煌兵は妙な挙動をしていた。
「……!」
「……! ……!」
「……♪」
「……♫」
「──ゴッゴオゴー!! ──ゴッゴオゴー!! ゴーゴン!! ゴーゴン!!」
──というか踊りだった。しかも盆踊り。なんか一体だけソーラン節だけど。えぇ……? どういうこと? しかもなんかちょっと楽しそうだ。
でもなんで盆踊り? ここがハーメルだからかな……? 盆踊りって供養の意味があった気がするし「ゴーゴン!! ゴーゴン!!」──ソーラン節やってる奴うるさくない? 雄叫びしか挙げられないからゴとンだけでソーラン節やるのやめてほしい。それとサイズがサイズだから迫力があるし動きがダイナミックすぎる。
「こ、この魔煌兵は何をやっていますの……!?」
「何かの儀式か……?」
「それにしては間抜けな動きだけど……」
「あははは!! なんかよく分かんないけど面白いじゃん!! せっかくだし《猟兵王》共々相手してもらおうかなぁ……!」
「っ……クルト! まだやれるか!?」
「ええ……! 自分なら大丈夫です……!」
「俺もやるぜ……! 背後の二体は任せろ……!」
……そしてなんか一応、シリアスな空気になっている。みんな盆踊りとかソーラン節知らないからかな……いや、というかそれどころじゃないのかな? 知らない騎神がいきなり二体も出てきて魔煌兵まで召喚されてるわけだし、そりゃシリアスにも「ゴーゴンッ!! ゴーゴンッ!!」──ソーラン節してる奴うるさいから破壊していいかな? というかそもそも私は何も言ってないのに勝手に何やってるの……? 私とかテスタ=ロッサが操れるんじゃないの?
「これ、どうなってるの……?」
「私にも分からぬが……どうやら暴走しているのは確かなようだ」
「……じゃあ止めよっか。えーっと……元に戻すとかはできない感じ?」
「未だ地脈は活性化し続けている。破壊するしかないであろうな」
「そっか……あ、でもバレなきゃいいわけだし、手助けして良い感じに立ち回ってみるのどう? 助けに来た感じでさ」
「目的はこのハーメル村の救援であっただろう。それを正直に話す──それでよいか?」
「うん! そんな感じでお願い! ──よーし、それじゃ魔煌兵くたばれー!」
私はテスタ=ロッサとコックピット内で作戦会議。なんかよく分かんないけど召喚されて暴走中の魔煌兵はあんまり制御が効かないっぽいので破壊することに。とりあえずこのまま騎士剣で……というかいつもの得物しまっといてよかった……! 鋏なんて使ってたらバレバレも良いところだよ……!
──まあそれはともかく、とりあえず近場の一体を速攻で撃破しておく。すると他の魔煌兵が「よくも俺たちの盆踊りを邪魔したな!?」「そうだそうだ!」「ソーラン! ソーラン!」「邪魔者許すまじ!」って感じでこっちに注意が向いてくれた。
でもそれらも速攻で倒す。テスタ=ロッサに乗った状態だとどんなもんかなと思ったけど……さっきまでゼクトールを追いかけ回してたからすっごい楽に感じる! というか私たち強い! 魔煌兵くらいなら一撃だ! 数秒の間に全撃破! ふふん! これが元魔王の力だ!
「なっ……」
「つ、強い……!」
「さっき一瞬見えたあっちの紫色の騎神との戦いもすごかったけど……」
「だが何故自分で呼び出したと思われる魔煌兵を自分で倒したのだ……?」
「まさかこっちのも何かの実験で……?」
あ、やばい。なんか勘違いされそうな空気を感じる。これは良い感じに喋ってもらって軌道修正してもらわないと! よし、テスタ=ロッサ! 私の代わりに頑張って喋って! 一応私が中で喋るからその通りに喋る感じでね! 台詞は私が考えるから喋り方は良い感じに頼んだ!
「──勘違いするな」
(おっ、いいね! その厳かな感じナイスだよ!)
「喋った……!?」
「ヴァリマールが喋れるんだからそりゃ騎神なら喋れるのは当然かもだけど……」
「それともこれは中に乗ってる人の……?」
「でもそれにしては声が人のものっぽくないけど……」
「私の事などどうでもよい。私の目的は──この地を荒らす者たちの駆逐。故にそちらの紫の騎神を駆る《西風》の者達や、結社を追い払うために参上したまで。今しがた現れてしまった魔煌兵も同様にな」
(いいねいいね! テスタ=ロッサ良い感じだよ! 名演技だ!)
「この地を荒らす者の駆逐……」
「──そういうことだ」
(あっ、この声は!)
そして更に良いタイミングで崖の上。森の木々の間から現れたのはレーヴェとシグムントさんだった。追いついてきたっぽい。相変わらずレーヴェかっこいー! シグムントさんも渋くていいよ! というかすごい登場シーンだね! これにはみんなびっくりだ!
「あなたは……レオンハルトさん!?」
「久しいな。トールズⅦ組に、アガット・クロスナー。まさかお前たちまでこの地にやって来るとは思わなかったが……」
「ハッ、ちょっとした成り行きでな。そっちは偶然とは思えねぇが、確かにお前さんが見過ごすわけねぇか……!」
「……くっ……まさかレーヴェ。貴方まで来ているとは……」
「あはは、執行者No.Ⅱ《剣帝》レオンハルトか。他の執行者からよく話に聞いてたから一度会ってみたかったんだよねー。──随分と強いみたいだしさ」
「《赤い星座》の副団長《紅の戦鬼》シャーリィ・オルランド。こちらもお前のことは噂で聞いている。新たにNo.ⅩⅦを与えられたこともな」
「ま、そりゃ聞いてるだろうね。というか……あはははは!! まさかパパまでこっちに来てるなんて思わなかったよ!」
レーヴェが良い感じにみんなと会話してる! 見てるだけで進むのは楽でいいからそんな感じでどうぞどうぞ話進めて! 次はシグムントさんに言及する番だよね! 私は今のうちに退散する時用の良い台詞考えとくから!
「くそっ……なんで叔父貴まで来てやがんだよ……!?」
「シグムント様……!」
「──フフ、《碧の大樹》以来だな。ランドルフ。あれからお前の方は色々と大変な状況だったようだが……こっちでもよくやっているようで何よりだ。──もっとも、実戦のカンが鈍っているようなのは残念だがな」
「っ……」
「あれが……《紅い星座》の現団長……!」
「《赤の戦鬼》だね……! 今は団長を継いでるって聞いてるから《闘神》かな……!」
「《
「おいおいシグムント。そっちの裏社会にバリバリ足を突っ込んでる血生臭い娘と一緒にするんじゃねえっての。フィーはとっくに猟兵から足を洗ってんだぜ?」
「フフ、別に貶めたつもりはない。戦闘という意味では、だ。俺の娘も背は伸びたが精神的にはまだまだだ。そういう意味じゃそっちの妖精にも学ぶべきところもある」
「ハッ……なるほどな」
「……なんなんだこれは」
「……な、なんか普通に世間話してるんですけど……」
「というか、子育て中の父親同士の会話そのものですね……」
シグムントさんの登場にみんなが緊張してる! まあこんなムキムキのおじさんが急に現れたらそりゃビビるよね! 宿敵同士だったルトガーさんは緊張することもなく普通に互いの子育てというか子供の成長について話してるけど! その会話内容がこの修羅場染みた対立の空気に合わなくてクルトくんやユウナちゃん、アルティナちゃんがツッコミを入れている! これが猟兵メンタルだから慣れてね! いや、やっぱ慣れない方がいいか。なんだったらシャーリィちゃんも呆れてるくらいだし。
「……ちょっとパパー? そういう話は今はやめてくんない? なんかヤなんだけど」
「ああ。どの道、世間話はここまでだ。──依頼主の意向もあることだしな」
「……ってことはパパがここに来たのは雇われたからってことみたいだね」
「……そのようですな」
さすがのシャーリィちゃんも実の父親であり最強の猟兵の1人である現《闘神》が敵側にいるってなると警戒の色を強くするよね。同じ団とはいえ敵対しないとも限らないわけだし。それを理解してかガレスさんもシャーリィちゃんの言葉に頷いてた。……というかそろそろ話に入れそうかな? 話に入って良い感じに帰りたい。なのでタイミングを見て──
「団長……!」
「おう、ゼノ、レオ。追いついたか」
「すまん……! 先にそっちの2人に抜かれてもうたわ……!」
「ああ……そりゃしょうがねぇだろ。《剣帝》に《闘神》。その2人を相手にしたんじゃなぁ。俺でも全然厳しいくらいだ」
「……………………」
「フッ……相変わらずだな」
そして今度は追いついてきた《西風の旅団》の2人まで話に入っていた。そしてレーヴェとシグムントさんを止められなかったことをしょうがない。自分でもキツいとか言って飄々としてるけど、さっき紫の騎神で悠々と追い抜いたことを考えるとやっぱり曲者というか昼行灯っぽいんだよね。レーヴェも視線を鋭くしてるし、シグムントさんも不敵に笑いながら警戒している。やっぱ《猟兵王》って呼ばれるだけあって単純な戦闘だけじゃない強さを感じるんだよね、ルトガーさんって。
「──それで? 《
うわっ、こっちに話振ってきた! でもちょうどいい。良い感じに話終わらせて帰ろう! テスタ=ロッサ! 私に合わせて喋って!
「……言っただろう。私はあくまでこの地を脅かす者を追い払いに来ただけだ。お前たちが大人しくこの地を去るのであればそれ以上は関知しない。──もっとも再びこの地を侵さんと画策するのであれば別だがな」
そう言って(言わせて)騎士剣を向ければ良い感じにシリアスっぽいだろう。Ⅶ組の人たちも息を飲んでる気がする! 私ちょっとかっこいいかもしれない! 敵か味方かもわからない感じだしね!
……ただレーヴェとかシグムントさんとか西風の3人にはバレてるからなぁ……西風側は実は雇われている相手が同じだから空気読んで黙ってくれてるし、レーヴェとシグムントさんはこっちが雇ってるから当然黙ってくれている。
「あはは! なるほどね! まさか《猟兵王》だけじゃなくて《緋》の機体まで現れるなんて! これなら今後はもっともっと愉しめそうじゃん!」
「ああ──機会があればな。フィー、灰色の小僧、そっちの《緋》の連中もまたな」
お! キタキタキタ! やっとルトガーさんが神機を爆発させて帰ってくれた! 西風のみんなも逃げてったし、その次にデュバリィちゃんたち結社メンバーも転移術で帰ってくれる! 結社と黒の工房側の戦いを仄めかした上でね!
まあ最終的に意気投合して仲間になるんだけどそれはそれ。現時点では敵同士の戦いって感じでリィンくんたちからしたら気が気じゃない。──ってことで私も帰ろう!
「……それでは私は失礼する。……《剣帝》レオンハルト。お前の方は残りたいなら残るがいい。次の仕事についてはまた後で打ち合わせるとしよう」
(レーヴェは墓参りしたいだろうし、アガットやティータちゃんにレンとも久し振りに会って話しがしたいだろうから残ってもいいよ!)
「…………了解した。その言葉に甘えさせてもらうとしよう」
「ランドルフに……トールズ士官学院だったか。次に会う時は敵か味方か……どちらにせよ戦場で会うことを期待しているぞ」
そうして私はちゃんとレーヴェに気を使いつつ、空を飛んでその場から離脱しようとする。ふぅーこれでミッションコンプリート──
「待ってくれ……! あなたは一体、誰なんですか……!?」
──うわっ!? びっくりした……今度はリィンくんが話しかけてきた。なんで私だけ呼び止めるの……? ……もしかしなくても《緋の騎神》乗ってるからかな……まあアルノール家の血を継ぐ者しか乗れないって話だったし、そりゃ誰が乗ってるのか気になるよね……実質4択……いや、ミュゼちゃんも入れれば5択くらいになるのかな? まあミュゼちゃんが実はカイエン公爵家の令嬢ってことはリィンくんも誰も知らないからアレだけど。
ともかく良い感じに去ろう。あくまで謎の人物って感じで。
「──また会おう。リィン・シュバルツァー」
「……!」
──よし、決まったな! 飛んで逃げる! 途中からステルスして目眩ましだ! バレたらマズいからね! これにてミッションコンプリート! 完璧な仕事だ! さすがは私! さすがはテスタ=ロッサ! 今夜はドン勝だ!!
──数日後。
「──アーヤ教官、少しいいですか? ハーメル村跡地で起きたことは当然ご存知ですよね? それで気になったのですが、《闘神》はともかくあのレーヴェさんまでも《緋》に雇われているのは一体どういうことなんでしょう? アーヤ教官はレーヴェさんと仲が良いようですし、何か知りませんか? ……そうですか。知りませんか。それなら良いのですが……まさかとは思いますがアーヤ教官、私に何か隠し事をしてはいませんよね? ──そうですか。そうですよね。まさかアーヤ教官が《緋》の起動者なわけはありませんし……ですが一応気を付けてくださいね? あんまり派手に動かれると私としてもどう手を打ったものか迷ってしまいますし」
『──アーヤ・サイード。ハーメル村跡での詳細については見させてもらったが、《紫》と戦うなど一体どういう了見かね? 君が《緋》が復活していることを露見させてしまったせいで殿下に
──普通にミュゼちゃんにはバレてた……笑顔なのにすごい圧を感じる…………変態怨霊野郎の小言はどうでもいいけど……。
ま、まあでも結社にはバレてないし……いずれはバレるだろうけどさ……とりあえず今はまだ──
『──アーヤ。実験についての報告は聞きました。ハーメル村に現れた《緋の騎神》について少し話があります。近い内に時間を作りますので2人だけで会いましょう』
──う……うわあああああああ!!? り、リアンヌママから連絡が来たー!!? わ、わかんないけど多分バレてるー!!? 演技は完璧だったはずなのになんでー!? せっかくリアンヌママから2人きりで会おうって言われたのに全然嬉しくないどころかちょっと怖いー!! うわあああああああん!!
今回はここまで。アーヤちゃんが《緋の騎神》の起動者だと知ってる人は《黒》の陣営の人たちとレーヴェとシグムント。それにミュゼとリアンヌママだけです。鉄血の子供たちやヴァイスラント決起軍の他の人たちや結社の鉄機隊やシャーリィちゃんとかはまだ知りません。
次回はアーヤちゃんが気の合う友人と大暴れして博士がキレて殿下が気絶してアーヤちゃんがテスタ=ロッサのために色々と用意しつつクロスベルに向かって色々起こってキーアちゃんが導力ゲームRTAにハマって再走し、まじかる☆アリサ登場。そして死んだはずのあの人が50ミラのレールガンを食らって頭を抱える回です。半分以上くらいは本当です。お楽しみに。今回が前回の続きになったので次回は早めです。
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