──そいつのことは情報だけを知っている。
《地精》の長代理として、本来の名前も記憶もない《蒼》のジークフリードとして俺はクロスベルという地にやってきた。
目的は《黒》のアルベリヒのサポート。もとい現在敵対状態にある結社《身喰らう蛇》の動向を確かめること。クロスベル総督府を含む帝国側の思惑やトールズ第Ⅱ分校という《灰》の起動者が所属する帝国の士官学院。クロスベルの特務支援課も大半が捕らえられているとはいえこの地には現在、複数の勢力が集まっている。
ゆえに俺はその全てを場合によっては打ち払うことも許可されていた。こちらから積極的に仕掛ける必要はないが、向こうから挑んでくるというなら応じる用意もある。敵対勢力の情報は既に頭に入っているため、誰が挑んできても問題なく対応できるという自負が自分にはあった。
──とはいえその中でも特に注意すべき人物はいる。
結社の《火焔魔神》やクロスベルの《風の剣聖》。鉄血の子飼いたる《
そしてそんな注意すべき人物の中にもう1人……アーヤ・サイードという人物がいた。
中東人の特徴を持つ女。結社の執行者No.ⅩⅢ。《血染の裁縫師》、《切り裂き魔》、《砂漠の死神》、《不死身》──様々な異名を持つ伝説と謳われるほどの暗殺者であるということは知っている。
ゆえに注意する必要があるのは理解できるが、《黒》のアルベリヒからは直々に警戒すると同時に、興味深く観察するといいと言付けられていた。場合によっては限定的だが、《蒼の騎神》を用いて力を見極めてもいいと。
生身の人間に騎神を使ってもいいと言うのはそれだけ警戒しているためか、それとも別の思惑があるのか。それは分からなかったが、どちらにせよ俺は《地精》の一員としてやるべきことを成すのみだ。それだけ強いというなら俺としても興味深くもある。
だからこそエルム湖沿岸で偶然にも遭遇した時は、興味からオルディーネを呼び出してみたのだが──そこで俺は納得した。まさかアーヤ・サイードが《緋の騎神》テスタ=ロッサの起動者だとは。
……《黒》も意地が悪い。既に《緋》が復活していて、しかもその起動者もとっくに存在しているとはな。おまけにその起動者はアルノール家の者ではない。これだけ特殊な状況でありながら知らなかった筈はないだろう。
なら意図的に伏せられていた、か。それはそれで中々に面白い。興味を抱かせる。敢えて黙っていた理由は後で問いかけるとして、今はこの《緋》との小競り合いを愉しむとしよう。そう思い──
『ようこそ! ここは我が庭園! “クロスベル・ところてん☆ルーファス仮面ランド♡” めくるめくところてんのワンダーランドだ! ひとまずはウェルカムところてんを食すがいい!』
『ところてんみっしぃもいるみっしぃ~!』
──俺は頭が痛くなった。目の前に広がる異常かつ意味不明な光景に。
いや、戦い自体は問題なかった。《緋の騎神》テスタ=ロッサの機体性能はこちらの駆るオルディーネより飛翔性能以外の全てが上回っていた。武器を生み出す力も脅威であり、何よりアーヤ・サイードの騎神の操縦技術も想定より高かった。
それだけにやりがいはあったが、正直なところ最後まで戦えば不利なのはこちらだっただろう。不死者である己が死ぬことはないとはいえ程々に切り上げたことは我ながら良い判断だったか。
……しかしその後が問題だった。日が沈み、オルキスタワーにて総督府主催の晩餐会が開かれ、屋上に結社が襲撃を掛けてきていた。
そして我々はその様子を遠隔で観察していたのだが……その途中、霊力の高まりによってミシュラム方面が淡く光り始めたのだ。
そうして出来上がってしまったのが《クロスベル・ところてん☆ルーファス仮面ランド♡》だ。……自分でも口に出すことに抵抗を覚える名前だが、嫌でも目に入るほどに巨大な看板にそう書かれているのだから致し方ない。
正直なところ近づくことも躊躇われたが、一応はこの地に起きた興味深い事例とも言える。一応は観察する必要があると一度現地に近づいてみたが……そこで見たのが意味不明な園内の様子だった。
そしてその園内をそこに囚われていた特務支援課が攻略している。おそらくこのミシュラムを正常に戻そうとしているのだろう。ある意味でこの場所に特務支援課の関係者が囚われていたのはクロスベルにとっては僥倖と言える。何しろ総督府が目論んでいた帝国の英雄による事態の解決──それが場合によっては特務支援課の活躍によって為される可能性が出てきたのだから。
「くっ……なんともふざけた光景だ……」
「とにかく突破しましょう! ロイドさん!」
「ああ……! こんなふざけた場所を許すわけにはいかない!」
「──ふざけてなどいないぞ!」
「!? あなたは……ルーファス・アルバレア!?」
「ふふ、アルバレアではない。私の名は──ところてん☆ルーファス仮面!」
「いや……おそらくは偽物だろう。というか偽物でないと困る」
「本人がここにいてそんなふざけた格好をしている筈がないわよね……」
「失敬な。私は本物だとも。本物のところてん☆ルーファス仮面だ」
「話も通じないみたいですね……」
「ああ。とにかく今は『ところてんを食べながらあの仮面を剥ぎ取り、サンバを踊らせるしかない』──意味不明な言葉を被せないでくれ!!」
「私の仮面を剥ぎ取ってサンバを踊らせるだと? フッ、下劣な。人が好きで身に着けているものを奪おうとするとは……常識を疑ってしまうな」
「あなたに言われたくありませんが!?」
「下劣なのは貴様の格好だろう……」
「だが私は負けぬ。私はこのクロスベルの地をところてんで守るよう閣下より命じられたところてんルーファス仮面! 我がブ~ラブラ神拳を食らうがいい! 閣下に代わって──おしおきだ!」
「すごいな……言ってることが何一つ意味がわからないぞ」
「とにかく倒すしか……」
「あれ? なんかおっきい画面が出てきたよ?」
「え?」
『美男子戦士ところてん☆ルーファス仮面 ~特務支援課にところてんを添えて~』
「なんか変なOP始まったー!?」
「クロスベルはところてん♫ ところてんに首ったけ♫ 閣下にもところてんを食させたい♫ ひくほど食させたい♫ 特務支援課をところてん支援課に改名したい♫ 鉄血の子供たちもところてんの子供たちに改名する♫」
「そしてあなたが歌うんですか!?」
「酷い歌詞だ……」
「くっ……惑わされるな! ノエル、リーシャ、エリィ! セルゲイ課長にアリオスさんも力を合わせててここを突破しましょう!」
……それにしても酷い。見ているだけで頭が痛くなってくる上、そこを攻略しながらひたすらにツッコミを入れている特務支援課関係者にはつい同情してしまう。
しかしこれでこの地における情勢は少しばかり変化した。帝国のトールズⅦ組が星見の塔で待ち構える結社の面々を先に退け、七耀脈の異常を正常に戻すか。あるいはクロスベルの特務支援課がミシュラムの異常を正常に戻すか。どちらが先になっても得られる結果は変わらないだろうが、その経過は観察する必要がある。
ゆえに自分は星見の塔の経過を密かに観察することにしたのだが……。
「──お初にお目にかかる。《蒼》のジークフリードと言う者だ。《地精》の長代理として参上した」
「ち、地精……!?」
「それって確か……」
「……魔女の始祖たちと共に《騎神》を造った……」
「クロスベル・ところてん☆ルーファス仮面ランド♡を作った……」
──いや作ってねぇよ!? ぐっ……!? また頭痛が……!
何やら妙な頭痛を感じながらもなんとか平静を装って状況を把握する。……何やらいつの間にか、あの悪趣味極まる遊園地が我々の所業に加えられていた。おそらくはそこで結社とトールズの戦いを見届けていたアーヤ・サイードが吹き込んだのだろう。そのことに対して異を唱えたいのは山々だが、こちらが言っても信用はないだろうな。
それにある意味で我々のせいというのも間違いではない。なので敢えて異論を口にすることは抑えて挨拶を行った。
……だがそれにしてもだ。過去は存在せず、必要ともしない自分があのアーヤ・サイードの言動に対しては何やら乱暴な口調でのツッコミを頭に思い浮かべてしまう。それと同時に酷い頭痛を感じてしまうが……やはりそれほどに奴の言動は意味不明だと言うことか。
これから結社と争うことになる。《火焔魔人》や《鋼の聖女》と同様に《血染の裁縫師》のことも警戒しておくべきだろう。そう判断し、俺はクロスベルの地から撤退することにした。──ちなみにクロスベル・ところてん☆ルーファス仮面ランド♡とやらはプレロマ草がなくなったことで綺麗に消え去ったが、それを見た多くの人々を傷つけ、同時にルーファス・アルバレアの印象にもかなりの悪影響が出たというが……こちらには関係のない話だ。
──ジークジオン! 《緋》のアーヤ・サイードです! ……え? 他に同じ二つ名の人がいるって? うーん……でも《緋》の起動者の私の方がその二つ名に相応しいっていうか……というか私が名乗りたいから……まあ、思ってるだけでいいよね? 実際に名乗って苦情を言われたら考えるってことで。
さて、というわけでクロスベルでの特別演習及びに仕事は色々あったけどなんとか無事に終わった。……本当に色々あったなぁ……『クロスベル・ところてん☆ルーファス仮面ランド♡』とか……まさかあんなものができちゃうなんて……。
いや、確かに変だと思ったよ? 《蒼》のジークフリードと互いに騎神に乗って戦ってる最中に周囲に大量のプレロマ草が生えてたし。赤い上にところどころ白いプレロマ草も混ざってたから気味は悪かったけど戦いの最中だったし害はないと思って無視してたんだけどさ……まさか夜になってオルキスタワーの屋上でマクバーンやカンパネルラとリィンくんたちが戦った後でまさか急に顕れるなんて……本当にびっくりした。皆面食らってたし、カンパネルラはお腹を抱えて爆笑してたし、ユウナちゃんは辛そうだったし、私はもしかしたら私のせいかもしれないと思って気まずかったし、なんだったらその後でルーファスからすごい見られてたから困ったけどなんとか誤魔化すことはできた。いや……本当に私がやったことではないし……何か影響があった可能性はなきにしもあらずではあるけどさ……だとしても私が意図したことでもないし、私はちゃんと《黒の工房》の人を退けようと頑張ったんだから! だから悪いのは《黒の工房》であり《地精》だよね! 私は悪くない!
ふぅ……さ、そんな終わった問題より私のクロスベルでの輝かしい活躍及び名シーンでも振り返ろうかな。地味にちょっとしたところで活躍したり出番はあったんだよね。例えばオルキスタワーの屋上ではクルーガーちゃんを庇ったりした。
「うわあああああああん!!?」
「アーヤ教官……!」
「何を……!?」
──マクバーンがリィンくんに圧縮した焔の塊を投げつけて、それをクルーガーちゃんが代わりに受けようとしてて……クルーガーちゃんが死んじゃったらヤバいし、咄嗟に私が更に前に出たんだよね。アホほど熱かったし叫んだけどマシではあった。通常攻撃で良かった……ジリオンハザードだったらもっと熱かったし火傷の状態異常不可避で軟膏塗らないといけなかったし……。
「っと……まさかここでお前さんが庇うとはな。今回はそっち寄りなのは聞いてたが……もしかして、次はお前さんが相手してくれるのか?」
「い、いや~……それはちょっと勘弁してほしいかな~って……一応仲間だし、ここは私の顔に免じて許してほしいんだけど……」
「クク、そいつは無理な相談だな。クルーガーの成長も悪くはねぇが……お前さんが加勢するってんならより愉しめそうだ。なんなら《灰》の小僧と一緒にかかってくんのかどうだ? そいつとお前さんが本気を出すならかなり面白い勝負になると思うぜ?」
「──絶対本気出さないようにね! リィンくん! マクバーンの本気はヤバいから! 私も戦いたくないし! なのでそこで大人しくしててね! クルーガーちゃんも!」
「っ……ですが……!」
……と、こんな感じでめちゃくちゃヤバかったけどマクバーンに本気を出させたり、これ以上リィンくんやクルーガーちゃんを傷つけさせるのは忍びないのでビビリながらも私がマクバーンの前に立ち塞がったんだよね。はぁ……本当に怖かった。マクバーンもなんか私が相手になるなら愉しめるとか言ってたけど私はマクバーンが本気を出すほど強くないし、何より私は愉しくないっ! なので程々でお願いします!
まあその後ですぐに下の階から加勢が続々と駆けつけたんでなんとかなりはしたんだけどね。──そしてあの『クロスベル・ところてん☆ルーファス仮面ランド♡』が出てきたけど、それはもう仕方ないから忘れよう。
そして次の日はリィンくんたちが旧Ⅶ組のアリサちゃんとかマキアスくんとかエマちゃんと合流して事態を解決しようと動き出した。
「それじゃ私もついていくね!」
「アーヤ教官も来てくれるんですか?」
「もちろん。クロスベルがこうなったのは許せないしね! 今回はこっちにつくって決めてるし、私のことなら心配しないでいいよ」
なので私もリィンくんたちについていくことにした。頼れるアーヤちゃんがパーティイン! クルーガーちゃんは私が庇ったとはいえマクバーン相手の戦いで結構無茶をしたっぽいので一応待機に回った。なので一応ね。というか普通に心配だし。この後もマクバーンと戦うことになるんでしょ? 幾らⅦ組が成長したと言ってもマクバーン相手じゃ割と死んじゃう可能性もありそうだし、一応近くで見てあげないと。
ということでⅦ組の面々に加わった私も一緒に演習地からクロスベル市内に移動。導力バイクでね。運転できるのはリィンくんにアリサちゃんと私だったんだけど私が運転したい! って言ったのに皆は「いえ、アーヤ教官は誰かの後ろに乗ってください」「そ、そうよ。その方がいいわ」「教官に運転させるなんて悪いですから!」「教官の運転はまた今度見せてください!」って感じでなぜか拒否された。解せぬ。これでも免許持ちなのに……運転は得意なんだけどね。でもそこまで言うなら仕方ないし、私はリィンくんの後ろに乗ることにした。アリサちゃんの後ろだとセクハラしたくなりそうで危ないしね。リィンくんも成長して中々に良い身体にはなって頼もしくはあったけどまだまだレーヴェには敵わないね。
そしてその後はマキアスくんの案内で特務支援課ビルに移動してそこで情報を整理することになった。皆は初めて来たわけだけど私としては懐かしい。何回かは来てるからね。なんだったら襲撃もした。でもちゃんと直ってるから良かったね。なお作戦会議では私にも「アーヤ教官は何か知らないんですか?」って一応聞かれたけど私は無難に答えておいた。騎神のことを教えるわけにもいかないし、私が知らない筈の情報を言うわけにもいかない。実際今回の実験のことはそこまで詳しく聞いてはないし、知ってる筈の情報として「私もクロスベルでの実験には関わってたし、神機は開発段階から色々と協力してるから知ってるけど……神機は《至宝》以外にも霊力が沢山あれば動くから良い感じに霊力が貯まるパワースポットを探すのがいいんじゃない?」って簡潔に説明しておいた。すると皆も難しい顔をしながら納得し、そこに霊的な知識が豊富なエマちゃんも補足を入れてくれたので皆も更に納得した。そして霊的な関知といえばティオちゃんってことで通信でティオちゃんに連絡して協力を求めたんだよね。
『ええ! 是非とも協力させてください! そしてあんなふざけた遊園地を木っ端微塵にぶち壊してください! そのためなら幾らでも協力しますよ私は!』
……ま、まあなんかすごい荒ぶってたけど……みっしぃが汚されて怒ってたけど……協力すると言ってくれたティオちゃんに従ってジオフロントに向かうことになった。
「よーし、ジオフロントの案内なら私に任せて!」
「アーヤ教官もジオフロントに入ったことが?」
「うん。色々と仕事を頼まれてね。端末のデータをぶっこ抜いたり手配犯を追いかけたり出前を届けたりとかで何度も出入りしてるからもう庭みたいなもんだよ」
「そ、そうでしたか」
「い、色々とツッコミどころがありすぎて反応に困るんですが……」
「データとか手配犯もそうだけど出前って何よ……」
そしてジオフロントのA区画とB区画を結ぶジャンクションに向かうことになったので皆で道中の魔獣を対峙しながら移動。途中で何度も皆が真面目な会話をしてたので私も頷いておいた。「みんな成長したねー。私は政治なんてさっぱりだよ」とか「裏はいつもきな臭いからねー」って感じで皆の成長に感心しきりだった。なんか呆れられてる気もしたけど気の所為だよね。
ただ実際、成長が著しいのは間違いない。私は1番後ろに陣取って1番危ない背後を警戒しつつ魔獣相手の皆の戦いぶりを見せてもらったけどリィンくんはもちろんのこと戦いとは縁遠い筈の職についたアリサちゃんにマキアスくんも普通に鍛えてたみたいで強くなってた。狙いが以前より正確になってたし、回避の動作とか身のこなし。判断力もきちんと向上してる。単純な身体能力も上がってるし、エマちゃんも魔力が中々……というかもうヴィータ姉さん級なんじゃ? と感じるくらいだ。
サザーラントでフィーちゃんラウラちゃんエリオットくんも確認したけどそっちもフィーちゃんとラウラちゃんが中々の達人になってたし、エリオットくんも普通に強くなってたのでやっぱりⅦ組は優秀だ。才能に溢れてる。おまけに皆真面目で責任感が強くて向上心があるから努力家。まあ半分は私が育てたんですけどね! 自慢の教え子で私も鼻が高い! ドヤァ……ふふ、これが私の教え子トールズⅦ組……! 最高の生徒たちだ……!
私は感慨深くなりながらもしっかりとお手伝いをする。手配魔獣も皆の成長と活躍の機会と取らない程度に手伝ってちゃちゃっと片付けた。成長したⅦ組の前には生半可な相手じゃ太刀打ちはできないね。それとARCUSⅡの新機能でもあるオーダーでも手伝った。私のオーダーは《ミラクルガーデン》と言ってその名の通り奇跡的な陣形だ。なんかⅦ組の皆は戸惑ってたけどそれでもちゃんと効果はあって良い感じに戦闘を終わらせられた。やっぱり私の陣に狂いはなかった。……まあ実際はこっそりと無味無臭かつ本当に全く害もなくAS製でもない強化薬で味方を強化してるってだけなんだけどね。オーダーはちゃんと陣形っぽいのもあるけど導力魔法を強化するものだったり防御シールドを張るものだったり色々とあるからこれもオーダーって言って良いはず! このオーダーのおかげもあってジャンクションの端末前に現れた魔煌兵もしっかりと撃破!
ちなみにリィンくんはセリーヌのサポートで神気合一を久々に使ってたけどやっぱりその状態での戦闘力は凄まじかった。苦しそうではあったけどね。以前に暴走してから制御に苦労してるみたいだ。本当に大変そう。力になってあげたいけど私も別に異能にそこまで詳しいってわけでもないし、私の持ってるっぽい変な力は制御とかそういうのじゃなくて体質みたいなもんだから何のアドバイスもできないという……なんかごめんね? でもリィンくんならいずれ乗り越えられると信じてるよ!
ってことでその後はティオちゃんが座標を割り出してくれて《星見の塔》に向かうことに。懐かしい……ってほど昔でもないか。《碧の大樹》を顕現させるために結社で色々と動いたからね。よく知ってる。それを言ったらまたティオちゃんが映像越しにジト目を向けてきたけど……こ、今回は関係ないからね! とにかく星見の塔にレッツゴー! なんか急にやってきたオリヴァルト殿下ことオリビエとも一緒にレッツゴー!
「……いや、私が言うのもなんだけどさ……オリビエは本当に来るの? マクバーンヤバいよ? レーヴェよりも強いし……」
「ハハ、懐かしいね。あの時は君にも大いに苦戦させられたよ。そうだろう、ティータ君」
「はい。お姉ちゃんたちにアガットさんにシェラさんとオリビエさん……ジンさんにクローゼさんとケビンさん。それにジョゼットさんとミュラーさんとユリアさん……全員で浮遊都市の中心でレーヴェさんとアーヤさんに挑んだのもつい昨日みたいに感じます」
「いやー……今だから言うけど多すぎだよ。あんな数で挑まれてほんとびっくりしたんだからね?」
「僕たちとしてはあの数でも優位を崩せなかった君とレーヴェの方が驚きだったさ」
「ふぅん……話には聞いていたけど……本当にティータたちはレーヴェとアーヤに勝ったのね。今度もまた蚊帳の外なのは癪だし、私も付いて行っていいかしら?」
「え!? レンも来るの!? そ、それは……」
「あら、嫌かしら? 一応主任教官と担当教官からは正式に許可を貰っているのだけど」
「え……いや駄目でしょ!? 生徒なのに!?」
「あはは、私としても本当は許可は出したくなかったんだけど……」
「……オリヴァルト殿下に情報局からも許可が出てしまっているのなら是非もない。それに元執行者であるレン・サイード候補生であれば他の生徒と比べて戦力として安定感があるのも事実だ。なので少々複雑ではあるが……こちらからも許可を出させてもらった」
「ということで私も同行させてもらうからよろしくね。アーヤ教官にリィン教官♡ 旧Ⅶ組にオリビエさんもよろしくお願いね?」
「元執行者の生徒がいるという話は聞いていたが……」
「な、なんかこの子も普通じゃなさそうね……」
……と、そういうことで演習地でオリビエとかティータちゃんとか教官陣と情報を共有した際にその場にレンもいてなぜかレンまでパーティインすることになった。えぇ……気まずい……ってほどでもないけどさ。ただあんまり危ないことに付き合わせたくはなかったんだけどね。
とはいえ許可も出て付いてくる気満々みたいだし仕方ない。昨夜もオルキスタワーでマクバーンとカンパネルラと久し振りに顔を合わせたことで気になってるみたいだし、ここは結社で愛されてた《殲滅天使》パワーでマクバーンが少しでも手加減してくれることを願おう。……無理かな? 無理だよねー……マクバーンって気遣いはそこそこ出来るけど戦闘に関しては本気出したくて仕方ない病にかかってるからあんまり遠慮してくれないし……。
……ま、仕方ない。割り切って頑張ろうってことでレンは大いに戦闘でも考察でも役立ってくれた。星見の塔に辿り着いてからもしっかり会話に混ざって結社の鉄機隊やリアンヌママのこともちょっと喋ってたし、内情を知ってる人がパーティにいるから会話も進む進む。……え? 私? 私はほら……喋ると地味に気まずいじゃん? 喋りすぎても駄目だし。実際鉄機隊と特務支援課が戦った時のことも「あの時はクロスベルと帝国を行き来しまくって大変だったんだよね」って言ったら若干呆れてたし、書庫に辿り着いた時は教団と関係があるらしいって話が出たから私が「幻の至宝の一族でもある錬金術師の家系クロイス家だね。確か話だと揺籠と信仰対象のキーアちゃんを教団に提供したとかで。私もそれに関わる人体実験とか受けたんだけどアレは中々に痛かったよねー」って何気なく言ったら空気が死んだ。レンも少しの無言の後に「……アーヤ。そういう話はあまり詳しくしすぎない方が良いと思うわ」ってフォローしてくるくらいだったし、私としたことがうっかりしてしまった。あまりにも自然に教団の話が出てきて考察してる感じを皆が出したから私も知ってることは話しておこうと思ってつい口が滑った。本当に何気なく言っちゃっただけでしかもかなり浅い段階の話ではあるけど普通は嫌な気持ちになるよねー。あはは……と、とりあえず上を目指そう! 私は気にしてないから皆も気にしないでね! ってことで空気を取り戻してから先に。
そして屋上では……。
「博士の開発したゴルディアス級の最終型の神機……もう動かないものと思っていたけど、どうやら霊力を充填して条件を整えようとしてるみたいね」
「アハハ、さすがに君は詳しいね、レン。昨夜もちょっとだけ顔を合わせたけど……うんうん。物凄い成長ぶりじゃないか」
「ああ。初めて見た時はそこのアーヤと同じで小さぇガキだったが……クク、今は腕前も含めてかなり期待できそうだな?」
「ありがとう。貴方たちの方は全然変わってないみたいね。おかげでこっちも容赦する必要がなさそうで何よりだわ」
「話も盛り上がってるし、同窓会ってことでティーパーティにしない? ほら、戦いなんかよりよっぽど愉しいと思うよ? それでゆっくりと霊力の充填を待ってからなんか良い感じに決着をつけるってのは……」
「無理だな」
「それを受けてくれる相手じゃないでしょう?」
「そもそもそっちとしても駄目でしょ? ボクたちを止めに来たわけだしさ」
「ですよねー。あはは……」
……と、屋上で待っていたマクバーンにカンパネルラ。2人の執行者と一緒にレンも加えてちょっとした会話。執行者4人でレンの成長振りに関して話して同窓会みたいなムードにちょっとだけなったので私はティーパーティの開催を提案したけどすげなく却下された。ううん……さすが執行者……みんな血の気が多いよー怖いよー。はぁ……結局戦うしかないのか……カンパネルラはともかくとしてもマクバーンは嫌過ぎる……幾らこっちのが数も多いとはいえマクバーン相手は数とかあんまり関係ない気がする……。
「1年半振りだ──せいぜい熱くさせてくれよ? レーヴェの奴くらいにはなああっ!!」
──って、普通に良い感じに戦ってたらマクバーンが本気出して《火焔魔人》になったー!! うわあああああああん!! いやー! キツいキツいキツい! リィンくんは時折神気合一を使ってくれるしエマちゃんは焔を抑えようと頑張ってくれてるしオリビエにマキアスくんにアリサちゃんも頑張ってるけど当然のようにマクバーンが強い! 私とレンはまだ戦えるし保つけどこのまま続けてたら私とレン以外が大変なことになっちゃう!
「ノッて来たぜ……! このまま踊り続けるとしようか!?」
「か、加減しろバカー! 私はともかく他の人が燃え死んじゃうでしょうが!」
「《火焔魔人》……実際に戦うとこれほどとはね……」
「特にアーヤ! お前は良い感じだ! 前々から成長したとは思っちゃいたが、ここ最近で更に力を付けたみてぇだな! 力の混ざり具合も
「イヤー!? なんで私に1番に目を付けてるの!? 私なんて大したことないっていつも言ってるのにさ! 人外バトルに私を巻き込むなって!」
「いやいや、普通に君も人外なんじゃない? 少なくともこの中だとマクバーンの次に強いのは君だしね。そもそも今もマクバーンと普通にやりあえてるじゃないか」
「そこ! うるさいカンパネルラ! こっちは必死なのに外野からごちゃごちゃ言わないで! 気が散る! 一瞬の油断が命取り!」
マクバーンの焔をなんとか防いでⅦ組やレンやオリビエが致命的な攻撃を喰らわないように気をつけて戦ってるけどアホほどキツい! というか死ぬ死ぬ! 余裕で死ねる! 久し振りに命の危機を感じてる! そりゃいつも通り致命傷にはなってないけどいつもより全然ダメージ入ってるしヤバさは段違い! レンや他の皆がサポートしてくれてなかったら絶対ヤバかったって! 多分終わる頃にはズタズタにされた白髪の私がいることになる!
でもあんまり必死に戦いすぎてもよくないんだよね! だってマクバーンはまだ《アングバール》も出してないし! 出してないから頑張れてるけど出してきたらいよいよマズい! 本気を出さないように程々で戦いたいけどそんな余裕がないから困る!
「《Ⅶ組》ならまだいるわ!」
──キター! 助かった! 加勢だ加勢! 軌跡シリーズ特有のピンチにやって来る味方! ついに私の元にもお約束によるお助けが! ちょっと感動する! なにせそういうのはあんまりなくていつも1人で何とかしてきたからね! もしくは敵側だったし! 味方として助けられるのは色んな意味で感動だ!
そうしてユウナちゃんを始めとする新Ⅶ組……まだアッシュくんやミュゼちゃんはⅦ組じゃないけど……クルトくんやアルティナちゃんも含めて新Ⅶ組がやってきたことで形勢が良くなった! しかもドラッケンⅡまでブーストキャリアで空を飛んでやって来たし、そのタイミングでリィンくんがヴァリマールを呼んだので一気に勝利ムード漂う! 結社側も条件が整って神機を動かせるようになったけどリィンくんとヴァリマール。それにユウナちゃんならいける! いっけー! クロスベルを取り戻せー!
その後は私の出番は終わり。ヴァリマールを駆るリィンくんとドラッケンⅡを駆るユウナちゃんと神機の戦いを見て神機が大破したことで決着はついた。はぁ……これで安心できる。実験も無事に成功というか終わったし、クロスベルも、とりあえずあの『クロスベル・ところてん☆ルーファス仮面ランド♡』は綺麗さっぱりなくなった。
他にも結社から離反中のヴィータ姉さんやこっそり見てたクロ──《蒼》のジークフリードや戦術殻越しに見てる《黒》のアルベリヒが出てきて意味深なことを告げて去っていったけどとにかくヨシ! クロスベル編完! 終わりの御伽噺ってなんだろうね! 私は知らない! 皆でリーヴスに帰ろう!
「クルーガーちゃんもまたねー」
「貴方のことですから言っても無駄だとは思いますが……あまり無茶はしませんように」
「それを言うならクルーガーちゃんも無理しないでね。結社の方は勝手にやってるからさ。クルーガーちゃんは今まで通り完璧メイド生活を続けると良いんじゃないかな」
「……ええ。そうさせてもらいますわ。……それと庇ってくださってありがとうございます」
「気にしないでいいよー。友達を守るのは当然のことだしね」
そして私はクルーガーちゃんとも別れを告げつつクロスベルを去る。うんうん、良いエピローグだ。最後に列車からロイドくんたちの姿もちゃんと見えたし、私もキーアちゃん辺りにサムズアップを返しておこう。ちゃんとゲームクリアしてね。また新作持ってくるから。キーアちゃんのために発狂しそうな最高難易度を用意しておこう。これで何の問題もなく教官生活に戻れ──
「──さて、アーヤ。単刀直入に聞きましょう。貴女は騎神の……それも《緋》の起動者になりましたね?」
……………………ふぅ……こきこき……さーて、なんて言い訳しようかな(震え声)。
6月某日。事前の宣告通り、呼び出しを受けた私の目の前にはきちんと時間を作った上で二人きりになったリアンヌ様がいた。そしてめっちゃ核心的な質問を受けた。どうしよう……とりあえず落ち着いて──って、落ち着けるかー! うわーん! どうしよー!? なぜか確信してるっぽいのはなんで!? 誤魔化したいのに久し振りに兜を外して私を見下ろすリアンヌママの顔には全部わかってるって書いてる気がする! で、でもとりあえず一応質問してみよう……。
「あ、あの……その前に1つ聞きたいんですけど……いいですか……?」
「なんでしょう」
「あ、ありがとうございます。えっと……どうして私が騎神の起動者だって思ったんですか?」
「貴女の癖です」
「癖?」
え、性癖のこと? 確かに私はリアンヌママみたいな品がある女性が好きで……って違うよね。どういうこと? 私は首を傾げてリアンヌママの説明を聞く。正座で。
「博士が実験の様子を記録していました。その記録を私も見させて貰ったのです。そこで《緋の騎神》とその動きを確認しました」
「あ、記録してたんですね……」
「ええ。そしてあの《緋の騎神》の動きと貴女の動き。身のこなしの癖が完全に合致していました」
「え」
私はつい間の抜けた声を出してしまう。う、動きの癖ってこと? そんなこと……。
「そ、それはでも……ぐ、偶然かもしれないんじゃないかなー……って思ったりもしたり……」
「確かに普通ならばその程度で起動者の特定には至らないでしょう。ですがアーヤ。結社にやって来た貴女に稽古を付けてきたのは私です。かの《月光木馬團》で磨いてきた暗殺術に手を加えなかったとはいえ、貴女に稽古を付けた者として貴女の動きは理解しています」
「そ、それは……」
「そして騎神は起動者の動きを誤差なく再現することが出来るもの。《緋の騎神》の動きが、貴女の動きと一致することは一目見ただけでわかりました」
「あーなるほどー……リアンヌ様、私の第二の師匠みたいなものですもんねー。あははー……」
私はそれを聞いて納得する。リアンヌ様ほどの武人でなおかつ私の第二の師匠と言えるほどに私を見てきたリアンヌ様ならそりゃ気づくよねー。なるほどねー。
……うん、これは誤魔化せないか……困った。どうしよう……と、とりあえず弁解しよう!
「り、リアンヌ様のご指摘の通り──私が《緋》の
「……やはりそうでしたか」
「で、でも別に翻意があるわけじゃありませんし起動者になったのも騙された結果というかですね! 潜入してた《黒の工房》とかオズボーン宰相に殆ど強制的に起動者にさせられたんですよ!」
「……なるほど」
「そ、それでですね! 強制的にと言っても今は納得していて……あ! でもだからといって《黒の工房》側に付いたってことじゃないですよ! ただテスタ=ロッサは良い騎神でしたし機体性能も高いですし今ではすっかり私の相棒で──」
「──アーヤ」
「は、はいぃ! なんでしょう!?」
「……私は貴女が悪意や何らかの悪巧みをしているとは考えていません。騎神の起動者になったのも貴女のことです。きっと訳があったのでしょう」
「そ……そうなんですよ! わかってくれましたか!」
「ええ。ですから私が聞きたいのは1つだけ。──騎神の起動者に架せられた使命とその重さを……貴女は理解しているのですか?」
リアンヌ様が私のことを真っ直ぐに見てそう問いかけてくる。うっ……どうしよう……話しづらい……というか話すわけにはいかない……!
(ど、どうしようテスタ=ロッサ! リアンヌママに騎神の起動者であることがバレちゃった!)
(ふむ……リアンヌ、か。もしやその者は《槍の聖女》リアンヌ・サンドロットなのか?)
(そうだよ! 前にも話したけど結社の使徒の第七柱! その人にバレちゃった!)
(なんと……ドライケルスと共に魔王と化していた私を封印したかの聖女が未だ起動者としてその身を維持していたとは……不死者になっているのなら不思議ではないとはいえ……)
(すごい人だよ! 武人としては最強だしね! でもその最強に責められてる! 助けて!)
(落ち着くといい、我が起動者よ。その者はおそらく私が影として貴殿の側にいることにも気づいている)
(そうなの!? じゃあどっちみちバレてたじゃん!)
(うむ……だがその者は貴殿を非難するために呼び出したものではないと私は考える。おそらくは貴殿の真意を問うているのだろう)
(そ、そうなの? じゃあどうすればいいと思うの?)
(……真摯に答えればよいのではないか? 無論、話せないこともあろうが……かの聖女であれば貴殿に悪意がなく、相応の覚悟を持って望んでいることを見抜けない訳はあるまい)
(そ、そっか……それじゃ話してみる)
(うむ。そうするといい)
私は念話でテスタ=ロッサに相談し、背中を押してもらう。おかげでちょっぴり落ち着いた。なのでリアンヌママにはなんとかわかってもらうしかない。
「……その、一応、私なりには理解しているつもりです。目的といいますか、やりたいこともあるので……」
「……やりたいこと、ですか」
「は、はい! あ、でもそれも別にリアンヌ様の邪魔をしたりとかそういうものでもないので安心してください! それに《黒の工房》の言いなりになるつもりもないので!」
「それはつまり……あの《鉄血宰相》殿にも必要であれば歯向かってみせると?」
「
…………ん? 今鉄血宰相に歯向かうって言った?
私は条件反射で良い返事を返してしまったことを自覚する。リアンヌママにわかってもらおうとしてつい笑顔で返事してしまった。別にオズボーン宰相に積極的に歯向かうつもりはないのに。いやまあ確かにその後ろにいるイシュメルガには間接的に歯向かうことになるだろうけどさ……そんなその言い方じゃまるで積極的にイシュメルガとオズボーン宰相相手に戦うみたいでなんかニュアンスが違うような……。
「……なるほど。貴女も騎神の起動者。そしてかの《黒》に唆されたのであれば彼らがどれほどの力と悪意を持った存在であるかは理解しているはず。それでもなお諍う覚悟を持っていると……」
え、いや、そこまでは……。
「──いいでしょう」
「え」
「アーヤ。貴女の覚悟を尊重します。元より外野が口を出していいことでもありません。貴女なりにこれから先に起こる──終わりの御伽噺に諍ってみるとよいでしょう」
「……はい。頑張ります。私なりに……」
……ふぅ~~~~~……さ、どうしよっか。なんか大事になってきてる気がして内心汗ダラダラだけど……なんかこう……上手いこと訂正できないかな? このままだとなんかナチュラルに相克に組み込まれそうな気がするんですけど……騎神の起動者になった時点でそれは避けられないってのはそうなんだけどさ……でも積極的に《黄昏》の中でドンパチするのは幾らテスタ=ロッサに乗って戦うのが楽しいし安心するといってもさすがに抵抗が──
「──では見せてもらいましょう。貴女の覚悟と現時点で持っている力を──いでよ、アルグレオン」
「……へ?」
私の目の前でなんかリアンヌ様がなんか呼び出した。言うまでもなく《銀の騎神》アルグレオンだった。7体の騎神の中でも黒に次いでの力を持っていて、なおかつリアンヌ様が起動者だから最強クラスと言っていい騎神を。わーすごーい。きれーい。これが銀の騎神アルグレオンかー。すごいなー。かっこいいなー。つよそうだなー。
「えっと……これって騎神ですよね? 呼び出してどうするつもりなんですか?」
「力なき覚悟は虚しいもの。貴女に僅かとはいえ剣を教えた者としてせめてもの手向けです。経験が少なく、積むことも難しい貴女に久方振りに稽古を付けてあげましょう──さあ、騎神を呼び出しなさい」
──あ、やっぱりそうなっちゃう? なっちゃうんだね? なんとなくわかってたけどさ。リアンヌ様がアルグレオンを呼び出した時点でなんとなくは。だから内心で現実逃避して呑気に幼女ムーブをしてみたんだけど……やっぱり避けられない? 駄目? 稽古を付けるって言ってくれてるし、無理だよねそうだよねーあははーそれじゃ仕方ないから来てーテスタ=ロッサー。
「! それが完全に復活した《緋の騎神》テスタ=ロッサ……なるほど。どうやら本来よりもかなりの力を持っているようですね」
「結構強いんじゃないかなーって自分では思ってるんですけど……でもさすがにリアンヌ様やそちらのアルグレオンほどではないかと……」
「それも含めて見極めてあげましょう。安心なさい。この場所であれば《黒》に関知される恐れもない。──全力でかかって来なさい」
「──はい。よろこんで」
──と、上司の中で1番敬愛してる相手の命令なので空気を読んで冷静に同意してみたけど……私の内心はいつも通りだった。こんな感じで……。
──うわあああああああああん!! リアンヌ様と本気の稽古だー!!? しかも最強クラスの《銀の騎神》アルグレオンに乗った状態での戦いだー!! ひー!! こっちも《緋の騎神》テスタ=ロッサに乗ってるとはいえさすがに怖い強いやばい! 250年以上鍛えてるリアンヌ様とアルグレオンにぺーぺーの私とテスタ=ロッサが敵うわけなくない!? いやまあ稽古だから勝つ必要はないんだろうけどさー! こういうところやっぱり武人だよねリアンヌ様も! うわーん! 騎神状態で使ってくるリアンヌ様の戦技強すぎー! 防ぐのキツいって!
「アーヤよ。相手が伝説の聖女と銀の騎神だからと恐れる必要はない。貴殿と私の力を見せてやるとしよう!」
そしてテスタ=ロッサは普通にやる気だー! くっ……でも確かにもうこうなったら割り切って思い切ってやってみるしかない! こなくそー! こうなったらやけくそだー! 一応騎神に乗った状態なら普段と比べて痛さも緩いし安全だからリアンヌ様の命令通り思いっきりやってやるー! 頭の中でリアンヌ様の戦闘曲『Unfathomed Force』を流して戦うぞー! そして良い感じに粘ってAPをゲットしてやるー! うおおおおおおお!!
──そして後日。私は今までで1番キツい地獄の稽古を乗り越えてリーヴスに帰還した。
「ふ、ふふ……やった……な、なんとか乗り切った……夜通しでめちゃくちゃキツかったけどお褒めの言葉も貰った……」
(うむ。良き戦いであったな。ゆっくり休むといい、我が起動者よ)
「ありがと……そっちも工房でゆっくり休んでね……今日は午後まで授業は入ってないし、ちょっと保健室で仮眠でも──」
「──ここにいたかサイード。実戦技術の授業についてシュバルツァーと話し合ってな。雛鳥たちに教官同士での果たし合いを見せてやることになったのだが…………ほう? どうやらそなたも事前にかなり濃い修行を行っていたようだな?」
「い、いや、そんなことはないですが……」
「ふっ、安心するといい。そなたがどこで誰と稽古をしてきたのかは問わん。そなたは所属が所属であるからな」
「ほっ……お気遣いありがとうございます。それで、リィンくんとの一対一で戦えばいいんですか? まあこっちも疲れてますけどそれくらいなら……」
「──と、そう思っていたのだがな。そなたの気の充実ぶりを見て気が変わった。そなたの相手は
「へ? は? い、いや、それは……」
「案ずるな。多少だが手加減はしてやる。シュバルツァーの相手はランドルフにでも任せるゆえ、そなたは全力で私に挑んでくるがいい。表と裏の最高峰の武を精々雛鳥たちに見せてやるとしよう」
「いや、手加減してもめちゃくちゃ強いし普通に嫌なんですけど……」
「そう言うな。これも教官としての務めの1つであろう。そろそろ授業も始まる。グラウンドへ向かうぞ」
「いや、ちょ、待っ──」
「さあゆくぞ! 奥義──“剣乱舞踏”!!」
「奥義!? 手加減するって話はどこにいったの!? うわー!?」
──うわああああああん!! バカヤロー!! ふざけるなー!! 《鋼の聖女》と戦った後の《黄金の羅刹》と戦うとかいう悪夢の2連戦を私にやらせるとか何を考えてるんだファルコムー!! もしくは
そうして私は第Ⅱのグラウンドでオーレリア分校長とも戦うことになった。私は手加減するって聞いてたのに残念なことに相手が奥義を使ってきたので「手加減は!?」って言ったら「ほう……さすがは伝説と謳われる暗殺者。戦いの最中に話をする余裕もあるようだ……!」と言われた。
私は正統派な武術は初心者も良いところだし割といつも負けるからそんな相手に全力を出すオーレリア将軍の正気を疑ったから聞いただけなんだけど普通に約束無視されたのでちょっとヤケクソで「グリムシザーでボコるわ……」って言ってはないけど心の中で思って背後から奇襲したら多分、リアルでビビったんだろうな(私が)、普通に気づいてガードをキャンセルしてカカッとダッシュしながら覇王斬してきたからかなり青ざめてた(私が)。
私は一気に宙に跳んだんだけどオーレリア分校長は私の動きをあんまり見失っていなくてクラフトでガードを崩した上についげきの四耀剣でさらにダメージは加速した。
とはいえさすがにダウンするほどではなかったけど効いたので良い感じだと思ってわざと距離をとり「私はこのまま(授業終了まで)タイムアップでもいいんですけど?」というと更に楽しそうな顔して武神功で自己強化した上で剣のはしっこから闘気出してきた(超怖い)。
私はギリギリで分け身を囮にして回避、これは一歩間違えると分け身が間に合わずカウンターで大ダメージを受ける隠し技でかなり追い詰められてる証拠なんだけどそれを必死にやったら後ろのギャラリー(生徒たち)がどよめいた。「アーヤ教官すごい……!」「分校長と互角だ……!」「分校長の攻撃を完全に見切って捌いてる……!」とか言ってた。
私は「うるさいそこ! 気が散る! 一瞬の油断が命取り!」と言おうとしたけどオーレリア分校長の攻撃が激しすぎて轟音が鳴ったタイミングだったしそもそも言う余裕がなくなって結局言えなかったからギャラリーは黙らなかった。
私は必死に逃げまくるが、ようやく時既に時間切れ、背面ガードを固めたオーレリア分校長にスキはなかった。
とはいえたまに結構良い感じに奇襲を仕掛けられて攻めれた時もあったけど最終的には普通に剣で撃退された、授業が終わる頃には久し振りに思いっきり戦えて満足そうなオーレリア分校長とアホみたいな2連戦で
アーヤちゃんを強いと思ってる奴は本能的に長寿タイプ。ということで今回はここまで。次回は海都オルディスとかラクウェルで遊び回ったりレーヴェと行動したりと色々あるけど割と平和回です。お楽しみに。アーヤちゃんのオーダー説明も乗せておきます。
ミラクルガーデン:BP4 4カウント クリティカル率0%~200%アップ CP+0~200 ランダム能力値アップ小~大2ターン
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