──絶望に染まった意識の中、俺は呪いに囚われ続けていた。
あの日、黒キ星杯でミリアムの死を目撃してから。俺はずっと自分を取り戻せないでいる。
自分が今、どういう状態でいるのかすらわからない。
全てが夢のように感じながら、心の内側から湧き上がる怒りや後悔、失意や絶望だけを感じている。
自分のことは何もわからない。
自分の名前ですら思い出せず、ただただ何かを取り戻したいという渇望と騙された怒り……負の感情が激しく湧き上がっている。
そうして内側から湧き出る力を振り回そうとしてしまう。それを止めようとも思わない。
だがそれをすることもできず、俺はその場で呻き、雄叫びを上げることしかできなかったのだ。
近くで誰かの声が聞こえるような気もしたが、その必死に呼びかける声も俺には届かなかった。
「まいどー! サイードフーズでーす! お弁当お届けに参りましたー! 今日はケバブ弁当だよ! 獣のように食らってね!」
──そう、どんな言葉も届かない──が……ただ少しばかり賑やかで明るい誰かの声は聞こえた気がした。もう1人のずっと側にいる気がする誰かの声が応対していて。
「また来たのね、アンタ……って何持ってきてんのよ!?」
「え? 何って……ただのドネルケバブだけど」
「そんなバカでかい肉の塊をどうやって持ってきたのよ……!?」
「いやー暇だったから実験に使う部屋の隣で焼いてみたんだよね。最初失敗してめちゃくちゃ煙出ちゃって
「……すごいことの詳細は聞かないでおくわ……ここの連中も自業自得とはいえ大変ね……」
「ほらほら猫用のキャットフードも持ってきたから一緒に食べよ。リィンくんには私が食べさせてあげるね!」
「ングォ!?」
──そうして馬鹿でかいジューシーな肉の塊を口の中にぶち込まれた気もしたが、俺にはやはり負の感情しか湧き上がらない。今すぐに原因となった奴らを鏖にしてやりたい。喉が渇いている。俺を騙した連中を許さない。水が欲しい。そうして取り戻すのだと。
だがやはり俺はその場に囚われたまま。身動きが取れず、呻くことしかできなかった。この縛めが憎い。自分を贄にした連中を八つ裂きにしてやりたいと──
「──それじゃ撮影始めるからみんな集合ー! リアンヌ様はもう少し右で! ルトガーさん自分のタイミングで始めちゃってください!」
「……ええ、わかりました」
「ま、やれるだけやってみるぜ」
「……アーヤ・サイード。改めて聞くが……こんなことが本当に必要なのかね?」
「だって(緋の)騎神自身がそう言ってたんだもん! 試しの場は作らないといけないし、協力してくれないと起動者が決まらないよ?」
「むぅ……(金の)騎神自身が、か……理解に苦しむが……しかし我らが主にこのようなことを……」
「──構わん。これも相克のため必要な儀式ということだろう。アルベリヒよ、我々はしばらく撮影に入る。撮影が終わるまで細かい些事は任せたぞ」
「は……承知しました我が主よ」
「お、やったね! 邪魔なアルベリヒが消えた! ありがとうございますオズボーン閣下!」
「あんたらまでこんな茶番に付き合うなんてな……一体どういう風の吹き回しだ?」
「フ……何、大したことではない。確かに外部から見れば下らぬ茶番かも知れぬが……これも最後の騎神の起動者に対する試練であり我ら全員の宿命に繋がるもの。ならば付き合わぬ道理はない」
「……他ならぬアーヤの頼みでもありますからね」
「どうせ今はそんなにやることもねぇしな」
「マジかよ……しかもこいつまで……」
「グゥ……」
「それだけの大事、ということだ」
「『それが大事』ってことだね!」
「フ……他人より自分の心配をするといい、クロウ・アームブラスト。たかが演奏と歌唱とはいえ我々にはあまり時間がない。足を引っ張って時間を無駄にすることは出来ないのだからな」
「……ハッ、誰に言ってやがる。こっちは学院祭で2度演ってんだ。あんたらの方こそやるってんなら足引っ張んなよ?」
「最善を尽くしましょう」
「フィーたちにも見られるだろうしな。いっちょ気合いいれてやるとするか」
「オオ……」
「よーし! みんなの気持ちが1つになったね! それじゃ行くよ! バンド名は『起動者でごMAN』! 曲は『それが大事』で!」
「曲の方はともかくバンド名は笑えないでしょ……」
──何か……とんでもない面子でとんでもないものに参加させられた気もするが……これも夢なんだろう。
だが意外にもその最中だけは負の感情も薄れた気がした。同時に似たようなことを以前やったことがあるような気がして……何かを思い出しかける。
しかしやはり何も思い出せず、俺はその時が来るまで全てを忘れ続けていた。
──どうもー『起動者でごMAN』のメンバー、アーヤ・サイードでーす! 《緋》の起動者です! 担当楽器はギター! メンバーの中では可愛い&おしゃれ担当! バラエティもいける頼れるお姉さんです!
……とまあそんなわけで楽しいバンド活動&イベントが終わって一息ついてます。いやー……楽しかったけどまさか金の騎神がルーファスに取られてしまうなんて……あんなに邪魔したのに……ルーファスの執念を舐めてたかもしれない。おかげで私の完璧な第一プランが崩れた。ぐぬぬ……。
ただまあルーファスに金の騎神が取られる可能性も考えてなかったわけじゃない。実際《黒き変態の怨霊》のアルベリヒからは他の勢力に渡さぬようにしろって言ってきてたし。完全に無視するつもりだったけど結果的には命令違反したことになってないし、いいかもしれない。だからといって何か得があるわけでもないけどね。多少の命令違反したところで現段階だと精々実験が過酷になるくらいしか向こうにやれることはない。相克に関しては割と自由だし、騎神の起動者である私をどうこうするってのもない。囚われてるレーヴェとか周りの人が心配ではあるけどそれをやったらいよいよ私を制御できないって向こうも思ってそうなのでよっぽどのことがなければやらないだろう。
ってことなのでこれでも色々考えてはいる。全てはリアンヌママを救い、あのアルベリヒを煉獄に送ってトゥルーエンドを迎えるため。
そのためには相克を良い感じに勝ち抜かないといけないし、その相克を有利に進めるためにもリィンくんにはさっさと脱走してもらわないといけない。みんながどのくらいに助けに来るのか具体的な日にちは覚えてないからわかんないけど金の騎神争奪戦でルーファスに《黒の工房》の場所は答えさせといたからそんなに遠くない内に助けに来るはず。
なので工房内でいつ来るかなーと待ってたら速攻で来た。金の騎神争奪戦の次の日の夕方に工房内に侵入者がやって来た。私も気配でなんとなくわかる。なので待機してた銅のゲオルグくんことジョルジュくんや紅のロスヴァイセことアンゼリカちゃんとか鉄機隊のみんなとかが迎撃に出ていった。なので今が大チャンス! よし、リィンくんを解放するぞ! おー! ってことでリィンくんの元へ向かう。それもクロウくんやデュバリィちゃんと一緒に。
「それじゃ私も協力するよ!」
「おいおい……あんたまで付いてきちまっていいのか?」
「私としてもリィンくんには逃げてもらった方がいいからねー」
「ですが、貴女は……」
「へーきへーき! 心配しないでも起動者としてやるべきことがある以上はそんなに酷いことされないし。ってことで行こ行こ!」
「…………」
そんな感じの会話をしつつ3人でリィンくんの元に。デュバリィちゃんは私のことを心配してくれるけど本当に大丈夫だから。どうせ最大でもあと2週間だけだし。全然大したことない。
なのでまああんまり納得行ってないけど私的には問題ないのでそのまま進む。そんでリィンくんに合流したんだけど……。
「らっしゃせー! ケバブいかがっすかー!」
「へい嬢ちゃん! たこ焼き食べない?」
「そっちの目の色と髪の色がヤバい人は彼氏さん? 大判焼き食いねぇ!」
「って、何が起こってますの!?」
「《神速》にバンダナ男にアーヤ……!? って、なんであんたたちも知らないのよ!?」
「あのクロネコか? いやそれよりもOzそっくりの傀儡が全員屋台を開いてやがる……何が起こってんだ?」
「あ……そういえばちょっと弄っちゃったの忘れてた」
「やっぱり貴女のせいですの!?」
「お前んなこと出来たのかよ……よく知らねぇが《地精》の人間じゃなきゃ命令は受け付けねぇようになってんじゃねぇのか?」
「いや、なんか暇だったから適当に色んなとこうろついて機械とか適当に弄ってたら偶然命令コード解いちゃったみたいなんだよね。なんでせっかくだからみんなでお祭りでもしようと思ってこっそり全員に屋台を開くように命令しといた」
「なんてことを……いえ、わたくしたちには好都合ですが……」
「アンタら……一体どういうつもりよ」
「意外な状況になっちまったが……なに、今度こそ“利子”を返してやろうと思ってな。──ほらよ。しまっとけ。失くさないようにな」
「……ア…………」
「ラムネ一本50ミラでーす」
「あ、50ミラだって。せっかくだし買う?」
「グウゥ……」
「俺が良い感じに返した50ミラが速攻でラムネに消えた!?」
──って、ことで。なんか《黒の工房》内はお祭り状態になっていたのでミリアムちゃんやアルティナちゃんに似てる人形兵器を倒す必要もなく適当に買い物をして部屋を突破していった。
それといつの間にかセリーヌちゃんが擬人化というか獣耳娘になってたので可愛かったので写真撮っておいた。うーん、ファッションも個性的で良い感じ。こういう特徴的な娘を見ると新しいデザインの着想が浮かんでくるんだよね。
そして5人で工房内を進んでいると、行く手を塞ぐようにアイネスちゃんとエンネアちゃん。それともう1人ヤバい人の気配を感じたので立ち止まる。
「──やれやれ、予想通りか。工房内の惨状はともかく……」
「ふう……当たって欲しくはなかったけど」
「……まあ、気づかれますわよね」
「んぐんぐ……焼き鳥はやっぱネギマに限るよね」
「あの日以来、マスターの為されようにお前が納得していないのは知っていた」
「でも、本当に後悔しない? ここで袂を分かつ事になっても」
「するに決まってるでしょう! 貴女たちのことだって──! ですがマスターに導かれた魂はもうわたくし自身を欺けない……!」
「あ、たこ焼き最後の1個だ。誰が食べる? みんなでじゃんけんでもして決めよっか」
「わたくしも手を貸してしまった世界に滅びをもたらす“黄昏”──それが意味することを己が目で見極めると決めたんです!」
「アンタ……」
「クク……見込んだとおりっつーか」
「じゃんけん負けた……」
そして話の傍らでリィンくんとじゃんけんをして負けた私は最後のたこ焼きをリィンくんに食べさせてあげる。とりあえずデュバリィちゃんは結社というか鉄機隊から一時離反するみたい。まあデュバリィちゃんが決めたならそれでいいと思うし、私的にもそっちのがいいと思う。
「──ハハ、色々と盛り上がってんじゃねぇか」
「か、火焔魔人……」
「マクバーン……」
「……マズったな。アンタは出かけてると思ったが」
「昔ッから鼻はイイんでな。美味しい匂いには敏感なんだよ」
「つまりマクバーンもこのイカ焼きの匂いに誘われて……」
「そっちじゃねぇ。……アーヤは元より《蒼の騎士》──それに良い感じに混ざりきったヤツがいるからな。鬼と化し、終末の剣を振るって《黄昏》を引き起こした張本人……灰色の騎士──いや、《灰色の鬼》リィン・シュバルツァー!」
──と、今度はマクバーンが現れてすごいテンション上がってた。気配には気づいてたけどここで来るとは……うーん、とりあえずイカ焼き食べてから逃げたいところだけど……リィンくんを逃がす目的を考えるとクロウくんとデュバリィちゃんに頑張って貰わないとマズくて──って、うわああああ!!? いきなり火焔魔人化したー!? ちょっ、本気出すの早いって! 正真正銘の本気じゃないとはいえ……!
「ああ。それに加えて、コイツもオマケしてやろう」
「いやー!? それまで出しちゃうの!?」
「《魔剣》アングバール……」
「こっちのアーヤの持ってる馬鹿デカい鋏と同じ……アンタが《盟主》ってのから授かったとかいう剣かよ」
「ああ、《外》の理で造られたこの世に存在しない筈の剣……クロウ、それに今のてめえなら喰らい付けるんじゃねえか……? アーヤもいることだしなァ……!」
「買いかぶりすぎだっつーの……」
「ホントだよ! 無理無理無理!」
「……オオオオ……アアアアアアッ……!」
「リ、リィン……」
「さて──そろそろ始めましょうか」
「昏き地の底にて交える決別の闘いを──!」
「望むところ──!」
「届かせてもらうぜ──マクバーン!」
「結局やるよねそうだよねこうなったらヤケクソだー! うおー!」
……でまあマクバーンとアイネスちゃんとエンネアちゃんと戦う羽目になっちゃった……って、うわああああん!? マクバーンやっぱ強いよー! 熱いよー! リィンくんがメインとはいえ私にもめちゃくちゃ攻撃飛んでくるから怖い怖い! せっかく買った屋台の食べ物が焦げちゃう! なんなら私も焦げる!
──ただこっちの方が数は多いのと鬼化して強化状態のリィンくんや起動者バフなのか以前よりも強くなってるクロウくんがいるおかげでなんか良い感じに押してる!
「シャアアアアアアアッ!!」
「くううっ……!」
「何という……!」
「そうだ、イイじゃねえか! このまま最後まで盛り上がると──」
「おっと、隙あり」
「ッ……!」
なので私もリィンくんの暴力的な力を隠れ蓑に良い感じにダメージ少なく戦えた。あんまりにも鬼化リィンくんが目立つので普段よりも隠れやすい。ミスディレクション的な感じ。なのでマクバーンたちに背後からSクラフトを放つ。クロウくんやデュバリィちゃんにセリーヌちゃんと一緒に。
「“オートクチュール・ル・サン“!!」
「“クロス──リベリオン”!!」
「アーヤ……クロウ……!」
そしてまたしても良い感じ! 相手に隙ができた! 原作でこんなシーンがあった気がする! ここは私に任せて先に行けー! 的な!
「ここは任せなさい、シュバルツァー!」
「アンタの大切な人たちはすぐそこまで来ているわ……!」
「理性も名前も失くしてなお。何を求め、剣を振るうか──己自身と向き合ってせいぜい見極めてみせろや……!」
「リィンくんなら大丈夫! あとでまた一緒にご飯食べようね!」
なので私も精一杯カッコつけてリィンくんを送り出してみたんだけど……。
「ハッ! だったらまずはお前たちに熱くさせてもらうぜ──!!」
「ですよねー」
──当然マクバーンをメインで相手にするのが私になるとかいう困った事態に……ああもう! というかなんで私がメインなの!? マクバーンみたいな結社最強と正面切って戦うとかさ! そういうのは私じゃなくてもっと相応しい人物がやればいいのに! でもリィンくんの前だから引くに引けないよー! うわーん!
そうして私はしばらくマクバーンと本気で戦うことになった……しかもアングバール持ちってのがキツイし熱い。私も《外》の理製のゾルフシャマール持ってるけど文字通り桁違いなので……クロウくんやデュバリィちゃんたちが手伝ってくれるけどそれでもキツかった。結局そっから10分くらいはマクバーンと刃を合わせる羽目になって……そこでようやくなんかリィンくんに復活の兆しがあって先に先行したセリーヌちゃんのおかげでもあるのかクロウくんやデュバリィちゃん。そして私にも繋がりが来た。
まあクロウくんとデュバリィちゃんと一緒で語りかけはしなかったけどね。私なんかが一々何か言わなくてもリィンくんなら復活するだろうし。ってことでそのタイミングで私たちも連絡回廊に逃げるぞー!
「ハハ……何とか取り戻せたかよ……って……」
「フン、手間を掛けさせて──って貴方たちまで何をお祭り気分でいますの!?」
「あ、みんなも色々買ったんだ。いいねー」
「アーヤ教官!」
「やっぱり道中のOzシリーズの意味不明な変化はあなたのせいだったんですね……」
「どうりで……」
「屋台で何か1つずつ買い物しないとここは通さないって言われた時は罠を疑ったわ……」
「同時に《地精》の正気も疑ったが……」
「あはは……アーヤ教官の仕業だったなら納得だね」
「俺たちやリィンのことを助けてくれたんだな」
「ありがとう……3人とも」
「……助太刀してくれたことも励ましてくれたこともちゃんと覚えている。礼も含めてじっくり話したいが今はその余裕はなさそうだな」
──そしてリィンくんは正気を取り戻した! なんか白髮赤目のすっごい厨ニ的にビンビンくるカッコいい状態にはなっちゃったけどそれもまあヨシ! いずれ治るだろうし!
なんか全員面白い手持ちになっちゃったけどそれを話してる余裕もなくてみんながやってきた道からは追手がそれぞれやってきた。
「フフ、自力で己を取り戻せたとは重畳だ。それとこのリンゴ飴という食べ物は手がベタベタになる」
「……失っていた方が幸せだったかもしれないけどね。そして僕もこの惨状を今すぐ忘れたい」
「己を取り戻してもなお解けぬ鬼化の状態か。……それはそれとして様変わりしすぎではないか?」
「他人事ながら心配になってしまうわね。……黒の工房がまさかこんなにも……」
「クク、後戻り出来ないくらい“混ざっちまった”みてえだな?」
「っ……」
「そ、それって……」
「リィン……」
やって来た《紅》のロスヴァイセ。《銅》のゲオルグ。アイネスちゃんにエンネアちゃん。それと通常状態に戻ったマクバーンがリィンくんや他のことにも言及する。マクバーンのスルースキルの高さが光るね。
「ああ──否定はしない」
「あ、マスター。こんなところにいたんですか。お祭りの命令をしたんならマスターも手伝ってくださいよ」
「ごめんごめんマキナ。それじゃ私は焼きそば焼こっかな。みんなもお腹空いてるだろうし」
「14年前、オズボーン宰相は自分の心臓を俺に移植したという」
「なっ……!?」
「祝賀会の夜に宰相から聞いたという話ね……」
「焼きそばって豚バラ肉を一番美味しく食べれる料理だと思うんだよね」
「アーヤ教官。ちょっと黙っていてください」
「え? どうしたのアルティナちゃん。焼きそば嫌いだったっけ?」
「うるさいですね……」
「幸い、死こそ免れたがその時に俺は選ばれたんだろう。アッシュと同じ──いや。《巨イナル黄昏》そのものの“真の贄”とでも言うべき存在に」
「……ぁ……」
「《帝国の呪い》が選ぶという、何らかのトリガーとなる存在……」
「クソが……睨んでいた通りかよ。……それとサイードは焼きそばと一緒に何を俺に渡して……って札束じゃねぇか!? 何をいきなり渡してきてんだ!?」
「……あの時は暗殺未遂犯にしちゃってごめんね? 止めようと思ったけど止められなかったしおまけに被害を大きくしちゃったし。お金で済むものじゃないけどこれはほんの気持ちで……」
「さっきまでフザケたノリだったくせに急にマジで深刻な話題持ち出して来てんじゃねぇよ! 差がデカすぎて反応に困るっつーの!」
そして話の最中に焼きそばを焼きながらもこっそりとアッシュくんにこの間のことを謝っておいた。前に会った時は色々あってその話題を出す暇がなかったからね。お金も渡そうと思ったけど「……あんたは俺を止めようとしたんだろ。ならあれは俺の責任でもある。だからそんなもんは受け取れねぇし謝罪も必要ねぇ。それに……どうせあんたの方も何か理由があんだろうが」って言ってくれた。アッシュくん優しい。因みに皇帝陛下にはこの間クロスベルに行った時にこっそり病院に忍び込んでから謝っておいたけどそれも皇帝陛下から直接教えられたのかな。そのことは指摘してこなかったし、私の事情とかも考える必要ないのに色々考えてるみたいだ。やっぱり新Ⅶ組も良い子たちばっかりだね。お金は渡せなかったし完全に味方とはいかないけどせめて美味しい焼きそばを振る舞ってからこの場を脱出する手伝いをしてあげよう。
「ああ──その通りだ」
「!?」
「戻ってきやがったか……!」
「ギリアス・オズボーン……」
うわっ、戻ってきちゃった! 私はジュージュー音を響かせ焼きそばを焼きながら転移で戻ってきたリアンヌママと怨霊のアルベリヒ。それとオズボーン閣下を見てヘラで焼きそばをかき混ぜる。追加で2人前用意しなきゃ……!
「やれやれ、千客万来──何だこの惨状は!!?」
「……《黒のアルベリヒ》……いいえ──フランツ・ラインフォルト」
「そしてこのお祭り会場の責任者……」
「前者はともかく後者は何を言っている……! アーヤ・サイード! それにゲオルグ! この訳の分からない惨状はどうなっているのかね!? 珍妙な屋台が建ち並び、香ばしい匂いが漂い……! そして何よりもOzシリーズが屋台の店員をやっているのは一体どういう訳だ!?」
「僕に聞かないでくださいよ……おそらくOzシリーズの命令コードが天文学的確率で運悪く書き換えられたんでしょう……おかげで今工房内はどこもかしこもお祭り状態で……」
「くっ……何ということだ……! まさかそんなことが……」
「貴方……一体どういうつもりなの!? 母様やシャロンは本当に……!」
「ええい、黙っていろアリサ嬢……! 遺伝的な繋がりがあるだけでそれは私ではない! それよりも即刻祭りをやめさせろ! 貴様らも何をお面や金魚を手に持っているのだ……!」
「屋台でゲットしたのでね」
「屋台でミラを使わないと僕たちの邪魔までするものですから仕方なく……」
「よーし、そろそろ神輿の準備するぞー!」
「「「「おー!」」」」
「聞きたまえ!!」
──うるさいなぁ。せっかくみんなで盛り上がってるのに……やっぱりアルベリヒは最低なだけじゃなくて空気も読めない。みんなはそれぞれ屋台で購入した色んなものを装備してくれてるし、良い土産が出来たことだろう。とりあえずリアンヌママやオズボーン宰相にも焼きそばを振る舞うとしよう。
「どうぞリアンヌ様。それとオズボーン閣下も」
「ええ。──まあ己を取り戻せたのは一歩前進と言って良いでしょう」
「さすがはマスター……この変わりようを見ても何も仰らないとは」
「アーヤから焼きそばを渡されても全く動じていないわ……」
「我らが果たすべき宿命──忘我の鬼では不足でしたから」
「お面いかがっすかー。鬼の面もありまーす」
「それって……騎神の起動者のってこと?」
「……そうみたいだな」
「ええい、何を冷静に話をしている……! アーヤ・サイード! 貴様、すぐに止めさせろ……! 命令コードを書き換えたのだろう……!?」
「? 命令コード? いや、適当にやったから覚えてないけど……」
「なっ……!?」
「……ッ……」
「面を上げなさい、デュバリィ。貴女自身が選んだ道です。──胸を張るといいでしょう」
「……麗しの我がマスター。お慕い申し上げております。されど先の《黄昏》──世界の滅びには納得できません。その意味を自ら見出すまでしばし暇を頂きたく存じます」
「マスター……私にはたこ焼きを上手く焼くことができません。なのでたこ焼きの屋台は他の人形に任せようと思います」
「認めましょう。──今までご苦労でしたね」
「油の塗りが足りないんじゃないかな?」
「はい──リアンヌ様!」
「おお……カリッとした出来上がりに……! さすがはマスター……!」
「──アルベリヒに聖女殿……それぞれのドラマがあるようだ」
「我が主よ……! この状況で何故殆どの者が冷静でいられるのですか……!?」
「落ち着くがいいアルベリヒよ。この程度で目くじらを立てることもない。慣れている者にとってはいつものことだ。──さあ、我ら父子もまた、改めて久闊を叙するとしようか?」
「ああ──と言いたい所だが。この場に、他の実力者たちも戻って来ている最中なんだろう? ルーファス総督に少佐たち……猟兵王に他の執行者たちも」
「なに……!?」
そうそう、そうなんだよね。リィンくんが霊視で見た通り、もうすぐでレーヴェたちもみんな戻って来るから早めにこの場を切り抜けて脱出しないといけない。
反対にそれを阻止すればいい鉄血側もまた全員が戦闘態勢を取る。それこそリアンヌママはもちろんのこと、オズボーン宰相も終末の剣に似たやばそうな剣(どんなものだったか忘れた)を取り出してリィンくんと戦う姿勢を見せた。
「フフ……それでは“余興”を始めるとしようか」
「蘇りし灰色の騎士にトールズの若獅子たちよ。自らの価値を示してみなさい」
う、うわあ……や、やばそう。リアンヌママは言わずもがな、オズボーン宰相もなぁ……知略部分での活躍が目立つけど実は百式軍刀術の達人で普通に最強クラスなんだよね。こわー……というかやっぱり私も戦うことになるよねそうですよね! くっそー! こうなったら2連続のヤケクソだー! 今更どうこう言ってもしょうがないしリィンくんたちを逃がすために私も戦うぞ! でも私の相手は鉄機隊か、もしくはアルベリヒの変態怨霊野郎辺りで──
「フ……君ともこうして矛を合わせるのは初めてだな。せっかくの得難い機会だ。伝説の暗殺者の手管……
「ひっ!? お、お手柔らかにお願いします!」
──と思ってたらオズボーン宰相が普通に私目掛けて斬りかかってきたんでそれを受け止めてなんとか受け流すけど速いし鋭いし重いって! だからなんで一番強い人が挙って私狙ってくるの!? 私ってそんなにヘイト買ってる!? 私ジョブ的にはタンクじゃなくてシーフ系統なのにそんなに全員から狙われたら死んじゃうんですけど!
そうしてしばらくみんなで頑張って戦ったんだけど……さすがに相手の方が強いので結構押され気味だったし、かなり危なかった。このまま普通に戦っても相手を倒せることは多分ない。
だけど呪いの贄となったリィンくんが感じ取り、魔女のエマちゃんや守護騎士のガイウスくんが道を開いて転移門を開くことで脱出経路と増援を呼び寄せた! うおー! 山猫号にメルカバだー! オーレリア将軍にヴィータ姉さん! おまけにランディ兄とロリコンアガットも来たー! これで形勢逆転だー! よーし、みんな逃げてー! 私は逃げないけどね! 協力はここまでかな!
「アーヤ教官!?」
「アンタ……ここに留まるつもり!?」
「そりゃあ……ね。私はこっちに付かないとだし。そもそも《相克》で争うことになるからそっちに行っても変わらないと思うよ?」
「っ……」
「それはどういう……」
リィンくんやサラちゃんが心配して声を掛けてくれるけど私は問題ない。何食わぬ顔でこっちの陣営に戻ろう。アルベリヒのアホが歯ぎしりしてる気がするけど無視無視。ふふん、ここからは相克だから必要以上に私に手を出すこともできないだろう。そもそも主のオズボーン宰相が特に問題なしって感じだしね。
なのでここからは宿命。後戻りもできないし避けることもできない。起動者同士でバトルロイヤルだ! そして最終的に勝ち残った人が鋼の至宝《巨イナル一》の錬成を成功させることになります! 帝国編はここまで割とややこしい話だったけど最終的には《黒》のイシュメルガが元凶でなおかつ最後は戦って勝てばいいというシンプルな図式になるからわかりやすいね!
「──それでも俺は諍うと決めた。掛け替えのない仲間や教え子たち……Ⅶ組や協力者たちと共に。ミリアムの魂に報いるためにも! 何よりも──俺が、俺自身であるためにも!」
「よかろう──ならば諍ってみせるがいい。それもまた《相克》のための格好の薪となるだろうからな」
父と息子。《灰》の起動者と《黒》の起動者同士ですごいバチバチで熱い啖呵を切り合う。ちなみに私もついでに《緋》の騎神呼び出して良い感じに盛り上げといた。乗る意味あんまりないけどね!
そして最後にオズボーン宰相はオーレリア将軍やミュゼちゃんたちにも《大地の竜》を喰い破る作戦があることを暗に見抜いて指摘し、ミュゼちゃんもその作戦はあると認めた上でその作戦名は《千の陽炎》だって言ってこちらもこちらで宣戦布告をし合っていた。
で、みんなは無事に逃げていったのでミッション成功だ。ここからは終末に向けて物語が加速する。リィンくんたちの戦いはこれからだ! 私の戦いもね! さーて、作戦立てるぞー!
「アーヤ・サイード……! 散々好き勝手してくれたようだが……まさかこのまま何のお咎めなしで終わるとは思っていないだろうね?」
──うわ、アルベリヒだ。よし、逃げよう。ってことで私も私で《相克》のためにちゃんと動くって確約した上で逃げた。幸いにもオズボーン宰相が取りなしてくれたので問題なし。
ただその代わりに《相克》ではしっかりリィンくんたちを倒すように厳命されたけどそれはまあいい。勝つにしろ負けるにしろちゃんとハッピーエンドで終わるようにすればいいだけだしね。理想は勝つことだけど負けてもまあヨシって感じで。
「お久しぶりですわね、アーヤさん。どうやらかなり大暴れしたようですが……それはともかく1つ仕事を頼まれてくださるかしら」
「あ、はーい、よろこんでー。今は暇だし別にいいよー」
──と、そうして事態の収拾がついた次の日。今度はマリアベルが話しかけて仕事を頼んできた。懐かしいね。以前は殺そうとした時もあったけど今はもう使徒第三柱で上司だから遺恨はない。なので仕事もオールOK。内容はある程度は選ぶけどね。
ただまあリィンくんを逃がすためにそれなりに暴れたこともあってバツが悪いし、今度はリィンくんたちとは関係のないところで結社のために働いておこうかなって。
でまあ仕事の内容というか計画の進行だけど……とにかく激動なんだよね。オズボーン宰相の口癖の通りに。
そもそもゼムリア大陸最大の覇権国家であるエレボニア帝国が大陸平定のための戦争を準備してるって時点でどこもかしこもてんやわんやしてるしするに決まってる。もう1つの大国であるカルバード共和国を中心にそれ以外の国や自治州もその備えで動きまくっているのだ。
そして表がそれだけ動いているということは当然裏もめちゃくちゃ動いている。鉄血宰相と結社が協力して《幻焔計画》を進めていることは大抵の勢力には伝わってるし、そっちもそっちで備えられてる。
つまり表と裏の連動だね。ミュゼちゃんが走らせてる《千の陽炎》作戦に繋がる話で、表向きには帝国以外の国、カルバード共和国にリベール王国。レミフェリア公国やアルテリア法国。レマンにオレド、自由都市群の軍勢やゼムリア各地の大小様々な猟兵団も全て投入してエレボニア帝国の軍勢に対抗する。
で、裏ではまた色んな勢力が動くわけだ。それこそ七耀教会の《星杯騎士団》とか隠密僧兵とかそこら辺も当然動くし、遊撃士協会も民間人を守るためという大義名分で動く。こちらに対抗する裏の組織……たとえば《黒月》みたいなマフィアも現時点では帝国とか結社の敵に回ってるしでとにかく敵が多い。
まあそれだけ相手をしても帝国の表と裏の戦力は圧倒的なわけだけどね。結社も計画遂行のために全力で動いてる。帝国では第七柱のリアンヌママと第三柱のマリアベルを中心に動いているとはいえ執行者の数も少ないように見えるのは大陸各地で結社の人員が活動しまくってるからだ。それこそ大陸北部のアルテリア法国方面だと《破戒》のオジサンが執行者率いて星杯騎士団や遊撃士相手に大立ち回りしてるっぽいし、それ以外の場所でも使徒たちが執行者を使ってもうやりたい放題だ。その対抗のために守護騎士とかS級の遊撃士とかが対策に回ってるので帝国に集中できないという事情がある。
なので結社切っての仕事人である私もそりゃ動くよね。忙しい。マリアベルから頼まれたのは邪魔者を取り除いてほしいという任務だ。
まあ正確にはマリアベルからの仕事というか、東側方面で動いている第一柱や第五柱からの「手が空いてる執行者いたらやっといてー」って感じの自由依頼だ。何でもエレボニア帝国との国境地帯やカルバード共和国とかそれ以外の地域で動いている帝国軍情報局の工作員だったり結社の構成員とかが密かにやられたり捕まったりしてるらしい。
まあ一種の諜報戦みたいな? とんでもない大事が始まる時ってのは裏でこういうスパイ合戦というか裏でやり合うこともままあるってことだ。そしてやられたらやり返されるってことでこっちもこっちでスパイを捕らえたりしてる人たちを捕えるなり痛い目に遭わせて撤退させるなり始末するなり、方法は何でもいいからそれを防いでほしいらしい。
そうなるとまあ……結社でも一応隠密行動に長けてる私に動いてほしいって言われるのもしょうがないよね。強さはともかく隠密には確かに結構自信あるし。私向きの仕事ではある。なので請け負うことにした。
──ってわけで《相克》前にちょっと寄り道のサブクエストだ。どうせメインで私が動くのは数日は先だし、問題ない。
それにちょうど共和国に1回寄っておきたかったのもあるんだよね。というのもカルバード共和国では現在──大統領選挙が行われてるから!
なので私も共和国人として選挙に行かないといけないし、なんだったら《愛国同盟》のグラムハート陣営に協力するって約束してるので色々やらないといけないこともある。とりあえずお金は出したし、新しいスーツも仕立ててあげたけど選挙戦で勝利するためには他にも色々と努力が必要らしいので協力する。これも私の表の身分と会社のため! ロイ・グラムハート大統領誕生のために頑張るぞー! おー!
そうして私はまた共和国に一時帰国したわけだけど……なんというか、やっぱりバタバタしてるっぽいね。そりゃそうだ。表向きにも共和国はこれから攻められる上に大統領選挙も迫ってる。表も裏も動きまくってるし、カルバードの遊撃士たちやCIDなんかも忙しそうだ。エレインちゃんにルネっち先輩も大変なんだろうなー。
それとヴァンもちらっと見かけた。なんかリーシャちゃんと一緒に行動しててびっくりしたけど声はかけないでおいた。多分こっちはこっちで帝国に対抗するために協力し合ってるんだろうねって。ジンさんとヴァルターもバチボコ殴り合う予定らしいし共和国も共和国で激動だ。大変なのは帝国内だけじゃないってね。
後は守護騎士も見かけたけどそっちも触らないようにしておこう。仕事を何個も抱えてる状態だし相手する余裕はない。というか仕事を抱えてなくても守護騎士なんか相手にしたくない。私の今回の相手はこっち側の工作員を狙って活動するどこぞの工作員だしね。
そう考えると久し振りに楽な仕事かもしれない。いや、相手も弱くはないんだろうけどさ……最近オーレリア将軍とかマクバーンとかリアンヌママとかオズボーン宰相とか大陸最強クラスの化け物ばかりと戦ってたからさすがの私も感覚が段々麻痺してきたというか……それに比べたら遥かに楽だし、さすがに私の方が強いよね? ってなるから普段よりかなり余裕がある。だとしても油断はしないけどさ。精神的に余裕があるってのは私的には超助かるのだ。
なので共和国に帰った私は選挙を済ませてから早速仕事に取り掛かった。色んな勢力に見つからないようこっそりね。それでこっち側の工作員をマークしてそれを狙おうとする相手を逆に捕まえようと目論む。ふふん、我ながら完璧な作戦だね。なんだったら一度工作員を持ち帰らせてから尾行して本拠地についたところを一網打尽にしてもいい。その方が楽だしね。
私はその旨を今回の任務のパートナーでもある同じ執行者のNo.Ⅻちゃん(私とほぼ同期で同性なので仲良しだと思ってる。少なくとも私は)に伝えてから謎の工作員を捕まえてみることに。ちなみに場所は龍來だ。共和国の東部の玄関口だね。情報によると《千の陽炎》作戦の協力のためか、大陸東部の猟兵団も殆どが集結してきてるらしい。東部の猟兵なー。逞しい地域で生きてるだけあって平均的な練度は高めな印象だけどそれも結局ピンキリなんだよね。それこそ最強クラスじゃなければ最近の激動の帝国で最強クラスと戦いまくってた私の敵じゃない。そう思える辺り、私も強さに結構自信が──
「っ、不覚……」
「我らが背後を突かれるとは……」
…………あれ? この人たちって……。
「集団戦で我らが遅れを取ってしまうとは……」
黒い見覚えのある装束で……刀とか手裏剣とか使ってて……も、もしかしなくても──
「──よもやここで相見えようとは。姫の御友人なだけに……このような形での再会はいささか残念にござる──アーヤ殿」
「あ……ど、どーも。お久しぶりですね、クロガネさん……あはは、私も残念ですー」
──あ、アイエエエエエエ!!? ニンジャ!? ニンジャナンデ!? クロガネさん!? 侍衆《斑鳩》の上忍の!? ってことはやっぱりみんな忍者! 謎のスパイの正体は全員忍者!
「どうやら以前に出会った時より格段に腕を上げている御様子。聞けばユン大叔父様にも互角に立ち回ったとか。そのような強者相手には手を抜くのは失礼でござろう」
「別に手を抜いてくれて全然いいんですけど……私ももう帰るし……というか帰りたいし……」
「そうは行かぬ。こちらも任務のため全力でお相手仕ろう──この受け継ぎし《阿修羅眼》を以て……貴殿に追いつかせてもらおうか!」
──イヤーッ!? え、なにそれ!? すっごいイケメンだけどそこを見てる場合じゃない! 《阿修羅眼》ってなに!? ど、瞳術!? あ……そういえば東の方の出身者で極東には瞳術があるって聞いたことがあるような……ってあれ冗談とか噂とかじゃなくて本当にあったの!? 嘘じゃん! そんな写◯眼とか輪◯眼みたいなの本当にあるの!? ヤバい! 目を合わせたら幻術をかけられる! どんな効果なのか知らないけど! 目を合わせないように足元だけ見て戦うんだ! ──って、出来るかー! もう知らない知らない! 普通に《ゾルフシャマール》で倒す! 倒せる気しないけど! 私も瞳の色黄金だからなんか瞳術発現しないかなー! 絶対無理だけど! 私が出来るのってサイレントキリングだけだし! 食らえ! 忍法霧隠れの術! 霧じゃなくて砂塵だけど! でも上忍クラスの忍相手に私の自己流なんちゃって隠密が通じる筈が──
「っ……まさか我ら《臘月流》以上の暗器術とは……」
「あれ?」
……ん? なんか……もしかして私が押してる? 私のアンブッシュがかなり通じてるというか、向こうも何とか対応してるとはいえこっちの方が隠密は上っぽい……? え……嘘……私って忍者よりも気配消すの上手いんだ……すごー……自分の成長にびっくりだ。確かに気配の消し方とかは自信あったけど上忍より上だとは思わなかった……影クラスってこと? 二代目アヤ影名乗れる? 爆弾持たせた分け身で特攻とか卑劣な術使っちゃったのはごめんだけどそうしないと勝てないと思ったから……実際相性が良いせいか押してるとはいえまだ勝ったわけじゃないし……。
まあでも押してる今がチャンスかも。今なら逃げられそうだし、逃げたら向こうは多分追ってこれないっぽい。まあ忍者とはいえ《観の眼》を極めた探知タイプの忍びじゃなければ逃げられるってことだ。よーし、それじゃさっさと散!
「やあアーヤ。数年ぶりかな? クロガネを退けるなんて腕を上げたね」
「あはは、久し振りだねー……」
「そっちの噂は聞いているよ。西側じゃかなり暴れてるみたいだね?」
「それほどでもないよー……」
「あの時は結社の執行者で伝説の暗殺者だなんて気がつかなかったけど……こっちも素性を隠してたわけだしお互い様かな」
「そうだねー……」
「アーヤが強くなったように私も強くなったよ。
「斬られたくはないなぁ……」
「さて、こっちも仕事でもあるし、久し振りに手合わせ願おうか。──侍衆《斑鳩》副長、《白銀の剣聖》シズナ・レム・ミスルギ──参る!」
「……執行者No.ⅩⅢ《血染の裁縫師》アーヤ・サイード。お手柔らかにお願いしまーす……いやほんと……」
──あっ、シズナちゃんだ。わーい。綺麗になったねー。可愛い。あはは、なんか再会してすぐに斬りかかってきたー。うわーい。同い年の友達との数年ぶりの再会嬉しいなー。──その友達に殺されちゃうかもだけど。
今回はこんなところで。忍者とか暗殺者とかスルースキルのないツッコミキャラ相手にはすごく相性がいいアーヤちゃんです。ちなみに一番相性が悪いのは色んな意味で《観の眼》持ちです。対戦よろしくお願いします。
次回はVSシズナだったり選挙が終わったり第2次・西ゼムリア通称会議に向けて色々あったり。終末が近い激動の時代なので本当に色々ありますがお楽しみに。
感想、評価、良ければよろしくお願いします。