──最初にあの子を見た時はこれほど長い付き合いになるとは夢にも思いませんでした。
わたくしのいた《月光木馬團》では子供の團員もそれなりに入ってくることがありましたが、その多くは気づかぬ内に殉職することが多々でした。
あの子もその例に漏れないのだと思っていました。それほど緊張感のない子供だったから。《破戒》が連れてきたということは存じていましたが、それでも何か特別なものは何も感じなかった。
だけどあの子は生き残り続けました。妙に硬く、傷の治りも早いあの子は訓練の時も仕事の時もなんだかんだで生き残り、徐々に強さを身に付けていきました。
おかげで一緒に仕事を行うことも増え、團が壊滅して結社へと移った後もその付き合いは続きました。
あの子はわたくしと違ってとても明るく賑やかで誰よりも人間らしかった。緊張感がなくお気楽すぎて頭を悩まされることも多々ありましたが……それでもわたくしはあの子を遠ざけることもなく、不思議と嫌な気はしなかった。
わたくしとあの子の関係は幼馴染──と言うには少しばかり特殊な関係性ではありますが……それでも今になって思えば……わたくしにとってあの子は、アーヤは幼い時からの友人であり妹のようなものだったのでしょう。
わたくしがどれだけ冷たくあしらっても。そっけない態度を見せても。結社を離れ、ラインフォルト家のメイドとなった後も。あの子は全く態度を変えずこんなわたくしを友人として想ってくれた。
アリサお嬢様の側から離れた後も気にかけてくれました。自分の方が大変な目に遭っているのにも関わらず。相変わらずあの子はそんな素振りは全く見せることなくいつも通りに明るかった。
だからでしょうか。あの子はいつまでもあのままだとそう思っていました。
──そんなはずがないのに。
あの子にはあの子の闇がある。それを分かっていたのに。
どれだけ丈夫でも傷つかないことはないと知っていたのに。
──だから……あの子の鼓動が止まった時、わたくしの胸を襲ったのは“後悔”でした。
防げなかったことへの後悔だけではない。もっとちゃんと……あの子の側にいてあげればよかった、と。
もっと感謝を伝えるべきだった。まだ名前もなく“号”しかなかった頃のわたしに色を付けてくれた。友人として側にいてくれた。
ラインフォルト家にやってきてようやく気づけたあの子への感謝。わたくしはそれを伝えることができなかった。
そのことを酷く後悔する。わたくしは結局、あの子に何も返せなかった。
あの子のノリに流されたなど言い訳にもならない。わたくしは与えられるばかりだった。
本当に甘えていたのはわたくしの方なのに。本当に助けられたのはわたくしなのに。
何も伝えることができないまま──アーヤはこの世を去ってしまった。
……わたくしはそのことに、自覚できるほどの酷い喪失感を感じています。
勿論、わたくしだけではありません。Ⅶ組の皆様や今まであの子が紡いできた縁のある人の誰もがあの子の死を悲しんでいます。
明日には《大地の竜》が動き出すというのに、誰もが沈んでいます。
それでも前を向こうと気丈にも振る舞っておられますが、哀しみから抜け出せてはいない。特にレン様などは先程までずっと泣いていて……泣き疲れてようやく眠りには付きましたが、そのショックは相当なものであることは想像に難くありません。
他にもリベールのクローディア様やデュバリィ様も同様に立ち直れていません……わたくしと同じく。
「……これでは、いけませんね」
こんな時にアリサお嬢様を始め、皆様をお支えするのがメイドであるわたくしの使命であり責務であるというのに……それを為せず、それどころかアリサお嬢様にも気を使われてしまう有り様。
自分の情けなさが不甲斐なく感じますが……その気遣いを有り難く感じてしまう程にはわたくしも参っています。
明日にはわたくしも皆様のサポートのために動かなくてはなりません。無理にでも心に整理をつけなければ……と、わたくしはミシュラム内にある自分に割り当てられた部屋の中で装備や持ち物の点検を行うことにしました。
そしてその中に補充しなければならないものを頭の中でリストアップし、他の皆様方の必要なものも含めてクロスベル市内に買い出しに向かいます。
大抵のものはベッキー様の商店やティータ様の工房でも揃うのですが、わたくしの扱う鋼糸や一部の特殊な用品については専用の卸先から手に入れなければいけません。
そういう時は交換屋《ナインヴァリ》のような裏にも通じるお店に伺う……そうしてわたくしはやるべきことを無心でこなすことで整理を付けようとしていました。
クロスベル市内は総督府の衛士隊や開戦前ということで帝国軍の兵士なども見受けられましたが、気づかれることはありません。
それに今更わたくしたちを捕らえてどうこうというのはしないでしょうから。
ただそれでも警戒はしながら必要なものを買い揃えていきます。ただ無心に。かつてのわたしのように心を殺して。
「……随分と念入りじゃないか」
「皆様をお支えするメイドとして何か不備はあってはいけませんから」
そうして新たに購入した刃を確認していると店主様から話しかけられます。
わたくしはメイドとしてそうあるべき言葉を返しました。普段通りに。いつも通りに。動揺する姿は見せずに。
「ふぅん……そうかい。だったら気をつけな」
「……? 何が、でしょうか……?」
「自分でも気づいてないのかい? そりゃ重傷だね。だったらサービスとして教えてあげるけど、今のあんた──
「! それ、は……」
店主様からの不意の指摘。思考の外からの思わぬ言葉にわたくしは言葉を詰まらせてしまいます。
ですが……そう。その言葉で気づきました。
「……ま、なんでそうなっちまったかは噂で聞いちゃいるがね。あたしらとしちゃ今回の戦争は都合が良いが……それを止めようってんならそういう顔で挑むのはよした方が良いんじゃないかい?」
「……そう、ですね……」
わたくしは……
あの子が殺されたことで昔の、《死線》という号しか持たなかった頃に戻ってしまっていると。
殺された相手に心を冷たくし、仇討ちを考える。それほどにわたくしは、あの子を大事に思っていたのだと。
もしかしたらそんなわたくしに気づいたからこそアリサお嬢様たちはわたくしにも休むようにと気遣ってくれたのかもしれません。
なのにわたくしは……。
「本当に……これではいけませんね……」
わたくしに指摘してくださった店主様に一言お礼を言って店から立ち去ります。
そうして帰路につこうとしながらもわたしの心は晴れません。それを自覚しながらも、わたくしはわたくしのままではいられない。
……もしかしたらあの子もこんな気持ちだったのでしょうか。
幼少の頃から家族と離れ、悪しき教団に下劣極まる手で汚され、暗殺組織に属してその手を血で染める。
その日々の中でも自分を見失わず、太陽のように輝いていたあの子の強さを改めて思い知ります。
もっとも教団に対してはその手を汚すことも厭わない程には嫌悪しているようですが……それでもわたくしのように心を殺さないままに対象を殺害できる。それがあの子の強さであり……あの子から唯一感じられる弱さでもあるとわたしは思っています。
そしてそれがようやく理解できたのはあの子の死に際の顔を見たから。
ですがもう……その弱さに気づいて何かをしてあげられる機会はありません。
「あ……」
──そうして……気づけばわたくしはあの子の店にまで来てしまっていました。
クロスベルの中央広場から程近いモールの中にあるファッションカフェ。《SAID》の衣服が店内に飾られ、それを見ながらお茶や軽食を楽しめる若者に大人気のお店。
わたくしは少し迷い、逡巡しながらも……入店することにしました。
「いらっしゃいませー。お好きな席にどうぞー!」
メイド服姿のわたくしに視線が集まるのは自然なこと。
ですがそれでもじろじろと見てくる人が少ないのは客層がそういうファッションに造詣が深い方々だからでしょうか。
個人が好きで着ているものに貴賤はない。あの子が愛していた服飾というものが、おしゃれというものが好きな方々がここには集まっているようです。
きっとあの子がデザインしたのでしょう。店員の身に着けている制服も可愛らしくセンスのあるもの。店内には楽しげに接客をする店員が忙しなく働いています。
開戦前で多くの人々が不安に駆られる中でも変わらない営み……まるであの子を体現しているかのようでした。
「ご注文がお決まりになったらお呼びくださーい!」
「フードやドリンクだけでなく気に入ったものがあればお買い求めくださいねー。あ、試着もできますよー!」
「お客様良いですね~! 良いセンスしてますよ! 特にこのレザーのジャケットにリボンを合わせてるとこがおしゃれ! 色の拾い方もバッチリだし!」
「はい、よろこんでー! お買い求めありがとうございまーす!」
忙しなく、それでも明るく、何よりも楽しそうに動き続ける店員に不思議とあの子の姿を幻視してしまいます。褐色の肌に黄金のパッチリとした瞳。銀色の髪にパステルピンクでウルフカットの襟足部分、インナーをその色で染めていて年齢の割には童顔気味で可愛らしい顔をしているその女性。
それでも昔と比べれば背丈も伸びてすっかり成長したあの子の姿を思い出し、わたくしは再び胸の内に悲しみを感じながらも、また別の使命感に駆られました。
あの子が不幸な目に見舞われながらも、それでも愛していたこの世界。この場所を守らなければならないと。
でないとまたあの子はきっと悲しむ。諦めてしまう。平気そうにしながら1人で先走って離れていってしまう。そんなことを許してしまうわけにはいかない。
──だからわたくしは、それでも前を向くべきだと。
「──え? サイン? 私のファン? えーありがとー! もちろんいいよー! なんだったら写真も撮る? サインはそのシャツにしてあげればいいかな?」
「ありがとうございます! お願いします!」
「うわー……! まさかこんなところで
「マジヤバいよね!」
「…………………………は…………?」
──と、思っていたその時。何かとんでもない名前と会話が聞こえたことでわたくしは間の抜けた声を小さく晒してしまいます。
思考を半ば停止させながらも視線を聞こえてきた声の方に向ける。まさかそんなはずがないと思い、おそらく気の所為なのだと理解しながらも──
「そんなに喜んでくれるならもっとファンと交流しとけばよかったかな。あ、でも写真をどっかに流したり私と会ったことはあんまり触れ回ったりしないでね! そういうのはNGだから!」
──は? いえ…………は?
わたくしは止まっていた思考を動かし、目の前で起きている事象をようやく理解します。ありえないことですが、間違いない──今、わたくしの目の前でファンと思われる若い女性と楽しそうにお喋りを行い、サインを書き、写真を撮り、お店の店員として制服を身に付けながら働いているその女性は明らかにあの子──アーヤ・サイードだと。
ゆえにわたくしは「は?」と声に出してしまいます。「え?」ではなく「は?」だったのはもしかしたら色んな感情が詰まっていたその発露かもしれません。
「え? 明日もまた来る? いやー、その気持ちは嬉しいけど明日はまた別の大事な仕事があってね。今日は暇だったから1日だけ店員として働いてみてるだけなんだよ。──まあでもお店は開いてるからまた来てね! いえーい! はいチーズ!」
「………………………………」
……そうしてわたくしはお気楽にファンと写真を撮って盛り上がっているその子を見て……真っ先になぜか沸々と怒りが湧き上がってきました。
その次に不思議。不可解といった気持ちで、その次に驚愕。その次に喜びでしょうか。
つまるところ喜ぶよりも先にやるべきことがあるとわたくしは気づけば動いていました。自分でも自覚できるくらいの笑顔で席を立ち上がり、堂々とあの子の背後まで近寄ります。そうして心を殺しながらゆっくりと……。
「──ちょっといいですか?」
「あ、はーい、よろこんでー。──って、え!? く、クルーガーちゃん!? どうしたの!? なんでこの店に……みんなミシュラムにいるんじゃ……?」
「どうしたのはこちらの台詞ですね。貴方は一体、な に を し て い る ん で す か……!!」
「いたたたたたた!!? クルーガーちゃん痛い! そんなとこ極められたら死んじゃうよ! 痛い痛い痛い!!」
──声を掛け、正面を向いてフザケた反応を返してくるアーヤの首を前に倒し、腕で思い切り締めることにしました。後から調べたところによるとこれは所謂フロントチョーク。スタンド状態でのベーシックギロチンという関節技だそうです。自然とやれてしまいました。この子の首を思いっきり絞めたかったので。
そうして生じたであろう痛みに気の抜けるような声を上げているところを見て、わたくしはようやくそれが現実であると理解します。本物の、本物のアーヤだと。わたくしは……。
「……生きていたんですね」
「今死にそうだったんだけど……」
「それは甘んじて受け止めるべきです。なんでしたらやり足りないくらいですが……」
「そ、それは遠慮しようかなー。あはは……」
普通に、本当に普通に普段通りに反応を返してくれるアーヤを見て実感が湧いてきました。アーヤにお店のスタッフルームまで案内され、わたくしはそこでようやく本心を口にします。
「……なんで生きていたかは聞きません」
「いやーそれが私にもよく分かんないんだよね。奇跡的に生きてたとしか……」
「そんなとこでしょうね。相変わらずなんで生き残ったかは全く理解不能ですし、理解できるとも思っていませんが……それでもわたくしはもう、とっくの昔に慣れきっています。ですから理由なんて何でも構いません」
「え? ──わっ」
わたくしはもう一度アーヤに正面から腕を回します。今度も力いっぱいに。ですが痛めつける意図はなく、私の本心から。
「本当に……生きていて良かった……!」
「!」
彼女を抱きしめ、その頬を濡らしながら言葉を口にします。
アーヤの熱と鼓動。その呼吸や血の巡りを感じてそれを手放さないように強く抱いて。アーヤの存在がここに在るのだと確かめました。
「……えーっと……あー……。──もー! クルーガーちゃんってばそんなに私が恋しかったのー? 私が死んだと思ってそんなに寂しかったのかなー?」
「……ええ。とても。悪いですか?」
「うっ……いや、悪くはないけど……なんかクルーガーちゃんにそう言われると調子が狂うというか……」
「……そうですね。わたしも、少し調子が狂っているかもしれません」
「あー……そうみたいだね……」
いつもとは違うやり取りを互いの耳元で行う。
気づけば背丈もわたくしと変わらない。目線がほぼ同じなのを見て、アーヤが改めて成長したことを改めて思い知ります。
「あっ、でも別に隠れたくて隠れてたわけじゃないからね! 私も助かったのに気づいてすぐに戻ろうと思ってたんだけど、その時に良いことを思いついてさ! みんな私のこと死んだと思ってるなら《黒》にも不意打ちできると思って! こっそりみんなに付いていこうと思ってたんだよ! だから理由があるっていうかそのぉ……ま、まだ私のことはみんなに黙っててほしいかなー……なんて……」
……ですが、
正直なところ彼女のそのやり方に思うところはあります。理解は出来ますが、今回のケースならはっきり言って生存を知らしてしまった方が皆様も力を発揮できるものかと。
ただアーヤの方はそうは思ってない。自分の価値を低く見積もっているがゆえのやり方。以前のわたくしと似たようなその思考。それを正したくもありますが……。
「……仕方ないですね」
「ほんと!? ありがとうクルーガーちゃん!」
「ええ、構いませんよ。貴方の我儘を聞くのには慣れていますしね」
私は結局、それを許してしまいました。
昔からアーヤの我儘や無茶な頼みを聞くのはわたしの役目でした。それに振り回されたおかげでわたしはただのクルーガーからシャロン・クルーガーという1人の人間になる道筋をつけることができた。
だから今回はその借りを返しましょう。この子にもこの子なりの理がある。皆様の心の気配りはわたくしや他の方とも一緒にやればいいだけのことですし。
「ただ覚悟はしておいた方がいいかと。おそらく全てが終わった後に先程以上に酷く痛めつけられるでしょうから」
「ええっ!? なんで!? そこは生きてて良かったーって感動のハグをするところじゃないの!?」
「どうでしょうね。どうなるかはその時になってから確かめてみては?」
「う……なんか怖くなってきた……」
「ふふ……」
そうして不安そうになるアーヤを見てわたくしは笑みを零してしまいます。
アーヤにはそう言いましたが、どうなるかは分かりきっていることでしょう。最初は怒られるかもしれませんが──それでも最後には誰もがアーヤが生きていたことを喜ぶ。それ以外の可能性は考えられません。
──そしてそんな未来を勝ち取るためにも負けられない。わたくしはその想いを強くすると、アーヤと一度別れ、皆様の下へと戻ることにしました。
──いらっしゃいませー! ファッションカフェ《シャルモン》の臨時店員アーヤ・サイードでーす! 実際はオーナーなんだけどね! 1日暇が出来たからちょっと潜伏も兼ねて働いてみた! 一度カフェの店員やってみたかったからね! これで夢が1つ叶った!
いやまあでもまさかクルーガーちゃんと出会うとは思わなかったけどね。びっくりしたー……急に店にやって来てフロントチョーク極めてくるなんてさすがはクルーガーちゃんだよ。その後はちょっと調子が狂っちゃったけど……まあ結果オーライかな。意図せずクルーガーちゃんに会えて伝言も頼めたし、その上で生存は隠せてる。これなら不意打ちも成功しそうだ。──ちゃんと大地の聖獣についても教えておいたしこれでトゥルーエンド待ったなし! リアンヌ様の暗殺も次こそは防げばいいしね!
「強いて言うなら最後にみんなでミシュラムでどんちゃん騒ぎしたかったけど……背に腹は代えられないよねー」
『……今からでも戻ったらどうだ?』
「いやそれはさすがにバレちゃいそうだし……良くないかなーって」
『ふむ、そうか……』
なので私はこっそり隠れながら服を仕立てつつテスタ=ロッサと会話を行う──ああ、そうそう。テスタ=ロッサも実は生きてるんだよね。まあ完全にではないけど。湿地帯で目覚めたあの後すぐに気づいた。
『──アーヤよ』
『うわっ!? びっくりしたぁ!? って、テスタ=ロッサ!? 生きてるの!? もういなくなっちゃったかと!』
『うむ……もっとも相克に敗北したことで《緋の騎神》としての力はほぼ全て《金》に、数少ない残った力も《灰》に持っていかれてしまったが。それでも貴殿の力と繋がった影響か、全てを奪われるのは免れたようだ』
『え、じゃあまだ騎神として乗り込めたりするの?』
『正確には騎神ではなく機体に残った《紅き終焉の魔王》としての力ではあるがな。少なくともあと一度だけであれば可能であろう。その後まで残れるかどうかは……女神のみぞ知るといったところか』
『そっかー。でもそれならまだ一緒に戦えるね!』
『……うむ。私も《黒》との決着は望むところ。最後まで共に往くとしよう──我が起動者よ』
「うん、よろしくね! テスタ=ロッサ!」
──とまあこんな感じでね。なんか《緋の騎神》の力はきっちり奪われたけどそれと紐づいていた筈の《紅蓮の魔王》の方の力はなんか私の方に紐づいてたみたいっぽくてテスタ=ロッサの思考フレームというか意識もそっちに移ったっぽくて何とか助かった。さすがに騎神の方の力は9割以上、ほぼ奪われた分、前よりは力は落ちてるっぽいけどそれでも何とかなるかな。割合としてほぼ魔王の力だけど辛うじて騎神ってことで頑張ってイシュメルガを倒すぞ! おー!
……ただそれにはやっぱりリィンくんたちに頑張って貰わないといけないんだよなー。ってことでここからは全力で隠れながらリィンくんたちの背後に付いて回って実況でもしよう。そうしないと私たちも幻想機動要塞トゥ……なんだっけ。トゥアハ・タ・イケーンだっけ? 名前忘れたけど帝都上空に現れた巨大な《地精》の本拠地。異空間に隠されていたラストダンジョンに行けないからね。一緒に行って忍び込ませてもらおう。
そういうことで私は潜伏もとい尾行を開始した。達人も多いからね、気をつけないと。オジサンから貰った霊的な気配も薄める薬や認識を誤認させる装備とかも付けてね。
──ってなわけでみんながちゃんとやってるかどうか尾行を始めたんだけど……うん、やっぱり問題なさそうかな。
というか……なんか普通に楽しそう! みんな思ったよりショック受けてないというか、ちゃんとミシュラムでの最後の夜を楽しんでるね! 私が死んだくらいで立ち止まる人は、特にⅦ組にはいないだろうし。みんなちゃんと受け入れて明日に備えてるんだろう。
ただそれでもレンとかクローゼちゃんとかデュバリィちゃんみたいな特に仲の良い人たちは少し心配ではあったけどそっちも周りの人に励まされたのか一応は普通そうにしてる……かな? 遠目だからわかりにくいけど……ううん、こんな時にマキナがいればステルスで音でも拾ってきてもらうのに何故かあれから呼んでも姿を現さないんだよね。ちょっと心配だけどまあそれはそれ。そのうちひょっこり戻って来るだろうし、あるいは黒の工房に戻っちゃったなら後で取り戻そう。ASシリーズの子達も回収してあげたいしね。
というわけで音は自分で拾うしかないのでもうちょっと距離を狭めて会話も聞いておこう。ええっと何々……あ、デュバリィちゃんとレンは明日も一緒に行くっぽいね。まあ相克にリアンヌママがいるからデュバリィちゃんはそりゃあそう。レンの方はでも何でだろう……てっきりリベール組と塩の杭モドキの攻略に行くと思ってたんだけどそうはしないみたい。ふーん……でも平気そうで良かったかな。ちょっと決意のある眼というかなんか意志を秘めた感じがする。多分。レーヴェとも会話して励まされてる。「ヨシュアたちの方は俺に任せろ」とか何とか言ってて頼もしいね。ようやく味方となってエステルちゃんやヨシュアくんと一緒に戦うレーヴェが見れて私も嬉しいよ。
そしてこの8月31日の夜はミシュラムで作戦前夜の壮行会が行われる。結構色んな人が来てて私としては気が気じゃない。カシウス・ブライトとかヴィクターさんとかレーヴェとかこの辺りの達人には気をつけないと……隠密に徹すれば見つからない自信はあるとはいえ油断したらちょっと危なそうだし。敵を騙すには味方から。ここで私がいないと見せかけることに意味があるのだ。なので接触は厳禁。クルーガーちゃんは偶然だったから良いとしても。
なので私はひたすら観察だ。とりあえずリィンくんを見よう。重要なイベントがあるからね。そう──リィンくんは誰を選ぶのか! 最後の絆イベントの時間だ!
やっぱりあの子かなー。あの子だと思うなーと私はニヨニヨしながらリィンくんの背中を見つめる。学院祭でも誘ってたあの子か、もしくは分校生のあの子かのどっちかだと思うけど他も可能性としてはあり得る。リィンくんは色んな女の子と仲良くなってからね。さーて、誰を選ぶのかなと眺めていると──
「アーヤ教官……」
え!? 何!? 嘘! まさかの私!? いやいやいや! 私はいないってことになってるんだから私は選べないよ! そんな急に意味深に私の名前を呼んだって無駄無駄! ……それとも何か隠しイベント的な? 私との絆イベントを最後まで進めてると私との追加イベントが見れる的な……そんな隠し要素があるのかもしれない。ゲームじゃないんだけどね。そんなメタ的な都合を汲み取るつもりも私にはないし。夜の砂浜でそんな意味深に黄昏れても何もないぞ!
……と思ったけどリィンくんが普通に寂しそうに見えたのでちょっとだけサービスしてあげよう。姿を現すわけにも生きてることを知らせるわけにもいかないけど……まあこのくらいならいいかなっと。
「……! アーヤ教官?」
私は浜辺にこっそりとアイテムを投げ込むとリィンくんがその音を足音と勘違いしたのか振り返ってそれを見た。
「これは……いや、もしかしなくても、アーヤ教官の……」
そう、それは私が身に付けていたおしゃれなネクタイだ。黒に太い方の大剣に行くに連れて少し赤みがかるそれは……まあおしゃれアイテムでありアクセサリーでもある。私の衣服とか身につけるものは全部何かしらの効果を付与してるからね。これを身に着ければ多少は身体能力が上がって最終ダンジョン攻略の役に立つだろう。私には予備があるしね。ついでに拾った黒ゼムリア鉱をひとつまみっと……よしよし、これで私のイベントは終了ね。
「どこからか流れてきたのか……それにしては全く汚れもないが……」
おっと、やべやべ。気配に敏感なリィンくんに気づかれない内にもう少し距離を取ろう。なにせもう《剣聖》だからね。いやーカシウス・ブライトとの立ち会い。免許皆伝イベントはすごかったなぁ……リィンくんもう私より強いんじゃない? ほんと成長したね。なのでこれはそのご褒美も兼ねた報酬ってことで。
「……ありがとうございます。アーヤ教官」
そして自分なりに納得したのか、私があげたネクタイをその手に握りしめ、虚空に向けてリィンくんはお礼を言う。……いやまあ偶然にもそこに私はいるわけだけど……それでも気づかれてはいない。
ただ少し前向きな表情になったのでやった甲斐はあったかな。
その後はなんか大人組が飲み比べをしてたのでそれを私も酒を飲みながら観戦したり(私も全く酔わないから出てたら優勝してたかもしれない)、リィンくんがどういう訳か誰も選ばずに夜を終えたりしたのでそれを不思議に思いつつもリィンくんらしいと納得したり、私も近くで休んで……気づけば朝になった。
ということで──七耀暦1206年。9月1日。運命の日だ。
今日の正午にはエレボニア帝国とカルバード共和国を始めとする戦端が開かれ、ヨルムンガンド戦役が勃発。それに伴って黄昏も極まり、鋼の至宝《巨イナル一》の錬成準備も整うことになる。
そんな中でリィンくんたちは朝からハーメル村の異変を解決したり、私がクルーガーちゃんに伝えておいた大地の聖獣アルグレスの場所に向かって力を授かったりちゃんとトゥルーエンドの準備を済ませてくれていた。エステルちゃんやロイドくん、他の協力者たちもそれぞれ塩の杭攻略のために準備を済ませている。よしよし、これなら大丈夫そうかな。
「翼の閃き作戦発動──各艦、《塩の杭》を制圧せよ!」
『イエス・キャプテン!!』
そしてオリヴァルト皇子の号令で作戦が遂に始まる! うおおおおお!! 激アツだ! 私もリィンくんたちと一緒のタイミングで転移! エマちゃんたちに任せると私も付いてきてることがバレるから私は私で結社特有の転移術を使わないとね!
そして辿り着いた幻想機動要塞トゥアハ・デ・ダナーン。アハ体験じゃなかった……まあそれはそれとしてこのタイミングでみんなは士気を上げる。それぞれが決意を口にして。
「アーヤ教官はいませんが……それでもその魂は俺たちと一緒に在る」
おっと、Ⅶ組が全員揃ってないことに対してリィンくんが言及したけど危ない危ない。思わず「勝手に殺すなー!」って出ていきそうになった。そうなったらNGシーン過ぎるからさすがに自重しないと。緊張感は保たないとね。
「今この瞬間──あたしたち《Ⅶ組》に乗り越えられない壁なんて無いことを!」
『及ばずながら我らも力を貸そう』
『《銀》と《金》を制し、《黒》の暴走を止めるためにもな』
「ついでにアタシもね!」
「マスターとの対決だけでなく……最後まで力を貸して──いいえ、一緒に戦って差し上げますわ!」
「ええ……レンも場違いかもしれないけれど、協力させてもらうわ」
「ハッ、場違いってんならこっちの方が上だろうな。だが乗りかかった船だ。お前さんたちに雇われた猟兵として最期まで戦らせてもらうぜ?」
おお! そういえばそうだった! Ⅶ組だけじゃなくてデュバリィちゃんやレン。それとルトガーさんもいるんだったね。意外! 特にルトガーさんはヤバいけど生き残って眷属となった以上、《紫》の騎神ゼクトールと一緒に戦ってもらう必要がある。なのですごいパーティにはなったけどそれだけ頼もしいしクリア率も上がりそうだ。
「──そんじゃあ、攻略を始めるとしよう。このクソッタレなお伽噺のケリをⅦ組の手で付けてやるためにな!」
『おおおおおっ!』
そして最後にクロウくんが締めた! よっしゃー! いけいけー! 一気に攻略しろー! 私もこっそり協力するぞー! バレないのが最優先だから殆ど何も出来ないけど! でもオズボーン宰相とイシュメルガ相手には頑張るからそこまでみんな頑張って!
と、私はテンションを上げながらも歯がゆくみんなの攻略を見守ることにしたんだけど……これがまあすごいのなんの。道中の魔獣は難なく倒すし、最初に辿り着いたクレアちゃんとレクター相手もその特異な能力に全く怯むことなく予知にも等しい予測や勘を絆の力で乗り越えた! 連携超上手い! Ⅶ組以外の面々もいるけど実力的に全然合わせられてるしさすがだね!
なので安心しながら付いていき、キリの良いところで中ボス戦が連続だ。その次はなんと……もうリアンヌ様だ! アイネスちゃんとエンネアちゃんもいる! ヤバい! 第四相克の始まりだ!
ただそれに今更臆するみんなじゃない。リィンくんやラウラちゃん、そしてデュバリィちゃんを中心に息のあった連携でリアンヌ様とアイネスちゃん、エンネアちゃんと互角に渡り合う。すっごー……私と戦ってる時も思ったけどみんな本当に強くなったね。特にリィンくんは《剣聖》になったし、デュバリィちゃんもそれに負けじとリアンヌ様に剣を届かせる。相克の準備が整ったとリアンヌ様が《銀の騎神》アルグレオンに乗り込むとリィンくんとクロウくん、そしてルトガーさんはそれぞれの騎神に乗り込んで相克が始まった。
それがまた激戦すぎて……正直舞台が壊れるんじゃないかとか色々心配だったけど私の方はそんな余裕もなく警戒心マックスで暗殺を警戒した。いつどこでルーファスが奇襲を仕掛けてくるかわからないからね。それを防ぐためにそれだけに集中してスタンバっておいた。
そしてその結果──
「……そうですね、ドライケルス。貴方にもう一度会うためにも──もう一度だけ意地を見せるのも悪くはありません」
「マスター……!」
「リアンヌさん……」
「ハッ……まさか俺に続いて伝説の聖女まで眷属にしちまうなんてな。つくづくどう転ぶかわからねぇもんだ」
「ええ……最終相克を終えるまでの僅かな間にはなりますが……貴方たちⅦ組の力となりましょう」
「はい……!」
──あっれー? なんか普通に終わっちゃったー。ルーファスどこ? なんで暗殺に来ないの? めちゃくちゃ警戒してたのに……そのせいか戦いの内容とか最後の説得フェイズとか全然頭に入ってこなかった。まさかのリアンヌ様普通にパーティ入りしちゃったよ……。
……まあでもこれはこれでオールオッケー! やったー! リアンヌ様救えたぞー! 別に私何もしてないけど! それはそれでヨシ! 更に頼もしい味方がⅦ組に付いてクリア率も上がったぞ!
そして新たな味方を加えたⅦ組は次の中ボスに向かっていく。途中の休憩ポイントの会話とかも聞きたいけどリアンヌ様がいることで更に気づかれそうで怖いのでこっちは更に慎重にね。
で、肝心の次の相手は……ふむふむ。カンパネルラにマリアベル。それにシャーリィちゃんにセドリックくんと……これはまた中々な面子だね。原作だと別れてた気がするけどセドリックくんが起動者じゃないからまとめられたのかな? 結構な戦力だ。
でもまあⅦ組プラスαなら普通にクリアいけるでしょ! と思って気楽に見てたけど──
「──ミリアムさんのことだけじゃない。ルーファス総督に協力してあの人を……殿下のことも気にかけていたアーヤ教官の不意を突いたこと。あの人の死に様を見て……あなたは本当に何も思わなかったんですか?」
「っ……そんな、こと……」
──って、あれ? なんかセドリックくんが責められてる……あーでもそっか。私のことで怒ってくれてるのね。私的には正直セドリックくんはカイエン公とか呪いとかに歪められた可哀想な子って感じだし不意打ちかましてきたのもどうせルーファスの策略というか利用されただけだろうしで恨みとかないんだけどみんなからしたらそりゃそうなるか。ミリアムちゃんが剣になるきっかけの1人でもあるしね。
でもそう考えるとみんな大人だなぁ。もしかしたらルーファスに対しても結構優しくなるかもしれない。
なんてことを考えてる内にセドリックくんはクルトくんたちの説得フェイズで枷から解放され、自分の弱さを認めた。父や兄のことや色んな人に酷い言動をしたことだったり、私のことについても言及してて。
「羨ましかったんだ……! オズボーン宰相の力に憧れて……! 僕も同じようになりたいって……! そして騎神という力を僕から奪ったあの人が……どうしようもなく妬ましかったんだ……!」
あーね。おっけおっけ。なるほどなるほど。まあ思春期の男の子ならそういうこともあるよね。大体そんなところだろうと思ってたし、別に私は気にならないかな。
まあやったことがやったことだから客観的に見てアレかもしれないけどね。私は許すしリィンくんたちも多分この感じだと許すだろうからいいんじゃない? しかもシャーリィちゃんまでセドリックくんの頭を私がやった時みたいに叩いて発破をかけてた。
「ほら、しっかりしなよ坊っちゃん」
「痛っ……しゃ、シャーリィ、さんまで……どうして……貴女も、僕のことを恨んでるんじゃ……」
「……ま、確かにシャーリィは心情的にはそっち寄りだけど……アーヤ姉から頼まれちゃってるんだよね──坊っちゃんのことを気にかけといてくれってさあ」
「え……」
「ほら、枷に囚われてた時のことをよく思い出してみなよ。アーヤ姉、いつも坊っちゃんがやりすぎないように注意してたじゃん」
「っ……! あ……」
「だからそれを思い返すとちょっとね。シャーリィ的にはこのモヤモヤを解消するために狩る選択も考えたけどさ。それはアーヤ姉の気遣いを無駄にしちゃうし、ちょっとめんどいけど味方してあげるよ──だからほら、さっさと自分の思いを認めて立ち上がった方がいいんじゃない?」
「…………そう、ですね……」
おー……なんかいい感じだ。正直どう転ぶかわかんなかったし、どう転んでもまあ仕方ないかなって思ってたけどいい感じに着地したね。シャーリィちゃんも成長してる。というか仲良かったけど本当に結構慕ってくれてたんだ……シャーリィちゃんのことだから別に私のことなんてどうでもいいのかと思ってたよ。ふーん……。
──まあでもそれはそれ。セドリックくんが立ち上がり、それをカンパネルラやマリアベルが感心してみせる。そしてそれも含めて態度が気に障ったのかユウナちゃんが今度は2人に文句を言い始めて、そっから珍しくカンパネルラがちょっと怒って戦闘が始まった。これもまた中々の激戦だね! シャーリィちゃんは相変わらず鬼強いし、マリアベルとカンパネルラはとにかく厄介。セドリックくんもこの幻想機動要塞の補助を受けて身体能力とかが爆上がりしてるんで普通に厄介だ。
ただそれも今のリィンくんたちに乗り越えられないものじゃない。倒した後は改めてクルトくんがセドリックくんと向かい合い、シャーリィちゃんと並んで倒れる。そしてカンパネルラとマリアベルの方はサポートに徹してたせいかまだ余裕はあったけど普通に撤退していった。なんか結社のルールがありえないとか踏み込んだことをユウナちゃんを中心に色んな人が言及してたし、結社に属してるレンも「レンが抜けた時でさえ追手も何もないくらいだし」とかデュバリィちゃんも「執行者以外は違いますが……それでも特殊な掟が布かれているのは確かですわね」って言ってたし、リアンヌ様も意味深に無言だった。さすがに味方してるとはいえ結社の内情を晒しはしないらしい。使徒であることには変わりないもんね。
「──
「うふふ、導力器を発明したC・エプスタインやその在り方からして特殊なアーヤさんのような人ならいざ知らず──“枷”に囚われた普通の人間にすぐに理解するのは難しいでしょう」
……ん? なんか話の中で私の名前まで出たんだけど……しかもカンパネルラとマリアベルの結構重要な情報の中で急に。しかも全然意味わからん……結社が至宝がどんな結末を迎えるかに興味津々な組織なのは知ってたけどなんでエプスタインと並べて私の名前出しちゃうの? そんな偉人と比べられるほどじゃないんですけど……在り方からして特殊って何? ちょっと転生しちゃったくらいしか心当たりない……でもそれくらいならマクバーンとかの方がヤバいと思うんだけど……“枷”とか言われても分からぬ……(知らないから)言えぬ……。
それともまさか転生してることバレてるとか? ……いやいや、そんなまさか……そんなの知りようがない……はずだと思いたい……でも盟主様にはバレててもおかしくないからなぁ……いやまあ知られても特異な目で見られるだけでそこまで問題じゃないというか気にしないけどね。少なくとも私の方は気にしない。
とまあそんな今考察しても答えのでない話は置いといて、次は遂にルーファスとアルベリヒだ! よくも色々とやってくれたなこのやろー! まあルーファスは結果、リアンヌ様もグリアノスも殺さなかったからまだいいけどアルベリヒは許さないぞ! なんだったら今不意打ち仕掛けて戦闘不能にしたいくらいだけどこの奇襲はイシュメルガ相手に取っておいてるから勘弁してやる! ということでリィンくんたちがんばれー!
「兄上──いや《鉄血の騎士》、ルーファス・アルバレア。もはや兄弟としての愛想も尽きた。互いを賭けた勝負に割り込み、あさましくも“力”を掠め取るとは……!」
「ええ……よくもやってくれたわね。アーヤを殺したこと……レンは絶対に許さないわ」
「猟兵や裏稼業の間じゃ油断する方が悪いとはいえだ。さすがにどうかと思うぜ?」
「父様──いえ、《黒のアルベリヒ》。あなたもそう。アーヤ教官に酷い実験をしてたこと……見させてもらったわ……!」
「ええ……それも許すことはできませんわ……!」
お、おお……ユーシスくんが怒ってる! レンも静かに怒ってる! 《殲滅天使》復活! そしてルトガーさんは怒ってないけど言及してる!
というかなんだったら全員結構……感情出てる? アルベリヒに対してもアリサちゃんが怒ってるしデュバリィちゃんもキレてる!
「……私もアーヤについては思うところがあります。相克の性質上、そして先生の倣いとして仕方のないことではありますが、個人的に仕返しさせてもらいましょう」
うおー! リアンヌママもちょっとやる気出してくれてる! これは結構熱いかもしれない! ちょっと複雑だし心苦しさもあるけど自分が死んだ後の世界(実際は死んでないけど)を見るのちょっと楽しいかもしれない! いやさすがに不謹慎だし良くないけど! でも熱いことは確かだ! それに普通に嬉しいしね! これは是が非でも後でお詫びとして参戦しつつ安心させてあげなきゃ!
「フフ、あくまで効率を重視させてもらったまでだが……私個人としてもかなり計算が狂わされたこともあってね。父を超える意味や意趣返しも兼ねて彼女お得意の暗殺で仕留めさせてもらった」
「それについては意外な結果ではあったが……アーヤ・サイードの力で強化された《緋》の力は本来格上であるはずの《金》や《銀》すらも超えて偉大なる《黒》に迫るほど高かった。私としても勝ち上がるのは《緋》だと思ってたのだがね」
うるせー黙れー! やっぱちょっとルーファスムカつく! いいから第五相克が始めるぞ!
ただ簡単にはいかないだろう。かなりシリアスな戦いになるはずだ。リアンヌ様やルトガーさんとか助っ人もいるとはいえ、強化された2人相手にはみんなも気合いを入れて──
「“ジャスティスパンチ”!」
「“ノーブルナックル”!」
「うぶ……!?」
──って、マキアスくんとユーシスくんが拳でルーファスの顔面殴ったー!? 2人が息を揃えて拳で殴るレベル! やっぱかなり怒ってるかもしれない! 確かに昔授業で銃捨てて殴るのも良いとか何かあった時のための殴り方とか2人に教えたけど! 本当にやるとは思ってなくてびっくりした! ルーファスも計算外というか意表を突かれてクリーンヒットだ!
「“シャドウスピア”!」
「“グリムリッパー”!」
「ぐ……!?」
そして今度はエマちゃんがARCUSじゃ使えなくなった筈の時属性アーツ使ってるー!? 即死効果付きのやつだー!? いやどうやって使ってるの!? 本当の意味でロストアーツなんだけど!
そんでそんでレンもなんか……そのクラフトなんか未来のじゃなかったっけ? うろ覚えだけど多分そんな気がする! 成長しちゃった! 即死効果付きクラフト! 多分黎の軌跡で使うやつ! これにはルーファスにアルベリヒも焦る。わかるわかる。即死怖いもんね。私も即死防ぐためのアクセサリーちゃんと身に付けて対策してるしわかるよ。
「“ギルガメスブレイカー”!」
「“グランドクロス”!」
…………うん。ということで生身での戦いは見ての通り、Ⅶ組側がめちゃくちゃボコボコにしました。そりゃあそう。Ⅶ組だけでもいつも以上にやる気があって強いのにそこにこれだけ協力者が集まってたらそりゃ勝てないよね。ルトガーさんとリアンヌママのSクラフト痛そー……。
「この一戦に勝てば、私は五騎の力と共にミリアム君の《剣》を貰い受けよう……。──そして人の生を捨てて“不死者”の身となるつもりだ」
そして散々ボコられてアルベリヒがどっかに行った後、第五相克の準備が整い全員が騎神に乗り込む。ルーファスもすごいこと言ってるけど……いや、勝てんでしょ。4対1は幾ら魔煌騎兵がいるからって無理ゲーだと思う。私の《緋》の力を取り込んでてもね。
「ユーシス、Ⅶ組の諸君。……私の敗因は何だったと思う?」
「──人に、絆に頼らなかったからでしょう」
そう──結局絆の力には敵わないってことだ! うんうん、私も通った道だ。私も負けちゃったからね。ぐうの音もでない。私も今後はちょっとは頼らせてもらおう。裏の仕事はⅦ組にはあんまり頼れないけどなんかレンも戻って来たがってるし、帰ったら久し振りにイクスやヨルダ。それにエースくんにも頼ってみようかな。あくまで向こうがやりたいなら、だけど。
「《相克》も終わりか……フフ、しかし傑作だな……結局、私は贋物……本物の息子達には敵わないか……」
おっと、ようやくルーファスも悟ったらしい。諦めの言葉を残してユーシスくんに殴られる。レンにもビンタされる。リィンくんにクロウくんにサラちゃんにフィーちゃんにクルトくんにアッシュくんに……みんな殴りすぎじゃない? ちょ、ちょっと……さすがに……。
…………ま、でもいっか! 別に殺すわけじゃないしこれくらいはね! なんだったら私も一発仕返ししておこう。おらー! 顔面に落書きだー! 肉とかアホとかヒゲとか書きまくって無様な姿にしてやったぜ! ふー、これでスッキリしたかな。よし、リィンくんたちの後を追いかけよっと。
私は再びリィンくんたちの尾行を行って……そしてまた広間に辿り着いた。次の相手はマクバーンだ。
「マクバーン……アンタやアーヤはこの世界の“外側”から来た人間……いや、人間ですらねぇのか?」
「クハハ、アーヤの奴はまた違うが……俺の方は半分正解だ!!」
……んん? また私の話してる。私も《外》からやって来た人間って……いやまあ確かに当たらずとも遠からずというか当たってるんだけどマクバーンとは違うというか……なんとも答えにくいなぁ……ってかマクバーンがそう言うってことはやっぱり結社側の一部の人には気づかれてるのかもしんない。
「引き出してもらおうじゃねえか──喪った記憶と、この世に顕れた理由を!」
そして《外》に関する話、ゼムリア大陸の外があるという発想に至れない話や、外洋を進んでも進めない現象とか、想定外の奇蹟である《塩の杭》とかマクバーンの話が色々とわかったところでとうとうマクバーンが真の姿、《外》の魔神メア=ク=バルウド=ルアウングに戻った上での正真正銘本気の戦いだー……! ひえー……こわー……戦う羽目にならなくて良かったー。運が良かった。もし私がいたらまた私ばっかり狙ってきてすごいことになってたかもしれないし。幾ら私でもこの姿のマクバーンの焔を何度も食らって耐えられる気がしない。
なのでまあ今回もリィンくんたちは全力で。そしてリアンヌママやルトガーさんにレンにデュバリィちゃんもみんな超全力で魔神になったマクバーンを相手取り、かなりの激戦だ! うおー! 熱い! 2つの意味で! 見てるこっちにまで熱気が伝わってくる! それを何とか防いで攻撃を加えていくリィンくんたち! まさに英雄の戦いだ!
だがその激戦もやがて終わりが来る。すごい熱くて目が離せなかったけど遂にマクバーンに痛手をある程度与えたのか、戦いの途中でマクバーンは何かを思い出したようだった。「俺のいた世界は……もう……」って暗にマクバーンがいた世界は既に消えていることを匂わせる台詞を口にして人間の姿に戻る。その上でみんなに謝っていた。「悪ぃ。迷惑かけちまったみてぇだな」って。やっぱ戦闘狂部分がなければマクバーンって普通に弁えてる側の人なんだよね。その戦闘狂部分と力の強さが厄介だからヤバいんだけどさ。戦いが終わった後も一度だけ使える神なる焔をリィンくんとヴァリマールに与えてたし、すごい親切だ。
その上で最後にクロウくんとリアンヌ様に別れを言って転移で立ち去った。相克が終われば消えるからね。
ただトゥルーエンドなら問題ない! 至宝の力で生き返らせればいい! なのでその別れは無駄に終わらせてもらうよ! 次は遂に遂に……ドライケルスの転生体にして《黒》の起動者、《鉄血宰相》ギリアス・オズボーンと真の元凶《黒》のイシュメルガとの決戦だ!
「ふふ……来たか」
キター! ギリアス・オズボーン! 背後にイシュメルガ! そして隠れて私! あんまり近づかないようにしておこう! 近づいたらバレそうだからね! 不意打ちは転移でやる。それまでは覗き見で熱いやり取りを観察しよう!
「まずはよくぞ参ったと言っておこう。我が騎士たちと、使徒に最強を制し、《銀》と《金》の力を手に入れた。並大抵の試練ではなかった筈だ」
「ああ……皆、恐ろしい程に強かった。さすがは貴方の騎士たちに貴方を出し抜こうとする連中だ」
「ふふ、この要塞を闘気で充たすのに少々やり過ぎだったことは認めよう。だが、これで全ての条件が整い、“終わり”を始めることが出来る」
うーん、やっぱり風格あるなぁ。強そう。いや実際めちゃくちゃ強いんだけどね。この状態ならマクバーンよりも強いかもね。《黒》の力に幻想機動要塞のブーストも受けてるわけだし。
「Ⅶ組の面々に協力者たちも改めてようこそ」
「ドライケルス……」
「よう、《鉄血》の旦那。面と向かって話すのは初めてだな」
「フフ……リアンヌよ。どうやら良き縁に恵まれたようだな。よもやこうしてⅦ組と共に私の前に対峙することになるとは思わなんだ」
「ええ……私には勿体ないほどの縁を。もっともそれは貴方とて同じでしょうが」
「違いない。──そして《猟兵王》ルトガー・クラウゼル。そちらはアルベリヒを介してでのやり取りしかなかったが……どちらにせよ猟兵の中の猟兵とまで呼ばれた貴殿であれば戦場での対面は望むところであろう」
「ま、そうだな。こっちはあくまで娘とその仲間に付き合ってやってるだけなんでな。猟兵らしく全力で力添えさせてもらうぜ」
「ああ。是非ともそうするといい。そしてデュバリィ君にレン君……アーヤの友人である君たちは来ると思っていた。さすがにクローディア皇太女までは来れなかったようだが」
「マスターやアーヤの為にわたくしもわたくし自身の意思でここに来ました。なので覚悟することですわね……!」
「ええ……ここに来られなかった人の分も背負ってきたわ。特にレーヴェは貴方や後ろの《黒》に言いたいこともあったみたいだけど」
「元執行者にして《剣帝》レオンハルト……そちらのアッシュ君やカシウス・ブライトの息子、ヨシュア・ブライトと同じハーメルの遺児か。確かに、謝ることすら烏滸がましいとはいえ……一度くらいは言葉を交わしてみたかったものだな」
「ハッ……別に謝る必要もねえよ。アンタが全て悪いって訳じゃねえことはもうわかってる。それにたとえそうだったとしても、もう捨て身で殴りかかるような真似はしねぇ」
「フ……そうか」
おっ、また良い感じに会話してる! やっぱりみんなすごい! 成長してる! 特にレンとかアッシュくんとかすごい成長を感じるよ! リアンヌ様とオズボーンことドライケルスの会話も良いし、ルトガーさんとオズボーンのやり取りも渋くて良き!
「さて──それでは最後の準備を始めるとしようか」
──と、気になるやり取りを耳にし、リィンくんとの父と息子の感慨深い会話が終わるとオズボーン宰相は《黒》の武装でもある終末の剣を取り出す。この世で最も強い物理兵器であり概念兵器でもあるらしい。なんかすごそう。いや、実際ヤバいと思う。
「──まずはそなたらの礎を築いたドライケルス・アルノールとして命ずる。全身全霊で諍うがいい──トールズの《Ⅶ組》とその協力者よ!」
「
うおおおおお!! 遂にラスボス戦だー! まずは生身のギリアス・オズボーン! トールズ士官学院を創立したドライケルスでもある百式軍刀術の達人! 多分もう帝国最強の武人との真剣勝負! 熱い! でもさすがにここは乗り越えてくれるはず! 私の出番はこの後の騎神戦になる──
「どうした!? お前達の力はそんなものか!?」
「っ……いえ、まだです!」
…………うん? なんか思ったより苦戦してる? いや、苦戦するのは当たり前なんだけどさ……結構キツそうに見える……。
……あ、いや、違うかもね、これ。単純に私が心配性になってるだけかもしんない。ここまで見てきてるだけあって、さすがの私もちょっと思い入れもあるし、協力してあげたい気持ちがある。じっとしてはいられないというか……みんなが必死に戦ってる姿を見てると私も教官として協力してあげたいよね。
だからまあ……ちょっと悩んだ。悩んだけど……
「駄目でしょみんな。ちゃんと授業で教えたでしょ? 強敵を相手にする時は弱いところを狙えってさ」
「!?」
「……え……」
「……! この声は……」
「そんな筈は……」
「いやでも、聞き間違える筈が……」
「それにあの姿も……」
「おいおい……マジかよ……」
「幽霊……じゃねえよな?」
「まさか、本当に……」
「さすがにこれは読みきれませんでしたね……」
そうして皆が驚く中、私はオズボーン宰相にお世話になったお礼も兼ねて全力の不意打ちを行った。その攻撃はギリギリで受け止められてしまったとはいえ、終末の剣を僅かに傷つけることにも成功する。
「──まさかとは思ったが……生きていたか。アーヤ特務大尉……いや、アーヤ・サイードよ」
「──アーヤ教官!!」
「はいはい。やっほー、アーヤちゃんだよー。みんな元気してた?」
私はいつも通り気楽に合流する。オズボーン宰相が微笑を浮かべ、みんなは私の名前を呼んでくれた。
「あ、貴女……本当にアーヤですの……!?」
「あはは……本物だよ、デュバリィちゃん」
「アーヤ……ぐすっ……本当に……」
「レンもただいまー。遅れちゃってごめんね?」
「ハッ……さすがにやりやがる。ここまで読めねえ嬢ちゃんだとはな」
「アーヤ……生きていたのですね」
「ルトガーさんにリアンヌ様もお疲れ様です!」
「でもどうやって……確かにアーヤはあの時──」
「ええ……胸を刺されて鼓動も止まった筈……それなのに何故アーヤ教官は……」
「まあ私もよく分かんないけど奇跡的に助かったみたいでね。傷も治ったから助けに来た感じかな。絶好の機会でみんなを助けるために不意打ちしようと思ってね」
「いや、それは言ってくださいよ!」
「全くだ……! 俺たちがどれほど……!」
「因みにクルーガーちゃんだけは偶然出くわしちゃって知ってたんだけど口止めしてたんだよね」
「そうなの!? だからシャロンは立ち直って……ああもう! それならそうってシャロンもこっそり教えてくれれば良かったのに!」
「人騒がせな教官ですね……」
「全く……変わらないな」
「ほんとにそう。こっちの気持ちも考えてほしい」
「色々と言いたいことはあるが……」
「そういうのは後でたっぷりやるとして……」
「ああ……だが生きてくれて良かった」
「だけどこれで初めて……!」
「うん! ようやくⅦ組が全員揃ったね!」
「ああ、これで怖いものは何もない……!」
「はい! 全員で戦えるなら……!」
「相手が誰であろうと勝機は見いだせる筈です……!」
「アーヤ教官! 手伝ってください! 一緒にこの戦いを乗り越えましょう!」
「ん、オッケー! 全力で一緒に戦わせてもらうよ!」
デュバリィちゃんやレン。ルトガーさんやリアンヌ様。そして新旧Ⅶ組の誰もが私が生きていたことを歓迎してくれる。ちょっと文句混じりというか、恨み節も聞こえてきたけど……それでも歓迎してくれたのは良かったね。別に歓迎してくれなくても良かったかもだけど、喜ばれるならそっちの方がいい。みんなに哀しい思いをさせたくはないし、ここは全力でみんなを勝たせるために一緒に戦おう!
「ってことで覚悟ー! 今までお世話になりましたー!」
「フフ、これで全員揃ったか……ならば私も全力で臨ませてもらおう!」
そうしてオズボーン宰相に切りかかる私。そしてオズボーン宰相は全力で闘気を纏わせながら雄叫びを上げて…………ん? あれ? これってもしかしなくてもSクラフトじゃ……。
「“黒啼”!! “獅子王斬”!!!」
「いっっっっ!!?」
──ぎゃー!!? やっぱりSクラフトだったー! 超痛いー! オズボーン宰相強すぎるよー! うわあああん!! あ……でもエリオットくんやミュゼちゃんがすぐに回復してくれた……優しい……これでこそパーティ戦だね! ARCUSⅡの戦術リンクが効いてる! 何も言わなくても回復してくれるのがいいね! こっちも求められる役割が前面で敵の攻撃を受け止めるとか翻弄するとかそんな感じなのが伝わってきてヤバいけどもうこうなったらやるしかない!
「ついに……ついにこの刻が来たか……」
「……2つの至宝の力が融合し、無限増幅する《巨イナル一》……」
「それを御するため七つに分けられた“力のカケラ”が1つに戻る瞬間……」
──ってあれー!? もう準備整っちゃった!? 思ったよりも早い……無我夢中で戦ってたらすぐに終わっちゃった……これもⅦ組の絆の力ってこと? 頼もしすぎない? でも考えてみればそっかぁ……1人でやるよりそりゃみんなでやる方が苦労もしないし早く終わるよね。あんまりみんなで戦わないから気づかなかった。
そしてここからは騎神戦だ。起動者たちがそれぞれ手を掲げて自らの相棒となる騎神を呼び搭乗する。
「いでよ──アルグレオン!」
「来な──ゼクトール!」
「来な──オルディーネ!」
「出番だよ──テスタ=ロッサ!」
「え……?」
「……………………」
「? どうしたのみんな?」
「どうしたの……じゃねぇよ!」
「? もしかしてみんなお腹空いた? 魔槍セージならあるけど食べる?」
「食べるわけないでしょう!?」
「またそのイかれてる槍出してんじゃねぇっての!」
「それにしてもこれだけ騎神が揃うと壮観だね! またバンドでもする?」
「聞きなさいよ!?」
「──アーヤ。何故、テスタ=ロッサがここにあるのですか?」
「あ、はい。なんか魔王の力にテスタ=ロッサの意識が紐づいちゃったみたいで全部は奪われなかったみたいなんで……騎神の力はほんの一部で殆ど《紅き終焉の魔王》の力で動かしてると言いますか……」
「聖女には頭が上がらぬのだな……」
「当然ですわね」
「それはそうとアーヤ教官のテスタ=ロッサもあるなら……!」
うわっ、びっくりした……急にリアンヌ様から普通に質問してきたから驚いちゃったよ。でも正直私にあんまり分かってないからね。分かってるのは前より弱くなったってことと、今後も使えるかどうかは分からないってこと。
──つまりは最終決戦であることには変わりないってことだ。ユウナちゃんたちの機甲兵もサポートメンバーとして召喚されたし、このまま全員で戦って……。
「──お待ち下さい、我が主よぐぼぁぁぁ!?」
「アルベリヒが出てきた瞬間ぶっ飛ばされたー!?」
「どの面下げて私の前に出てきてんだこらー! アリサちゃんやⅦ組に免じて殺すのは勘弁してあげるから余計なこと言わないで黙ってて!」
「ぐ……さ、最終錬成は、明日以降に行う、べき……」
「まだ気を失ってないみたいですね……」
「まだ息があったか! おらおらおらー!」
「ちょっとー!? 殺す気はないんじゃないの!?」
「あはは、大丈夫だってアリサちゃん。本当に全然殺す気はないからさ」
──魔怒殺暴刺死呪恨怒憎罪塵絶殺剣デスガイアー
「武器の殺意が高すぎるんだが!?」
「──いえ、ああ見えてアーヤは手加減をしています。気絶させるのみで留めるつもりでしょう」
「なるほど、やはり聖女の見極めは凄まじいな……!」
「ラウラさんはそっちのノリで行くつもりなのか……?」
そうそう、私は別にこれっぽっちも殺す気はない。というか今更殺しても意味ないというか、この最終相克さえ乗り越えればどっちみち消えていなくなるんだから別に構わない。それでも殴ったのはユーシスくんが最後にルーファスを殴った時と同じ。最後のケジメってだけだ。
「クク……言わずとも良い。闘気であれば既に十分に世界に満ち溢れている──剣を切り結ぶ前から勝負が始まっているようにな」
「リース系は店内にニンニクの臭いが満ち溢れていて──食べる前からその圧倒的物量との勝負が始まっているように……」
「──アーヤ。今はふざけすぎないように」
「ごめんなさい……」
「聖女の窘めがすげぇ……」
「そもそもリース系って?」
「共和国で最近流行っているラーメン屋の1つだったかしら。《ラーメンリース》と言ってアーヤの会社の1つが出店していた筈。因みに名前の由来は多分、共通の知人である大食いの従騎士の名前から取っているわね」
「さすがにレンは教官の身内なだけあって詳しいわね……」
「ああ、今は全く必要のない知識だが……」
「……それはそうと……ああ──その通りだ!」
ぼそっと例えを呟いたらリアンヌ様に怒られた……と、それはそうとリィンくんにユウナちゃんたちもヴァリマールと機甲兵にそれぞれ乗り込み、それ以外の面々も準起動者として備えた。
「お前たちの力と意思、可能性の全てをぶつけるがいい。それが叶わなければ、私──ギリアス・オズボーンが全てを滅ぼす!」
「ええ、終わりにしましょう。ドライケルス……!」
「最期の戦いだ……派手にやらせてもらうぜ……!」
「望むところだ──!!」
「心技体、魂の全てを合わせてでも!!」
「私のこの手が真っ赤に燃える! 勝利を掴めと轟き叫ぶ!」
──そして遂に最終相克が始まった! うおおおおお!! 騎神ファイトおおおお!! レディイイイ!! ゴオオォォォォ!!! 決戦だけに熱い! ルーファスと《金》以外の騎神と起動者が勢揃いのスーパーロボットバトルだ!! おかげで変な台詞口走っちゃったけどそれっぽかったせいかスルーされたのでヨシ!
というわけで全員で袋叩きにしてやる! でもめっちゃ強い! 硬い! 速い! 痛い! 数の上で圧倒的に勝ってるのにキツイのはやっぱり《金》と《緋》以外を眷属化して完全に取り込まなかったせいだろうか。私の《緋》にしても魔王の力とかは残ったままだし!
ただそれでも何とか倒す! そのために手は打っておいたからね!
「む……これは……!?」
「ふふん! 今頃気付いた? 予め黒の騎神に特別製の毒を仕込んでおいたんだよ!」
「……! フフ……なるほど。やはり私が見込んだ通り、君は手強いな……!」
「ということでみんな攻めちゃって! 私が支援に回るから!」
「ええ! ありがとうございます!」
よしよし! 隠れてる時にこっそり黒の騎神に仕込んでおいた毒を発動させてイシュメルガを弱体化させることに成功! 後はヴァリマールを中心にみんなで攻めて終わりだ!
「こ、これが……」
「《最終相克》……!」
「くっ……ここまでか……!」
戦いが激しくなるに連れて力も高まっていく。高まった霊力が可視化され、周囲の大気を震わすほどの力の奔流だ。
それだけについていけなくなる騎神も出てくる。まずはクロウくんとオルディーネが隙を作ったのを最後に距離を取り。
「これが最期か……! この機を逃すんじゃねぇぞ……!」
「征きなさい、リィン……!」
ルトガーさんとゼクトールが、リアンヌ様とアルグレオンが。それぞれ左右から全力で挟撃したのを最後に一度膝を突き。
「頑張れ、リィンくん! これが最後だよ!」
私とテスタ=ロッサもイシュメルガの背後から一閃して最後に大きく損傷させた。
だけど向こうの振り向き様の一撃は大破はさせずとも力を大きく損なってしまう。少なくともすぐには動けない。
「ああっ!」
「教官……!?」
「リィン──!」
だから最後だ。リィンくんとヴァリマールは。オズボーンさんとイシュメルガは。それぞれ最終相克によって出来た白い力の渦へと自ら飛び立って巻き込まれていく。
そうして消えていった2人と2騎を私たちはそれぞれの騎神で、皆を転移させつつ追いかけた。その場所は幻想機動要塞の外。最初に降り立った大地の上だ。
……そして今頃、リィンくんとオズボーンさんは最後の語らいと一騎打ちを行っている頃だろう。
私や皆はそれを見届けられないけど……ま、大丈夫かな。ちょっと心配ではあるけど成長したリィンくんならね。
「あ──」
「ああっ!」
「やったああああっ!」
──と、ほらね。すぐに戻ってきた。リィンくんとヴァリマールが、動かなくなった黒の騎神を抱えて。
皆もこれには大喜び。遂に元凶を倒せたと沸く。私も嬉しいけど……。
「──勝負は《灰》の勝利。これで全ての決着が……」
「……やっぱりそうなっちまったか……」
「え……?」
「それって……」
「よし……何とかなりそうだな。ヴァリマール、行けそうか?」
『うむ、全ての力が集まった。──今なら大気圏外も余裕だろう』
「!!?」
──そう。ここからが重要なんだよね。
「大気、圏外……」
「……ま、さか……」
「……抑えられないんだね?」
「……呪いの本体。《黒きイシュメルガ》の悪意を……」
「これが父やドライケルス帝を蝕んできた存在の正体……《黒》の思考システムが悪意に目覚め、独自の精神生命体へと進化したもの……自らが神にならんとして呪いを振りまいてきた絶対悪の結晶……だが《黒》の本体と分離され、この次元に顕現した今こそ──葬り去れる唯一にして絶好の機会だ」
うん、まあ、そう。確かそうだったよね。要はイシュメルガすら取り込んだことで悪意に侵されつつあるわけだ。そしてそれを抑えられないため、このまま放置するとそれはそれで同じ結果。リィンくんとヴァリマールが鋼の至宝《巨イナル一》になって世界を破壊してしまう……と思う。とりあえずろくなことにはならない。
なのでリィンくんの考えた解決策は、大気圏外に飛び立ってしまうこと。そこで自らと一緒にイシュメルガを消滅させることだ。
つまりは自己犠牲エンド。これが閃の軌跡Ⅳのノーマルエンドだね。
「そんなの駄目だよ!!」
「何か方法はあるはずだ!!」
「てめええ!! ふざけんじゃねえぞコラアア!!」
それに対してみんなはどうにか引き留めようとする。私としてもちょっと具合は悪い。できれば……そう、できればトゥルーエンドがいいからね。ノーマルエンドになってしまったらどうしていいか分からない。そうなったらなったで割り切るだけとはいえ、私としてはトゥルーを迎えたいのは確かで──
「ああ──諦めるのは早い」
「と、父様……!?」
──き……キタアアアアア!!! 確定演出だー!!! フランツ・ラインフォルト復活! アルベリヒじゃなくてアリサちゃんのお父さんのフランツ・ラインフォルト! イシュメルガの干渉が弱まったおかげで出てこれたんだね! 良かったー……もしここでアルベリヒが出てこようものならどうにか延命させてオジサン特製の薬を使って戻れオラァ! ってしなきゃならないところだった!
「リィン君──! ギリアスさんは最後まで諦めなかった! “元凶”と共に《巨イナル一》のみをこの次元に顕現させる方法を……! 《聖獣》たちの加護を得た君ならばきっと!」
「……まさか……あれはこの時のための……」
『うむ──試す価値はあるだろう』
そしてフランツさんの言葉でイシュメルガをリィンくんの魂から引き剥がし、檻に閉じ込めることになる。そのために全員がその想いと意思を届けることになった。
それはこの場にいる新旧Ⅶ組だけでなく協力者たちも。
「ハッ、どうせなら最高の終わりって奴を見せてくれよ……!」
「ドライケルスが遺した想いをどうか遂げてください……!」
「悪しき意思を打ち破れるのも己と、繋いできた者たちの意思のみだ……!」
「とにかく頑張れー! 正真正銘最後の試練だよ!」
本来この場にはいないルトガーさんやリアンヌ様、遠くエステルちゃんたちと一緒にいるであろうレーヴェや、今ここにいる私も応援する。
そしてここまで来れば安心だろう。リィンくんは無事にイシュメルガを魂から引き剥がすことが──
「ぐっ……これ、は……」
「リィン教官!?」
「……!?
……………………あれ?
なんか……別の確変入った? なんかリィンくんが苦しそうにしてるんだけど……力が強まったって何? こんな展開私知らないんですけど……。
(アーヤ……!)
(な、何テスタ=ロッサ! アレやばくない!? と、とにかくリィンくん頑張れー! 後もうちょっと──)
(アーヤよ……! おそらくあれは
(え)
……………………わ、私が原因なの?
あ、あー……なるほどね。完全に理解した。なんかよく分かんないけど相克で全ての騎神の力が集まったってことで《緋の騎神》に異物混入した私の謎の力がイシュメルガも強めてると……つまりはそういうことだ。なーんだ、わかってみれば簡単──
(まずうううううううううい!!)
私は内心1人で絶叫する。ヤバいヤバいヤバい。何とかしないと! どうにかする方法ないの!? 教えてテスタ=ロッサ! ──え? リィンくんの心の中で加勢してやるのが可能性があるって? な、なんかよくわかんないけどわかった! とにかくやってみる! うおおおおお!!! なんとかなれーっ!!
──最初にその存在を知覚した時から利用できると思っていた。
本来であればその力は我にとって無意味なもの。だが、
故に我はそれも奪うことにした。それもよこせ。全て我の物だと。
──そして今ここにその目的は叶った。
相克を経て全ての騎神の力を得る。《灰》とこの起動者を乗っ取り、我は完全なる神となる。
あの者のせいで散々予定が狂ってしまったが、最終的には問題はない。完璧な、我の勝利だ……!
「っ……ここが最後の踏ん張りどころだってのに……!」
「これほどの力を付けているとは……!」
「どの道、力を結集して成し遂げるしかあるまい──そこにいる忌まわしくも哀れな“黒き焔”との決別を!」
──故にその足掻きは全て無駄だ。
灰の起動者の心、魂の内側で起動者であった者達が我に諍おうと抵抗を続けているが、それも時間稼ぎとしかならない。全て奪ってやろう。
「無駄ダ、どらいけるす……! 我ハ絶対ニシテ至高ナル神トナルモノ……! 貴様ラ如キガドウニカ出来ルモノデハナイ……!」
「っ……どうすれば……」
「リィン! 心を強く持て! 一度奪われれば終わりだ!」
「ええ……っ!」
灰の起動者の心の抵抗が思ったよりも強く、時間はかかるが……やはりそれも悪足掻きだ。
「貴様ラノ脆弱ナ意思ナド我ノ力ノ前ニハ塵同然ダ……! 今スグニデモ吹キ飛バシテソレヲ証明シテヤロウ……!」
「くっ……ここまできて……!」
我とあの者の2つの力の前に諍える人間など存在しない。
それが出来るとすればそれは──
「──え? なんて? 掃除の時間?」
「…………ハ…………?」
──我の思考はその時、止まる。我が力を強めようとした瞬間、それに反応したように
「うわ暗っ!? ここどこ!? 変な空間に飛ばされた!」
「あ、アーヤ教官!?」
「あ! リィンくん! それにオズボーン閣下にリアンヌ様、ルトガーさんも! もしかしてここが心の中ってこと? 入り方がわかんなくてずっと祈ってたけど入れて良かったー!」
「加勢に来たってことか……」
「アーヤは不死者ではない筈ですが……」
「フ……だがこれでようやく勝機が見えてきたか」
「何ヲ馬鹿ナ……如何ニ力ヲ持ツトハイエ人如キガ増エタトコロデ──」
「えいっ」
「ギャアアアア──!!?」
「あ、なんか普通に切れた」
──その時、凄まじい、存在を切り裂かれるほどの痛みが我を襲う。
何が起こったのか感じてみれば、このアーヤが《外》の武器で切り裂いたことで支配が弱まってしまった。
「……なるほど。どうやら攻撃が普通に通じるようになったようですね」
「どういう絡繰かは知らねえが……何にせよ俺たちにとって都合が良いのか確かだな」
「ああ──アーヤよ。我々も手伝おう。どうすればいい?」
「え……じゃあみんなでお掃除でもします? なんかここ黒くて汚れてて気持ち悪いですし」
「馬鹿ナ……何ガ掃除ダ……ソンナコトデ神ニ等シイ我ガ──」
「……何故か掃除機が出てきましたね」
「こっちは殺虫剤だな」
「洗剤にスポンジに重曹……フ、成程。しつこい汚れを落とすのに十分な物が揃っているようだ」
「何故ダ!?」
──気づけば我が支配する空間に人間の使う掃除道具も含めて色んな物が出現していた。我は叫ぶ。このようなことはありえないと。
「それじゃみんなでお掃除開始ー!」
「何ヲ、ヤメ──ギャアアアアア!!?」
そして我に向かって様々な物を用いて掃除を始める起動者共。リアンヌが掃除機を使って我を吸い込み、ルトガーが目に殺虫剤をかけ、オズボーンは重曹と洗剤を口の中に流し込んできた。
「よーし、綺麗にしちゃいましょうねー」
「ガガガガ……! ヤメ、ヤメロ……!! キサ──ガアアアア!!」
そしてアーヤは舌をタワシで擦ったり、歯をドリルで削ったりしてきた。凄まじい不快感と激痛が我を襲う。
「今だ、リィン──!」
「ああ──!」
「ッ!? シマッ──」
「彼は我、我は彼……なれど汝は我らに非ず……」
「ヤメロ小僧ッ……! サモナクバ、グオオオオオ!!?」
「はいはい。うるさい口は綺麗綺麗にしちゃおうねー」
抵抗出来ぬ……! くそ、こんな下らぬことで……!
「八葉一刀流、七の型《無》──“夢想神氣合一”!!」
「オオオオオオオオオオオッ……!!」
──そして我は……排出されてしまった……! おのれ……絶対に、許さぬぞ……!
──私がリィンくんをどうにかしないとと右往左往し始めて少し。
「リィン……よかった!」
「いや──ここからだ!!」
……なんか普通に何とかなった? あれー? どういうこと? 全然よく分からなかった。なんで上手くいった?
……ま、いっか。とりあえず上手くいったなら理由は何でも。ふぅー……疲れた疲れた。さすがに働きまくったからね。ほぼ一睡もせずにここまで気を張ってたからちょっとダルい。リィンくんの言う通り、ここからがまたちょっと大変だけど私は休んでてもいいかな? アタックメンバーじゃなくてサポートメンバーとして協力するくらいでさ。
──
「こ、これが……!」
「起動者と分離されて実体化した《イシュメルガ》の思念体……!」
「ああ、そして聖獣の“檻”に封じられる事で巨大な力と融合した……──余りにも僅かな可能性だが、この次元で滅ぼせる唯一の形態として!」
「……!!」
「そういう事か……!」
──そうして現れたのは全長何百アージュはあろうっていう超巨大な怪物。《巨イナル一》イシュメルガ=ローゲだ。
フランツさんが説明したようにこれがこの次元でのイシュメルガの本体。つまりこれを倒せればイシュメルガを消滅させることができる。
そう、できるんだけど……幾ら何でもデカすぎない? 強そう過ぎるんですけど……なんか尾がでっかい蛇みたいなのいっぱい出てるし、ボディは若干騎神っぽい巨人だし、右肩と左肩からなんか変な竜と巨人みたいなの生えてるし……さすがに戦いたくなさすぎる。とはいえノリ的に逃げるのは出来なそうだからオーダーとかアーツでサポートくらいで勘弁してほしい。ほら、私もう疲れてるしね?
「オノレエエエエエエエエエエエッ!!! 人ゴトキガ赦サヌゾオオオオオオオオオオオ!!!」
「ぐうっ……!」
「なんという霊圧……!」
「これでも不十分な再錬成のため数十分の一くらいの力だろう……! だが、放置すれば文字通り、世界を滅ぼすくらいに成長する筈だ!」
うっわー……めっちゃ吠えてるし怒ってる。こっわー……あんなのに攻撃されたら幾ら私でもタダじゃすまない。やっぱり後衛にしてほしい。フランツさんの説明的にも怖いし。
「冗談じゃないわ……!」
「させません……!」
「ああ、だが幾ら何でもあまりに巨きすぎる……!」
「ヴァリマールたちは……」
『出力、急激に低下……』
『済まぬ……再錬成に持って行かれたようだ……』
『こちらも同じだ……』
『不甲斐ない……』
『力は貸せないようです……』
「クッ、そうなるかよ……!」
しかも騎神は全員動けないんだって。オルディーネもヴァリマールもテスタ=ロッサもゼクトールもアルグレオンも全部動けないとかキツい。テスタ=ロッサが動けば私も前に出てガンガン戦うことも考えたんだけどなぁ……。
「何とか俺たちだけでケリを付けるしかない──!」
『そなたらだけではない!!』
──ま、でも大丈夫だろう。リィンくんたちやこの場にいる人たちだけじゃない──仲間が沢山いるからね。
「この声は……分校長!?」
「まさか……!」
『精霊の道を繋いだわ。これより、そちらに転移する!』
『《匣》で足場を用意するので存分にやってください!』
『
オーレリア分校長。そしてヴィータ姉さんに星杯騎士団の副長のトマス・ライサンダーさんに魔女の長のローゼリアちゃんの声が響くと共に、イシュメルガの周囲に匣による足場が出来上がる。
そしてその足場にはみんながやって来た。リベール組や特務支援課。それ以外の協力者たちが。
「お待たせ、リィン君たち! アーヤもさっき生きてるって聞いて驚いたけど……生きてて本当に良かったわ!」
「アーヤ先輩にⅦ組の皆さん……今度こそ助けに来ました!」
「助太刀する──全身全霊をもって!」
「君たち《Ⅶ組》の力となるため!」
「共に人の可能性と意思を証明させてもらおう……!」
「露払いは我等に任せるがいい!」
うおおおおお!! 激アツ展開だー! さすがにこれはテンションあっがるー! エステルちゃんたちにクローゼちゃんもいる! ロイドくんたちにアンゼリカちゃんたち! レーヴェにヴィクターさんも!
『霊子ネットワークを構築した! こちらも支援する!』
『遠隔オーダーでお手伝いします!』
『ですから兄様、皆さん! お願いします……!!』
『どうか無事に戻ってきて……!!』
「悪いな……! 俺らもオーダー程度だが……!」
「どうか武運を……! その手で未来を掴んで下さい!」
『おおおおおおっ!!!』
そして更に更にオリヴァルト殿下にアルフィン殿下! エリゼちゃんにトワちゃんがカレイジャスⅡから! 遠くからレクターにクレアちゃんも応援してくれてる!
これはもう正真正銘のラスボス戦だ! すごい! 熱い! ──見てる分には! いや、戦わないといけないってなるとさすがにビビっちゃうけど……でもまあ私は今回はヴィクターさんの言うところの露払いってことでメインじゃないから何とかなるだろう。
「許サヌゾオオオオ……!! 我ノ邪魔ヲシオッテエエエエエ!!!」
「全員、別れて各部位を狙いましょう!」
「ええ、わかったわ!」
ほらね? これだけ人数がいれば狙いも分散するだろうし、そもそもひとまとめにならず別れて戦うに決まってるのだ。だからこそ私はいつも通り隠れながら戦って削ればいい。なので危ない目には圧倒的に遭いにくい筈だ。HPとCP回復のコーヒーでも飲みながら体力に気をつけて戦おう。ふー……前面に出てヘイト買う人たちは大変そうだなぁ……さ、ラスボス戦を始め──
「殺シテヤル……殺シテヤルゾオオオオオオッ!!! アーヤ・サイードオオオオオオオオオオオッ!!!」
「────────」
──なんかすっごいイシュメルガが叫んでた。殺してやるぞって私の名前をフルネームで。コーヒー吹いた。
って、な、なんで私!? めっちゃすっごい殺意向けられてるんですけ……うわああああ!!? すっごい攻撃してきたー!? 私目掛けてー!? ひいいいい!! レンー! クローゼちゃーん! レーヴェ―! デュバリィちゃーん! クルーガーちゃーん! サラちゃーん! リィンくーん! 誰でもいいからみんな助けてええええ!! ラスボスに狙われてるよー!! うわあああああああああああああああん!!
今回はここまで。過去最長回でした。まだリアンヌママもルトガーさんもオズボーンもいます。次回は閃の軌跡Ⅳ編最終話になります。お楽しみに。
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