TS不幸少女のゼムリア大陸災難記   作:黒岩

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帝国の闇を一閃する不幸

 ──思えば数奇な人生だった。

 

 だがともすれば私以上に数奇な運命を持つ娘と私は出会った。

 

 そう……それがアーヤ・サイード。

 結社の執行者であり伝説の暗殺者《切り裂き魔》。様々な異名と肩書を持つ中東人の女性。

 アーヤは最初から私のことを識っていた。

 それがどういう意味を持つか全てを理解できているわけではない。とはいえ私を最初に見た時の反応と《黒》の驚きと執着を見ればその力が埒外であることはすぐにわかった。

 ゆえに私はイシュメルガの求めに応じる振りをして彼女を巻き込んだ。計画に加えた……といえるほど私は彼女を御せてはいない。

 アーヤは常に私の予想を良くも悪くも超えていく。黒の史書にすら記述されず、事態を混沌とさせながら結果的には良い方向に導く心優しき少女。

 そんなアーヤに私は期待し、息子やⅦ組を見守らせると共に好きにやらせた。

 

 アーヤの力であればあるいは呪いを一身に受けてもそれほど悪い結果にはならないかもしれないという計算もある。

 だが何よりも……私の計算すらも超えてくれることを期待していた。

 

 世界を終末へと導くか、それとも多大な犠牲を払いながらも終焉を回避するか。

 私にはそのどちらかの結末しか導くことができない。我が息子にしてもそれより良い未来を掴めるかどうかは未知数──いや、可能性は限りなく薄いであろう。

 

 だからこそ本当の意味で未知である彼女の力に私は縋ったのかもしれない。

 願わくば帝国の未来に──息子たちの未来に幸あれ、と。

 

 女神に祈るように、私はアーヤに願った。私が何も言わずとも私のやりたいことや計画を理解している不思議な彼女に。

 個人に対するものとして期待をかけ過ぎていることは理解していた。

 だが……。

 

『了解であります! リィン君──じゃなかった。Ⅶ組のことは私に任せてください! 立派に導いてみせますので!』

 

 アーヤの煌めく黄金の瞳。何も疑っていない天真爛漫なその表情。

 まるでこの先に明るい未来があることを微塵も疑っていないその彼女の様子に、私は希望を見せられた。

 帝国の呪いさえ跳ね除け、悲劇や深刻な事態すらも台無しにしてしまうその特異な性質。他者に優しく明るいその性格も、何もかもが帝国に必要なものだ。

 

 血塗られた歴史と闘争の概念に染まったこの帝国。それがアーヤのように面白おかしく、どんな闘争も茶番で終わるとすれば……どれだけ良かったものか。

 

 たとえその内側に余りある闇を抱えていたとしても……その性根は間違いなく稀有なものだ。

 だからこそアーヤは教官として息子やⅦ組。多くの人物を成長させ導いてくれた。

 その結果──私は今、奇蹟を目にしている。

 

「馬鹿ナアアアアアアアア……!!」

 

「ぜーっ……ぜーっ……ど、どうだ……! た、耐えきったぞー!」

 

「認メヌ……我ハ認メヌゾオオオオオオッ!!」

 

 ──《黒》のイシュメルガの思念体。

 

 この次元にて唯一滅ぼせる形態として顕現した悪しき呪いの源が雄叫びをあげる。

 リィンやアーヤも含め多くの者達が手を取り合い奴を倒すために挑んだその戦いを──私は目にすることが出来ていた。

 トールズⅦ組にその関係者。クロスベルの特務支援課。リベールの遊撃士を中心とする者達。我が子供たちに猟兵、結社、起動者たち。貴族や平民の垣根なく、表と裏も関係ない。誰もが未来を掴み取るために戦い、勝利せんとするその瞬間を。

 

 ……無論、私はどの道、この後煉獄へと落ちるだろう。

 

 既に肉体も魂も黒に捧げた身。不死者である私は事態の解決と共に肉体も魂も消失する。

 同じく不死者である聖女に猟兵王も同様だろう。

 

 だがそれでも私は満足だった。

 

 息子の成長した姿を……元凶たる黒を追いかけたその頼もしき背中。カーシャの面影もある勇ましき横顔。多大な縁に恵まれ、頼り頼られるその関係。それらを最期に見ることができた。

 

 そしてほんの一時とはいえ親子で肩を並べて語らい、戦うこともできた。世界を闘争で染め上げた《鉄血》にしては恵まれすぎた最期と言えよう。

 

 息子のことももう何も心配する必要はない。この先何があろうと彼らは乗り越えてみせるだろう。

 

 私は満ち足りた気分だった。これで安心して逝くことができる。

 カーシャと同じ場所へ行くことは望めぬだろうが……それでも何かの奇跡で出会えたならば、私たちの息子の成長と明るい未来を沢山話すとしよう。

 

「やり遂げたか──リィン」

 

「……ああ、何とかね」

 

 そうして私はリィンとの最期の語らいを現世で行う。

 私もリアンヌも猟兵王もクロウもフランツも。不死者であった者達は皆、身体が消えかかっている。

 だがそれでも絶望している者はいない。悲しむことなど何もない。この世を去ろうとも何も心配することはない。憂うことも何もない。

 

 呪いの枷から解き放たれ、元の黒髪に戻ってくれたリィンとこうして対面し、語らうことができている。

 

「団長……」

 

「そんな顔すんじゃねぇよ。俺は満足だぜ、フィー。最期に成長したお前と……娘と一緒に戦えたんだ。これで思い残すところは何もねぇ。──ゼノにレオも、お前らが吹かせる次の“西風”……煉獄で楽しみにさせてもらうぜ……」

 

「っ……団長……!」

 

「……ああ、見ていてくれ」

 

 猟兵王と西風。Ⅶ組のフィー・クラウゼルも。

 

「マスター……本当にもう……」

 

「ええ……ですが悲しむことはありません。ここまで貴女たちと共に在れたこと。それは私にとっても望外の喜びでした。子を成さなかった人生でしたが……貴女たちと過ごした日々はまるで……」

 

「……ぁ……」

 

「っ……マスター……」

 

「リアンヌ様……」

 

 リアンヌに鉄機隊。ロゼやアルゼイドの者。結社の者達も彼女との別れを惜しみながら言葉を交わし合う。

 

「そう、か……」

 

「……黄昏がけっちゃくしちゃったから……」

 

「……分かってはいたけど……」

 

「ああ、最初から言ったように単なるボーナスステージだ。2年前みたいに湿っぽいのはナシにしようぜ」

 

「ふふっ、そうだね」

 

「ミリアム……」

 

「ミリアムさん……」

 

「前にも言ったように、今のボクは《相克》のために造られた剣だからね。実体のない概念兵器みたいなものだし、儀式が終わったら消えるってわけ」

 

「……ミリアム……」

 

「……おねえ……ちゃん……」

 

 そしてクロウ・アームブラストとミリアムもまたⅦ組との別れの時を迎える。正直なところ彼らに関しては思うところもあるが……それも乗り越えるしかないだろう。

 あるいは奇蹟でも起これば別だが──

 

「なに、そのように諦めよくする必要もなかろう」

 

「ヴァリマール……?」

 

「オルディーネ……?」

 

 ──そしてそんな時だった。

 騎神たちが、ヴァリマールの呼びかけに応じて我等を囲むように集う。もっともこの場にいなかったのは金のエル=プラドーと消滅した黒のみだったが……それでも黒以外は転移してきてその場に集った。

 

「ふふ、条件は揃ったようだね」

 

「……父、様……」

 

「やっぱり他の連中と同じく不死者の身だったのね……」

 

「ああ、それが“長”としての人格を完全に受け継ぐ条件だったからね。すまない、アリサ。ようやくちゃんと話せたばかりなのに。──だが、最後に2つばかり研究者としての“成果”を示そう」

 

 私はフランツ・ラインフォルトの言葉に思い至り、思わず笑みを零す。成程……大したものだと。

 

「騎神たちよ。大地の眷属の長として要請する。大地の至宝《ロストゼウム》の秘蹟プログラムをブート。残留エネルギーを生体素子に変換、合わせて概念空間の“剣”を実体化せよ!」

 

「へっ?」

 

「ま、まさか……」

 

 ──ああ、そのまさかだろう。至宝を受け継ぐ一族として……彼らは2つの至宝の力を用いて奇蹟を起こそうとしていた。

 

「騎神たちよ! 焔の眷属が長として要請する。焔の至宝の秘蹟プログラムをブート。魂魄と修復されし肉体を馴染ませ、合わせて“剣”の魂魄を固定せよ!」

 

『応──!!』

 

 同じく至宝を受け継ぐ一族の長としてロゼもまたそれを手伝った。それに騎神たちは応え──その場に暖かな光が、力が満ちた。

 

 そうして起こるのは──死者の生き返りと概念兵器であるミリアムの魂を留まらせ、彼女を復活させる道筋をつけること。

 

「どうして……消えかかってたのが……それにこの髪……身体の様子も……」

 

「あはは……なんかとんでもない事が起こったみたいだけど……」

 

「クロウ……!」

 

「ミリアム……!」

 

 クロウ・アームブラストの肉体が復活し、ミリアムも消えることなく一度眠りにつく。

 2つの至宝を用いた最後の奇蹟。それが成就した瞬間だった。

 とはいえ──

 

「ま、待って……だったら父様も……」

 

「マスターを留まらせることは……!」

 

「もしかして……団長も……?」

 

「不死者として残ってるみんなも復活させることが……」

 

「ハハ……そう言ってくれるのはありがたいけどよ」

 

「ええ、難しいでしょうね」

 

「これはあくまでこれからの未来を担う若者たちのための奇蹟だ。──そうであろう? フランツ・ラインフォルト」

 

「ええ、ギリアスさん。──遺伝子情報に魂魄の残留度。この方法は不死者となって短ければ短いほど成功する。私が不死者となって10年、他の者達もそれなりの年月が経ってしまっている。同じ方法は通用しないだろうね」

 

「……そんな……」

 

 私や他の起動者、不死者も復活させることは出来ない。

 気持ちだけは有り難く受け取るが、我々はここで退場するのみだろう。

 

 ──だが、言ったように後悔はない。

 

「リィン……お前は、まだまだ先が長い。己を捨てて他を活かすのではなく、己も他を活かすのを最後まで諦めるな──お前の師の教えも結局はそこに繋がるのではないか?」

 

「そうか……そういう事か」

 

 親として息子へ最後の言葉を残す。

 心配はないが……それでも私に似た悪癖を発揮してしまわないよう少しは注意しておかねばな。

 

「……行くんだな?」

 

「ああ、そろそろ肉体も魂も限界だろう」

 

 私は皆にも最後の言葉を遺していく。リアンヌに猟兵王、フランツも、縁のある者達に向けて言葉を遺していき──

 

「それではさらばだ──息子よ」

 

「ああ……さよなら──ギリアス父さん」

 

 これ以上ないほどに満ち足りた気持ちで意識を白に溶かしていった──。

 

「……………………む……?」

 

「あれ……?」

 

 ──筈だったが。

 

 私は、いや、私だけではない。リアンヌや猟兵王、フランツも姿が消えないことに訝しみ、皆もどういう事かと困惑している。

 

「……ちょっと気が早かったか?」

 

「いえ……これは……」

 

『──ふむ。どうやら想定以上の奇蹟となったようだな』

 

「え……?」

 

「テスタ=ロッサ……?」

 

 そうして我々が事態を把握できずにいると、不意に《緋の騎神》テスタ=ロッサが言葉を発した。

 アーヤの騎神だった彼の言葉に私はまさかと先程のように思う。ありえぬが……それでもありえない馬鹿げたことを起こすのがアーヤであったと。

 そしてその通りに──

 

『同胞よ。この力はもしや……』

 

『うむ。力が混ざり合ってしまったためだろう──他の不死者にも同じことが起きたようだ』

 

「えっ……!?」

 

「ち、力が混ざったって……」

 

「いや、それよりも……ということは……」

 

「っ……!? ()()()()()()()()()……!? 不死者となって間もない頃のように……」

 

 ──フランツの驚きや皆の半信半疑ながらの期待に満ちた様子を見ながらも私は自らの状態を確かめ……そして理解した。

 

「おいおい……これは……冗談だろ?」

 

「いえ……どうやら夢ではなく現実のようです」

 

「……遺伝子情報から再現された……? この力は一体……」

 

「ふむ……分からぬが……しかし1つだけ確かなことがある」

 

 私は苦笑しながら告げる。Ⅶ組の輪の後ろの方にいる彼女の方を見て。

 

「何が作用したかは皆目検討もつかないが……()()()()()()()()()()()()()()

 

「…………え?」

 

 心底驚いてる様子のアーヤを見て、私は感謝を内心で述べる。

 無論、私の運命は同じだろうが……それでももうしばらくこの世に留まらせてくれたことに対して。

 

 

 

 

 

 ──ど、どうもー……アーヤ・サイードです……わ、私は何もしてません……疲れた……。本当に何もしてないのにイシュメルガにめちゃくちゃ狙われて大変だった……その上、Ⅶ組や他の人が「これはアーヤ教官の分!」とか何故か私の名前も出したりするから余計大変だった。

 まあもういっそヤケクソでヘイト買いながらこっちも攻撃しまくったけど……そのおかげか何とかイシュメルガを倒すことができた……本当に今までで一番ヤバかったけどこっちも味方が多いから何とかなったね……力の大きさとしては今までで間違いなくトップだったけど戦いはやっぱ数だよねって。

 

 そしてまあ最後はリィンくんがイシュメルガを断ち切ってくれたっぽくて一件落着だ。リィンくんも元の黒髪に戻ったし、クロウくんも生き返ったしミリアムちゃんも魂が留まってくれた。これでスペアボディに入れて復活させられるしトゥルーエンドだ。

 

 とはいえ他の不死者はこのまま消滅するっぽかったけど……しょうがない反面、残念でもあって私的には若干複雑ではった。嫌っちゃ嫌だけどこれ以上、私にできることはない。

 だからいつも通りに割り切って諦めようとしてたんだけど……そんな時にテスタ=ロッサから声が届いた。周りに聞こえないように。

 

(そう諦める必要もなかろう)

 

(え……?)

 

(まあ見ているといい)

 

 私にだけ聞こえる念話でテスタ=ロッサがそう言ってしばらく──どういうわけか今度はルトガーさんにフランツさん、そしてリアンヌ様にオズボーンさんの全員の身体が実体化していて。

 

「何が作用したかは皆目検討もつかないが……死期を逃してしまったようだな」

 

「…………え?」

 

 ……は、はい? え……何それ? こんなことあり得るの? 一体なんで……無理だったんじゃないの? 

 いやまあ確かにこうなった方がいいんだけどさ……もしかしてテスタ=ロッサの力が強くなった分、無茶も通りやすくなったとか? 2つの至宝だけじゃなく魔王の力もあったしね。

 ってことで……やった────!! なんかよくわからないけどリアンヌ様生存だー! オズボーンさんにルトガーさんにフランツさんも何故か皆生き返ったー! トゥルーエンドを超えたトゥルーエンドだー! いえーい! 

 

「なら……消えるのは騎神たちだけか……」

 

「ああ……ったく、自分たちだけでとっとと行っちまうなんてな……」

 

 ──と、喜んでたけどすぐにその言葉を聞いて喜びの感情が落ちる。

 そういえば……そうだった。騎神とももうお別れなんだよね。

 ってことはテスタ=ロッサともお別れってことだ。私は彼を見上げる。

 

「えーっと……また不思議パワーで何とかなったりしない?」

 

『確かに私の意識は魔王の力の方を書き換えて残っていたが……その力も消費し、役目を果たした以上は他と同じように消えるのみであろう』

 

「……そっか。ならしょうがないね」

 

 もしかしたらまだ残ってくれるんじゃと思ったけど……さすがにそこまで都合よくはいかないみたいだ。

 だったら仕方ない。せめて元気よく笑顔で別れよう。ここまで一緒に戦ってくれた相棒として──

 

『──フ……だが、今生の別れと決まったわけではないだろう』

 

「……え? それは……どういうこと?」

 

 別れの言葉を口にしようとそう決めた時、テスタ=ロッサが急にそれを翻す言葉を発したことで私は頭に疑問符を浮かべた。意味が分からない。なので聞いてみる。いや、普通に今生の別れなんじゃ……。

 

『そう決めつけることでもないと思ってな。貴殿と過ごした日々は、それほどに私の想定を超えていた。付いていくだけでも苦労する忙しない日々ではあったが……私も楽しかったぞ。いずれまた会えるかもしれぬと希望を抱く程にはな』

 

「……じゃあワンチャンあるってこと?」

 

『うむ、だからアーヤよ。またいずれ再会するためにも──貴殿も諦めることなく生き続けてくれ』

 

「!」

 

『最後になるやもしれぬ相棒からの頼みだ。約束してくれるか?』

 

 テスタ=ロッサはそんな風に真剣に私に頼んでくる。全く……何を言ってるのやらって感じだけどね。そんな約束しなくても私の方は別に死にたい訳じゃないし言われなくても生き続けるよ。確かに危ない目には縁がありすぎるから注意するに越したことはないけどね。

 だからそういう意味も込めて私は頷く。苦笑しながら肩を竦めて。

 

「全く……そんな風に頼まれたら断れないじゃん。別に断る理由も何もないけどね」

 

『ならば約束だ。アーヤ──我が起動者にして我が友よ。貴殿のことは決して忘れぬ。故にいずれまた会おう』

 

「うん──私も忘れないよ。だから……また会おうね、テスタ=ロッサ」

 

 私がニィっと笑えばテスタ=ロッサも頷き、同じ様に笑った気がした。

 実際私はもしかしたら会えるかもしれないってことを識ってるし、もしかしたらテスタ=ロッサもそれを感じ取ったのかもしれない。

 だからかその別れに哀しさはなかった。他の起動者と騎神も私たちが別れを行ったようにしていたのだろう。その言葉を最後に騎神たちは消えていった。

 

「最後にとんでもない置き土産を貰ってしまったな……」

 

「ほんと……グス……凄い“ヒト”たちだったね」

 

「ったく……また死に際を逃したか。あんなことの後じゃカッコつかねえが……どうやらまだ俺の戦いは終わらねえらしい」

 

「団長……うん、本当に良かった……!」

 

「また人の身に戻れるとは……思いもしませんでしたが……これも我が運命であれば受け容れるしかないでしょうね」

 

「マスター……!」

 

「リアンヌ様!」

 

「当然じゃ……! もう勝手にいなくなるでないぞ……! ぐす……」

 

「ハハ……これは後始末を任せてばかりではいられなくなったかな。色々と気になることもあるし大変だろうけど……また先生や後輩──そして家族と過ごせるなら苦でもないか」

 

「父様……!」

 

「フランツ先輩……!」

 

「全くこの馬鹿弟子が……またこき使ってやるから覚悟しておけ」

 

 そして騎神たちとの別れを済ませたらそれぞれ生き残った不死者たち……もう不死者じゃなくなった人たちが生き残ったことを喜ぶ。ルトガーさんとフィーちゃんや西風。リアンヌ様にデュバリィちゃんたち鉄機隊に友達だったローゼリアちゃん。フランツさんにアリサちゃんやジョルジュくんにシュミット博士などみんな生き残ったことを喜び合っていて微笑ましい。

 何はともあれ……これでハッピーエンドだ! リィンくんとオズボーンさんもこれで──

 

「ギリアス父さん……」

 

「フフ……まさか生き残ってしまうとはな。だが……こうして息子や縁のある者達と再び何の隔たりもなく時間を分かち合えること……この上なく幸福だ。──()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「え……?」

 

「それって……」

 

 ──ん? どうしたんだろう。何か雲行きが怪しいような……。オズボーンさんどうした? 生き残ったんだからこれからはリィンくんと好きに過ごせばいいと思うんだけど……。

 

「──責任、か」

 

「! レーヴェ……」

 

「そうか……たとえ生き残ったとしても貴方は……」

 

「ああ、その通りだ。如何に《黒》に支配されていたとはいえ、ここに至るまでの悲劇……嘆き……闘争によって生じた流血……それら全ての謀は私の差配によるもの。──何の咎も受けずに済むなど虫が良すぎるというものだろう」

 

「あ……」

 

「そうか……だから一時って……」

 

 …………えーっと、レーヴェやサラちゃんが匂わせてきたし、オズボーンさんが直接言葉にしたけど……つまりは責任を取らないといけないってこと、だよね。《鉄血宰相》ギリアス・オズボーンとして西ゼムリア諸国に戦乱を撒き散らした元凶として。

 そしてその責任を取るってなると…………も、もしかしなくても極刑? 生き延びたけど結局死ぬ? 牢屋に繋がれてリィンくんたちと平和に過ごすこともなく……。

 

「そんな……」

 

「でも……確かに……筋としてはそうなるしか……」

 

「しかも罪を受けるってなると多分……」

 

「……………………」

 

「フフ……そんな顔をするな。こうして呪いから解放された帝国とそれを成し遂げた若者たち……君たちの英雄譚の最後を見届けられただけで私は十分だ」

 

「ギリアス父さん……」

 

「そしてお前たちの掴んだ新たな世の礎となる。もう若者という歳ではないが……それが私にできる最後の仕事というものだろう」

 

 うおお……なんかエモいけど辛い感じになってる……ええ……いや、みんな納得するしかないみたいになってるけど私的には普通に生きてて欲しいんですけど……宰相からは降りなきゃいけないだろうけど死ぬのは生き残った意味ないし……そもそも罪とか云々言い出したらここにいる人たち結構アレだと思うし……テロリストやってたクロウくんとか元凶でもあるフランツさんとかその配下のジョルジュくんとかも……責任取って死ぬって……いやまあ気持ちは分からなくはないけどオズボーンさんはちょっとやめてほしいなぁ。

 

 でもどうしよう……私程度の話術や説得でギリアスさんを納得させられる気がしない……。

 

 ……………………あ、これならいける……か? うーん、かなり強引だけど……ゴリ押しで納得させれば何とか……よし、こうしよう! すぐにやろう! なので私は隙だらけのギリアスさんの背後に移動して──

 

「えいっ」

 

「うっ!?」

 

「え……!?」

 

 ──その頭を思いっきり《ゾルフシャマール》でぶっ叩いた。峰打ちで一閃した。

 

「っ……アーヤ君……何、を……?」

 

「うわ、さすがにタフだ! 早く気絶して!」

 

「っ……もしや……君、は……」

 

「アーヤ教官!?」

 

「一体何をしているんですか!?」

 

「また血迷ったか!?」

 

「もしかしてこき使われた恨みを晴らそうと……」

 

 よしよし、一発じゃ気絶しなかったけど全力で不意打ちしたおかげで何とか気絶させられた。怖かったー……! しかも気を失う間際なんか気づいてたっぽいし。そういうところも怖すぎる。やっぱ《鉄血宰相》ハンパない。

 みんなもすっごい驚いてるけど……こうするしかないんだよね。だからちょっと無理あるけど私は汗を腕で拭き取って一仕事終えた感を出すことにした。ちゃんと台詞付きで。

 

「ふー……よしよし、これで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「…………え?」

 

「はぁ?」

 

「アーヤ教官……何を言ってるんですか?」

 

 う……みんなが冷めた目で見てきてる。でも続けないと! じゃないとオズボーンさんを救えないからね! 

 

「ということでギリアス・オズボーンは伝説の暗殺者《切り裂き魔》が暗殺した! なので一件落着!」

 

「狂ったんですか? ──元から狂ってますが」

 

「馬鹿になったか? ──元から馬鹿だけどよ」

 

「狂ってないし馬鹿じゃない! アルティナちゃんもアッシュくんもうるさい!」

 

「もしかして……アーヤは彼を……ギリアス・オズボーンを殺したことにしようとしてるの?」

 

 お! さすがはレン! 気づいてくれた! よーし、乗ってきていいよ! この調子でゴリ押ししよう! 反論する余地は与えない! 

 

「いやいや、ほらたった今殺したからね! あー疲れたし苦労したー。さーて、後はこの死体を証拠隠滅のために……うーん、南のモルジア諸島辺りにでも隠そうかなー。海沿いの家とかで良い感じに……」

 

「いやさすがに無理があるでしょう!?」

 

「幾ら何でも強引すぎる……」

 

「だが確かに……死んだことにすれば彼が極刑にされることはなくなる……」

 

「それはそうですけど……」

 

「うむ……それに彼の意思を無視するのは……」

 

 ぐぬぬ、マキアスくんにユーシスくん、ガイウスくんにエマちゃんにラウラちゃんと真面目組が手強い……というかなんで誰も乗ってこないの? みんなそんなにオズボーンさん殺したい? 殺したくないよね? だったら乗るしかない! このビッグウェーブに! 

 

「アーヤ教官……その……その気持ちは嬉しいです。俺としても死んでほしくはないですし……アーヤ教官が俺のためにやってくれてるのはわかりますが……」

 

「あーもううるさいうるさいうるさい! 私は今暗殺したの! そしてみんなが証人! そして私は暗殺者で執行者で裏の住人だからそんな道理とか知らないし聞く義理はありませーん!」

 

「……!」

 

 リィンくんまでなんか遠慮がちに異を唱えてきたので私はもうヤケクソで捲し立てる。死なせたくないって言ってるのに色々と理由を付けて止めようとするの意味わかんないよね! ってことで私は強引に話を進める。伝説の暗殺者アーヤちゃんはもう止められないよ! 私はオズボーンさんを抱えながらさっと皆から距離を取って言い放つ。

 

「ということでギリアス・オズボーンは私が殺したし、その死体も私が預かった! どうしても殺したかったら私から取り返して殺してみろー! ほらほら、捕まえられるもんならやってみるんだね!」

 

「む、ムチャクチャな……」

 

「あ、あはは……すごい強引だけど……でも……」

 

「……ええ、そうね。確かに、裏の住人に殺されて死体も奪われたとなると……私たちにはどうしようもないわ」

 

「はい。確かにあの《切り裂き魔》に狙われたとあればどうしようもありません」

 

 おお! アリサちゃんは困惑してるけどユウナちゃんにサラちゃん、ミュゼちゃんもわかってくれたね! その調子その調子! 

 

「アーヤらしいというか……自分のことを死んでたことにしたのもそうだけど……」

 

「ええ。ほんと……先輩はいつも勝手ですね」

 

「全く……とんだ大罪人がいたもんだぜ」

 

「ほんとですね。早く捜査して捕まえた方がいいのでは?」

 

「ああ……そうだな。だけど居場所が分からなければどうしようもないし、何より証拠がない」

 

 おお! エステルちゃんたちにロイドくんたちも乗ってくれた! よーし、このままリィンくんにも言っておこう。オズボーンさんにいつでも会えるように。

 

「ということでリィンくん! あなたの父親ギリアス・オズボーンの死体は私が預かった! 墓参りがしたくなったら後で墓の住所送るからいつでもお参りに来てね!」

 

「アーヤ教官……でも、本当にいいんですか?」

 

「いいとか悪いとか犯罪者には関係ないし私が勝手にしたことだからね。ってことで、はい、返事は?」

 

「っ……はい……! アーヤ教官……ありがとうございます……!」

 

 そうそう! それでいいんだよそれで! 後はすたこらさっさと私が逃げるだけ! 

 

「……一応、追いかける振りだけでもしときましょうか?」

 

「必要ないでしょう。はぁ……これだから星杯騎士団(私たち)としてもやりにくいんですよね」

 

「ハハハ! 前々から面白い嬢ちゃんだとは思ってたが……やっぱり面白ぇな」

 

「うん。本当に」

 

「アーヤー! また遊ぼうねー!」

 

「オッケー! キーアちゃんまったねー! 死体隠したらまた連絡するから!」

 

 よしよし、なんか後ろでクルーガーちゃんとかトマス教官とかルトガーさんとかフィーちゃんとかが色々言ってるけどまずは死体を隠すのが先だ。

 ってことで少し離れたところで転移──あ、仲間発見。合流して一緒に離脱しよっと。

 

「シャーリィちゃん、セドリックくんやっほー! お疲れ様ー」

 

「っ……アーヤ……さん……」

 

「やっほーアーヤ姉。見てたよー。生きてた上にすっごいご活躍だったみたいじゃん。しかもすっごい大物抱えてきてるし。あっちの子供たちには挨拶しなくていいの?」

 

「あっちも理解はしてるだろうし責任云々また言い出したら面倒だから後でいいかなって。それよりそっちももう離脱?」

 

「あー……うん。まあそうなんだけどさー。なんかこっちの坊っちゃんがまごまごしてるもんだから一応アーヤ姉に言われた通り見守ってるんだよね」

 

「……っ……別に……まごまごしてる訳では……」

 

 少し離れた高い場所でこっちを観察してたっぽいシャーリィちゃんとセドリックくんのところに転移で移動して会話する。シャーリィちゃんは普段通りで緩いけどセドリックくんの方がなんかなんとも言えない顔をしてた。うーん、なんて言えばいいんだろう……迷子の子供みたいな? でもあんまりここで長々としてたらオズボーンさんが起きるかもだし誰かに見られるのも嫌なんだよね。だからさっさと行こう。

 

「よく分かんないけど……それじゃセドリックくんも一緒に来る?」

 

「!? な、何を……」

 

「え~アーヤ姉マジ? この坊っちゃん結社に勧誘するの?」

 

「だって来たがってそうだし。──それで、どうする? 来るんだったら面倒見てあげるけど」

 

「っ……何故……貴女は僕のことを恨んでないんですか……!?」

 

「? 別に……だって生きてるし」

 

「し、死んでたじゃないですか!」

 

「いや死んでないって。不意打ちしてきたことはまあどうかと思うけど……まあそれは割り切りつつ今後弄って精算する感じで良いかなって」

 

「……! あ、貴女は……」

 

「あー、アーヤ姉こんな感じだから。本当に怒ってないし、坊っちゃんのこともなんとも思ってないと思うよ」

 

「…………そう、ですか……」

 

 何をそんな驚いてるのか。もしかして仕返しで殺されるとでも思ったんだろうか……暗殺者だからってそんな殺人鬼みたいな真似しないんだけどなー。やっぱイメージ悪いかもしれない。

 これは結社に入ってもっと仲良くして良いイメージを持ってもらうしかないね! なんか負い目感じてるっぽいし、それを解消するためにも良い感じに弄ってあげよっと。

 

「…………アーヤさん、その……」

 

「何?」

 

「……すみません、でした……色々と……不意打ちを仕掛けたことも……」

 

「あーうん。いいよいいよー。それより来るの? どっちでもいいけど来るなら早く行かない? 戻るなら早く戻った方がいいし、どっちがいいのかな?」

 

 普通に謝ってきたんで軽く許す。そもそも別に怒ってないからね。こういう思春期の子供の相手は慣れてるし。

 ってことで来るのか来ないのか質問してみた。本当に私はどっちでもいいからね。セドリックくん的にどっちの方が良いのか、幸せなのかは私には判断がつかないし。だからやりたいようにするのが良いと思う。

 

「…………なら……行きます」

 

「あ、本当に来るんだ」

 

「ええ……このまま帝国に残っても皇太子たる僕を極刑には出来ない……かといって廃嫡にしてもアルフィンか兄上が継いでもしこりと──」

 

「シャーリィちゃんこの後どうする? 私このままモルジア諸島まで行こうと思うんだけど来る?」

 

「おお、あそこかー。いいねぇ、そのおじさんどうするかも気になるし付いていこうかな」

 

聞いてください! ……ですからオズボーン宰相とはまた違った形で、このまま“行方不明”となって帝国から消えることにします」

 

「そっかー。良いんじゃない?」

 

「はい。どうやら《結社》も人手不足の様子──そこそこ腕に覚えもあるつもりですしね。ああ、《執行者》として認められれば色々と好き勝手──」

 

「お腹空いたー。シャーリィちゃん何食べる? 私は刀削麺食べようかな」

 

「煌都料理だっけ? 相変わらずマニアックなもの食べるね。シャーリィは何でもいいかな、アーヤ姉のお店って大抵何でも美味しいし」

 

だから聞いてくださいよっ! これを機に、帝国以外の広い世界を見て回るのも──」

 

「後輩で執行者じゃないし下っ端だよね。それじゃまず焼きそばパンと牛乳買ってきてもらおうかな。5分ね」

 

早すぎますしさっきは刀削麺とやらを食べるって言ってたじゃないですか!? …………あの、シャーリィさん……?」

 

「ん、何?」

 

「もしかして……ずっと()()()()()()()()()()()……?」

 

「まあ大体は? もしかしてこの程度で疲れてる? 本気のアーヤ姉はこんなもんじゃないよ?」

 

「っ……そんな……!?」

 

「こらー誰がこんなノリだー。私は別に真面目だぞーちょーっぷ」

 

「痛っ……だから叩かないでくださいよ!」

 

「ごめんごめん。でも執行者になりたいならもっと痛い目に遭うだろうし、これくらいは躱せないとキツイよ?」

 

「……っ……」

 

「あはは、早速扱かれてるねー。どうする? やっぱやめといた方がいいんじゃない?」

 

「……いえ、行きますよ。これくらい僕なら……」

 

「とりあえず修行として刀削麺の作り方を覚えてもらおうかな」

 

「……………………」

 

「あはは! また挫けそうになってるじゃん!」

 

「なってませんっ! ああ、はい! もういいですよ! こうなったら何だってしてみせますっ!」

 

 ──ということでセドリックくんが仲間になった! テッテレー! 結社のお仲間が増えたー。確か執行者になるんだったよね。今は中堅そこそこの私から見てもクソ雑魚ナメクジなセドリックくんだけど執行者にもなれずにギルバートくんみたいになったら可哀想だから一応面倒見てあげよう。そんな感じで撤収ー。

 

 

 

 

 

 ──そうして私は幻想機動要塞を後にした訳だけど……それからまた半年の間に色々あった。いや本当に色々と。

 

 簡単にダイジェストで振り返るとまず殺したギリアス・オズボーンさんのこと。あの後すぐにオズボーンさんは目覚めたけど暴れて逃げたりすることはなかった。ただ罪の意識を感じているようで「私だけがこのように罪を逃れてよいのか?」とか言ってたけど「もう死亡届出しちゃったから無駄ですよ。罪って言うならその意識を持ちながら生き続けるとかで良いんじゃないですか? ルーファスについてもいずれ助かるんで問題なし!」って言ったら苦笑して頷いてた。なのでとりあえずモルジア諸島に今度作るリゾートホテル近くの海の家で働いてもらうことにした。海の家《カーシャ》のめちゃくちゃガタイの良いアロハシャツの店主オズボンさんとしてね。働かせてしばらくして様子を見に行ったらすっごい日焼けしててめちゃくちゃ手際よく焼きそば焼いてて休憩時間は現地の子供たちに囲まれて砂浜で算数とか教えてた。なんか自分でやらせといてなんだけどすっごい馴染んでる……ちょっと面白かった。リィンくんたちにも場所は教えたからいずれ会いに行くのかもしれない。今は忙しいから無理でもそのうちね。

 

 それとレンは改めて私と一緒に住むことになった。まあ前々からサイードって名乗ってたしね。今はまだトールズ第Ⅱ分校に住んでるから寮生活だけど、来年度からは共和国のアラミス高等学校に交換留学制度を使って留学する予定らしい。私の母校に通ってみたいんだって。まあ留学というか帰国してるからややこしい感じなんだけどね。その時になったらまたイクスとヨルダにエースくんも紹介しないと。ポム次郎にジオンとかペットも増えたんでまた家が賑やかになりそう。

 

 因みに私はまだ分校の教官でもある。さすがに今年度までは勤めないと責任的にマズいし。ただ帝国籍のアーヤ・サイードが死んでることになってるのが厄介だったけど。いつの間にか軍籍も殉職扱いでなくなってたし……ってことで最終階級は殉職の二階級特進でアーヤ・サイード中佐であります! 結構偉くなった! なのでたまに再編された情報局に行ってレクターに私の方が偉いぞーってマウント取りに行ったりしてる。楽しい。なんか新情報局も立ち上げてどうこう言ってたけど私には関係ないからねー。教官としては普通に楽しくやってる。

 

 あとたまーにラインフォルト社に遊びに行ったりもした。フランツさんがかなり頑張ってたね。そしていなくなったマキナの捜索も手伝ってもらってるけど今のところは芳しくない。ロストはしてないらしいんだけどね。以前からどうやらアルベリヒの制御下を実は外れてて情報集めつつも色々こっちに協力してくれてたらしいんだけど……どこに行ったのやら……まあちょっとした家出ならそれはそれで良いんだけどね。壊れてないみたいだしぼちぼち探す。ラインフォルト家は空気がかなり美味しくてすっごい幸せそうだったからまたたまに遊びに行こう。クルーガーちゃんとも遊ぶ約束してるしね。昔初めて仕立てて送ったドレスが成長して着られなくなっただろうから新しく仕立て直そうかなって思ってる。

 

 そしてファッションデザイナー業は相変わらず順調すぎるの一言で年末にはちゃんとイーディスファッションウィークにも出席して大盛況だった。来年は私のブランドだけのコレクションも予定してるし、ファッション以外も色々と手広くやって業績を上げてるんだよね。帝国からの賠償金のおかげで共和国はめちゃくちゃ景気が良くてウチの会社もとんでもないことになっててさ。ってことでこの調子でもっと表の仕事頑張るぞー! おー! 

 

 ああ、それと七耀暦1207年になったってことで1月2日は私の誕生日! なので誕生日パーティをしつつ私は23歳になった! ふふん、私ももう立派な大人の美女だね。実際スタイル良いし、身長も毎年めちゃくちゃちょっとずつ地味に伸びてて遂に165リジュになってたし。ただこれでさすがに打ち止めっぽい。成長曲線も終了だ。顔の可愛さはいつも通りだしまた色々とおしゃれが捗る! 

 

 で、年が明けてからはクロスベルを占拠してる大馬鹿衛士隊の排除も手伝ったりした。本当にちょっとだけどね。特務支援課とかクロスベルの人がやることって感じだったから。なので復帰したイリアさんに新たな衣装を仕立てて送ったり、キーアちゃんに新しい導力ゲームをプレゼントして沼に落としたりした。最近導力ネットでの配信が流行っててキーアちゃんもやってみようかなーって言ってた。キーアちゃんのあの可愛い見た目と声で超一流のゲーマー……すごい人気でそう。最近よく遊んでる結社の執行者のウルリカちゃんの対抗馬になれるかもしれない。

 

 それと久し振りにヴァンとも会った。ヨルグおじいちゃんの引っ越しの手伝いでね。なんかよく頼み事をしてるらしい。仕事の話を盗み聞きしようとしたらどっか行けって言われたから聞いてないけどヴァンもなんだかんだ手広いよねって。私もまた仕事頼もう。

 

 あとは……結社とか裏の仕事だけどこっちもセドリックくんを梁山泊並に厳しいアーヤちゃん流の修行法でめちゃくちゃ鍛えたりして執行者になるまで面倒見たり(終わる頃にはすっごいツッコミ上手になった)、博士に今後に備えてテスタ=ロッサっぽい人型兵器を作ってもらったりと色々やってる。こっちも相変わらずだね。

 

 ただリアンヌ様は思うところがあるみたいであんまり結社に戻ってないみたいだ。一度会って感謝を伝えられたけどね。使徒として抜けた訳じゃないけど今はまだ色々考え中なのかもしれない。盟主様に忠誠誓ってるのは変わってないしね。

 なのでデュバリィちゃんたちも修行中だ。前にも増して勝負を挑まれることが多くて困ってる。いやもう私はある程度でいいから……そんなに四六時中勝負したいなら()()()()()()()()()()()()()()()()()()。なので紹介してみたけど……どうなってるんだろう。結果がちょっと怖いよね。デュバリィちゃんなら大丈夫だろうけどさ。

 

 ──そして七耀暦1207年。3月3日。

 

 今日はなんと……オリビエことオリヴァルト皇子とシェラザードさんの結婚式だ! いやーこの日を待ち望んでた。なんたってウエディングドレスやタキシードは私が仕立てなきゃ誰が仕立てるんだって話! だからめちゃくちゃ気合い入れてやったね! なんか1回ブルブランに盗まれて殺意沸いたけど我慢して取り返した。おかげですっごい良いお似合いの2人だ! ひゅーひゅー! 結婚おめでとー! 

 

 因みに結婚式は色んな人が参加してた。当たり前だけどね。レーヴェとかも来てたし。何気に久し振りに会った。そしていつの間にか自由請負屋ってのを始めてた。なんか国際的な揉め事とかトラブルを解決したりする仕事らしい。クロウくんと話しててやることに決めたんだとか。経歴から遊撃士にはなれないけど人の為になる仕事ってことでね。なんか裏解決屋っぽい。でも戦闘力だけじゃなくて色んなことに優れてて問題解決能力の高いレーヴェにはピッタリかもしれない。組織に属するってのも自由に動けなくなるから嫌だろうし……というか今までレーヴェって無職だったんだ……そりゃそうか。独自に帝国で調べ回ってたし。まあお金は執行者時代のものがあるから困ってないだろうけど……まあとにかく開業おめでとう! 何かあったらレーヴェに頼もう。事務所はヴァリス市国にするらしい。な、なんで中東? しかもヴァリス? って思ったけどなんか()()()()()()()()()調()()()()()()()()()()()()()()、大陸中東部は揉め事も多いからちょうどいいんだって。まあ確かに部族間の揉め事とかしがらみとかくっそややこしいし根が深いからなぁ……人攫いとかする商人とかマフィアもいるし、仕事には困らなそう。ヴァリスなら私もたまに行くし時間見つけて遊びに行こっと。

 

 それと……結婚式ではクローゼちゃんにすっごい詰められてヤバかった……いや、ほら、だって忙しかったし……確かにあの後ずっと会えなかったけどそれはしょうがないというか……死んだ時も知らせてくれなかったとかで拗ねられたし、許してもらうために定期的に連絡を取り合う約束を交わすことになった。導力通信技術も発展してきたからね。大陸東部とかでなければ連絡は取れる。もし連絡無視とか定期連絡がない場合、次は本気で共和国に来て押しかけてくるらしい。押しが強い……でも埋め合わせでやったお泊り会も楽しかったね。お風呂で洗いっこしたし(やりすぎてちょっと怒られたけど)一緒のベッドで寝たんだけど相変わらずクローゼちゃんはすっごい良い匂いがした。今度はまたどこかに旅行とか行こうね! 

 

 他にも細かいところで言うとケビンから鬼のようなツッコミ連打を食らってびっくりしたり、リースちゃんからご飯のお礼を言われたり……ああ、その後の武術大会もヤバかったなぁ……マジで命の危機を感じた……。

 

 ──まあでもこの半年くらいは比較的平和だったかな。結婚式も平和に終わったし、写真もすごい良いものだった。

 

 この後もずっと平和とは限らないけど私的にはなんかすっごい良い感じになって満足だ。

 ということで閃の軌跡Ⅳ完! ハッピーエンド! 大団円! 西ゼムリアは平和になりました! 

 

 まーこの後ちょっとあったりもするんだけどそれまでは本当に何もないだろうし、私もまたゆっくりしようかな。旅行とかいいかもしれない。家族旅行ってことでまた──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──七耀暦1207年。某日。

 

「──君もこの先に起こることも識っている。間違いないね?」

 

「え……あ、はい……ある程度は……」

 

「……わかった。ならば改めて協力を要請させてもらおう。我々の星を掴む計画──いや、剣を突き立てる計画に。……一応聞くが、まさか嫌とは言うまいね?」

 

「……は、はい、よ、よろこんで……?」

 

「よろしい、契約成立だ。言うまでもないが計画に関することは全て他言無用で頼むよ。一応、具体的な要請がある時は連絡させてもらうが……それ以外については自由で構わない。──()()()()()()()()()()

 

「は、はい……」

 

 ──その日、私はグラムハート大統領に呼ばれて計画について協力するよう半ば強制的に要請され、それを承諾させられてしまった。ヤバい。全然わからない。星を掴む計画? 剣を突き立てる計画って何? 帝国でのこと色々と突っ込まれて知識持ってることも調べついてるって言うから白状したらなんか全部知られてると勘違いされた……ど、どうしよう……!? 詳しく説明してもらえないし、今更何も知らないなんて言えないよー! せっかく平和に終わったのになんも知らない計画に巻き込まれたー! うわあああああああん!!!




今回はここまで。これにて閃の軌跡Ⅳ編は終了です。
次回からは創の軌跡編だけどちょっとしたアーヤちゃんの周囲のサブキャラ回を1話だけ挟みます。お楽しみに。

感想、評価、良ければよろしくお願いします。
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