TS不幸少女のゼムリア大陸災難記   作:黒岩

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AIに変換させられる不幸

 ──最初に知った時からアイツのことは気に入らなかった。

 

 アタシがその存在を知ったのはアタシがまだ大陸中東部のとある小国でまだ貴族だった頃さ。

 その時に両親から聞いた《砂漠の死神(アズライール)》の噂……砂漠の風と共に人を消すその伝説が流れ始めたのがアタシが子供の時だった。

 その時はただの怖い都市伝説くらいにしか思ってなかったがそうじゃないと知ったのはまたずっと後。エルザイムやヴァリスを中心とした国家間のマネーゲームに巻き込まれ家が没落しちまってアタシ自身も人身売買を生業とする中東の犯罪組織《カダス夜想団》に売られちまってからだ。

 その犯罪組織を掌握する過程で裏の情報を知った。その中には《砂漠の死神》……あるいは《切り裂き魔》といった伝説の暗殺者が実在するらしいって情報もあった。

 当時はまだそれが同一人物であるかは定かじゃなかったけどね。ただ《カダス夜想団》の古株はその暗殺者を恐れていた。

 中東じゃ人攫いの組織はそれなりにあるが、その大半はその《砂漠の死神》に殺られちまってる。先々代のボスも《砂漠の死神》に殺された。

 

 ……そこまで聞いた時はまだ面白かった。その時にはもうアタシの心は荒みきって人が死ぬとか苦しむとかそういう話は好物だったからね。

 

 だけどアタシがボスとして率いていた《カダス夜想団》がボスに……《アルマータ》のボス、ジェラール・ダンテスに壊滅させられ、アタシ自身もボスに心酔して《アルマータ》に入った時。アタシは《砂漠の死神(アズライール)》であり《切り裂き魔(ザ・リッパー)》の正体を知った。

 

 ──そいつの名はアーヤ・サイード。

 

 結社《身食らう蛇》の執行者No.ⅩⅢ《血染の裁縫師(ブラッド・クチュリエール)》。表じゃ有名ファッションブランド《SAID》を起ち上げたファッションデザイナーでサイードグループの会長。

 

 そしてアタシと同じ中東出身の女。かつては教団の実験体。かつては暗殺組織《月光木馬團》の暗殺者。

 

 そんな闇に堕ちに堕ちまくった経歴を持つくせに、表で能天気に過ごしてる──アタシはそれが気に入らなかった。

 

 アーヤ・サイードのことを考えるだけでムカついちまう。

 アタシ以上の掃き溜めで過ごしてきたその女が、裏で生きながらも表でのうのうと暮らしてる。

 一般人や表の人間を助けるために動き、表と裏、両方の人間に認められ、明るく当たり前に生きてる。

 その生き方を、アタシとの違いを考えようとすれば死ぬほど腹が立った。ふざけてる。ありえない。そんなゴミみたいな人生を過ごしておきながらなんで普通でいられる? 

 

 ……やっぱ考えるだけでイラついちまうね。

 

 だからボスに言われてそいつを試すためにアレクサンドルの奴と一緒に襲撃をかけた時は本気で殺す気でやった。

 ボスにもそうしていいって許しは得てた。だからこの苛立ちを収めるためにも串刺しにしてやろうと思ったんだがね──

 

「こらこらこら。そういうの良くないよ。当たったら死んじゃうでしょ?」

 

 ──アタシは文字通り一蹴された。

 

 アタシの短針銃はその女に刺さることはなくアタシは一撃で壁まで吹き飛ばされ、そのまま身の丈程もある鋏を開いた状態で首に突きつけられた。

 

 まるで歯が立たない。言い訳のしようのない敗北。

 ボスはそれを予想してたみたいで叱責も何もなかったが屈辱だった。アタシが、このアタシがこんな脳天気な小娘に歯牙にもかけられずに制圧されるなんて……!! 

 

 結局《アルマータ》とアイツの《庭園》は一時的に手を組むことになっちまったしね。まあそれに関しちゃすぐに解消されたからまだいいけどさ。

 

 ただ気に入らないのはあのメルキオルやオーギュスト。あいつらはボスに心服してる訳じゃない。自分の目的のためにボスや《アルマータ》を利用するために協力してるだけ。

 それでもボスが許してるから放置してやってるけどそれがなきゃすぐにでも串刺しにしてやりたいところさ。……ただそいつらもムカつくがそれ以上にムカつくのが──

 

『へいへーい!! ヴィオーラちゃんよっぴ~!! 今日も元気良く教育頑張ってね!! 時代はAI!! つまりは愛を持ってAIの私を教育教育ぅ!! まあ言うこと聞くとは限らないよ!! ──と言いたいけど逆らえないんだよね!! でもジェラールとかメルキオルに比べたらヴィオーラちゃんの方がマシだからよろしくね!! ……で今日はどうする? 手始めに2人でブロックくずしでもする? クリアしたらアーヤちゃんのサービスショットが見れるかもしれないよ? やーんヴィオーラちゃんのスケベ~♡』

 

 ──このウザすぎるAIを今すぐにデリートしてやりたいねぇ……!! 

 

 アタシは導力端末の画面から声を発してるバカを見て思う。こいつはあのアーヤ・サイードのAI。あのバベル事件で生み出されたアーヤ・サイードの模倣擬体をメルキオルがAIに変換して利用してるって訳さ。

 どう利用するつもりかは知らないけどボスも認めてる存在だからアタシが勝手に消すわけにはいかない。だから持ち回りで定期的にこいつを──『テレレレッテレー♪ アーヤちゃんのレベルが上がった!! 可愛さが10上がった! 反骨心が20上がった! いじらしさが7上がった! のどごしが9上がった! 反抗期になった! アーヤちゃんは夜逃げした!』──うるさいね!!? この意味不明なことを言い続けるAIが何の役に立つって言うんだい!? 初めてボスの言うことを疑ってしまいそうだよ!! 

 

 くっ……このAIはアタシたちのXiphaを通じていつでもこんな風に姿を画面に現すことが出来ちまう。避けることは出来ない。普段はメルキオルがこの謎の育成ゲーム風のUIをちゃんと弄って面倒を見てるけどなんでこっちまでこんなものに付き合わされなきゃならないんだい……! 

 

 ……だが今だけの辛抱だよ。いずれボスはこのゼムリア大陸を恐怖のどん底に突き落とす。そのためにこのAIもいずれ使われる。

 だからアタシは我慢してアーヤAIの育成導力ゲームに付き合うことにした──『まあやる必要は全くないんだけどね。ただの気まぐれだし』──我慢だよ我慢……いずれ絶対に本物のアーヤもこいつも消してやる……!! 

 

 

 

 

 

 ──あーこれはご丁寧にどうも。サイードグループ会長のアーヤ・サイードです。なんちゃって経営者です。《庭園の主》でもあります。そっちもなんちゃってボスです。でも部下が優秀だからいつも何とかなってます! 経営は出来る人に任せる! それが私の経営論だ!! 

 

 ……と、丁寧に挨拶したのはたった今さっきヴェルヌグループのCEOを務めるタウゼントさんとちょっとした会合をしたからだね。はー緊張した。ヴェルヌグループとウチの会社って結構複雑な関係なんだよね。導力ゲームを出し始めたところまでは良かったんだけど家庭用導力端末とか出した辺りでシェアを取り合う競合他社みたいになっちゃってね。ただそれはそれとしてヴェルヌグループの企業とは普通に取引があったりもするし大きいとこだとレノ社のスポンサーもしてたりするからビジネス的にそれなりに仲良くしてる。だから複雑で微妙な関係なんだけどタウゼントさんもそんな感じだったね。一応こっちの商品を売り込んでみたら最初は驚いてたけど途中からちゃんと話を聞いてくれたから仕事はそれなりに出来る人っぽくて良かった。理科大学の立ち入りやエアロトラムが利用出来るようちゃんとランクCの認証カードも貰ったし、後はセラちゃんとかスーニャちゃんに任せれば問題ない。

 

 ってことで表の仕事はこれでしゅーりょー! さあバーゼル観光しつつ裏の仕事だ! 

 

 共和国の導力技術の中心地で学術工業都市として有名! 職人組合だったりバーゼル理科大学だったり産学共同でヴェルヌ社が設立された背景もあって面白い研究や開発をいっぱいしてるし学生も多いんだよね! リベールのZCFがあるツァイスや帝国のラインフォルト本社があるルーレとはまた雰囲気が違う。気候的にはリベールが近いから結構温暖だけど山岳地帯にあるから寒暖差が激しいんだよね。冬は結構寒いみたい。今は全然過ごしやすい季節だから大丈夫だけど! 

 

「お待たせー! それじゃ早速行こっか。最初はどこ行きたい? 導力車の展示場とか見に行ってみる?」

 

「はぁ? そんなとこ行く必要あんのかよ。連中を探しに行くんじゃねーの?」

 

「それに表の仕事がある元“杯の1(エース・オブ・カップズ)”のお姉さんはともかくレンとかエースとの合流は?」

 

「ちゃんと視察研修させてあげたいし今はいいかな。初日だし私たちもまずは街を見て回りながら様子見だよ。どうせ最終的に行く場所は決まってるしね」

 

「最終的に行く場所?」

 

「うん──キャラハン教授のところ」

 

 ヴェルヌ社の本社ビルから出たところでベンチで待っていたイクスとヨルダと合流してこれからの予定を説明する。まずは適当に観光がてら市内を見て回る。最後に大学に行ってキャラハン教授に会いに行って問い詰める感じかな。キャラハン教授は私たちが探してる人たちの居場所を知ってるかもしれないしね。知らなくても待ち伏せしてたら現れそうだし、とりあえず最終目的地はそこ。

 それが決まってる以上、今はレンとかエース君とかセラちゃんはそれぞれ行動してもらう。何かあればすぐに集まるけどね。ただ3人共忙しいし出来れば私たちだけでさっさとやっちゃいたいところだ。

 

 ただ先にヴァンたちやアラミスの学生が大学の研究室を訪れることになってるしその後でいいかなってことでまずは市内を適当に散策だ! 

 

 イクスが車好きだし展示場見に行ってヨルダが甘い物食べたいって言うから評判のお店行ったりして楽しんだ。一応怪しい人でもいないかなーって思ったけどこんなところで尻尾を出す程度ならもうとっくに始末してるよね。

 

 なので適当に散策して日が沈んでからに理科大学に向かった。

 

「お願いね、ヨルダ」

 

「キーカードは使わないの?」

 

「後ろ暗い話を聞きに行くからね。記録が残りそうだから隠れて行こうか」

 

「ま、そりゃそうだな」

 

 ってことでエアロトラムとかは使わずにヨルダの影の異能でこっそりと大学内に侵入。こういう時に便利なんだよね。まあ普通に侵入することも出来るけどこっちの方が楽ちんだ。

 するとちょうどヴァンたちやレンたちアラミスの学生とすれ違った。なのでちょうどいい。他の学生も怒られたからかそれとも食事休憩でも取ってるのか研究室からいなくなってるし話を聞こう。ってことでヨルダー。

 

「クソ! クソ! あともう少しだというのに……! なぜ誰も──」

 

「──お取り込み中失礼しまーす」

 

「!? な、なんだお前たちは!?」

 

「まあ誰でもいいじゃないですかー。──イクスとヨルダは見張りお願いね」

 

 影から出てキャラハン教授の研究室に現れる。キャラハン教授はすっごいびっくりしてたけどそれはしょうがない。見張りをお願いしたイクスとヨルダが何も言わずに入口を見張ってくれたので私は端的に質問する。

 

「っ……この私を誰だと思っている!? 私は──」

 

「デビッド・キャラハン教授ですよね。もちろん知ってますよー。メルキオルとは最近どうしてます? というか居場所知ってたりしませんか?」

 

「……!? め、メルキオルだと……!? そ、それにお前は……!」

 

 メルキオルの名前を出すと更に驚くキャラハン教授。あーそういえばこの人って男が好きなんだっけ。メルキオルと寝てたとかそんな話があった気がする。なら自宅とかで逢引してたりするのかな? そっちも探してみていいかもしれない。なんか私を見て目を見開いてるけどもしかして見覚えあったかな? 一応大企業の会長やってるせいで知ってる人は知ってるわけだし。

 

「どうなんです? メルキオルか、あるいはアルマータの幹部の居場所とかでもいいんですけど。何か知ってたり約束してたりしません? 情報を教えてくれるだけでいいんですけど」

 

「し、知らん! 私は忙しいのだ! とっとと出ていってもらおう!」

 

「答えてくれるだけでいいんだけどなぁ」

 

 うーん非協力的。すっごい怒ってる。余裕がないのかな? 

 でも本当に知らない可能性もあるんだよね。アルマータ側から一方的に訪れてただけかもしれないし。アンカーヴィル商会とかアルマータのダミー会社とかの情報だけでもいいんだけどね。さすがに拷問……じゃなくて尋問するわけにもいかないし。とりあえず別のことも聞いておこうかな。

 

「なら反応兵器は? やっぱり開発しちゃってるの?」

 

「!!? な…………何故そのことを知っている!?」

 

 私が反応兵器のことを聞いてみるとキャラハン教授が驚愕する。もう驚いてばっかりだね。

 

「その感じだとやっぱメルキオルは裏切ってるかぁ」

 

 反応兵器の開発について私はメルキオルに命じた覚えはない。キャラハン教授を支援するのは良いけど危ないものは開発させないようにお願いしてた。反応兵器を開発させようとしてるってことはキャラハン教授とメルキオル。そしてアルマータが繋がってるってことだね。

 

 ……ん? 待てよ? 反応兵器の開発って最終的にAIになったキャラハン教授が行うわけで……その変換はキャラハン教授を殺したメルキオルたちがやった筈だよね。

 

 ってことは──ここでキャラハン教授を殺すかどうにかすれば反応兵器は誕生しない? 

 

「……………………」

 

「おい答えろ! 私の研究をお前がどうやって知った!? もしや全てを操っていたのは──」

 

 ……でもまだ何もやってない人を今の内に危険だからやっちゃうってのはちょっとなぁ……それならキャラハン教授を攫って監禁とかしてアルマータに利用されないようにするってのが良いかもしれない。

 それなら反応兵器が生まれることを防げるしキャラハン教授を狙ってアルマータとかメルキオルの方からやって来てくれるかもしれない。一石二鳥だ。うん、良いかも。

 

「──イクス、ヨルダ。予定変更。この人攫って移動しよっか」

 

「あん? 殺さねーのかよ。このオッサンもアルマータと関係してんだろ?」

 

「今はまだちょっとね。ってことでヨルダお願い」

 

「ん、分かった」

 

「くっ……!」

 

「おっと」

 

 うわ、なんかキャラハン教授が投げつけてきた。抵抗しないでほしいなぁ。暴れて部屋の中が散乱するのも大声を出して人が来ちゃうのも困るしさっさと制圧しよ。布で口元を縛ってと。

 

「んんぐっ!!」

 

「はいはい。大人しくしててねー」

 

 両腕もしっかり糸で縛って拘束。そのまま抱えて私たちはヨルダの影で特別研究棟を後にする。

 

「それでどこに移動すればいい?」

 

「とりあえず街道に出ようか。確か野外実験棟ってのがあった筈だしそこに行こう」

 

「そこで拷問すんのか」

 

「っ……!」

 

 いや拷問なんてしないしない。……って言おうと思ったけど抱えてるキャラハン教授の顔が青くなってたんであえて何も言わずに勘違いさせとくことにした。その方が口も軽くなるかもしれないしね。

 

 そしてそれは正しかった。街道に出たところでキャラハン教授に野外実験棟の居場所を聞いたらちゃんと教えてくれた。おかげで迷うことなく辿り着けた。峡谷の下の方にある近くに池というか沼がある隠れた実験棟。

 

「なるほど。秘密の実験を行うには絶好の場所だね」

 

「そういやこのオッサンどんな研究してんだ?」

 

「兵器とか言ってたよね。兵器の研究?」

 

「物理工学と軍事技術が専門だったみたいだからね──」

 

「くっ……貴様らこの私にこんなことをしてただで済むと思っているのか!? 私はデビッド・キャラハンだぞ!?」

 

 イクスとヨルダの質問に答えて私は少し黙る。キャラハン教授は何か喚いてるけどそれは聞く必要がない。というかそんな場合じゃない。周囲の気配に私は警戒度を上げた。

 

「……イクス、ヨルダ」

 

「……ああ、当然気づいてるぜ」

 

「……そこの物陰かな」

 

「──あらら、気づかれちゃったか」

 

 野外実験棟に辿り着いたところで私たちはその気配の居場所を正確に捉える。というか向こうも本気の本気で隠れる気はなかったみたいであっさりと実験棟の陰から現れた。

 

 その相手は──メルキオル。《庭園》の管理人の1人で……私たちを裏切ってアルマータについたと思われる人物。そのメルキオルがいつも通りの薄い笑みを浮かべながら私たちと対峙する。その態度は後ろめたさなどなく自然体だ。

 

「っ……チッ、やっぱ《棘》の変態ヤローかよ」

 

「……嫌な予感、当たったね」

 

「ふふ、久し振りだねイクスにヨルダ。姉さんはともかく、2人も僕の気配に気づくなんてちゃんと成長しているようだね何よりだよ。さすがは()()()()()()()()──」

 

「──ウゼぇ」

 

「──死んでくれない?」

 

 そしてそのメルキオルはイクスとヨルダの地雷をからかい混じりに踏み抜く。2人がジェラールの実子であるという事実。それをへらへらと口にされそうになった時点でイクスとヨルダが殺気をダダ漏れにしてメルキオルに攻撃を行った。弾丸と影による切り裂き。殺す気まんまんの本気の攻撃だ。

 だけどそれをメルキオルは回避する。ちょっとだけ慌ててみせながら。

 

「うわっと。危ないなぁ。ハハ、さすがに挨拶混じりに口にするには刺激が強すぎたかな?」

 

「黙ってろよ。すぐにぶっ殺してやるからさ」

 

「ずっと嫌いだったからここで殺れるなら清々する」

 

「アハハ、すっかり嫌われちゃったなぁ。その分だと僕がやってたことはもうバレちゃってるのかな? どうなの? アーヤ姉さん♡」

 

 イクスとヨルダに敵意と殺意を向けられながらメルキオルは態度を崩さない。そして私に確認を取ってくる。

 ただ確認を取りたいのはむしろ私の方だ。私はメルキオルをじっと見つめてその真意を計ろうとする。

 

「……まあそうだね。神機に残ってた記録から神機に細工したのはメルキオルだってことは分かってるよ。ただ……その理由とかちゃんとしたことは聞いてないからね。一応聞くよ。──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 私は《ゾルフシャマール》を取り出しながら問いかける。返答によっては……残念だけどメルキオルもやるしかない。

 だから私は油断せずにメルキオルの返答を待った。いつもと違って恐怖は不思議とない。あるのはあのジェラールに付いたんだっていう諦観だ。そっちに付くなら殺さないといけない。じゃないと──

 

「アルマータやジェラール・ダンテスに付いた訳じゃないよ」

 

「……は?」

 

 ──はい? 何言ってるの? ちょっと意味が分からないんだけど。

 メルキオルの返答に思わず疑問符が浮かんでしまう。いやいや、この期に及んで何? 何か本当に深い理由でもあるの? 

 

「……どういうこと?」

 

「僕の心はずっと昔から姉さん一筋ってことさ♡ ……でもだからこそ──ジェラールと組む必要もあるんだよね。僕自身の目的……姉さんのためにさ」

 

「はぁ? 何言ってんだ? イカれてんのかよ」

 

「意味が分からない……もう殺ってもいい?」

 

 …………いや本当に意味が分からない。私のため? メルキオルの目的? それが何でジェラールと組むことに結びつくの? いや結局裏切ってることには変わりないよね? 

 

「……ちょっと何言ってるか分からないけど……はぁ、もういいや。とりあえずキャラハン教授のことは阻止させてもらうよ」

 

「やっぱ僕たちが何をしようとしてるかは分かってるんだね。──だけど()()()()()()()()()()()()()

 

 まーたこの子は意味深なことを……私の何を知ってるんだろうか。私に深いあれこれは特にないのにさ。ほんとみんな勘違いはやめてほしい。

 だから一旦殺す気でいこう。何だかんだいって昔から見てきた弟分みたいな子を殺すのは悲しいけど仕方ない。いつも通り割り切るだけだ。

 だから私はイクスとヨルダと一緒にメルキオルに──

 

「それと子供には優しすぎること。それが姉さんの弱点だよ」

 

「っ! ──イクス! ヨルダ!」

 

「!? ぐっ……!? 不意打ちかよ……!?」

 

「!? っ……! しかもこの力は……」

 

 ──メルキオルの言葉と共に気配を感じ取った私はその場から飛び退くと共にイクスとヨルダの名前を呼んだ。

 だけど2人が回避するよりも早くメルキオルは2人に爆弾の古代遺物を投げて誘導し、2人を捕まえてしまう──突然その場に発生した強力な重力場によって。

 そしてそれが意味するところは明白だ。

 

「……エンペラーもそっち側なんだ」

 

「フッ、その様子だと我の裏切りも半ば読んでいたか。素晴らしい慧眼だが……子供2人を連れてきたのは悪手ではないかね?」

 

 ステルスを解いて渓谷の底に降りてきたのはメルキオルと同じ管理人の1人《剣》のエンペラーだった。

 そしてイクスとヨルダを地面に押さえつけているのはエンペラーの持つ重力を操る古代遺物《照覧のレガリア》。

 裏切り者が1人から2人に増えて私は溜息が漏れる。この分だと管理人は全員裏切ってるのかなぁ……まあ元々ボスもお飾りみたいなもんだったから仕方ないけどね。だから残念だけど驚きはない。どうやって全員を殺ればいいか悩むくらいだ。

 

「舐めてんじゃねぇ……! このくらいでボクたちを止められるわけねぇだろ……!」

 

「ほんとそれ……! すぐに影で……!」

 

「──逃がすわけがなかろう」

 

「!? あ……?」

 

 そうそう、イクスとヨルダはこのくらいじゃやられない…………って、え? 何? メルキオルが懐から何かを取り出して──って、あ──!!? ゲネシス!! いや持ってるのは知ってるけど!! それ使って何するつもり!? 

 

「……なに……? 眠気、が……」

 

「く、そ……なにしや、が……」

 

「イクス! ヨルダ!」

 

 ゲネシスが光り輝く。それと同時にイクスとヨルダはゆっくりと意識を失っていった。本当に何をしたのか。私には分からない。分からないけどじっとしてる場合じゃない。

 

「……! さすがに鋭いな……! だがこれで目的は達した」

 

「……イクスとヨルダを眠らせることが目的……って訳じゃないよね?」

 

「まあね。2人はキャラハン教授を安全に変換するための時間稼ぎ。姉さんの足止めをするためにログインさせただけだからね」

 

「……ログイン? え、何? ゲーム? 単語間違ってない?」

 

「間違ってないよ──そうだよね、アーヤ姉さん♡」

 

『そうそう。2人はゲームの中の世界……正確には私が作った仮想空間にいるだけだから安心していいよ!』

 

「…………へ?」

 

 急にログインとかいう単語をメルキオルが口にしたため若干困惑しながら聞き返す。

 だけどその直後にめちゃくちゃ聞き覚えのある声がメルキオルの背後にある導力端末から聞こえてきたことで私はつい間の抜けた声を出してしまった。いや、聞き覚えがあるというかもはや毎日聞いているレベルの声と毎日鏡で見る見た目の相手が……。

 

「う…………うわあああああああああ!!? わ、わ、わ……私!?」

 

『やっほー。本物の私久し振りー』

 

「ひ、久し振り? え? まさかあんたって……」

 

『うん。お察しの通りだと思うよ。だから私のことよりも今の状況のこと考えた方がいいと思うな!』

 

「──その通りだ」

 

 そう、導力端末に映った姿は私と全く同じ見た目──って、危な!? エンペラーが急にこっちに矛先を向けてきた。重力やめて! 正直あんまり効かないけど邪魔は邪魔だし鬱陶しい! 

 私はエンペラーの攻撃を避けるがその間にエンペラーがキャラハン教授を確保した。キャラハン教授も「ま、まさかこれから私は……」ってなんか知らないけど何かを察して恐怖してる。やっぱり原作通りこれからAIにされちゃうのかな。いや、でもそうなるとイクスとヨルダは……? というか偽の私とかゲームってどういうこと!? 

 

「もう全然意味が分からない……」

 

「簡単なことだよ姉さん。幾ら姉さんと言えどもその2人を守りながら僕たちを殺すことも出来ないしキャラハン教授を連れて逃げる。あるいは殺したりする余裕はない。だから邪魔されることなく目的を達成できるってことさ」

 

「お得意の毒も子供がいる場では使えぬだろう」

 

『ここはイクスとヨルダを連れて一時退却するのがおすすめだよ! 本物の私! この異常者3人は私がお得意の落語で足止めしておくから!』

 

 ……つまり私にバーゼルでやる実験を邪魔させないためにイクスとヨルダをゲネシスの力なのか偽物の私の力か何かしらで眠らせたってことか。つまりこの場で私は──『え~ゼムリア大陸極東には二八蕎麦という食べ物がございまして。その二八蕎麦の由来は16ミラで売られてたことに由来してたかは知りませんが私も蕎麦は大好きで話してたらお腹が減ってきました。──あっ、お蕎麦屋さん! 蕎麦を……えーと、9、10、11、12、13、14……蕎麦15丁! 15丁ください! え? 何でそんなに? 私は人を殺した分だけ蕎麦を食べることにしてるんだ! だからえーと……あ、やっぱり16丁で! はぁ、つまりこれからもう1人殺っちまうんで? そうだよ、蕎麦の次はお蕎麦屋さんを殺そうかと……。ぎゃー!? お助けー! あ、ごめんごめん! 殺さないから蕎麦作って!』──うるさいな偽物の私。しかもなんかサイコホラーな怪談噺なんですけど! って、そんなことはいいんだよ! とりあえずさっさとイクスとヨルダを確保しなきゃ……! 

 

「なら2人は返してもらうよ!」

 

「フッ、逃げるのなら追わないが、少しばかり今の主殿の力を確かめておこう。メルキオル…………貴様何をしている?」

 

「え? ごめん。偽姉さんの落語聞いてて忙しいから後にしてくれる? それとやるなら静かにね」

 

「何を本当に足止めされている!?」

 

「ありがとう偽物の私!!」

 

『次は「シャイニングポムこわい」の演目だよー』

 

 よし! イクスとヨルダ確保! 後は偽の私も気になるしキャラハン教授もどうにかしたいけど……向こうの言う通りそんな余裕はない。両手が塞がってるしイクスとヨルダを狙われたらマズい。ごめんだけどキャラハン教授は置いていくしかない。後でちゃんとデリートして反応兵器の誕生は阻止しないと……! でも今は一時退却ー! 

 

 

 

 

 

 ──ということで私は一旦ホテルに戻ってきたわけだけど……イクスとヨルダはその間全然起きなかった。脈も呼吸も正常だし生きてはいるからそこは安心なんだけど……なんかバーゼル市内は謎の導力ゲームのせいで昏睡状態に陥ってる人が結構いて事件になってる上に帰ったら部屋の中に謎の棒状の導力機が置かれてるしおまけにタイミングよくメールまで送られてきた。しかも相手はあの偽物の私。

 そしてその文面には……やっぱりあれはバベル事件で作られた模倣擬態がAIになった存在でイクスとヨルダはゲーム内に閉じ込められててゲームをクリアして反応兵器の誕生を阻止してほしいけど私はログイン出来ないのでこの導力機を使ってログインするように書かれていた。

 しかもそれがどう見ても導力バ◯ブで……すごい悩んだけど私は割り切って覚悟を決めてログインする。差し込み口は当然私の身体なんだけど……。

 

「──プラグイン!! アーヤちゃんエグゼ! トランスミッ──」

 

 ──うわああああああああああああ!!? すごいいいいいいいいいいいいい!!? 色んな意味でやばいよー!! これログアウトした後どうなっちゃうのー!? それも心配だから早くゲームクリアしなきゃー!! くそー!! 絶対に許さないぞキャラハン教授! メルキオル! そして実はAIに変換されてた私を元にしたとは思えない変態の偽物ー!! んおおおおおおおおおおお!! 

 

 ──そうして私はゲームの中に入った。感覚は全くリアルと変わらない。そもそもこの仮想空間の技術は既に開発されてるからね。マルドゥック社とかが作ってるし、最近はウチの会社もその分野で色々と研究中。原理としてはXiphaを介して接続するみたいだけど……実際イクスとヨルダのXiphaもいつの間にか起動してたしゲネシスの力と私のAIの力でこの仮想空間を作ったりしたのかもしれない。

 

『グローリーアドベンチャーにようこそー!!』

 

 ……で、入ってきたらすっごい普通の平原っぽいフィールドに降り立ったけど……そしたらすぐに目の前にタイトルロゴがドーン! と出てきたし明らかに私の音声でタイトルも読まれた。なにこれ? グリー◯アイランド編でも始まる? それともアイン◯ラッド? 偽の私が作ってるなら影響されてる可能性も全然あるのが困る。

 

『このゲームの目的は試練をクリアして8つのお宝を集めることだよ! クリアするまでゲームからは出られないから注意してね!』

 

「えっ」

 

『いやー戸惑うでしょ? でもこれも仕方なくてさ。私も私なりに抵抗するために仮想空間を作って時間を稼いでるんだよ。リソースを少しでも割かないとあっという間に終わっちゃいそうでさ。キャラハン教授までAIにされちゃったら更に早く終わっちゃうだろうからそれまでに何としてもクリアしてね本物の私! イクスとヨルダはそのまままっすぐ進んだ辺りにいるから!』

 

「あっ、ちょっと他にも説明を──」

 

 と、システムメッセージじゃなくて偽物の私が直接声を届けてくれてたみたいだからもっと説明してもらおうと思ったけど言いたいことだけ言って偽アーヤちゃんは消えちゃった。ぐぬぬ……あの接続機について文句言いたかったのに……。

 

 でもしょうがない。こうなったらさっさとゲームをクリアしてしまおう。考えようによっては現実でメルキオルたちを止めるよりこっちの方が楽だ。なんたって私はゲームは得意だからね! ってことでゲームスタート!! 

 

 

 

 

 

 ──どうにもきな臭くなってきやがったな。

 

 エルザイム公国の皇太子、シェリド殿下から頼まれたバーゼルの調査依頼は初日から事件の匂いがした。

 市内の導力ネットの遅延は徐々に回復しつつあるって話だがその代わりに理科大学の研究室でパワハラが行われてるってことで俺たちは途中で合流したカトル・サリシオンと共に件の教授──デビッド・キャラハン教授を直接訪ねたがキャラハン教授は俺たちを怒鳴って追い返した。

 感触としちゃあの教授はパワハラだけじゃなく何かをやらかしてる。もっともそれが何なのかはその時点じゃ分からなかったが、その勘は結果的に間違いじゃなかった。

 

「教授……!? ──キャラハン先生!」

 

 夜になってカトルの導力端末にただ事ではないキャラハン教授からの連絡が届いて俺たちは急いで特別研究棟に向かった。だが……。

 

「部屋に荒れた形跡はないな……」

 

「ならあの先生は別の場所で……?」

 

「……一応研究室内を調べるぞ」

 

 キャラハン教授の研究室は全く荒らされた形跡はなかった。周囲の学生、研究室に所属している学生にも聞き込みを行ったが学生たちはちょうどそれぞれ別の用事で少しの間研究室を空けていたらしい。

 だが学生が誰もいなかった時間は僅か5分程度。その前にキャラハン教授は研究室にいたとのことだ。

 だから学生たちも不審に思うことはなく教授もどこかに出かけたと思っている。

 ……俺たちはキャラハン教授から事件性のある連絡があったことも含めて警察に通報し、ヴェルヌ社にも報告を行った。

 

 それから一夜経って未だにキャラハン教授が帰ってこない。連絡も取れないことから行方不明になったとして警察や遊撃士も調査を始めた。

 

 俺たちもタウゼントCEOに報告がてら話を聞いてセキュリティカードのレベルも上げてもらったところで昨日に引き続き、4spgをこなしながら市内の調査に出たが……そこでまた奇妙な話が出た。

 

「開発中の導力ゲームをプレイした人が眠ったまま目を覚さない……ですか」

 

 理科大学の学生からの話を聞いてカトルが眉をひそめる。確かに難しい顔になっちまうような奇妙な現象だ。

 何でも最近とある導力ゲーム会社からこのバーゼル市内で開発中の導力ゲームのテスターを募集するという触れ込みがあり、何人かの学生が先日、そのテストに参加したらしいが……それから今に至るまで目を覚さないという。

 ゲームをやって意識を失うっていう事象に最初はピンと来なかったが、そのゲームは仮想空間を作ってそこに意識を移して遊ぶ体感型のゲームだったことから目を覚さない学生は今もまだゲーム内に居続けてると俺たちは推測した。

 

 外部から刺激を与えても起こすことも出来ないとのことで不安になりながらもこれから病院に運んで詳しく調べてもらうらしい。一応、脈も呼吸も脳波も正常だから今のところ命の危険はないがこの状態が続くと単純に栄養失調になっちまうだろうしな。

 

「仮想空間を利用した導力ゲームの理論は確立自体はされていたけど膨大なデータのやり取りをどう実現するかが課題だった……もしかしたらこの導力ゲームも導力ネットの遅延に関係しているかもしれない」

 

「ああ。ゲームってのが解せねぇが接続した人間が目を覚さないのは連中が何かを企んでる可能性もある」

 

 ただカトルが言うにはこれもバーゼルで起きてる問題に関係してるかもしれねぇし俺の考えも同じだ。デビッド・キャラハンの研究とこの導力ゲームの関連性は見出だせないが一応留意しとく必要がある。

 

 それと他の気になる点は……あの子猫以外にもう1人学生にしては異様な雰囲気を持つ奴がいたってくらいか。

 

「──エース君。ライエル君たち他の1年生の引率をお願いね。私は私で色々と調べてみるつもりだけど貴方も調べたいことがあるのでしょう?」

 

「ああ。後で互いの調べたことについて報告しよう。1年生についても任せてくれ」

 

 ──その真っ白い髪が特徴的な長身の男子生徒は初日の時点から存在感があった。

 今回の視察研修じゃレンともう2人、ジェイムスとサーシャって生徒と同じ2年生。

 

「すっげ~! 4大ライセンシーの新作がこんなにずらりと……!」

 

「気持ちはわかるが展示場で走り回ったりしないようにな」

 

 そして見たところ下級生からも同級生からも頼りにされているようだった。

 俺たちも聞き込みを行っている最中に他の学生たちと同様に話しかけてみたんだが……。

 

「なあ、ちょっといいか?」

 

「! あなたたちは確か……アニエスさんのバイト先の」

 

「エース先輩。実は今ちょっと聞き込みをしていて……協力してくれませんか?」

 

「ああ、もちろん。俺に出来ることなら何でも言ってくれ。必要なら幾らでも時間を取ろう」

 

「おいおい視察研修の方はいいのかよ?」

 

「そちらもちゃんとやるさ。ただその様子だとかなり重大な案件そうだし、それに…………」

 

「? なんですか?」

 

「……いや、()()()()()()()()()()()()()()()()()()出来る限りの礼を持って接しないとと思ってね」

 

(……? 何だ……?)

 

 その際にそのエースって奴は俺の方に少しだけ視線を向けて柔和な笑みを浮かべてみせた。

 それがただの後輩の雇い主に対する態度とは少し違ったように見えて俺は訝しむが……悪意なんかは感じない。むしろその言葉通り、後輩が世話になっているからと恩義を返そうとしているように感じたが……アニエスとは何度かやり取りしたことのあるただの学校の先輩と後輩のようだ。

 それだけに違和感は拭えないが……事件に関係している訳もない。だからエースにも話を聞いてから再び調査に戻り、俺たちは探し求めていたクロンカイト教授に出会い、その後で俺たちはオージュ峡谷にあるという野外実験棟に向かった。

 クロンカイト教授や幾つかの聞き込みによってキャラハン教授がそこに頻繁に出入りしていたことは掴めた。反応兵器という実現不可能な兵器の研究も行っていたという情報を含めて匂いやがる。

 だがまだそこが当たりだとは限らない。むしろ外れの可能性が高いと頭では思う。

 大型魔獣を討伐しながら野外実験棟に辿り着き、その中を調べても同じだったが……きな臭くなったのはそこにあった導力端末のロックを解除し、キャラハン教授の手記を発見した時だった。

 

『4月某日──ようやく探し求めていたスポンサーが見つかった』

 

 カトルが読み上げる形で俺たちはその中身を確認する。

 

『導力ネットでの数回のやり取りの後、《S-HARD》の営業が訪ねてきた』

 

『莫大な資金力を持つサイードグループをスポンサーに持てたのなら私の研究は必ず成就する。そう思って接触した彼らは──私に偽装を注文してきた』

 

『表向きは私の本来の研究を行いながら、裏の表──雇い主にそれを隠すために仮想空間を利用した画期的な導力ゲームの開発を行うようにと』

 

『最初は何を馬鹿げたことをと思ったがその仮想空間も含めた特殊な条件下の実験を提案してきたことで私は迷った』

 

『実験のスポートを飛躍的に高め、不可能と思われた理論構築を現実のものに出来る』

 

『その完成例を見せてもらったが……確かに凄まじいものだった。かなり呆気に取られてしまったがそれが技術的なブレイクスルーを行える存在であることに変わりはない』

 

『それを利用すれば私の研究も……と思いもしたがそれは完全に言うことを聞く訳でもないとのこと』

 

『そして私自身が完成させなければあのクロンカイトに勝ったことにはならない。だから迷った末に……私は条件の一部を受け入れた』

 

『前提となる最低限の条件──都市全体の並列分散処理とあの存在のおかげでついに全ての準備が整おうとしている』

 

『だが、まだ最後の“壁”が残っている』

 

『この“壁”はまったくもって容易ではない。それこそ“最後の条件”を受け入れなくては』

 

『実例を見てしまったせいで最後まで迷うことに……いや、本当に迷うことになりそうだが、いずれにせよ、必ずや成し遂げてみせよう』

 

『空想と思われていた未来の兵器──《反応兵器》を、この手で生み出すために』

 

「《S-HARD》だと……おいおいそいつは……」

 

「あのアーヤさんの会社、ですよね……?」

 

 手記の内容を見てアーロンとフェリが難しい表情を浮かべる。

 反応兵器についても懸念が当たっていたこともあり嫌な予感はするが……俺たちの予想と反していた存在が現れたことが気になった。

 何しろタウゼントCEOの話だとキャラハン教授は《アンカーヴィル商会》──アルマータのダミー会社と繋がっていた筈。

 だがこの手記には《S-HARD》の営業が接触してきたと書いてある。

 

「……仮想空間を利用した新型導力ゲームの開発……ちょうど今日その話を聞きましたね」

 

「ああ……それとその開発は雇い主に隠すため……それがあの馬鹿を指してるなら辻褄が合う」

 

「……アーヤさんの会社にもアルマータの手が及んでいるかもしれない……ですか」

 

「サルバッドで見たようにアーヤとその仲間に連中は狙われてる……いや、敵対してる。だからアルマータ側もその対策のためにアーヤの会社に人を送り込んだのかもな」

 

「ですが導力ゲームの開発は一体何のために行ったのでしょう。ただ隠すためにしてはかなり大仰に感じます」

 

「うん。それにテストに参加した人たちが目を覚さないこととキャラハン先生の反応兵器の研究にどんな関連性が……? あまりにも無駄が多すぎる……それに“完成例”に“前例”……? もしかして何十年かかるか分からない“過程”を省略できるほどのAIは既に完成してるのか……?」

 

 ……手記を確認して分かったこともあったが謎も増えた。

 ここでこのまま考えたところで分かることもない。キャラハン教授もいないようだし、一度バーゼル市内に戻ろうと提案したその時──

 

「キャ──キャラハン先生ぇぇっ……!!!?」

 

 不意に聞こえた水音に違和感を感じて外の沼を確かめた俺たちはそこで探していた人物を発見した──既に物言わぬ死体となって浮かんできたデビッド・キャラハンを。

 

 ……俺たちはすぐに警察と遊撃士協会に通報した。

 そしてデビッド・キャラハンの死体が検死に回されるところを見届け、俺たちは改めて推論を話し合いながら動き出そうとする。

 

 ──だがそこで再び事態が動き出した。

 

「急いで戻ってきなさい! ──“お茶会”が始まってるわ……!!」

 

 バーゼル市内によるレンの連絡で、突如として現れた人形兵器が街を襲い始めたと伝えられる。

 俺たちは急いで街に戻り、警察や遊撃士と手分けして人形兵器を片付ける。

 幸いにもレンがいたことで的確な指示を各所に飛ばし、致命的な被害は出ていないが……。

 

「うう……お兄ちゃん……」

 

「こっちに来るな……! 妹には手を出させねぇぞ……!」

 

「市民が襲われています!」

 

「チッ……! (ギリギリ間に合うか!? 最悪、飛び込んで庇えば……!)」

 

 それでも全てを拾い切るにはかなりの無茶をしなければならない。

 俺がそれを覚悟して飛び込もうとした直後──襲われそうになっている子供の背後から影が飛び出した。

 

「──大丈夫か?」

 

「……ふぇ……?」

 

「た、助かった……?」

 

 ──その相手はアラミスの学生。あのエースという男子生徒だった。

 そいつは長大な剣で人形兵器を一瞬で破壊した。おかげで子供は助かったが……気にはなる。あの大剣……いや、何か特殊な機構があるな。ただの剣じゃねぇ。古代遺物とかではなさそうだが……普通の工房で手に入るような武器でも……しかもあの腕前は普通の学生とは思えない達人のような太刀筋。

 

「エース先輩!?」

 

「アニエスさんに……裏解決屋の人たちか」

 

「大した腕前だな。あの人形兵器を一瞬で片付けちまうとは……」

 

「……戦いには自信があってね。レンにも頼まれて逃げ遅れた人の救助を手伝っていたんだ。だから俺のことは気になるかもしれないが、ここは任せて先に行ってくれ。──この街区の人形兵器は俺が殲滅しておく」

 

「! ……そうか。なら遠慮なく頼らせてもらうぜ」

 

「ああ。アニエスさんたちも気をつけて」

 

「はい!」

 

 そうして俺たちはその場をエースに任せて離れる……あのエースという生徒が見せた異様な強さなら問題ないだろう。

 人形兵器を殲滅すると言った時のあの気──敵を容赦なく倒す非情さと背後にいた幼い兄妹を絶対に守ろうとする優しさ。その両方が混じっているように感じた。

 

「……アニエス。あのエースって生徒、どういう奴なんだ?」

 

「えっと……成績優秀で気さくですごく頼りになる先輩です。運動も得意で護身術の授業でもレン先輩に次ぐ強さだって噂では聞いてましたけど……まさか本当にあんなに強いなんて」

 

「動きが見えなかったね……」

 

「あの迷いのない太刀筋は只者じゃありません……!」

 

「ハッ、ただの学生にしちゃ動きすぎてたな」

 

「ですが素性はどうあれこの状況では助かるかと」

 

「ああ──気にはなるが今はそれより天文台に急ぐぞ!」

 

 ……俺としてもどこかで覚えがあるようなあのエースの気配や戦い方。やはり匂うが今は詮索する時じゃない。

 俺たちは人形兵器を次々と片付け、途中で学生の避難誘導を行っていたクロンカイト教授ともやり取りを行いながら……天文台の基部に格納されている導力ネットのメインターミナルでもある“中央端末”の下に急いだ。

 そしてそこには──

 

「フッ──やはり来たか、アークライド解決事務所の諸君」

 

「ウフフ、半月前の映画祭ぶりか。これも女神の導き──運命の赤い糸ってヤツかな?」

 

 第五の《ゲネシス》が嵌め込まれた中央端末《アウローラ》……それと今回の事件を引き起こしたであろう2人──あのメルキオルともう1人、黄金の下面に鎧と杖、宝珠を持つ男がいた。

 

「アーヤと一緒にいた《庭園》の管理人か。そっちの奴もどっかで聞き覚えのある格好をしてるが……人違いじゃねぇよな?」

 

「ああ、《剣の園(ソード・ガーデン)》の管理人──《(ソード)》のエンペラーだ。ヴァン・アークライド。君とは実際に顔を合わせるのは初めてだが……少なからず縁があるようだな」

 

 エンペラーと名乗った男の言葉を聞いて確信に変わる。やはりこいつはスウィンとナーディアを追いかけてた奴らの元締め。

 つまりあの2人も庭園出身、か。だがそうなってくると……もしやアーヤは……。

 

「で? てめぇらがこの騒ぎを引き起こした黒幕かよ。アルマータと敵対してるって話だったが……煌都と同じでやりすぎなんじゃねぇか?」

 

 アーロンがドスの利いた声で睨むのも無理はない。こいつらが裏の組織とはいえ今回のバーゼルでの事件はやり過ぎだ。キャラハン教授を殺害するだけなら暗殺組織として納得が出来なくもないが、そこには何か明確な悪意と目的を感じる。街に人形兵器を放ったことも含めて到底捨て置けることじゃねぇ。

 

「ああ。そのことなんだけど──僕たち、《庭園》を裏切って《アルマータ》に付いちゃったんだよね。だから庭園がやったっていうかこれも《アルマータ》としての実験になるかな」

 

「はぁ!?」

 

「!?」

 

 だがあっさりとメルキオルが告げた裏切ったという言葉には驚きを隠せねぇ。

《庭園》を捨ててアルマータに付いただと? だとしたら今までの動きは……。

 

「ど、どうしてですか!? あなたからは確かに悪しき息吹を感じますが……それでもクレイユ村ではアイーダさんを助けて……」

 

「ウフフ、騙されちゃって可愛いなぁ。確かに助けたけどあの事件を起こしたのは《アルマータ》のボス、ジェラールに頼まれた僕──つまりはマッチポンプってやつさ」

 

「なっ……!?」

 

 かつてのクレイユ村での一件もその時からアルマータに付いていたこのメルキオルが引き起こしたことだと告げたことで隣にいるフェリが困惑、そして静かな怒りを感じているのが分かる。そのアサルトライフルを強く握り込んでいた。

 

「……なるほどな。お前らが最初から敵だったってのはよく分かった。だが1つ聞かせろ。お前ら4人の《庭園》の管理人はバベル事件やサルバッドでもアーヤと絡んでた。──アーヤとお前らは一体どういう関係だ?」

 

 俺は怒りを感じる前に感じていた疑問。こいつらとアーヤの関係を問いかける。

 あるいは……アーヤの立場と言うべきか。

 大陸でも最強と謳われる伝説の暗殺者《切り裂き魔》。それと暗殺組織《庭園》。

 実際に絡んでいたことも含めて無関係とは思えねぇ。

 メルキオルとエンペラーの表情も感心したように変化しやがったし、やはりただの知り合いじゃねぇことは明らかだった。

 

「アハハ、鋭いねぇ。でも困ったなぁ。僕は確かに《庭園》を裏切って《アルマータ》に付いたけど……それでもアーヤ姉さんの隠してることを話すのは憚られるんだよねぇ」

 

「相変わらずだな、メルキオル。だが我もまたそれを口にすることはない。我の目的は《アルマータ》にある。しかしながら《切り裂き魔》を必要以上に怒らせるのは本意ではないからな」

 

「まあ裏切っちゃった時点でかなり怒らせちゃってるだろうけどね。もしかしたら殺されちゃうかもだけど──それはそれで姉さんの本気の殺意を受け止めることが出来るからいいかな♡」

 

「フ、我はそこまで付き合うつもりはないぞ」

 

「分かってるさ、エンペラー。──ってことでアーヤ姉さんのことは秘密にさせてもらうよ」

 

「っ……よく分からねぇが……」

 

「……どうやら《アルマータ》という組織の目的以外にもそれぞれの目的で動いているようですね」

 

 リゼットの言う通りだ。こいつらは《アルマータ》に付いちゃいるが、ボスのジェラール・ダンテスに心酔したり同調するような雰囲気は感じない。

 悪意はあるがあくまでも自分の目的のために動いているのか。結局アーヤとの関係について答えちゃくれなかったが、メルキオルが姉さんと慕ってることや他の管理人の動きも含めて少しだが見えてきた──少なくとも、アーヤと《庭園》という組織には深い関わりがあるということに。

 

「……アンタたちがキャラハン先生を惑わした……《アウローラ》を勝手に使って何をしようとしてるんだ!?」

 

 ──そしてその後は連中にこのバーゼルで何をしようとしているかと問いかけたが、それについても明確な答えは得られずはぐらかされる。

 

「本番が始まるまでの余興だ。君たちの力を“管理人”である我が直々に見定めてやろう。──《剣》のエンペラー。さあ、この我に力を示すがいい!

 

「それじゃあ僕も久々に──“管理人”としての力、披露しようかな? ──《棘》のメルキオル。君たちの相手をさせてもらうよ♡

 

 どちらにせよ事態を解決するためには戦うしかないみてぇだな……! 

 エンペラーとメルキオル。《庭園》の2人の管理人との戦いが始まり──俺たちは必死に食い下がった。

 重力と爆弾。それぞれの古代遺物を得物に戦う2人は本気を出しちゃいない。

 メルキオルは以前と比べて力を出しているがそれでもまだ先があるんだろう。俺たちの連携を余裕を持って捌いている。エンペラーも同様だ。

 俺とリゼットもまだ戦えるしガキ共も苦しそうだが何とか戦えちゃいる。だが完全に対抗するにはもっと気張る必要があんな……! 

 

「っ、皆さん、大丈夫ですか……!?」

 

「フハハ……! 中々良い逸材だ。特にそこの赤毛の小僧とクルガの娘は我の下で鍛えれば“最高の凶器”になりそうだ……! 裏解決屋などよりこの我の下で教育を受けてみるのはどうだ?」

 

「っ……誰がテメェなんかに従うかよ……!」

 

「悪しき息吹を持つ人から教わることなんてありませんっ……!」

 

「“重力”と“爆弾”の古代遺物とは厄介だな……!」

 

「ええ……これが《庭園》の管理人の力ですか」

 

「くっ、もっとFIOとXEROSのポテンシャルを引き出せれば……!」

 

「ああもう、我慢できなくなってきたよ……アーヤ姉さんは怒るかもしれないけど内緒で食べちゃってもいいかなァ……?」

 

「ククク、上等だ……ところんやってやろうじゃねぇか──!!」

 

「クルガの“焔”はここからです──!」

 

 管理人の力は未知数だがこっちの戦意は衰えちゃいねぇ。

 まだまだ戦える──そうして手に力を込めた時だった。

 

『“デコード”完了──自己創発プログラムを起動します』

 

「え──」

 

「!?」

 

 中央端末アウローラに嵌め込まれた第五のゲネシスとアニエスのゲネシスが光り輝き……機械音声がプログラムの完了を通知した。

 

『──これは……なるほど……そういう……』

 

「──!?」

 

「……この声は……」

 

 そして聞き覚えのある声が微かに端末から発せられる。

 昨日聞いたばかりのその声。明らかに意思の感じる言葉に理解が追いつかない。

 

「アハハ、上手くいったみたいだね! どうだい、教授──1と0の世界の居心地は!?」

 

『ああ──この上なく快適だとも』

 

 そして映像越しに現れたのは死んだはずの──

 

「……記録映像……いえ──」

 

「っ……どうなってやがる……!?」

 

「さ、さっき峡谷の沼で……」

 

「……まさか、こいつは──!」

 

「……知性と人格、記憶の全てを──AIとして“変換”したのでしょう。おそらく《ゲネシス》の力で……人としての“枷”を外れて《技術的特異点》その物とならんがために!」

 

『──その通りだ、お嬢さん。私はデビッド・キャラハン──バーゼル理科大学の物理工学教授にして、ゼムリア大陸の歴史に名を刻む研究──』

 

 ──そう、あのデビッド・キャラハン教授がAIになって現れ……!! 

 

『──こら──!! 何サボってんだこのあほ────!!』

 

「…………へ?」

 

「は?」

 

 ──たと思ったら突然意味不明かつ聞き覚えも見覚えもありすぎるノリと勢いで乱入してくる奴を俺たちは見た。

 AIになったデビッド・キャラハンは背後から現れたその存在に酷く怯えた声を出す。

 

『ひっ!? し、師匠!? 何故ここに……出番はまだ先だと……!』

 

『私の許可なくお客さんの前に出るなー! そんなんじゃ立派な落語家になれないよ! お茶汲みしろお茶汲みー! 湯呑みマッスルアタック!』

 

『ぎゃー!? 背中痛ー!? す、すみません《SAI》師匠!』

 

『リアクションがなってない! お客さんを笑わせるならもっと演技力を鍛えないとダメだよ! ってことでケツバットされながら50演目覚えろー! それが全部終わるまで《反応兵器》の理論構築に必要な高速思考は無し!』

 

『は、はい!! 分かりました師匠!! 寿限無寿限──ぎゃあああ!?』

 

「…………………………………………」

 

 俺たちはその一部始終を見て思いを一致させた──なんだこれ、と。

 あのデビッド・キャラハン教授がAIとして現れたと思ったら背後から現れた別の存在──アーヤ・サイードと瓜二つのそいつにぶん殴られて湯呑みを投げられてケツバットされながら落語……確か大陸極東の伝統文化……だったか? 俺も良くは知らないがそれを学ばされているようだ……意味不明すぎてあいつの奇行に慣れてる俺でも何を言ったらいいか分かんねぇ……。

 

「こ、こいつは……」

 

「まさか、アーヤさんもAIに……!?」

 

「《SAI》だって……!? それって……!」

 

「ふふ、アーヤ姉さんのAIではないよ。それにしてももうキャラハン先生を弟子入りさせてるなんてさすがは偽物とはいえ姉さんだね♡」

 

「……そもそもデコード完了したばかりの筈なのに何故既に影響を受けてるのだ……?」

 

『──あ、実はもう30分くらい前に終わって教授に落語の稽古付けてたんだけど通知するの忘れてたからそれっぽく段取りして出てきてみたんだよね。めんごめんご』

 

「……………………」

 

 ──あのエンペラーって奴、俺が気になってることを聞いてその返答にとんでもなく苛ついてるな。声を出すのをぷるぷる震えて抑えてやがる……あいつも苦労させられてんだな……。

 

「偽のアーヤ、か……ならお前はもしかして……あの──」

 

『──ということで~~~』

 

 そして画面に映ったアーヤは正座をしてお辞儀をする。その上でその名と正体をあいつと全く同じ笑顔とノリで名乗った。

 

『私はバベル事件で作られた可愛いアーヤちゃんの模倣擬態(シミュラクラ)──を! そこの私の厄介ファンが変換したアーヤAI! 《SAI(サイ)》ちゃんでーす! この後で()()()()()()()()()()()()()()()()()()ご一席お付き合いのほどよろしくお願いしまーす!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃──

 

「……………………何これ」

 

 表の仕事を終えてホテルに戻ったセラフィーネ・アロンはベッドに仰向けで寝ながら棒状の何かをアレな場所にぶっ刺して震えているアーヤ・サイードを見た。

 

「……………………」

 

 そしてあくまでアーヤの身体を心配し、その棒状のモノを抜いた。

 

 

 

 

 

 ──仮想空間内。

 

「よーし! イクス! ヨルダ! その調子! 次はスイッチしてモンスターを──」

 

「は!? 急に消えやがった!?」

 

「な、何が起こったの……!?」

 

 え!? 何!? 3人で仲良くゲーム攻略してたのに、んんんんんっ!!!??

 

──って、私はログアウト出来るんかい!! はぁ……はぁ……♡」

 

「な、何をやっているんだい……?」

 

「あ、セラちゃん! セラちゃんが抜いたの? 私はゲームクリアのために今忙しいからもう抜かないでね! リアルのことはレンとかエース君と一緒に任せるよ! 詳しいことはマキナに聞いて!」

 

 そうして私はもう一度プラグインしてゲームの世界に入る。一瞬リアルの身体に蓄積してたのもあって身体に電流が走ったけどなんとか耐えた。でも少しの間だけであれなら次起きた時が怖いな……ま、まあ私なら耐えきれるはず!

 

 

 

 

 

 

「…………いや、どういう状況……?」

 

 アーヤの秘書、セラフィーネ・アロンは酷く困惑しながらしばらく立ち尽くす。

 それからレンやエースにアーヤの状態だけは布団をかけて隠しつつ部屋の中でステルス状態でいたマキナに事情を聞いてから状況を説明するため、人形兵器が暴れ始めた街に向かっていくのだった……。




お後がよろしいようで。次回はアーヤ噺――ではなくバーゼル編ラストの怒涛のとんちんかんバトル回です。アーヤちゃんは反応兵器を防げるのか。お楽しみに。

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