TS不幸少女のゼムリア大陸災難記   作:黒岩

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盟主と謁見する不幸

 ──七耀暦1195年。

 

「──アクセス」

 

 ──皆様どうもごきげんよう。アーヤ・サイードです。今日は丁寧を心がけていきますね。

 

「《蛇の使徒(アンギス)》第四柱。《千の破戒者》エルロイ・ハーウッド」

 

 それには幾つか理由がありますが、それらは些細なこと。そう──私はもう心を入れ替えたのです。

 これからは偉大なる神を信じ、隣人を愛し、組織に忠義を捧げ働きたいと思います。

 

「執行者No.0、《道化師》カンパネルラ。並びに執行者候補アーヤ・サイードと共に《星辰の間》へと入室する」

 

 だから……あの、その……勘弁していただけませんか? 

 いやほんとやめ──うわあああああ!!? 光に包まれて……! いや──!? 

 

「よう。待たせたな──って、おいおい。もう全員揃ってんのかよ」

 

「ええ──つい先程。貴方の方は数分の遅刻ですよ」

 

「クク、そいつはすまねぇな。こいつを連れ戻すのに手間取ったもんでよ」

 

「……まあ、構いませんが」

 

 突然身体が光に包まれ、一瞬で視界が切り替わる。音も景色も匂いも何もかもが特殊なその謎の空間。正方形のキューブの内側のようにも見えるそこは一体どういう場所なのか私もよく分からない。分かるのは、そこがヤバい場所であるということ。

 使徒用位相空間──《星辰の間》はその名の通り、《身喰らう蛇》の《使徒》のみが入室を許される謎の空間である。

 どれだけ遠くにいようと接続出来てここに集まったり声を届けることが出来る……らしい。詳しい原理も詳細も知らないが、簡単に言えば結社の最高幹部である《使徒》達がみんなで集まって悪巧みをしたり、ホウレンソウを行ったり、神の御言葉を聞いたりする場所である。

 だからこそ中心の広場に立つ私とカンパネルラ以外の周囲には、現在6本の柱が浮かんでいる。

 そこに刻まれている数字はそれぞれⅠ、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴ、Ⅵ、Ⅶ──つまりはまだこの時点では決まっていない第二柱以外の《蛇の使徒(アンギス)》が全員が集まっていた。

 尤も姿を現しているのは私達をここに連れてきた《破戒》のオジサンだけだけど。そのオジサンは移動してきた際にそこに転送されたのかⅣと刻まれた柱の上に立って相変わらずの自然体だ。さすがに葉巻は吸ってないとはいえ、そのリラックス具合は羨ましい。私もそれくらい図太い心というか肝が欲しい。

 

「さて……ご苦労でしたね。カンパネルラ」

 

「いやいや、それほどでも。割とすぐ見つかったというか、あんまり遠くに行ってなかったからね」

 

「そうですか。そして──アーヤ。貴方の方はおよそ3ヶ月振り……貴方が《破戒》や元《月光木馬團》の者達と共に結社に入って以来ですか」

 

「は、はい……お久しぶりです」

 

 そして私が色々考えていると正面のⅠと刻まれた柱の上から声がかけられたので私はびくっとしながらも笑顔で挨拶を返す。その相手は《蛇の使徒(アンギス)》第一柱──原作ではまだ明かされてないはずの……いや、もうさすがに明かされてるかな? 私がこっちで生まれてもう11年も経ってるし。シリーズも完結しているんだろうか? どうなったのか気になるなぁ……。

 まあそれはともかく第一柱は使徒達のまとめ役であるしっかりとした男の人だ。そして私は会ったことがある。《使徒》とは全員面識があるというか、結社に入った際に折を見て全員私のことを一度は見に来ていた。その詳細は……でもなー。万が一私のことを見ている人がいたらネタバレになっちゃうかもしれないし言うのはやめておこう。ネタバレ駄目! 絶対! 

 

「ふむ。色々あって脱走したと聞いていたが……どうやら相変わらず息災のようだな」

 

「それはまあ……それだけが取り柄ですので……」

 

 そんで次はこれまた私が最後にやった時点では詳細の明かされていない第五柱のおじいちゃんが声をかけてくる。この人も第一柱とか第七柱のママと一緒で忠誠心が高い組だ。いや、《蛇の使徒(アンギス)》は全員信仰心というか忠誠心は持ってるけど、自分の欲望を優先しがちな問題児が《使徒》には多すぎるんだよなぁ……。

 

「ふふふ、軽い家出……いや、ちょっとした息抜きといったところかな? 随分と満喫しているようだね。この間は教会の従騎士を1人殺したらしいじゃないか」

 

「は、はぁ……あれはちょっとした事故みたいなもので……」

 

「成程。確か執行者候補を殺したことも事故だと聞いているよ。君はよく事故を起こすようだな」

 

「あはは……そうなんですよー。困っちゃいますよねー」

 

 なんて私に圧をかけてくる嫌な奴筆頭の第三柱《白面》ゲオルグ・ワイスマンこと面白エロ催眠教授。この、変態のくせに……! 私を精神的にイジメる気だな!? お前結社の計画より自分の欲望優先させただろ! いざとなったらもし生き残ってもそのことバラすぞ! そしてヨシュア君を解放しろ! 

 

「ええ。どちらも事故であることの確認は取れています。そうですよね? アーヤ」

 

「は、はい! その通りです!」

 

「ならば苦言はその程度でよろしいでしょう。少々不注意ではありましたが、その点については言い聞かせておけば問題ありません。それでよろしいですね? 《白面》殿」

 

「……ええ。もちろん私は疑ってはいませんよ。ただ思ったことを口にしたまでです。気を悪くしたのなら申し訳ない」

 

 そして私が責められてるのを見かねて助け舟を出してくれたのは私のママ! 第七柱! 《鋼》のアリアンロードこと《槍の聖女》リアンヌ・サンドロット様だー! ははは! どうだ! 恐れ慄け催眠エロ教授! こっちにはママが付いてるんだぞ! 

 はぁ、やっぱりリアンヌママは癒やしだなー。声だけでも癒やされる。姿も見せてくれればいいのに……それが無理なら後はもうずっとリアンヌママがお喋りしてほしい。他の使徒は大体みんな怖いからやだ。

 

「まあなんでもいいじゃないか。私としては君の研究が出来れば他に何をしようが問題はないと思っているよ」

 

「それはどうもありがとうございますー」

 

 そして私を擁護する声が続く。今度は第六柱。《十三工房》の統括者のF・ノバルティス博士。こっちも変態エロ博士だ。一見優しいように見えるが、私の身体のことしか考えてないどエロジジイ。なので私もお礼は言いつつも塩対応。どんな対応をしようと扱いは変わらないのでもう適当でいいと思ってる。実験中は怖いけどね。

 

「クク、よかったなぁ、アーヤ。外でもない《蛇の使徒》達からのお墨付きだ。これでこれからも安心してやらかせるぜ? もちろん、俺としてもお前のやらかしは大歓迎だ」

 

「オジサンはちょっと黙っててくれない?」

 

「おいおい……また反抗期か? まったく、年頃の娘ってのは扱いが難しいねぇ」

 

「誰が娘よ!」

 

 で、最後はオジサンだ。第四柱、《千の破戒者》エルロイ・ハーウッドのオジサン。《蛇の使徒》随一のやんちゃなオジサンで遺憾ながら使徒の中だと私が1番接することが多い人。嫌いさで言うならエロ教授とエロ博士の次に来るけど、なんだかんだ長い付き合いなのと軽いノリなので接しやすくはある。なのでオジサンには遠慮なく強い言葉をぶつけるのだ。

 

「とにかく、教会の従騎士と執行者候補を殺したことについてはどちらも問題にするつもりはありませんので、安心してください」

 

「は、はい……それはありがとうございます」

 

 そして第一柱が締めくくる。第二柱の深淵の魔女さんはまだいない──というかもういると思ってたのにまだいないんだよね。どのタイミングで入ってくるのかやっぱり私は覚えてないので知らない。早く会いたいなぁ。声が好きなんだよね。美人のお姉さんだし。今のところ使徒には癒やしがリアンヌママの1人しかいないからもう1人くらい癒やしがほしい。面白教授のこともすごい嫌ってたみたいだし、一緒に悪口で盛り上がりたい。

 というか……早く面白教授死なないかなぁ……この間のこともあるし嫌いだけど怖さもあるんだよね。告げ口しちゃったし……この場では何もされないだろうけど後でまた何されるか分かんなくて怖い。ぶるぶる……。

 

「他の件についても《聖女》殿から聞いていますよ」

 

「はぁ……他の件……」

 

「そちらも既に裏は取れています。どうやら随分なことをされたようですね」

 

 ──えっ、他の件って何? 私知らないんだけど……。

 第一柱の言葉に私は首を傾げる。しかもリアンヌママから聞いた……? それで裏が取れていて……しかも随分なことをされたと私を慮るようなこと……。

 もしかしてアレのこと……? え、認めたの? しかもここで言っていいの? でもなんか普通にしてるみたいだし……もしかして認めたのか。そして悪いとは思ってないけどそれは受け入れられ、その上で私のことを気遣ってくれている。

 つまりは仲裁。2人とも仲直りして相手のことは許してあげてねってことだ。なんだ、そのことか。だったらこっちから先に謝ろう。私も告げ口したのはよくなかったねと。

 

「……はい。私としても告げ口はよくなかったと反省しています。幾ら教授に服を脱がされて発情させられたとはいえ……」

 

「……………………」

 

 ──星辰の間が凍りつく

 一気に空気が冷え、静かになった使徒達。私はそれを感じて頭に疑問符を浮かべた。あれ、なんで誰も何も言わないの? 

 

「あ、あの……?」

 

「……いえ、その件ではありませんが……それは初耳ですね……」

 

「アーヤ……私が告げた件というのは教団の件のことです。メッセルダムで貴方と遭遇した者達は教団の人間であると……」

 

「えっ!? そ、そっちだったんですか!?」

 

「はい。──しかし貴方がそちらの件について聞きたくなるのも理解出来ます。私も以前問い詰めた際にははぐらかされ、納得が行かないまま引き下がりましたが……せっかくです。使徒達が集まるこの場にて改めてその真偽と是非を問いましょう。どうなのですか、《白面》殿?」

 

「何だと……!? っ……アーヤ貴様……! よりによってこの場で何ということを……!」

 

 あ、あれ……? エロ教授が怒ってるし第一柱も困惑してるしママはなんかまた怒りをエロ教授に向けてる気がする。

 

「なんと……《白面》殿にそのような趣味があるとは……」

 

「違う! それは全くのデタラメだ……! 私はそのようなことはしていない……!」

 

「前にもそう聞きましたが……とても信じられません。私はそのアーヤがそういうことになったであろう()()()目撃しています」

 

「それは私の知ったことではないっ! その娘が勝手にしたことだ!」

 

 第五柱が驚き、エロ教授が言い訳をする。リアンヌママがそれを更に追求する。なんかちょっとマズい気はするけど……でも言い訳するのはムカつく。自分がやったことを認めないなんて……せっかくリアンヌママがいるんだからこの場はなんとかして論破してもらおう。それは違うよ! 意義あり! 

 

「ふむ……確かにねぇ。教授は彼女に暗示を使うことを私にも示唆していた。そして、君の暗示の力があれば多少効き目が悪かったとしても彼女を発情させ服を脱がすことも簡単に出来るだろうね。とはいえそのような趣味があったとは私も知らなかったが……」

 

「博士っ……それは……!」

 

 そしてここでまさかの助け舟。博士がなんか冷静にそれは可能だし考えられることだと告げてきた。結社の技術部門の長にこう言われると辛いものがあるだろう。事実を指摘されてエロ教授がたじろぐ。いいぞエロ博士ー! 今だけは応援するから頑張れー! 

 

「ハハハ……! まさかそんな面白いことになってたとは……さすがの俺も気づかなかったなぁ……だがそれが事実だとすると……こりゃ《破戒》の名は教授に献上した方がいいのかねぇ?」

 

「《破戒》……! 貴様まで……!」

 

 更にオジサンの追撃がエロ教授に突き刺さる! 私には分かる。今のオジサンは完全に愉快犯で面白がってるだけで真偽なんてどうでもいいと思ってる。こっちの方が面白そうってだけで適当に言ってるだけだ! すごい! たちが悪い! でも今だけは許す! そして地味にさっきからカンパネルラが私の横で顔を背け、口元を必死に抑えて身体を震わせている。もしかして笑ってる? 笑い事じゃないんだけどね。私の尊厳がかかってるんだから! 

 

「……まあ事の真偽や善悪に関してはともかくとしても、使徒同士でトラブルになるようなことは避けた方が賢明でしょう。以後、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なっ……!?」

 

 そして使徒達のまとめ役である第一柱からの追撃! 締めの御言葉! 冷静にエロ教授がやったことを窘めてくれている! 勝った! 第三柱完! 

 

「待て……! だから私は──」

 

「教授。それ以上は控えてください。──そろそろ降臨なされますので」

 

「っ! ……だが……」

 

「《聖女》殿も構いませんね?」

 

「……ええ」

 

 おお! さすがは第一柱! 有無を言わさず反論を却下! 以上、閉廷! アーヤちゃん勝訴! わーい! やったー! 慰謝料持ってこーい! ついでにヨシュア君解放しろー! 

 いやーこれにて一件落着だね。それで後は……って、降臨? 降臨って……あ、忘れてた。降臨ってことは──。

 

「──皆、揃っているようですね」

 

「は──全員揃いましてございます」

 

 ──不意に空間に声が響く。

 それは女性の透き通った美しい声であり、何やら神々しさすら感じる声だ。その声を合図に第一柱の柱の背後に上から新たな柱が降りてくる。その柱は使徒達のどの柱よりも上位に位置し、その上で光と共に1人の美しい女性がほんの僅かに透き通った状態で顯れる。

 真っ白くて長い髪をしたその美人はその姿を顕すなり、私を見た。そして使徒達に告げる。

 

「随分と話が盛り上がっていたようですね」

 

「は……お恥ずかしながら。主に聞かせるような話ではありませんでした。我ら使徒一同、《盟主(グランドマスター)》へ謝罪を致します」

 

「構いません。私としても中々に珍しいものを見られました」

 

 ──うわああああああああ!!? 《身喰らう蛇》の《盟主(グランドマスター)》様だ────!!? めっちゃ美人────!! 神々しい──!! どう考えても神様とかそんな感じの人だ──!! 絶対何もかもお見通しなんだ──!! うわあああああん!! 

 

 ……あ、いけないけない。こほん。さ──私はもう心を入れ替えましたからね。今の私は《盟主》様の忠実なる下僕。盟主様のためなら何でもやります。靴だって磨きますし足だって舐めます。全然いけます。美人だし。むしろ舐め──。

 

「そして──貴方がアーヤ・サイードですね?」

 

「っ! あ、は、ははははい! お初にお目にかかります盟主様! アーヤです! 執行者候補です!」

 

「ええ。私も存じていますよ。遅まきながら貴方が我ら《身喰らう蛇》に加わったこと、心から歓迎します」

 

「あ、ありがとうございます……!」

 

 わぁ……わァ……ァ……優しい……なんか存在から違いすぎてちい○わになる……この人に比べたら私なんてただのちっちゃくて可愛いだけの褐色美少女だ……。なんかずっと怖がってたけど怖がる必要はない……か? いや、まだ分からない。盟主様の正体が不明すぎて油断は禁物だ。私の印象だと私みたいな異物とか二次創作にも寛容そうな神様って感じだけど実際はどうか分からない。「貴方は不愉快なゴミなのでこの次元から消し去ろうと思います」とか言われたら人生終わっちゃう。いや、さすがにそこまでは言わないか。解像度低いかな。でも何言われるか分からないって意味ではしっかりしないと……。

 

「さて、今日貴方を呼んだのは他でもありません」

 

「はい……何でしょうか?」

 

「緊張する必要はありませんよ。貴方の可能性を私自ら見極める──ただそれだけです」

 

「は…………」

 

 なんてことを仰ってくるけど……つまりどういうこと? 私の可能性って何? もしかして……進路相談とか? 貴方は結社には向いてません。デザイナーになるのが良いでしょう──的なこと言われちゃう? それなら別にいいけど……。

 

「……………………」

 

「……………………」

 

 そして盟主様がじっと私を見つめてくるが……う、なんか気まずいような恥ずかしいような……割と距離は離れてるはずなのになんだか近くに感じる。瞳も綺麗だから吸い込まれそうだなぁ……。というか正直……なんというか……アレだよね。うん、こんな風に盟主様と見つめ合っていると思い出す気がするような────してくるような……。

 

「──成程」

 

 ハッ……駄目だ駄目だ。集中しないと集中。盟主様に見透かされるかもしれない。

 私の恥ずかしい《闇》の部分が──

 

「よいでしょう。力は元より、資質は十分と考えます」

 

「主よ。では……」

 

「ええ。ワイスマンも、構いませんね?」

 

「……はっ。主の判断であれば是非はございません」

 

 ……って何の話してるんだろ。使徒の人達も盟主様も主語を口にしない癖があるよね。大事なところは隠す秘密主義というか……おかげで私みたいなちょっと頭が良いだけの美少女一般人には何がなんだか分からない。

 まあでも私が関知することではないかな。黙って聞いてればいつの間にか話も終わってるだろう。なのでじっとしていよう。そして終わったら眠りたい。疲れたからね。出来ればリアンヌママと一緒に寝たいな……。

 

「では……アーヤ」

 

「へっ……あ、は、はいっ!」

 

 うわっと危ない。別のこと考えてた。失礼のないようにしないといけないのに。ちょっと気を引き締めよう。ここからは返事もしっかりと元気よく。何を言われてもイエスと答えよう。何よりママ以外の使徒ならともかく盟主様やママの話を聞かないのは失礼だ。

 

「ハーウッドやマクバーンからの推薦もあり、力と資質も問題ないと判断致しました」

 

「はい」

 

「よってアーヤ・サイード。貴方には──《執行者》N()o().()()()()()()()()

 

「はい」

 

 そっかぁ。私が執行者ね。まあ妥当なところだよね。私って可愛いし才能あるし。

 ………………………………ん? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ではハーウッド。アーヤのことは任せましたよ」

 

「はっ。私にお任せください」

 

「ええ──それではアーヤ。またいずれ、機会があれば会うこともあるでしょう」

 

「あっ、はい……また会いましょう盟主様……」

 

 ──そうして私は星辰の間から退室し、オジサンと共に元いた拠点の1つへと戻る。

 まだ何を命じられたのか理解出来ない中、オジサンは私を見て悪そうに笑った。

 

「クク、遅くなったがこれが俺からの誕生日プレゼントだ」

 

「え?」

 

「実は異名も既に考えてあってな──血染の裁縫師(ブラッドクチュリエール)って異名だ。本当はもうちょっと物騒な異名を付けてやろうと思ったんだが、レティの奴からも言われてなぁ。お前が少しは喜びそうな名前を付けてやったんだ。感謝しろよ?」

 

「あ、はい……感謝します」

 

 え……何、それは……異名って……いやそれよりも執行者って……いやそもそもNo.ⅩⅢってヨシュア君の番号だし、なんで私なんかが──。

 

「ま、No.ⅩⅢを狙ってた教授からは()()()()()()()()()()()()()()……これも盟主風に言うなら巡り合わせってやつだ。これからもその名に恥じないよう頑張ってくれよ?」

 

 ──いやだから……なんで私が《執行者》になるの────!!? うわあああああん!! なんでなんでなんで────!? 原作崩壊だ────!! いや────!!? 

 

 

 

 

 

 ──七耀暦1195年。1月。

 

 結社《身喰らう蛇》に執行者No.ⅩⅢ《血染の裁縫師》アーヤ・サイードが誕生した。

 

 ──そしてそのアーヤ・サイードは……。

 

「でもバレなくてよかったぁ……私があの時、盟主様と見つめ合ってる最中に、盟主様をエッチな目で見てたことがバレたら怒られるどころじゃすまなかったよ……」

 

 ──後に自らの個室で、不敬すぎる言葉を呟いていた。




そういうわけで今回はこんなところで。執行者になりました。異名のルビのクチュリエールはフランスで言う女性のデザイナー。高度な技術を持つ一流職人のことみたいな感じ。縫製や裁断もしたりする。
次回は執行者としてお仕事です。多分。

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