TS不幸少女のゼムリア大陸災難記   作:黒岩

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庭園の主になった不幸

 ──《庭園(ガーデン)》は我が愉悦のために作り上げた……その名の通り()()()()

 

 我が所属していた《D∴G教団》もまた愉快な組織であったが、連中は些か派手に暴れすぎた。

 権力者を抱き込み、勢力を拡大するその手法こそ見事なものだったが、その手を広げすぎたがゆえに遊撃士協会や軍に警察。果ては《星杯騎士団》や《結社》の逆鱗にも触れてしまった。

 だからこそ滅びるのは必然であったのだろう。面白い場所ではあったものの泥舟にいつまでも乗る趣味はない。

 だからこそ我は先んじて教団を抜けてその殲滅作戦から逃れ、更には以前から声を掛けてきた《破戒》の申し出を受けることにした。

 

「ヤンチャが出来る場所が欲しいんだろ? なら人材だけ紹介してやるから好きにやってみねぇか?」

 

 ──そんな不遜な誘い文句だった。こちらの嫌がるようなことを敢えてやってくるようなその態度は気に食わない。

 だが人を、場所を欲しているのも事実。ゆえに我はその誘いに乗って引き合わされたのだ。

 最初に会ったのがメルキオルという子供だ。教団で実験に使われるような年齢であるその子供は、かの《月光木馬團》の生き残りである天才的な殺戮者だった。

 既に月光木馬團の残党をまとめており、これをどうするかと悩んでいると素振りを見せて誘いを掛けてくる。どうやらこちらも《破戒》と通じていたらしい。メルキオルは《破戒》と共にもう1人、招き入れたい人材がいると嘯いてくる。しかもボスの座をくれてやるつもりだと我に予め告げてきた。

 だがそれも受け入れてやった。その人材とやらがかつて教団の実験体であり、あの頭のネジが飛んでいる連中が探し求めていた奇蹟の存在だと知ったがゆえに。

 その名をアーヤ・サイードと言う。巷を騒がせる都市伝説のような伝説の暗殺者《切り裂き魔》の正体であり、現在は《身喰らう蛇》の執行者No.ⅩⅢ。《血染の裁縫師》の異名を持つ少女だ。

 

《血染の裁縫師》は我にとっても興味深い存在ではあるが、我としては謎を解き明かすよりも道具を作り出す方が重要だった。

 

 そう、道具だ。我の使う道具であり玩具。我が愉悦のために使われる人形こそ、我の求める庭であり世界。

 だからこそ協力者であるメルキオルと共に組織の構想を練った時、我らは奇しくも同じ発想に至ったのだ──子供を使おうと。

 子供は純真にして無垢。既に自我や癖、個性を持った大人よりも“教育”しがいのある存在。子供の中から教育を施せばどんな色にだって染まる。それがたとえ、人を無慈悲かつ正確に殺す暗殺者であっても。

 それは僅かながら《月光木馬團》が証明している。かの組織は少ないながらも子供を拾い、優れた暗殺者に育て上げた実績がある。《黄金蝶》、《死線》、《血染の裁縫師》。そしてメルキオル。誰もが素晴らしき殺しの腕を持つ。

 ゆえに我は、その実績を信用し、子供を使った暗殺組織──《四の庭園(フォーガーデン)》というシステムを作り上げた。

 各管理人がそれぞれ子供を管理し、仕事を与える。裏切り者や脱走者には死を与え、それでいてパートナーを監視しあい、騙し合うような疑心暗鬼になる掟を制定した。

 月光木馬團と教団の残党にも《庭園(ガーデン)》の下位構成員たる子供達を教育する場“養成所”を管理させ、数年での教育を施す。その教育をクリアすれば晴れて暗殺者となり、彼らはコードネームを与えられ、二人一組となって仕事を行う。

 互いに愉しみを邪魔し合わぬようにそれぞれの庭園はそれぞれの管理人が運営していく。無論、組織全体の方針や行動に関しては少しばかり合わせていく必要もあるだろうが、そのくらいは許容出来る範疇だ。

 それに組織の頂点に立つ《庭園の主(ガーデンマスター)》殿は、基本組織の運営に口出しすることは少ないだろうと《破戒》やメルキオルからも告げられている。

 あくまでも彼女は神輿であり、伝説の暗殺者として子供を育て、導き、畏怖させる……そんな存在でしかない。

 

 とはいえ我は《庭園の主(ガーデンマスター)》となった彼女の力を()()()()()()()()()()()。ゆえに完全な神輿という程でもないが。事実として、恐らく我では分が悪いだろう。我の持つ古代遺物《照覧のレガリア》も彼女に通じるかは未知数だ。仮に通じたとしても執行者となる程の強者であり、更にはメルキオルからも予め注意を受けた──「アーヤ姉さんに手を出したら幾ら《皇帝》でも殺すからね♪」と。我としても彼女を支配するつもりはないためその心配は無用でしかないが。

 

 それに何をするにしてもまずは組織を形にするところから動かねばならないだろう。

 我の管理する“剣の園(ソードガーデン)”。

 メルキオルの管理する“棘の園(ソーンガーデン)”。

 “黄金の園(アウルムガーデン)”と“錆の園(ラストガーデン)”に関してはまた新たな管理人を探している最中だ。概ねの目星は付いているが……任せられる人材を見つけるまでは我やメルキオル。そして《庭園の主(ガーデンマスター)》が管理していくことになるだろう。

 

 そして最後の1つ。《庭園の主(ガーデンマスター)》が管理する隠された庭園もまた彼女自身の要望で用意させてもらった。

 

 その名は血の園(ブラッドガーデン)。その名は彼女の異名と血塗られた組織の意味を込めている。

 4つの園が交わる中心にあるその隠された庭には、下位構成員で留めるには惜しい逸材を集める予定となっている。ゆえに隠された掟として“卒業”というものも用意させてもらった。

 無論、それはただの卒業ではない。卒業とは終わりでありながらも新たなる始まりを意味する。それと同じことだ。優れた存在はより次の高みへと向かうだけのこと。

 

 そしてそこで何が行われるかは──闇の申し子たる《庭園の主(ガーデンマスター)》のみぞ知ることだ。

 

 

 

 

 

 ──どうも受験を控えた15歳のアーヤ・サイードです。

 

 今は1199年。私は1月2日生まれなので来年だけど今年度に16歳になります。つまりは来年の1200年には受験です。まあこの世界じゃ必ずしも16歳に受験しなきゃいけないって程でもないけれど。大体16から18くらいに頭が良かったり目指す道がある人は高等学校に通う感じなので。大体の人は日曜学校で勉強を終えてその後はそれぞれ職についたりするし、それこそ将来何になりたいかによって子供の時からなんだかんだ親だったり周りの仕事を手伝うこともあるから割とそれで問題なかったりします。

 とはいえ私は青春を送りたい。そして真っ当な道に進むために学校に行きたいので今日も今日とて勉強を頑張っています。

 

「──なあなあ! アーヤ姉! ご飯まだかよー! 腹減ったー!」

 

「はいはい! もうすぐで出来るから静かに待ってて!」

 

「イクス……うるさい……ふわぁ……眠……アーヤ姉……布団敷いて……」

 

「もうすぐでご飯出来るんだからお昼寝は禁止! ──レン! ちょっと見てて!」

 

「ええ、レンに任せて。──ほらダメよ貴方達。アーヤを困らせたら。良い子にしてないとレンが代わりにオシオキすることになるわ」

 

「っ、んなもん怖くねーし! なあヨルダ!」

 

「私は良い子だから言う事聞く……オシオキはイクスだけ受ければいい……」

 

「なっ!? そんなのアリかよ! ビビってんのか!」

 

「──はい! 焼きそば作ったから食べてて!」

 

「おっ、メシだメシー! って、げっ……野菜めちゃくちゃ入ってんじゃん!」

 

「私、ニンジン嫌い……」

 

「ちゃんと野菜も食べるように! 私は仕事行ってくるからちゃんと訓練も真面目に受けてね! 言う事聞かないとメルキオルかエンペラーに預けるからね! レンは見張っててね!」

 

「ま、マジかよー……それは嫌だ……」

 

「あの2人はニンジンより嫌い……」

 

「ウフフ、任せてアーヤ。レンはお姉さんだからちゃんと大人しくしてるし面倒も見るわ」

 

「お願いね! それじゃ行ってきまーす!」

 

 ──そう……勉強……勉強だけ……してる筈だったんだけどなぁ……《庭園の主(ガーデンマスター)》になってしまったばかりに……。

 と、そんな訳でご覧の有様だ。私は学校に入るための条件としてオジサンから新たな暗殺組織《四の庭園(フォーガーデン)》の管理人兼ボスになってしまった。なんと私が《庭園の主(ガーデンマスター)》に。そんなのどっかの怨霊に任せておけばいいのに……なんで私に……って百回くらい思った。

 

 でも一度引き受けてしまった以上は断りにくいし、久し振りに会ったメルキオルも私が抜けるって言ったら何してくるか分かんないし、エンペラーはもう何考えてるか分かんないしで怖いからとりあえずはそのままの現状維持をすることになった。

 なので《庭園(ガーデン)》という子供を使った暗殺組織の長になってしまった訳だが、どうせやらなきゃいけないなら自分なりに状況は良くしたいので自分は自分の庭が欲しいと言ったらエンペラーとメルキオルが4つの園が交わる中心にして隠された庭である“血の園”とやらを作ってそれを私が管理する庭園とした。もうなんか私が諸悪の根源みたいになりそうで嫌だけど、大勢の子供達に暗殺任務を振り分けて裏切り者は粛清するなんて怖い上に極悪なことはやりたくないので管理人が独自にそれぞれの園を運営するという組織構造を逆手に取ることにした。

 

 それでまあしばらくは何もせずに受験に集中しようと思ったんだけど、そんな中私に預けられたのがこの5歳の双子。イクス・エルダリオンにヨルダ・エルダリオン。なんかカルバード王家の末裔で異能持ちの少年少女を預かって暗殺者として育てることをオジサンに任されてしまった。いや、大人しく養成所に預けてたらいいじゃん……って思ったけど放置するとそれはそれで極悪な子供になるんだよなぁ……って思うとちょっと可哀想になったので仕方なく引き受けることに。どうせ暗殺者になるにしてももうちょっとこう……なんとかならないかなって。

 まだ5歳だし教団に育てられたから若干倫理観がおかしいにしてもまだ矯正は効く段階だと思うのでちょっとだけ面倒見つつ闇は闇にしても浅くしてあげれば多少はマシになるかも。そんで強くなったらついでに私の身辺警護とかしてほしい。

 

 なので私は受験を控えていながら何故か子供を、レンも含めたら3人も面倒を見なきゃいけないというお姉ちゃんになってしまった訳だ。なのでさっきも3人も私の部屋に集まってきてたので雑に焼きそばを作って与えてそのまま仕事だ。常に面倒見なきゃいけない訳じゃないけど忙しすぎる。《庭園》はまだ組織を形にする段階だからやることはそんなにないけど執行者としての仕事がなくなった訳じゃない。いや、断ることも出来るんだけど、今日のは断るわけにはいかなかった。何しろ受験にも必要になってくるので。

 

 ──ってことで飛空艇に乗って遥々やってきたのは……ヴァリス市国! 中東! 私の故郷と言っても過言ではない場所だ! 

 

「うわぁ……! 聞いてはいたけどめっちゃ都会……! すっごー……!」

 

「ふわぁ……はしゃぎすぎだろ……眠ぃ……」

 

「だってほら! 見て見て! ホテルめっちゃ豪華! プールもある! 街並みも都会なのにちゃんと中東っぽい! なんか懐かしい!」

 

「広すぎてむしろ面倒だ。プールなんざあっても入らねぇしな。それに中東っぽいのは中東だから当然だろ」

 

「うっわノリ悪……せっかく良いホテル泊まれたんだからもっと喜んだらいいのに。やっぱマクバーンは暴れることにしか興味ないかぁ……」

 

「おいおい、人を戦闘狂みたいに言うなよ。俺だって年がら年中暴れてる訳じゃねぇからな」

 

「だって戦闘以外でマクバーンがテンション上げてるところ見たことないし。まあ別にいいけどね。それより荷物置いたら早速プール入ろーっと!」

 

「それよりも先に仕事だろ……ま、別に俺も乗り気じゃねぇが」

 

「えー。せっかく自分で水着作って来たのに……まあいいや。さっさと仕事終わらせてから息抜きした方が気楽に楽しめるしね」

 

 私は予約していた高級ホテルの一室で一緒に来ていた執行者のNo.Ⅰ。マクバーンと共に荷物を置いてからすぐに外に出る。

 なんだかんだマクバーンと一緒に仕事に出るのは久し振りだ。私が結社に入ってからたまに絡んできたりはしてたけどさすがに燃やされたりはしてない。というか私が徹底的に嫌がった。するとさすがにマクバーンも何もしてこない。意外と常識人で助かってる。ヴァルターみたいな強い奴にはいきなり殴りかかるような人よりは全然マシだ。

 それにマクバーンは私的にも一緒に行動するのは実は悪くないのではと思ってる。何しろ執行者の中ではぶっちぎりの最強。結社の中でもリアンヌママとどっちが強いかって語られるくらいには最強なので、もし危ないことがあってもマクバーンが大体対処してくれる筈。

 

 だからこそ私は今回の仕事でマクバーンに一緒に付いて来てもらうよう頼んだし、マクバーンもなんか私と一緒にいたら何か起こるかもしれないとか言って付いてきた。助かる。私は何か起こった時のために強い人を側に置いて回避することを学んだ。やっぱり男も女も頼れる強い人がいいよね──ワンチャン上手いこと誰かと恋人っぽくなって守ってもらうとかもありか……? 男でも女でもセッ◯スだったら私誰とでも出来るし。恋愛は女の子がいいけどちゃんと醜いところがなくて性格も悪くない強くて腹黒いところがない私を絶対に守ってくれるイケメンなら私も多少は譲歩してあげるのも吝かじゃない。不幸を回避するための手段の1つとしては全然ありだ。背に腹は代えられないし。

 

 そうなるとマクバーンとかレーヴェとかともちゃんと絆イベント起こしまくって仲良くなっておいた方がいいかもしれない。いや、割とよく喋ってはいるけど。大事な友人とか仲間とかになればオジサンとかメルキオルとか面白教授とか博士からも私を守ってくれる筈! 

 ただそれ目的で仲良くなるのもアレなんで、仲良くするならちゃんとこう……相手のことも考えてあげよう。うん、そうしよう。マクバーンの場合は……強い奴と戦わせてあげればいいかな! 

 

「よーし。そうと決まれば……マクバーン! 今日の仕事は全部任せた!」

 

「いや、むしろお前さん1人で十分だろ。俺は適当にしてるから好きにしてくれ」

 

「…………よし! それじゃあ張り切って行こー!」

 

 ──ということで! 私とマクバーンは2人でヴァリス市国を出て中東の辺境へ向かう! 移動は徒歩! 道中の魔獣はなんだかんだ私とマクバーンで倒す! 

 

 そうして今回の仕事……結社の繋がりのある企業のために七耀鉱石資源近くにある村を占拠する猟兵を蹴散らしに来た訳だけど……あれ? 報告に聞いてたのとちょっと違う? 

 

「なんか猟兵同士で戦ってる?」

 

「あん? ありゃあ確か……」

 

 私は丘の上から村を見下ろし、そこで戦っている2つの猟兵団を見て首を傾げる。占拠してるって話だったのになんか別の勢力……第三勢力でも来ちゃったのかな? 

 そしてマクバーンもまたなんか覚えがあるようで呟いていた。そして不意に気配を強くする。

 

「クク……まさかこんなところでかち合うとはな。いいねぇ……つまらねェ仕事だと思ってたが……これなら俺も熱くなれそうだ……!!」

 

「あっ! ちょっ、マクバーン!?」

 

 って、なんかやる気を急に出したマクバーンが崖から村へ飛び降りた! え、なんで!? そんなにやる気出る要素あった!? 

 ……いやでも別にいいかな。マクバーンが暴れてくれるなら私は何もしなくていい。村が燃えるのは可哀想だけど見た感じ村人はいないみたいだし。多分死んだかどっか、鉱山辺りに缶詰にでもされてるのだろう。マクバーンも配慮くらいはするだろうしね。

 ってことで私は持ってきたお弁当──市内で買ったケバブサンドでも食べながら観戦しようかな。これぞ高みの見物。やっぱり強い人を連れてくると楽でいい。そんで相手は……なんか弱そうな猟兵団と、それを効率的かつ練度の高い動きで蹴散らす赤い装備の猟兵団。うーん、なんか見覚えあるんだけどなんだったっけ……あっ、思い出した! あれって確か──。

 

「──!? うわっ!?」

 

 ──と思い出した瞬間、私がいた場所にめちゃくちゃ銃撃が来る! 危ない! なので何とか避ける! あー、私のケバブサンドがー!? しかも切りかかってきた! 

 なので私は反射的に《ゾルフシャマール》を取り出して切りかかってきた青年の攻撃を弾き飛ばす。

 

「な、いきなり何するのよこのバカー!」

 

「っ……やっぱただの娘じゃなさそうだぜ……()()()……!」

 

「──ああ。良い反応だ。あっちで暴れ始めた《劫炎》と同時に現れたことといい……小娘。お前も結社の執行者か?」

 

「え? あっ、はい。そんな感じでって……」

 

 気づけば一瞬で崖を背後に囲まれる私。その囲んでいる猟兵達は皆赤い装備を付けていて、全員が私に狙いを定めている。

 そんで何より私の思考を硬直させたのは、その猟兵を率いている先ほど切りかかってきた若い青年と、更に前に出てきた()()()()()()()()()()()()()。2つの大きな戦斧を握った赤い髪のその人物に、私は内心で動揺しまくりながら声を出す。

 

「あー……も、もしかして貴方達は、《赤い星座》の方々……だったり……?」

 

「フフ、その通りだ。《赤い星座》の副団長をしている。シグムント・オルランドだ。戦場じゃもっぱら《赤の戦鬼(オーガ・ロッソ)》なんて呼ばれてる。お前さんの名は?」

 

「あ、どうもこれはご丁寧に……私は執行者No.ⅩⅢのアーヤ・サイードです。《血染の裁縫師(ブラッドクチュリエール)》って呼ばれてます」

 

「ほう。その若さで執行者……それも噂のNo.ⅩⅢ(ナンバーサーティーン)か。最強と名高い《劫炎》と言い、まさかこんなところで相まみえるとはな」

 

「ああ、いやそれほどでも……私なんて才能も取り柄もそんなにないしがない執行者ですので……」

 

「フフ、謙遜する必要はない。その身に付いた血の匂い……どうやら相当の経験を積んでいると見た。ウチの娘やこっちのランドルフも相当やらせているが、おそらくお前さんには敵わんだろう。──()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「いやいやそんな……私如きがシグムントさんの相手なんて──え?」

 

 ──え、今なんて?

 私が、この人と戦うの? 私が? 

 

「だが包囲され、この俺を前にしても動じぬその胆力は気に入った。噂の執行者とやらも興味があるし、依頼人(クライアント)のオーダーもあるからな。悪いがここで狩らせて貰おう」

 

「は? い、いやいやいや! ちょっと落ち着いて……! は、話し合いましょう! 話し合えば分かりあえますって!」

 

「悪いがそれは出来ない相談だ。向こうで既にお前の仲間の《劫炎》が兄貴とやり合ってウチの部隊にも少なからず被害を出している。こうなってはこっちも面子的に引くことは出来んな」

 

「そ、そこはなんとかなったりしませんかね……?」

 

「フフ……往生するんだな。さあ行くぞ──この《赤の戦鬼(オーガ・ロッソ)》の双戦斧を受けられるか、試させて貰おうか! 執行者!」

 

 ──そうしてシグムントさんは私に向かって突っ込んでくる。そして、その巨大な斧の1つを容赦なく私の身体目掛けてぶん回してきた。

 私はそれをガードしつつも直撃を受けてふっ飛ばされながら思う。崖から落ちながらの内心の絶叫だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──うわああああああ!!? やっぱり《赤い星座》だ────!!? 大陸西部最強の猟兵団の1つ──!! しかも副団長の《赤の戦鬼(オーガ・ロッソ)》だ──!! シグムントだ──!! で、でもこのまま崖から落ちて逃げれば……ぎゃ──!!? 向こうも飛び降りて追撃しに来た────!!? 更に斧ぶん投げて来た──!!? 他の兵も私を狙ってる──!!? 助けてランディ兄──!! ってランディもベルゼルガー持って追いかけて来てる──!!? よく見たらシャーリィもいる──!! 向こうでマクバーンと団長の《闘神》が戦ってる音がする──!! 死ぬ──!! 誰か助けて──!! 

 

 ──そうして私はその後、《赤い星座》の大部隊と戦い、もう本当にめちゃくちゃになって本当に死にそうになりながらも頑張って生き残り、最後はマクバーンがいたこともあって何とか痛み分けでその場から撤退することが出来た……赤髪怖い……《赤い星座》怖い……もう戦いたくない……。




しばらく受験生の日常回が続きます。今回はここまで。
次回は赤い星座側の視点と更にアーヤちゃんが出かけます。忙しいです。お楽しみに。

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