TS不幸少女のゼムリア大陸災難記   作:黒岩

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最強の猟兵団と遭遇する不幸

 ──最初はただのガキにしか見えなかったが、まさかここまでとはな……! 

 

 俺の親父と叔父貴の兄弟が率いる《赤い星座》はゼムリア大陸でも最強の猟兵団の1つだ。これは身内贔屓なんかじゃなく周りからもそう言われてる。

 規模なんかじゃ《北の猟兵》には劣るし東側や中東部にもそれなりに強い団があるってのは聞いてるが、知名度や純粋な戦力で言うなら《赤い星座》と《西風の旅団》……親父のライバルである《猟兵王》が率いるこの2つが最強。

 そしてそんな一族の、それも《闘神》の息子として生まれた俺は当然ながら物心つく頃には銃や武器の扱い方を教えられ、9歳で初めての実戦を経験し、12歳で小隊を任され、14歳で中隊を、そろそろ大隊を任せられるってくらいには鍛えてるし多くの戦場を、死線を超えてきた。

 叔父貴の娘で俺の従姉妹のシャーリィもまだ若いが似たようなもんだし、俺から見てもウチの兵ってのは精鋭だ。陸戦での練度は然ることながら連携だって取れてる。何より俺を含めた部隊長クラスは並の猟兵を遥かに凌駕するし、更にその上──団長である親父《闘神》バルデル・オルランドと副団長の叔父貴《赤の戦鬼》シグムント・オルランドの2人は掛け値なしの最強だ。俺の中じゃ親族である2人の兄弟が最強で、それに匹敵するのは《猟兵王》ルトガー・クラウゼルだと思ってた。

 

 ──が、世の中にゃ俺の知らない猛者がまだまだいる。この中東での仕事はそれを少なからず知らされる良い機会になってやがる。

 

「オオオオッ!! 喰らえィ!!」

 

「ひぎゃんっ!?」

 

 視界の先で戦場を蹂躙し、あらゆるものを喰らい尽くす叔父貴の双戦斧が唸りを上げる。あれだけ馬鹿デカい斧を2つも振れるのは叔父貴のような規格外の力があってこそだ。その威力は俺も知ってるがそれこそ馬鹿げてる。完全武装の猟兵が束となってかかろうがあの一振りで何十アージュも吹き飛ばされ、骨や内臓がイカれちまうようなパワーだ。

 だからこそ、普通なら身長150リジュを超える程度の華奢な女に耐えられる訳がないが、その普通じゃない俺より年下っぽい中東人の美少女は間抜けな声を上げて吹き飛びながらも、すぐに地面に手をついて体勢を立て直していた。

 

「今だ! 撃て!」

 

了解(ヤー)!」

 

「いや、だから待っ──うわああああ!?」

 

 それは驚愕すべき事柄だが、プロの猟兵としてその隙を見逃す愚は犯さない。相手はたった2人だ。数の利を活かして攻めるのは基本中の基本。卑怯でも何でもない。

 だからこそ部下に命じて銃撃を行わせたが、それでもその少女は血を出さない。痛そうに顔を歪め、喚いてるだけだ。

 

「はっ!」

 

「ふんっ!」

 

「危、ない!? 2人同時も禁止ー!」

 

 更に近接用の大剣を持った部下2人が連続で少女に斬りかかるも、少女はその手に持った身の丈程もある巨大な鋏みたいな武器を使ってそれをガードしてみせる。叔父貴の一撃をガードした時点で分かってたが、パワーもかなりある。襲いかかってきた部下の攻撃を軽く受け止め、すぐに後ろにステップを踏んで下がり、更に近くにあった民家の屋根まで跳躍して位置を変える。そういう動きを見ても場数を踏んでるのは確かだ。猟兵って感じはしないがな。動きが軽やかかつ音も静か過ぎる。

 もっとも本人が声を出しまくってるため隠密のおの字も感じねぇがな。

 そして屋根の上に逃げたくらいで俺達は追撃の手を休めはしない。

 

「へっ……面白ぇ……! ──おいシャーリィ! 俺が突っ込むからお前も合わせろ!」

 

「りょうかーい! ランディ兄!」

 

 近くにいた叔父貴の娘のシャーリィに声をかけ、俺は得物を持って駆け出す。シャーリィもまだ年齢は12で目の前の少女よりも更に若いが、既に実戦を経験していてそれなりにはやれる奴だ。だからこそ、俺の補助に回らせる。

 女だが同年代の戦える奴にも興味はあるからな。俺の方も試させて貰うぜ……!! 

 

「うおおおおっ!!」

 

「おわっ!? だ、だから危ないってばー!?」

 

 俺の方も屋根の上に跳躍。そいつみたいに一足とは行かなかったが塀を足場に屋根に上がり、更に逃げようとする女に銃を乱射しながら突っ込んでいく。だがさすがにただの銃撃の乱射程度じゃ通じねぇ。だからこそ俺は俺の得物を変形させて肉薄した。

 

「喰らえ! 《ベルゼルガー》!!」

 

「アハハ! それじゃこっちは後ろから行くよー!」

 

「りょ、両側から来てる──!?」

 

 そいつの背後を突くようにシャーリィが《テスタ=ロッサ》で斬りかかる。まだまだ使いこなせてる訳じゃねぇが、人を十分に殺せる威力を持つ化け物武器だ。俺のベルゼルガーと同じくな。

 だからこそこの連携は防ぎきれねぇだろうと俺は確信して武器を振るった。だが──

 

「いっっっっ……た~~~~い!?」

 

「ええっ!? 嘘ぉ!?」

 

「何だと……!?」

 

 攻撃は、俺の狙い通り防ぐことは出来なかった。シャーリィの攻撃は。俺の攻撃はそいつの鋏のような武器で防がれる。

 だがシャーリィの武器がそいつの後頭部に直撃したのに、そいつは血を1滴も流さなかった。

 

「だから……やめてって言ってるでしょーが!! このー!!」

 

「っ!?」

 

「うわっ!?」

 

 そしてその女は殴られた怒りをやり返すように武器を振るって俺とシャーリィを同時に吹き飛ばす。その刃の鋭さが躊躇なく急所を狙ってきていてこっちもガードするしかなかった。その攻撃も脅威だが、それよりもそいつの硬さが明らかに人間じゃねぇ! 

 

「ねえランディ兄! あの子めっちゃくちゃ硬い! もしかしたらパパとかバルデル伯父さんより硬いかも!」

 

「人を筋肉の権化みたいな人と一緒にするなー! こちとら全身ぷにぷにすべすべの美少女だし!」

 

「ああ……信じられねぇがそうらしいな」

 

 同意は主にシャーリィに対するものだが、ある意味で相手の言葉へのものでもある。そう、どう見てもただの華奢な女なのに、その硬さが異常だ。

 戦術オーブメントで肉体を強化、あるいは硬化し、気力で身体を硬くする……あるいは筋肉も合わせてある程度刃や銃弾を防ぐことも出来るがそれでも完全には不可能だ。普通は頭に弾丸を喰らったら人は死ぬし、刃を直撃させても同じこと。

 だってのにこの女はそれでも怪我をしねぇ──いや、よく見ればちょっとだが遅れて血を流しているが、つまりは今のシャーリィの攻撃がちょっとした切り傷程度にしかなってねぇってことだ。

 

「ふん! 中々面白い娘だ! 何かの異能か? 腕前はそこそこだが硬いのが良い! 喰らい甲斐がある!!」

 

「うわああっ!? また来た──!? だからやめてってばー!? 私食べても美味しくないよー!」

 

 再び叔父貴がそいつに斧を振るうが、そいつはギリギリのところでそれを凌いでいく。どうやら純粋な腕前はまだまだ叔父貴以下ってところらしいな。

 だが身体があそこまで硬ければ格上相手にも無理は通じる。それにこの集団戦においても、叔父貴と対する時は叔父貴以外の攻撃をある程度無視して生き延びることを優先していた。

 つまり、叔父貴の攻撃以外は大したことはない。致命傷にもならねぇ攻撃ってことだ。逆に言えば叔父貴の攻撃はさすがに喰らったら血を流すし苦しそうにしている。叔父貴の斧で吹き飛ばされ民家に激突して「痛ああああああ!? ほ、骨! これ骨折れた! 肋骨折れたってー!」と声を上げたり、叔父貴の蹴りを腹に喰らって「は、吐く、また吐いちゃうからぁ……やめてぇ……!」と言って口元を抑えていたり、叔父貴が投げた斧を見てチャンスと見たのか攻勢に出た時に叔父貴の拳のカウンターを喰らって「うぶっ!? ちょ……び、美少女の顔容赦なく殴るとかそれでも人間か!? ねえ血出た! 口の中痛いよー! うわあああん!!」とか情けないことを言っていたが、どれもそれで済んでいるのが普通じゃない。

 

「も、もう怒った! 知らないからね! 使ってやる! あむっ!」

 

「む……肉体強化の薬か! 面白い!」

 

 更には途中から何かの薬のようなものを飲んで叔父貴の言うように更に肉体を強化していた。

 だがそれでも叔父貴には及ばないようで叔父貴に殺されないように必死に逃げていたが、それでも軍用魔獣や部下なんかは何人かやられた。

 

「これを使わせたそっちが悪いんだからね! ──“ヴェノムリッパー”!!

 

「ぐああ!?」

 

「こ、これは……まさか毒、か……!?」

 

 相手のクラフトの1つ。女がその閉じた状態の鋏の刃に指先で何かの液体を塗りつけ、その状態で部下に傷を負わせる。

 すると切られた部下はその場で苦しみ始めた。相手が使ってきたのは毒。それもかなりの威力を秘める猛毒らしく、ある程度苦しみには耐性のあるウチの兵がその場で動けなくなる程だ。

 

「ほ、ほらね! 喰らったらやばいから来ない方がいいよ! 喰らったら死ぬから! 本当に! だから退却をおすすめします! 一応早めに解毒すれば助かるからね!」

 

「フ……! ならば一撃も喰らわずに仕留めてみせよう! “ウォークライ”!!

 

「うわあああ!? よ、余計にやる気出すのはちょっと違うかなって……ぎゃんっ!?」

 

 ──だが当然、叔父貴も俺達もその程度は怯まない。

 

 部下を解毒のために下がらせながらも戦闘を継続する。そして包囲して終いだ。今度は仕留めるんじゃなく逃さないような攻撃を心がける。

 そうして徐々に村を離れ、外れの荒野の方へと戦場を移したが、そこで更に驚くべきことが起こった。

 

「──ま、マクバーン!! お願いだから助けて──!! ほらここ、ここ! 囲まれてて死んじゃう! 私ごとやってもいいから何とかして──!!」

 

「──クク、そっちも面白ェことになってるみたいだな。勝負の邪魔をする趣味はねぇが、そこまで言うなら助けてやるよ……! お前さんなら食らっても死なねぇのは分かってるしなァ!」

 

「……!? もう1人の……! 親父と戦ってた……!」

 

 少女はもう1人の仲間──確か《劫炎》とか呼ばれてたそいつに気付いたのか大声で助けを求め、その《劫炎》という男もまた愉しそうな様子でそれに応える。同時に、俺達が包囲している場所に巨体が降り立った。俺の親父だ。

 

「兄貴か……! そっちは愉しそうだな!」

 

「──ああ……噂の結社の《劫炎》は想像以上の怪物だぞ。シグムント」

 

「っ!? 親父が傷を……!?」

 

 叔父貴が声を掛けた先にいた親父の姿は、珍しくも傷を負っていてその相手の強さが物語っていた。まさか親父が傷を負う程の相手かよ……! 

 

「オラオラオラオラ!! そいつと一緒に喰らいな《闘神》ッ!!」

 

「……っ!」

 

「ひゃあっ!? 相変わらず熱──い!! って、ちょ、ちょっと? さすがに激しすぎ──」

 

「さぁて、こいつで仕上げだ──」

 

「む──全員退避しろ!」

 

「や、了解(ヤー)!」

 

 しかもその男は、その手からアーツとは思えない程の熱量を持った極大の焔を親父や包囲の中にいる味方ごと喰らわせるように連発し、その上で更にその手に力を込めていた。それは誰でも分かる。明らかにヤバすぎる攻撃の気配。親父がそれを察して受けるよりも避けることを優先する程には。

 

「“ジリオン……ハザード”ォ!!!」

 

「だ……誰がS()()()()()()()()()()()()この馬鹿────!! うわああああああああ!!?」

 

 極限とも言える熱の塊。凝縮されたそれが先程までそいつがいた地点にまで飛来してきたため、俺達もそいつも急いで退避を行う。

 そして少しの猶予の後に起きたのは──大爆発だ。どんな火薬よりも凄まじい。あまりの威力に周囲一帯が明るく照らされる程の爆発が巻き起こり──

 

「ひゃああああああああっ!!?」

 

 ──その大地にはクレーターが出来上がった。

 

「っ……なんつう馬鹿げた威力だ……!」

 

「成程な。そりゃ兄貴が怪我をする訳だ」

 

「ああ。強敵だった。そして向こうは……撤退したようだな」

 

「目的は達成した、か。向こうも俺達と同じ目的だったようだしな」

 

 そして爆発が収まった時には、敵の2人の姿は既に消えていた。親父と叔父貴の会話から察するに、どうやら向こうもまた俺達と同じ仕事──この村を占拠している猟兵の討伐を、偶然にも受けてこの場に来ていたらしい。

 仕事が終わり、ある程度愉しんだ以上は用はないってことだ。そして、それは俺達猟兵も同じ。依頼の邪魔にならないなら追撃を行う必要はない。

 

「お前の方もそれなりに楽しんでいたようだな、シグムント」

 

「フフ……ああ。これまで暗殺者は幾度となく殺ってきたが、避けるのではなく受けて死ななかった暗殺者はあの娘が初めてだ」

 

「……近頃大陸の至る所で騒がれている伝説の暗殺者……あの特殊な鋏のような獲物を見るに、あるいは先程の娘がそうか」

 

「かもしれん。どちらにせよまたいずれ出会いたいものだ。《血染の裁縫師》……フフ、今はまだ荒削りだが将来が愉しみになる逸材だ」

 

「この業界にいればいずれまたやり合うこともあるだろう。その時までのおあずけだな。──よし、全部隊撤収だ」

 

了解(ヤー)!」

 

 ──そうして親父の命令で俺達は負傷者の治療と撤退を行うが、その最中に俺は改めてその強さを知った。

 結社ってのがどういう連中なのはかよく分からねぇが、執行者ってのはどうやら化け物の集まりらしい。今後仕事をする上でも気をつけておいた方が良さそうだ。

 俺は頭の中に《劫炎》という男と《血染の裁縫師》とかいう少女の2人のことを記憶し、その中東の地を団と共に後にした。

 

 

 

 

 

 ──どうもおはようございます。アーヤ・サイードです。得意教科は家庭科と数学と自然科学。こう見えて理系です。合理的で倫理的な思考が出来る美少女です。ふふん。

 

 さて、受験まで残り半年を切りました。相変わらず私は毎日毎日勉強……してる訳ではなく勉強はしてるけどその合間に子供の世話だったり仕事だったりをしながら過ごしています。

 まあ仕事に関しては最近はさすがに自重というか、大体は断ってます。受験があるのでまた今度にしてくださいって。なので結社の仕事はこの間の中東で《赤い星座》とかち合った一件が最後です。はぁ、あの時はめちゃくちゃヤバかったなぁ……シグムントさんが化け物すぎて……ランディも普通に怖かったし、シャーリィもまだちっちゃかった割には強くて怖かった。

 最終的にマクバーンがいたからどうにかなったもののいなかったら死んでた可能性が高い。まあマクバーンが最後にとんでもない大技撃ちやがったのもあってそれのせいで余計に怪我が増えたのもあるけどね! 直撃はしなかったとはいえ、おかげでホテルでは傷の治療に専念してあんまり遊べてない。せっかく良いホテル取ったのに! くそう、今度行く時は絶対満喫してやる……。

 

 そんな決意をしつつもねぐらに戻った私は再び勉強の日々を送ることになったが、それでも毎日勉強して子供と過ごしてってしてると疲れる。たまには脳を休ませることも必要だし、勉強の息抜きにちょっと出かけようと私はまたちょっとお出かけをすることにした。

 

 ──そうして私はここ! 大陸東部にやって来ました! イェイイェイ! 

 

 そしてやって来たのは良いものの……なるほど。なーんもない。見渡す限りの荒野。不毛の地。大地が死んでいる。話には聞いてたけど本当にこんな感じなんだとは思った。まあ沿海部や北東部。後は東の果てなんかはまだ色々あるらしいけども。中心辺りはほぼ何もない。えーっと、確かかつては神聖イスカ皇国っていう東方人による超大国がここにあったんだっけ? 知識としても知ってるし勉強もした。でもよく分かんないよね。なんで滅んだのとか。龍脈が枯渇したとか通説で言われてるらしいけどそれもよく分かんない。どうせ《水の至宝》辺りがなくなって悪さでもしたんじゃないってものすっごいメタで考えてみるけど実際どうかは分かんないしどうしようもないよね。試しに持ってきた植物の種を持ってきた土の中に植えて水も上げてみた。多分土地が死んでるから育たなかったりするんだろうなぁ。

 

 まあでも大陸東部がこんな場所だって実際に見れたのは中々興味深いし面白い。なので見れて良かったってことで次に移動。というか本命はこっち。せっかく大陸東部に来たんだから多少は栄えてる都市に移動して東方料理という名の和食に温泉を堪能するのだ! 

 

「はぁぁ……生き返るー……」

 

 そんな訳なので私は早速、東部の山奥にあった村で温泉に入ってくつろいだ。熱い天然のお湯が身体に染み渡る。効能は何なんだろう。後で村の人にでも聞いてみようかな。そういえば村の人もちゃんと和服着てたんで感慨深かった。やっぱり親しみを感じる。中東人だけど。今度和服っぽい服を作ってみるのも良いかもしれない。

 

「お隣、失礼するよ」

 

「あ、どうぞー」

 

 なんて考えてたら声を掛けられて隣に女の子が入ってきた。男の人だったらどうしようとか一瞬思ったけど、こっちじゃ混浴が普通だし、そもそも男に多少見られるくらいは問題ない。温泉だしね。お湯もちょっぴり濁ってるからそんなに見えないし。

 

「良い湯ですねー」

 

「そうだね。私もここの温泉は気に入ってるんだ。疲労回復や傷の回復。後は美肌なんかにも効果があるからね」

 

「へえー! そうなんですか! 来てよかった~」

 

「ふふ、気に入ってくれたのなら何よりだよ。見たところ旅行者のようだけどこんな山奥の僻地にまでよくやって来たね?」

 

 隣に入ってきた女の子は私の肌を見てそう思ったのだろう。私もそこで初めて女の子をまじまじと見るが、私とタメを張るレベルの美少女だった。髪色も似てるし可愛いね。たまたま知り合った美少女と一緒に温泉に入れるなんて……大陸東部って最高じゃん! 

 

「この辺りに有名な温泉と村があるってこっちの情報に詳しい人に聞きまして。ちょっと最近疲れが溜まってたので息抜きの小旅行です!」

 

「ふふ、そんな気軽に来れるような場所ではないんだけどね。その様子だと……もしかしてそれなりに戦えるのかな?」

 

「あ、分かる? ふふん、こう見えてこの歳にしてはまあまあ戦えるんですよ私。訳あって幼い頃から鍛えてて」

 

 旅先なので気分も口も軽くなる。知り合いでもない二度と会わないであろう人だからこそ色々話せることもあるのだ。私は軽く自慢気に美少女からの質問に答えた。

 

「……へぇ? それじゃあ私と同じってことだね」

 

「鍛えてるんですか? ああ、でもよく見れば確かに綺麗なスタイルだし太腿とかなんか鍛えてる感じするね!」

 

「ありがとう。そっちも中々良い雰囲気だよ。それに見たところ年齢も近いようだしね。差し支えなければ歳を聞いてもいいかい?」

 

「私は15歳。そっちは?」

 

「私も15歳だから同い年だね」

 

「すごい偶然だねー」

 

「確かに、すごい偶然だ。まさか同い年でここまで戦れそうな人に出会えるなんてね。良かったら後でちょっとだけ手合わせしてみないかい?」

 

「え、私と?」

 

「うん。その代わりに村の案内をしてあげるよ。私も何度か来たことはあるからそれなりに詳しいしね」

 

 突然の提案に私は若干困惑しながらも考える。うーん……戦うのは出来れば避けたかったけど、まあちょっとした手合わせくらいなら別にいいかな? 稽古くらいならよくやってるし、命の危険がないならそれくらいは構わない。何より条件が魅力的だ。現地の人と、それも同い年の美少女と一緒に東方文化を楽しめるとか最高。やっぱり大陸東部って最高じゃん! 

 

「それならいいよ! 代わりに案内よろしくね!」

 

「ふふ、ありがとう。それじゃ上がったら一緒に行こうか」

 

「うん、お願いしまーす!」

 

 ──ってことで私は温泉から上がり、その美少女と一緒に行動する。湯上がりのその子はまた中々に可愛かった。和服……それも動きやすいタイプというか、丈が短い! ちょっとエッチで可愛い! 

 

「服可愛いね!」

 

「そうかな? 他ではあまり見慣れないものだろうからむしろ変に見られたりするんじゃないかと思ってたんだけど」

 

「全然全然! 和服超可愛い! 私東方文化好きなんだよね!」

 

「ふふ、そう言ってくれるなら一東方人としては嬉しい限りかな。そっちも似合ってるよ。中東風の衣装をちょっとアレンジしてるのかな?」

 

「あ、分かる? これ自分で作ったんだけど良いでしょ!」

 

「へぇ……これを自分で……すごいね。既製品と見紛ってしまったよ」

 

「ふふん。私お裁縫は得意だしデザイナー志望だからね。良かったら……あ、えっと、そういえば名前聞いてなかったね。私アーヤ・サイード。よろしくね!」

 

「そういえば名乗ってなかったね。シズナ・レム・ミスルギだよ。こちらこそよろしく、アーヤ」

 

「シズナちゃんかぁ。可愛い名前…………」

 

 …………え? シズナ……? シズナってあのシズナ……? 

 

「? どうかした?」

 

「え、ああ、いや、ちょっと私の知り合いというか知ってる人の名前に似てたから……」

 

「へぇ……それは珍しいこともあるものだね」

 

「まあ、うん。でも気にしないでいいよ。それより案内よろしくね」

 

「……? うん。それじゃあ観光ガイドとして尽力させてもらおうかな」

 

「オッケー。それじゃあレッツゴー!」

 

 私はシズナちゃんと一緒に東方の村を観光していく。ま、まあこの子があのシズナ……いや、確かによく見れば髪色とか顔立ちとかもそんな感じ。まだ大人じゃないそれこそ美少女だけどシズナちゃんだ。なんで気づかないんだ私……。

 ……でもまあシズナちゃんと出会ったことは驚いたけど別に害がある訳でもないし、なんならこうやって普通に出会って同い年の友達として楽しくデートしてるんだからむしろラッキーだ。よーし、腕組んじゃおーっと♪ 

 

「おっと……ふふ、結構スキンシップが多めの子なんだね」

 

「あ、ごめん。嫌だった? ちょっと馴れ馴れしい?」

 

「いいや、平気だよ。あまりこういう距離感で接してくる友人がいなかったものでね。ちょっと驚いたけどこういう感じも中々楽しいね」

 

「ほんと? それなら良かった」

 

 やった! 許可が降りた! わーい! シズナちゃんとデートだー! テンションあっがるー! 

 ってことでシズナちゃんの案内で私は東方のお土産を物色したり、和菓子をご馳走してもらったりする。そして今日泊まる予定の宿まで案内してもらったが、なんと泊まる場所も同じだったのでそのまま夕飯も一緒に食べた。東方風の鍋美味しかった~。なんだったらこのまま一緒に寝ようかとか考えていたところ、シズナちゃんから外に行こうと言われたのでついていく。今度は何だろう。花火とか? ホタルがいる川とか連れてってくれたり? 青春っぽくていいね! 

 

「──さて、この辺りでいいかな」

 

「? シズナちゃん。ここ何もないけど……」

 

「何もないから良いんじゃないか。それじゃあ──始めようか」

 

「!?」

 

 ──だけどいきなり、少し距離を取ったシズナちゃんはその腰の刀を抜くと同時に空気が変わる。え、何、怖い! 急にどうしたの!? 

 

「約束通り手合わせをしようか、アーヤ」

 

「あっ…………そ、そういえばそんな約束したね……」

 

「うん。だからアーヤも得物を見せてくれるかな?」

 

「あっ、うん……」

 

 私は押されるまま空間から《ゾルフシャマール》を取り出す。

 するとまたシズナちゃんの空気が、目が変わった。なんか愉しげにしてる……。

 

「へぇ……? 変わった形の得物だね。西洋の洋鋏を大きくしたような……それでいて外側の部分も刃になってるし、そのまま剣のように斬りつけることも鋏のように開いて閉じることも出来る。あるいは、2つに分かれたりも出来るのかな……?」

 

 え……なんで分かるの……怖い……。

 

「それじゃあ行くよ。──《黒神一刀流》の使い手、シズナ・レム・ミスルギ。異邦からやって来た友人アーヤに、一手、お願いしようかな?」

 

「……アーヤ・サイードです。流派とかは特にないので適当な感じで……」

 

「フフ、静かな気だね。だけど面白いよ。──それではいざ、尋常に勝負!」

 

 そうしてシズナちゃんはその鋭い太刀を手に私に突っ込んでくる。私はそれを迎撃し、そしていつもの如く内心だけで衝動を解放した──うわああああん!! 忘れてた──!! シズナちゃんと手合わせする約束だったよ──!! 今はどうか分かんないけど将来の《白銀の剣聖》との勝負とかいや──!!? うわああああ!!? 

 

 

 

 

 

 ──そして1時間後。

 

「中々楽しい勝負だったね! まさか私の刃があれほどまでに通じないなんて。中東流の気功術……あるいは秘術か何かなのかな?」

 

「いや、身体の方はなんか生まれつき丈夫な感じで……あはは……」

 

「ふぅん……? まあでもとにかく楽しかったよ。またどこかで戦いたいものだね。次に会ったらまた私と手合わせをしよう、アーヤ」

 

「ウン……ソウダネ……マタ勝負シヨウネー……」

 

 ──散々斬られながらも何とか勝負を成立させた私はいい笑顔のシズナと握手し、その日はそのまま別れた。なんかまた勝負しようとか言ってたけど……ま、まあ中々出会うことなんてないだろうし、その時になったらまた考えよう……とりあえず、旅行の日程は後6日くらいを予定してるし、切り替えて次はまた別の町で旅行を楽しもうかな──

 

「あれ? アーヤ? まさか昨日の今日で会うなんて奇遇だね」

 

「えっ……あ、シズナちゃん。ま、また会えるなんて、私も嬉しいよ!」

 

「うん。せっかくまた会ったんだ。昨日みたいにまた案内してあげるよ。そして終わったらまた手合わせをしようか」

 

「あ、うん……そうだね……そうしよっか」

 

 ──旅行2日目。別の街で私はまたシズナちゃんと出会い、昨日と同じようにシズナちゃんの案内で観光。色々楽しんだ後で夜にはシズナちゃんと手合わせをしてまた斬られまくった。「やっぱりまだ斬れないか。これは私の方も腕を上げる必要がありそうだね」とか言ってた。怖い。でも今日で終わりだ。2日連続のデートは楽しかったということで勝負のことは忘れよう。そして切り替えてまた3日目は別の街に──

 

「あっ、また会ったねアーヤ」

 

「え……? あ、いや、うん。また会ったね、シズナちゃん」

 

「いやー二度あることは三度あるって言うけど本当に3日連続で会えるなんて思ってもみなかったよ」

 

「そ、そうだね。私もびっくりだなー」

 

「フフ、ならまた今日も案内してあげるよ。この街はお蕎麦が名物でね。良い店を知ってるから紹介するよ」

 

「それは嬉しいな、うん、私お蕎麦大好きだし。ありがとねシズナちゃん」

 

「友達だしこれくらいは当然だよ。あ、それよ夜にはまた手合わせしようか」

 

「ああ、うん……友達だしね。当然だよねー。あはははは」

 

 ──旅行3日目。またまた別の街で私はシズナちゃんと遭遇した。今度はシズナちゃんにお蕎麦をご馳走してもらい、お腹がいっぱいになった後で夜の手合わせ。またしても斬られまくり「ふふ、これでも駄目か。なら次はアーヤの硬さを信用して本気で斬ってみるよ」とか笑顔で言ってた。怖い。で、でもさすがにもう会わない筈。念の為予定していた街とは別の街へ行こう。そうしよう。これでさすがに──

 

「おーい、アーヤ! アーヤじゃないか! 本当にまた会えるなんてすごいね!」

 

「な、なんでいるのかな? いや、嬉しいんだけどね」

 

「実家の稼業の関係でね。今日はこっちの方で仕事があったからやって来たんだ。だから今日はさすがに会えないと思ってたけど……ふふ、どうにも私達には縁があるみたいだね」

 

「あはは、確かに縁があるねー。あはは……」

 

「ふふ、縁と言えばここには有名な神社があるんだよ。《空の女神》とは違うけど小さな土着の神を祀っているらしくてね。せっかくだしそこにお参りでもしに行こうか。意味は違うけど縁結びの御守も売ってるし、買ってみるのも良いかもね」

 

「そ、そうだね。うん、じゃあ買ってみようかなー。それが終わったら今日はちょっと休み──」

 

「それと神社の後ろに良い空き地があるんだ。今日はそこで手合わせをしようか」

 

「──うん、やっぱそうなるよねー! あははは!」

 

 ──旅行4日目。なんかまたいた。偶然にしても偶然すぎる。なんだこれ。運命かな? またシズナちゃんが私を見かけて声を掛けてきたので今度は縁結びの神様がいるという神社でお参りして縁結びの御守も買った。別にそういう意味があるわけじゃないけどせっかく来たし、友人同士の思い出つくりってことで。そして夜には神社の裏で手合わせ。今度は「私もアーヤを見習って功を鍛えてみたんだけどどうかな? 身体強化をすればアーヤ程とかいかずともそれなりに硬くはなったと思うよ。試しに斬ってみる?」なんて怖いことを笑顔で言い出したので私は遠慮しようとしたけど結局は出来ずに互いに斬り合って別れた。も、もう5日目は嫌だ……こ、今度こそ避けよう。よし、次の街では隠れよう。移動する時も路地裏とか物陰に潜むんだ。大丈夫。こっちも暗殺者として隠形はちょっとだけ自信がある。だから見つかる筈が──

 

「──アーヤ・サイードだな。このような物陰で何をしているのか、聞かせてもらおうか」

 

「アイエエエエ!? 忍者! 忍者ナンデ!? 忍者だ──!?」

 

「──あっ、アーヤ! 今日はさすがにいないかなと思ったけどまた会えたね。クロガネが見つけてくれたの?」

 

「はっ。物陰を不審に移動してる者がいたので確認してみたところ、連日姫様と行動を共にしている者でしたので姫様の下に案内しようかと」

 

「うん、ありがとうクロガネ。くれぐれも()()()()()()()()()()()()()。彼女は私の友人だから」

 

「……御意。アーヤ殿、失礼致しました」

 

「に、忍者だ……初めて見た……」

 

「ふふ、驚かせてすまないね。彼はクロガネ。私と同じ稼業をやっててね。ちょっと過保護なところがあるんだ。アーヤなら大丈夫だとは思うけど一応釘は刺しておいたから心配する必要はないよ」

 

「そ、そっかぁ……心配ないなら安心だねー……あはは」

 

「うん。という訳で今日もデートと洒落込もうか。ここは東部では珍しい綺麗な滝と川があってね。せっかくだし川で泳ぎがてら魚を採ったりして楽しもうか。水に浸かっても平気な衣類は──」

 

「──持ってます! はいはい! 持ってる持ってるー! なんならシズナちゃんの分も用意出来るよ! すぐに作っちゃうからちょっと採寸しよっか!」

 

「そういえば裁縫が得意だって言ってたね。手合わせても針付きの糸も使っていたし……今日は水辺で手合わせしようと思ってたところでもあるしちょうどいいかな。それじゃお願いするよ」

 

 ──旅行5日目。物陰で隠れていたら突然忍者が現れてめちゃくちゃびっくりした。そして次にシズナちゃんも現れた。シズナちゃんに注意されて一瞬で消える忍者のクロガネ=サン怖すぎる。ワザマエされなくて良かった……そしてまたシズナちゃんとデートだが、今日はちょっとだけテンションが上がった。川辺で泳いだからね! しかもシズナちゃんに私が作った水着を着せれたのも楽しかった。15歳のシズナちゃんの3サイズは私の頭の中にしまっておこう。私も自信はあるけど私より身長が高いからスタイルよく見えたな……ちなみに今の私の身長は155リジュです。絶賛成長期ですくすく成長中。そしてその後の手合わせは水辺で行って、「こういう技はどうかな?」とか言ってなんか普通に分け身みたいなことして襲いかかってきて怖かった。幾ら水着シズナちゃんでも3人もいらない……そして終わったらまた別れた。今度こそこれで最後だ。6日目はもっと遠方に行ってやる! 予定を変更して山奥だ! 山奥でキャンプして自然を楽しもう。これならさすがに──

 

「あっ、やっぱりまた会えたね、アーヤ。今日はキャンプかな? ちょうど私達もサバイバル訓練をしているところだったし、せっかくだし軽く混ざってみるかい?」

 

 ──旅行6日目。また会った。しかも今日はキャンプしていたのが災いして1日中山中で一緒に訓練することになってしまった。なので当然のように手合わせもした。なんとか死なずに済んだけど、「明日は奥義を見せるよ」と不穏なことを言われてしまったので明日こそは避けてみせる。最終日だし、ちゃんと旅行を楽しもう。山奥なんて行ってもしょうがないことが分かったので初心に返って温泉に。そこでちゃんと疲れを癒やし──

 

「──今日で君との勝負も7日目だね、アーヤ。だから今日は、互いに本気でやってみるというのはどうかな?」

 

「……そうだね。そうしよっかぁ……」

 

 ──旅行7日目。私は遠い目でシズナちゃんの申し出を受けた。互いに本気の勝負。もうどうにでもなーれーの気持ちで私も戦ったし、シズナちゃんもまだ剣聖の域ではないっぽいけどそれでも本気で凄まじい実力を見せつけてきた。Sクラという名の奥義も打たれた。ちょっぴり斬られて血も出た。死なずに済んだのは運が良かったとしか言えない。結局決着はつかずに勝負が終わってからまた温泉に入った。

 

「結局決着は着かなかったね」

 

「そうだねー……」

 

「でも楽しかったよ。同年代とここまで競い合ったのも遊んだのも初めてだからね」

 

「ああ、うん。楽しかったね。遊ぶのは……」

 

「うん。それで私の方も明日は実家の方に戻ることになっていてね。さすがに会えないだろうからここで一旦お別れかな」

 

「私も明日にはお家帰るから奇遇だね……」

 

「フフ、本当に奇遇だね。それじゃまた次に会う時までに私ももっと腕を磨いておくよ。そして次こそは斬ってみせる。だからアーヤにももっと強くなって欲しいかな? ()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「そ、そうだね……う、うん、わかった。頑張るよ……」

 

「それじゃあまたね、アーヤ。次に会う時を楽しみにしてるよ」

 

「うん、またねーシズナちゃん。ばいばーい」

 

 ──そうして私はシズナちゃんと物騒な約束をして別れた。シズナちゃんは実家に帰り、私も共和国へと帰る。その帰路の最中、私は思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──もう大陸東部は行かない……怖い……疲れた……受験まであと半年もないのに……うわああああ!! 勉強しなきゃ──!! 

 




アーヤちゃんにまた友人が出来ました。良かったね! ってことで今回はここまで。
次回からは遂に学園編。そもそも入学出来るのか。お楽しみに。ついでにおまけのクラフト説明

ヴェノムリッパー:CP40 物理攻撃 威力:B 範囲:指定・中円M 毒を刃に塗りつけて横一線に振るう技 背面特攻 腐食80% 即死20%

感想、評価、良ければよろしくお願いします。
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