──おはようございます! アーヤ・サイードです!
さてさて。時が経つのは早いものでもう七耀暦1200年。ぶっちゃけ原作開始時期がいつだったか覚えてないけどそろそろ始まるんじゃないかって思ってる。でもまだ面白教授主導の《福音計画》の話を聞かないのでもうちょっと先だったみたい。
まあでもそんなことよりも私には大事なことがあった。
今年はそう──16歳になった私が遂にアラミス高等学校の受験を行う年。
……進学すると決めてから2年。今にして思えば長い道のりだった。
オジサンに《庭園の主》にさせられ、イクスやヨルダの面倒を見ながら──ちなみにレンは最近執行者になった。No.ⅩⅤ《殲滅天使》の誕生だ。まだ9歳という一桁年齢なのに大鎌を自在に使いこなしたり、理系分野における博士号を習得していたりとあらゆる状況に適応出来る万能型の執行者。
なので余裕で私よりも頭が良いです……はい……なので私は主にレンに勉強を教えてもらっていた。情けないことこの上ないがしょうがない。恥を忍んで私はレン先生に勉強を教わり、受験までの日々を過ごした──まあ途中で《赤い星座》と戦闘して殺されかけたり、大陸東部でシズナちゃんと会って7日間も手合わせをしたりと勉強には関係のない濃い出来事もあったりもしたが、それからは特に何もなく勉強をする日々が続いた。《庭園》もまだまだ組織作りの最中なのでやることもない。たまにメルキオルがやってきて養成所の出来なんかを報告してくるくらい。ようやく早期に養成所を乗り越えた暗殺者が各園に配備させられたとか嬉しそうに言ってたけどそんな場合じゃない。私はとにかく勉強をした。途中でなんかエンペラーがやってきて管理人の候補を見つけたとかなんとか言ってたけどそんな場合じゃない。私はとにかく勉強だ。どうせたま◯っちだのモドリッチだのそんな名前の奴でしょ。興味はあるけどせめて受験が終わってからにしてほしい。私は勉強だ。途中でオジサンがなんか退屈だから犯罪しに行かないかとか言ってたけどそれは本当に今じゃない。なので断ろうとしたけど入学願書の手続きに必要だとか言われたら断れないのでささっと終わらせて勉強に戻った。私は勉強勉強勉強だ。イクスとヨルダが毎日構ってちゃんしてくるけどそれは程々に相手にしないといけない。子供はしょうがない。なので2人が訓練してる間や勉強させている間とか時間を見つけては勉強だ……正直めちゃくちゃ大変だった……体力には自信あるけどそれでも疲れた……。
だけどそうやって勉強する日々もようやく終わり──私は遂に受験当日を迎えた。
当然だけど中学校なんてものはないのでそれぞれ私服で首都イーディス北側の第5区、オーベル地区にあるアラミスの門をくぐった。大聖堂が近くてちょっと個人的には怖かったりもするけどまあ許容範囲だ。それよりも入試に集中しようと私は受験番号を手に教室に入る。ちゃんと準備はしてきたし、時間に遅れることもトラブルに見舞われることもなく時間通りに試験は始まった。
そうして実際に試験を受け、手応えを感じて帰宅。面接なんかもあったけど多分問題ない。私は愛嬌あるからね。礼儀もちゃんとしてる。少なくとも他の受験生よりは受験にも慣れてるからね。
ってことで受験自体はあっさりと終わった。かなり緊張はしたけど大丈夫……な筈。後は合格発表の日まで待つのみでそれまでは普段と変わらない日常を過ごした。
そして私は合格発表の日を経て……そして──。
──遂にアラミスの入学式の日を迎えました! いえーい! 合格しましたー! ふっふー! 落ちるとでも思った? 残念! アーヤちゃんは天才でした!
いやー最初はどうなることかと思ったけどなんだかんだいけたね。なんだったら思ったよりは楽だった。まあこっちにはアドバンテージもあるしレン先生という最高の教師もいたからね。なんだかんだ受験くらいじゃ躓かない。運とかも関係ないしね!
なんだったら入学するための手続きとかそこが1番苦戦した。主に保護者のオジサンのせいで……まあちゃんと手続き出来るようにしてくれたことは感謝してもいいけど。
という訳で私は朝、新しい家でしっかりと起きる。ちゃんと家だって用意した。場所は第8区・旧市街区だ。なんでここかと言うとアラミスのあるオーベル地区に近い方なのと家賃が安いからだ。歳の離れた弟や妹の面倒を見ないといけないということで学校側には寮じゃなくて家から通学することは伝えてある。イクスやヨルダの面倒も見ないといけないのは事実だし、夜の門限なんかがあると何かあった時に対応が面倒だからそうした。
なので3人でも十分暮らせる程度の家を探した。オジサンが家を探してやろうかと言われたけど断った。《庭園》の集まりで使う屋敷なんかもあるけどあそこ地味に遠いし広すぎるし家政婦という名の《庭園》の構成員がいるからやだ。オジサンに更に貸りを作るのも怖いし、家はしっかりと自分で選んで家賃も自分で払うことにした訳だ。なので家賃的には旧市街が安かった。2階建ての一軒家。1階がリビングやキッチンがあって2階に部屋が2つとバスルームが付いてる家を借りて家賃は1か月10万ミラ。え、高い? いやいや、首都って家賃高いんだよ! しかも一軒家だし! 3人でちゃんと住めるくらいの家ってなるとこんくらいするんだって! なんだったら他の地区はもっと高い。オジサンが候補として出してきた3区・トリオンタワー周辺の高級マンションなんか100万ミラくらい平気でするんだから!
なので私は「え~もっと良い家にしろよ~!」とか「2人部屋ヤダ……1人部屋ほしい……」とかいうイクスとヨルダにわがまま言うなって言ってここに即決した。私からすればここでも十分良い家だし、2人はまだ子供も子供で双子なんだから同じ部屋でいいでしょ。私なんてちっちゃい頃はずっと10人兄弟全員同じ部屋で雑魚寝してたし。その後は4、5人の部屋で住み込みで暮らしてたし。それに比べれば全然マシ。せめて二段ベッドは買ってあげるから我慢して。
そんで3年間暮らすなら食費とか経費も合わせて……まあ多めに見積もって600万ミラくらい? 学費は約束通りオジサンが持ってくれるため問題ない。今の私の預金が1000万ミラあるので仮に仕事をずっと休んでも足りる。本当はこの1000万で学費も払う予定だったからなんだかんだオジサンに払ってもらって良かった。
まあ一応収入は困ったら適当に仕事をしよう。……そういえば《庭園》の収入ってどうなってんの? 私がボスなんだから収入もちゃんと入るよね? 後で確認しとかないと。暗殺任務を請負始めたってのは聞いたからちょっとは入る筈だ。
とりあえずお金は貯めないと。将来のためにもやりたいことのためにはお金がいる。世知辛いけどまあ幸いにも私は稼げる手段があるので恵まれてる方だ。
ってことで元気よく、私は身だしなみを整える! もう私も16歳! 身長も157リジュまで伸びたし、もう幼女じゃない! 立派な美少女! 真っ白い髪も伸びてサラサラロング! そこに更に内側のインナーカラーを赤紫にしておしゃれに。まあ髪色についてはそんなに厳しくないので大丈夫。ピアスは……ま、なんか言われたら外せばいっか! ってことで付ける。後は同じく赤紫の髪留めでもして髪とシナジーを出そう。制服のネクタイも赤だし色が拾えておしゃれだね! ってことで私はアラミスの制服に袖を通す。スカートはちょっぴり短めに。校則違反しない程度にして、と。靴下は普通の黒のハイソックスだ。オーバーニーソも可愛いけどバランス的に。太腿は見せていこう。私のスラッとした程よい美少女太腿を周りに見せつけてやるのだ。
「よしよし、出来た。今日もバッチリ」
私は鏡の前で自分の姿を確認して合格点を出す。やっぱり私は可愛い。顔立ちも童顔で整ってて笑顔が似合う。愛嬌たっぷりで成長しても美少女だ。美人系というか可愛い系。まあ個人的には身長170センチも超えた超絶美人になりたいけどそれは今後に期待だろう。
「おはよー。ほら、イクスーヨルダー。朝ご飯出来たから顔洗って降りてきてー」
「眠い……後5分……」
「って、おい! いつまで寝てんだよ! 早く起きろよヨルダ!」
「眠い……」
そして私は一階で朝ご飯を作り、イクスとヨルダを起こす。イクスは朝は強いけどヨルダは朝がめちゃくちゃ弱い。そんな2人にトーストとスクランブルエッグにウインナー。ミニサラダにオレンジジュースを与えて私は連絡しておく。
「いい? 私は日中は来れないから朝ご飯食べたらちゃんと勉強して。昼になったら弁当食べて。昼からは迎えが来るから訓練も頑張ってね! 今日のメニューは人形兵器相手の戦闘だからそんなに難しくないと思うよ」
「うげ……ってことはあの博士かよ……だりぃ……」
「私、あの博士嫌い……」
「私も嫌いだけど我慢してね。ちゃんと訓練しないと、今度エンペラーが養成所の他の子供と2人を競わせるみたいなこと言ってたし、ちゃんと強くなっとかないと面倒なことになるよ!」
「それはもっと嫌だ……仕方ねぇ。今日もやるぞヨルダ!」
「やる気ないのはイクスだけ……私は別にやる気はあるし……」
「はぁ!? なんだよそれ! ボクだってやる気あるし!」
「はいはい。それじゃそろそろ登校しなきゃだから行ってくるねー」
「ん、行ってらっしゃい……」
「帰ったらまた映画連れてけよな!」
はいはい、ってことで私の日常はこんな感じだ。子供の相手は大変だけど慣れてるのでそんなに苦でもない。まあ後数年もすれば大体何でも出来るようになる筈だしね。レンなんかも執行者としての仕事を頑張ってるし。それでも絶対週に1回は私のとこに泊まりに来るけど。まあそれくらいは可愛いものだ。むしろ2回くらいは来てもいい。
そんなことを考えながら地下鉄に乗って第5区オーベル地区へ。共和国は導力車が普及してるので移動は車が楽だけど免許が取れる歳じゃないので学生の間はこうやって通学することになるだろう。痴漢に気をつけないとね。まあそれくらいなら余裕で防げる自信はあるので大丈夫だ。
そして程なくしてオーベル地区に辿り着くと同じように制服を着た人達がちらほら見えた。殆どの学生は寮住まいだけど中には私みたいに実家から通ってる人も0ではない。寮もこの地区内にあるからね。
私は綺麗に舗装された歩道を歩いて徐々に学校に近づいていくけど……やばい。なんかそわそわというかドキドキしてきた。遂に……遂に念願の学校だ。本当にここまで長かったなぁ……日曜学校にも行けてない私にしてみれば今生での初めての学び舎。同年代の普通の少年少女が集まって青春することになる。
そう、つまりは私の輝かしい学生生活がこれから始まるんだ! 友達沢山作って恋人も沢山作るんだ! よーし、頑張るぞ! 学校中の人気者にして天才アーヤちゃんのドキドキスクールライフの始まりだ!
──って、あれ……なんか見覚えがある人が……あっ! あ、あれってもしかして……。
私は通学の途中。見覚えのある3人が顔を見合わせる場面に遭遇して立ち止まる。そしてすぐに理解し、私は再び歩き出した。
──う、うわあああ!!? ヴァン・アークライドだ────!!? エレイン・オークレールにルネ・キンケイドもいる────!!? この年だったんだ!! やった──!! 大当たり──!! え、どうしよう。声掛けちゃう? 友達になっちゃう? 突然現れた謎の天真爛漫美少女アーヤちゃんとして刻みつけちゃう? うん、よし、そうしよう! 学校生活1日目! テンションの高いアーヤちゃんは焦りを抑えつつゆっくりと3人に近づいて挨拶をしようとして──
──まさかこんなところで再会するとは思わなかったな。
「ヴァン……?」
「エレイン……それに、ルネ、か……?」
「ああ……久し振りだな、ヴァン。それにエレインも」
俺が勧められるままに入学したアラミス高等学校への道を、欠伸をしながら歩いていた時のこと。俺は成長した幼馴染……エレインやルネと予期せぬ再会をすることになった。
「ヴァン……その、今まで……」
「……あ、あー……その……」
だが久し振りの再会。それも、あまり良い別れ方をしなかったということもあってか互いにぎこちない。
美しく成長したエレインは嬉しくも、何かを聞きたそうにこちらを見上げてくる。ルネもまたしばらく俺の方を見ていたが。
「……入学おめでとう。ヴァン、エレイン。まさかお前達までアラミスに来るとはな」
「っ、あ、ああ。里親に……勧められてな」
「そうなの……うん、でもまた会えて良かった」
ルネは何かを言おうとしてそれを飲み込み、俺やエレインに1つ上の先輩として素直な言葉を口にした。俺もその空気を払拭しようと里親という小さな嘘を吐きつつ努めて明るい声を出す。そうすればエレインもまた言いたいことを飲み込んで明るい笑顔を見せてくれた。
……色々と思うところはあったが、素直に嬉しさが湧き上がる。ルネは相変わらずしっかりとしていて、エレインは……その、正直可愛くてまともに顔を見られなかったくらいだ。
だからこそ俺は再会を喜ぶ中でぶっきらぼうに、自然と顔を背けたのだが……そこでふと目に入った存在がいた。
それは中東人だった。アラミスの制服を着た銀白色の長い髪に赤めのインナーカラーでそれなりに派手目のおしゃれをしたエレインに負けず劣らずの美少女。
その少女はえらく楽しそうにしていた。そんなに学校に通うのが楽しみなのか、スキップをしている。周りの目なんか気にしない。能天気な明るい笑顔を浮かべている。
──
だからこそ俺はその少女を見た瞬間、息を飲み、声を掛けようとした。抑えきれなかった。心臓が跳ねて目が離せない。つい手も伸ばしてしまう。届く筈がないのに。
だがそれでもだ。放っておく訳にはいかない。俺はエレインやルネの言葉すら無視して声をかける。その美少女に──
「お、おい! 避けろ! 危ねぇ!!」
「──え? 私? も、もしかして私に声掛けてくれたの? 嬉し──ぎゃんっ!?」
「え?」
「なっ……!?」
──声を掛けようとして……間に合わず、その美少女は突如として歩道に突っ込んできた導力車に思いっきり轢かれて吹っ飛んだ。
突然の轟音に周囲が騒がしくなる。近くにいた通学中の生徒が距離を取りながらも壁に突っ込んだ導力車と地面に転がったその少女を見た。
「えっ……う、嘘……」
「っ……轢かれた……い、いやそれよりも……ヴァン!」
「っ、ああ! エレインは救急車を呼んでくれ……!」
「え、ええ……わ、分かったわ!」
全身の血の気が冷めるのを感じる。きっと顔が青褪めているだろう。だがそんな中でもルネは真っ先に動いたし、俺もその指示に従って動くことにした。まずやるべきことは状態の確認。応急処置。救急車を呼ぶこと。犯人は最悪放置でもいい。
学校にまだ詳しくない俺達に変わってルネが保険医を呼びに行き、エレインが導力通信が出来る校内で救急車を呼ぶ。そして俺は、その子の傷を確認する。
そうやって動こうとしたが……あれだとおそらく……即死、だろう。
最悪の、だが現実的な未来を考えて悲観してしまう。俺がもっと早く声を掛けていれば……! そうすれば助けられたかもしれねぇのに……!
そう思うと自分にむかっ腹が立つが、それでもじっとしている場合じゃないと少女に近づこうとしたところで──少女は動いた。
「──
「なっ!!?」
「えっ……?」
「は……?」
──俺達は揃って驚愕し、あるいは意味が分からず困惑した。
その少女はぴくりと動いたどころじゃない。すくっと身を起こし、腰の辺りを擦りながら意識を普通に保っていた。導力車に轢かれたにも関わらず。
「お……おいっ! あんまり動くな! あんた、車に轢かれたんだぞ!?」
「え、車に轢かれたの? あー道理でお尻の辺りが痛い訳だ……痛てて……入学初日からついてないなぁ。──でも、ま、いっか! それより入学式入学式~♪」
「ま、いっか──じゃねぇ!! だから動くな!」
「ぶ、無事……なの……?」
「き、奇跡的に外傷はないようだが……いや、しかし油断は出来ない。ヴァンの言う通り、あまり身体を動かしては危機に陥る可能性がある。痛みはアドレナリンが出て麻痺している……のか? とにかく今は大人しくさせる方が先決だ」
ルネの言う通りだ。何故無事なのかは分からないが、奇跡的に当たりどころが良かったか運良く衝撃が緩和されたのだろう。とはいえまだ安心は出来ないため、俺はその女を大人しくさせようと立ち塞がる。
「ちょっ、お前、だから待てって!」
「今救急車を呼んでいる! だから大人しくしろ!」
「え、救急車? 私どこも悪くないよ?」
「たった今車に轢かれただろうが!!」
「今は大丈夫でも検査を受けるべきだ!!」
「えー!? 病院なんて行ったら入学式に出席出来ないじゃん! だからやだー!」
「学校側には俺が伝えといてやるから大人しく病院に行っておけ!」
「そもそもなんでそんな平然としてやがる! 車に轢かれてんだぞ!?」
「えっ……だって大したことないし……それより学校初日の方が大事なんだもん! だから学校行くからどいて!」
「ええい、だから動くなと……くそ、やむを得ん! 身体を抑え──ぐっ!?」
「うおおっ……!? な、なんて力してやがる……!? 止まらねぇ……!?」
「やーだー! 救急車いや──!! 病院いや──!! 学校行きたーい!! やだやだやだやだ!」
「だ、駄々こねるんじゃねぇ!」
「大人しくしろ!」
「い────や────!! 学校行きたいよ──!! うわ────ん!!」
その後、俺とルネはそいつが学校に入ろうとするのを全力で止め、救急車が到着してからは医者や看護師と共に協力して全員がかりで救急車に押し込んで、それでも止まらなかったので仕方なく学校の保健室で検査を受けさせることにし、どうやら奇跡的に無傷という信じられない結果を見届けながら俺とルネは事故の状況を遅れてやってきた警察に話すべくその少女と一緒に入学式を欠席したが……その最中もその少女は初日から欠席したことを不満そうにしていた。
──そうして入学初日から大暴れしたそいつの名前はアーヤ・サイード。後に《アラミスの狂人》と呼ばれる程の問題児女と俺達の出会いだった。
というわけで学園編スタート。シズナ視点がないのは友達(シャロン、デュバリィとか)はあえて後のために勿体ぶってますってことで今回はここまで。
次回からは真っ当な青春です。きっと優等生として学校中から一目置かれるんだろうなぁ……。
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