TS不幸少女のゼムリア大陸災難記   作:黒岩

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夏休みも多忙で不幸

 ──暑中見舞い申し上げます。どうも、アーヤ・サイードです。

 

 さてさて、そんな訳で段々暑くなってきたけど学校生活も相変わらず楽しいことばかりだし、私の目標にも進展があった。それも第三の目標である進路の話だ。

 私の夢というか将来なりたいものの第1位はもちろんファッションデザイナー。服飾は私の特技でもあるし好きなことでもある。自分に向いてる上に好きなことということで当然ながらこれでご飯が食べられるならそれが1番良い──ちなみに暗殺者は多分20位くらい。得意にはなってきたけど好きじゃないから──ってことで私は趣味としても日常的に洋服のデザイン画を描いたりそれを元に型紙を引いて実際に服を作ってみて自分で着たり親しい人にプレゼントしている訳だけど、これを職業にするなら段階を踏む必要がある。

 どっかの服飾ブランドに就職するというのが1番楽だけどそれは後の手段で夢を追いかけてる段階ではやることじゃないので却下。まあバイトで店員さんになってみるのは良いかもだけどそれも今じゃない。適当なコンクールに出して入賞して箔を付ける……のはその内やってみるけどやるのは夏休みから秋頃。私の当初の目標はまずこれで、これでそこそこ有名になってから営業をかけるつもりだったけど状況が変わった。私は1つ先の工程に進む──新しくお友達になったアナ先輩によって。

 

「身長170リジュ……首回り……肩幅に背丈が……ふむふむ……袖丈がこれくらいと。着丈に身幅が……なるほど。3サイズが上から90……ほうほう……それで股上に股下がおお、足も長い! アナ先輩スタイル良いですねー!」

 

「……身嗜みには気をつけていますから当然です。それよりも……本当に作れるんですか?」

 

「先輩に似合うデザインとなると……うーん、パーティドレスも良いけど普段遣いの私服も……どっちも華やかなのが……あーでも敢えてギャップを狙ってみるのもありかも? その方が話題になるかもだし……あ、採寸終わりましたんで後は任せてください! 絶対に先輩に似合う衣装作ってきますから!」

 

「はぁ……わかりました。期待しすぎない程度に待っていますね」

 

「はーい!」

 

 6月の終わり頃。私はお礼をして頂けると言ったアナ先輩を寮の先輩の部屋で採寸をした。服作りには身体の採寸が欠かせない。既製品ではないオーダーメイドの仕立服なら特に着る人の身体に合わせて服を作る必要があるのだ。身体のサイズを知っておけばボディ──マネキンを作っておいて一々採寸せずとも注文を受けることだって出来たりするが、さすがにまだマネキンを作る程の余裕はない。アナ先輩にサイズを口頭やメモで教えてもらっても良かったけど自分で確かめつつ測った方が正確で着心地の良いものが出来るので直接測らせてもらった。

 ──と、ここまで聞けば分かる通り、私は先輩の服を作ろうとしている。そして何のために先輩の服を作ろうとしているかと言うと私の考えた作戦のためだ。

 

 題して──顔が広い先輩に私の作った服を着てもらって宣伝してあわよくば顧客を集めてもらおう作戦! 

 

 アナスタシア先輩から何かお礼がしたいと告げられた時、アナ先輩を見て天才の私はこの作戦を思いついてしまったのだ。アナ先輩は元貴族でお金持ちの上流階級。交友関係も広くて友達も多い。パーティなんかで顔も出す。紛うことなき悪役令嬢──もといお嬢様だ。

 そしてそれだけでなくアナ先輩は美人だ。なんならこれが1番重要。アナ先輩は身長も高くて体付きも女性らしく美しい。生まれ持った美貌に加えて身嗜みに気を使っているのがよく分かる。まあ身長以外なら私も負けてないけどね! 私はめちゃくちゃ可愛いしスタイルも良いしウエストの細さとかにも自信がある。

 でもモデルとして身長は大事だし見た目も大事。ルッキズム? 申し訳ないけどやっぱモデル自身が綺麗な方が映えるんだよね……まあ大丈夫! 私の作った服を着れば皆おしゃれにはなれるから! そして私の服を広めるためには顔が広いことも重要。そもそも見せる機会がないと広まらないからね。私が私の作った服を着ていても広まるのは精々裏社会とか学校とかの知り合いくらいだけど、先輩に着てもらえば私の服がお金持ちの方々にも広まる! 「あらそのドレスとってもおしゃれね! どこで作ったの?」「私の御学友の方が作っていまして」「そんな素敵な服を貴方の御学友が!? お金を払うから私の服も作って!」──こうなるに違いない。ふっふっふ、そうすれば私という職人が話題となり、いずれは私のブランドを立ち上げてオートクチュールメゾンとして、そして一流のファッションデザイナーとして一躍大スターになれる。そうすれば自分の店を持ってプレタポルテ──既製服でも売れるようになるし、私のデザインした服を色んな人に買って着てもらえる。その中から私にオーダーメイドしたいという人も現れちゃったりするけど私はカリスマ人気デザイナーなので費用もかかるし予約がうまってたりするんだけど、それでも時折貧しい子供に颯爽と服を作ってあげるようなかっこいい感じに──なんて妄想を現実にするためにアナ先輩にモデルになってもらう! 

 という訳でこれが私の完璧なプラン。そうして表で稼げるようになれば裏からもその内抜け出せる……筈。まあそこはまた考えないといけないかもだけど夢はでっかく。どうせ目指すならより大きなドリームだ。私の服を皆に着てもらってお金持ちになる。平和で全員が得する夢だ。そのために私は先輩の身体のサイズを持ち帰ると早速デザインを考えて翌日には型紙を起こしてそれが少しして終わったら仮縫いをして。

 

「アナ先輩! 仮縫いしたんでちょっと着て合わせてもらっていいですか!?」

 

「え……? あ、はぁ、構いませんけど……もう出来たんですか?」

 

「はい! なので着てもらって違和感があるところとか気に入らないところがあったら言ってください! ちゃちゃっと直しちゃうので! それが終わったら本縫いします!」

 

「……分かりました。では試着しに行きましょう」

 

 ──そしてすぐに試着してもらう! アナ先輩は仮縫い段階だけど私の仕立てたドレスを気に入ってくれたのでその日も帰ってすぐに作業! 本縫いに移って──

 

「アナ先輩! 衣装出来ましたんで放課後受け取りに来て貰えますか!?」

 

「えっ、もう出来たのですか?」

 

「はい! 自信作です!」

 

 ──頑張って毎日せっせと針を動かした結果、夏休み前にはアナ先輩用のドレスが出来上がったのでそれを納品! ワインレッドの生地を使ったシックかつ上品なドレスで腰元に巻かれたリボンとひし形の文様がおしゃれ! 肩と背中をちょっと出して少しセクシーだけど上品に。これから夏なので涼しさも考えてます! なのでスカートも丈はミドルだけど下の方は透けていてお膝や太ももがちょっぴり透けて見える! 上品さと可愛さと涼しさを全て併せ持つこの夏にぴったり! 先輩にピッタリのドレスだ! ちょっとしたお出かけやパーティなんかでどうぞ! 

 

「これは……想像以上ですね。着心地も良いですし、これなら確かにお金を支払ってもいいクオリティだと思いますわ」

 

「本当ですか! なら宣伝よろしくお願いします!」

 

「ええ、夏季休暇にも何度かパーティは行われるかと思いますので着させて頂きますわ」

 

「お願いします!」

 

 ってことで夏休み前に服を渡すことに成功したし、アナ先輩も気に入ってくれたみたいなのできっと沢山宣伝してくれるだろう。袖にちっちゃく金の刺繍で“SAID(サイード)”と私の名字をおしゃれに崩しつつ入れておいたし、これでブランド価値がその内付くかも! 

 なんだったらすぐに注文が入ってもおかしくないため、私は衣装作りと並行して一学期の内に頼れる人に相談しておいた。

 

「……話は分かった。要は自分で作った服を知人に売るために必要な手続きの取り方を教えてほしいと」

 

「ってことです! 起業するんでやり方をルネっち先輩お願いしまーす!」

 

「だからその妙ちくりんな呼び名をやめろ。……だが、そうだな。結論から言わせてもらうが……」

 

「はい! 何ですか!?」

 

 頼れる知り合い。私の知り合いの男の眼鏡の中では1番良い人っぽいルネっち先輩はその眼鏡をくいっと上げながら私の相談に適切な答えを──

 

「──会社は必要ないだろうな」

 

「はい。そうですよね……えっ?」

 

 ──教えてくれなかった。

 私は一瞬思考を止めた後にすぐにその意味を慌てて問い返す。

 

「な、なんでですか!? 私にはまだ早いってことですか!?」

 

「その通りだ。まだ知人に頼まれて服を作ったりしている程度なんだろう? それならば会社は必要ない。必要があるとするなら個人事業主の届けになる。それも一定の収入を得た場合に限るがな。一応聞いておくが、何十万と稼いでいる訳ではないんだろう?」

 

「あ、はい。生地代とお気持ちを貰ってるくらいでそんなには……」

 

「ならばいわゆる雑所得となる。申告などは必要ない。とはいえ諸々の手続きを行えば社会的な制度を幾つか利用出来るし、もし一定の金額を稼いだのなら個人事業主として手続きを行った方が良いだろうな」

 

「ははぁ……なるほどなるほどー」

 

「そしてそうなった場合でも会社はまだ必要ないだろう。起業するというならそれなりの需要が見込めると判断した上で明確なビジネスモデルを自分の中で確立してからにしておけ」

 

「ふむふむ。つまり……会社はまだ必要ないってことですね! 理解しました!」

 

「本当に理解したか怪しいものだが……まあ、そういうことだ。……念の為言っておくが、君の作った服のクオリティが低いと言っている訳ではないからそこは留意してくれ」

 

「おお! さすがはルネっち先輩! 良いものは良いと言える良い人ですね!」

 

「だからルネっちという妙な呼び方はやめろ。全く……」

 

 ……と、言うことらしい! なので会社は必要ないらしい! いやーさすがはルネっち先輩だ。頼りになる。何となくは理解した。とりあえず難しいところは誰かに相談しよう! 

 なのでルネっち先輩の言う通り、顧客が正式に出来るまでは今のままで構わないかな。細かいところはともかく、まずは服を作って良さを知ってもらうのが大事かつ先決ってことだね! 

 そしてその活動なら地味にもう始めてるものがある。

 

「ほら行くよー」

 

「ふぁ……眠い……」

 

「朝から行く必要あんのかよー」

 

「あるの! ほら荷物持って!」

 

 ──なので私は夏休みに入るなり、時間を見つけてはそれを行うためにイクスとヨルダと一緒に9区・中央市場に出かける。

 

「ロメ爺おはよー! 今日もよろしくー!」

 

「ああ、おはようさん。今日も売ってくのか?」

 

「うん! ほら、2人も挨拶挨拶!」

 

「ん……おはよう……」

 

「おうジジイ! 今日も来てやったぜ!」

 

「おう。今日はガキ2人も一緒か。あんまりはしゃいで他所様の店荒らしたりするんじゃねぇぞ」

 

「私が見とくんで大丈夫ー! ってことで行ってきまーす!」

 

 中央市場はその名の通り首都で1番と言っていいほどの大規模な市場がある賑やかな場所だ。食品なんかを買っていく奥様方や子供連れとかも多い。そんな中で私も2人を連れてここの元締めの野菜屋のロメインお爺ちゃんにしっかり挨拶した上で出店からは離れてまた別の広場に。風呂敷とか椅子とかを置いて店を開いている人が大勢いるそこは、いわゆる蚤の市。バザー。フリーマーケットと呼ばれるものが行われている場所だ。

 私は定期的にここに参加の届け出を出した上で自分の作ったものを売っている。ちょっと昔に首都に遊びに来た時にも行ったお小遣いを稼ぐ方法だ。

 まあ今ではお小遣い稼ぎが目的と言うより、私の服を人に取ってもらうことが目的だ。

 

「あら、アーヤちゃん。今日もやってるのね」

 

「あっ、おはようございまーす! この間はどうもー!」

 

「この間はありがとうねぇ。おかげで娘の機嫌が直ったわ」

 

「いえいえー、ちょっと縫っただけですんで気にしないでいいですよー。ってことで良かったら服見てってください!」

 

「そうね。ちょっと見て行こうかしら」

 

「どうぞどうぞー。──ほら、イクスとヨルダも客引きお願い! 上手く売れたら今日もお小遣い上げるよ!」

 

「やった。私に任せて」

 

「おっ、マジ!? なら付き合ってやるよ!」

 

「イクスよりは上手く出来る」

 

「はぁ!? ボクの方が出来るし! 舐めんなよ!」

 

「頑張ってねー」

 

 ──ってことで私は他の人と同じように風呂敷を敷いてそこに私の作ったシャツとかスカートとか小物とかを並べ、訪れた顔見知りの奥様と話に花を咲かせつつイクスとヨルダにもお小遣いで釣って客引き&接客を行わせる。子供は現金だし、子供の客引きは強いからね。朝の買い物に来てる奥様達に可愛い子供の客引きは効くだろう。こうして私の作った可愛い服を沢山買ってもらう! もちろん子供服もちょっと置いてる。子供服はサイズとかが合わなかったら厳しいんだけど需要があるからね! ちなみに金額はそんなに高くない。高くても1000ミラくらい。手に取ってもらうことが目的だから利益は度外視だ。

 

 そうしてしっかりと服を売り捌いていき、ある程度客足が落ち着いていく。大体は2~3時間。朝に行って昼頃には撤収する。ついでにお昼ご飯を食べて帰るのが休日の日課だ。

 

「これくださーい!」

 

「はいはーい。200ミラだよー。ありがとねー」

 

「このシャツ幾らですか?」

 

「それは600ミラですね。──はい、ありがとうございまーす!」

 

「このスカート可愛い!」

 

「お、気に入った? 特別に500ミラにまけてあげるから買ってくれる? ──まいどありー!」

 

「ようアーヤ。これ葉巻入れに使っても構わねぇか?」

 

「お帰りはあちらですお客様」

 

 ──そんなこんなで客を捌いていたら突然オジサンが現れた。招かれざる客とはまさにこのことだ。

 

「うわっ、オッサンじゃん!」

 

「何しに来たのオジサン」

 

「クク、イクスにヨルダも久し振りだな。どうだ? ちゃんと学んでるか?」

 

「ハッ! 誰に言ってんだ! ちゃんとやれてるに決まってんだろ!」

 

「アーヤ姉に色々と教えてもらってる」

 

「それは重畳。ちゃんと先輩の背中を見て育ってるみたいだねぇ」

 

「……はぁ。イクスーヨルダ―。お小遣い上げるから適当にお菓子でも買って休憩してきていいよ」

 

「え、マジ!? やりぃ!」

 

「……お菓子じゃなくてもいい?」

 

「いいよー。10分くらいしたら戻ってきてねー」

 

「オッケー! ハッハー! よっしゃ、行くぞヨルダ!」

 

「待ってイクス。私が行きたいのはあっちのアイス屋で──」

 

 私はイクスとヨルダに約束通りお小遣いを上げて休憩してくるように言う。子供2人で行かせるのはちょっと危ないけど、この場合はあの2人なら問題ないし、なんなら今ここで1番の不審者はどう考えても目の前のオジサンであるため監督不行き届きには至らない。どう考えても離した方がいいし。

 

「それで? 何か用?」

 

「まあ様子見がてらな。ちょっと仕事を頼みに来たんだが……随分上手くやってるみたいじゃねぇか。あの2人の面倒を見ながら学生として勉強に励むなんて健気だねぇ。苦学生っぽくてオジサン泣いちゃいそうだぜ」

 

「そりゃああの2人を拾った()()()()()()()()私に任せっきりで何もしてくれないからねー。いつもどこで何をしてるのやらだよ。せめて育児費用とか出してくれたらいいのに」

 

「クク、どこのどいつかは知らねぇが悪い奴もいたもんだな」

 

「本当だよねー。……でー? こっちは暇じゃないんですけどー? 仕事があるなら早く教えてほしいなー? 保護者のオジサン?」

 

「そうだな。俺も最近はそんなに暇じゃねぇ。例の計画が近づいてるからなぁ。その裏方で駆り出されて悪巧みをしてる暇もないくらいだ」

 

 白々しいオジサンはのらりくらりとジト目の私の追求を躱し、認めつつも悪びれもせず──いや、むしろ悪びれまくりながらもやれやれと肩を竦める。私としてはいつも通りの諦めというか、もはや慣れてるので普通に対応してたけど例の計画とかいう気になる言葉が飛び出したのでちょっとだけ緊張。計画って言うと……もしかしてあれ? 《オルフェウス最終計画》の第一段階? 面白教授主導の《福音計画》のこと? もしかしてもうそんな時期なのかな。それともまだ下準備で本番はもうちょっと先かなぁ。

 

「そんな訳で多忙なオジサンの代わりに1つ仕事をやってくれねぇか?」

 

「はぁ、こっちも多忙なんだけどなー……いいけどちゃんと報酬出してよ。それとヤバい任務じゃないよね?」

 

「心配するな。そこら辺はきっちりしてやる。それと嫌なら断っても構わねぇぜ? 中身を見てお前が嫌だと思ったんなら無視してくれ──それじゃあよろしくな。()()()()()()()()()()♪」

 

 そして言いたいことだけ言って去っていくオジサン。相変わらずすぎる……ってかなんで仕立屋やろうとしてることもう知ってるの!? くぅ……相変わらず情報が早すぎる……しかも態々伝えてくる辺りがいやらしい。これはあれだ。仕事をやってくれれば旨味はあるけどやらない場合は何が起こるか分からない怖いパターン。なので私は基本オジサンの仕事は全部受けてる。だって断った場合何されるか分からないじゃん! 

 

 ってことで私は店じまいだ。アイスクリームでも食べてきたのだろう。ほっぺたを汚したイクスとヨルダが帰ってきたのを見てそれをハンカチで拭き取ってあげつつ私は荷物を纏めて家に帰宅。途中で買ったお昼ご飯のホットドックをパクつきながら私は去り際にオジサンから手渡された手紙式の指令書を開いて確認する。

 

 えーと、何々……場所は大陸中東の……ああ、あの辺りね。そこで結社の子飼いの組織と敵対する組織の重役複数人の暗殺と、雇われた猟兵相手の撹乱と妨害。可能なら殲滅──なお任務は執行者No.Ⅱと共に遂行──え、ほんと!? やったー! レーヴェが一緒だー! なら楽が出来る! すっごい話が分かるし優しいしマクバーンみたいに戦闘狂でもないから巻き込まれる心配もない! 

 私は任務内容を把握するにつれて喜びの感情が湧き上がる。仕事のパートナーがレーヴェで場所が場所だし、今度こそ楽して仕事終わっておまけに観光もやってお金も得られそうで最高だ。しかも最後に追伸で『相手は《赤い星座》でも《西風》でも《斑鳩》でもねぇから安心しな』って書いてある。よしよし、その懸念まで払拭された。正直猟兵って聞くと《赤い星座》の一件でちょっと身構えちゃうところあるけどこれなら大丈夫だろう。オジサンはこういう時の嘘はつかない。だから多分大丈夫。安心して臨める任務だ。

 私はイクスとヨルダを少しの間別のところに預けて荷物を手に仕事場所へ向かうことにした。ちょっとした夏休みの旅行気分だ。余裕もありそうだし、せっかくだから友達にお土産でも買っていこう。民芸品とか食べ物とかね。ヴァンには甘味かな。あー、後は向こうの衣装とかも楽しみ! やっぱ中東は故郷なだけあってテンション上がるんだよね! ほんと楽しみだなー! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──後日。カルバード共和国。遊興都市サルバッドにて。

 

「──貴様がもう1人の襲撃者だな?」

 

「……あー……まあ、そうかもしれませんしそうじゃないかもしれないとしか……」

 

「……答えるつもりはないか。いいだろう。俺も口で語るのは得意じゃない」

 

 そう言ってその()()()()()()()()()得物を構え、闘気を剥き出しにする──私を倒すために。

 

「──()()()()()()()()()()()。カシム・アルファイド……参る!!」

 

「あ、本当にやる感じ? いやぁ、それはちょっと待ってくれると──危ないぃっ!?」

 

 そうして私に容赦なく刃を向けてくる相手に、私は何とか対応しつつ内心で慟哭した──ねえなんで私の相手カシム・アルファイドなの──!!? 《クルガ戦士団》──!! 将来の最強の猟兵の1人とか相手にしてらんないし、ここは普通はレーヴェが相手にするとこでしょ!!? 《剣帝》と《灼飆(カムシン)》のドリームマッチの方が絶対熱いしいい勝負するって!! 私の相手はフェリちゃんくらいがちょうどいいって!! ねぇ聞いてる!? まあ聞いてないよねそうだよねー!! 夏休みの冒険が冒険過ぎるよー!! ひゃんっ!? 

 

 ──そうして私は夏休みにあのカシム・アルファイドと戦うことになった。学生らしい普通の旅行がしたかった……。




文量的に今回はここまで。学園描写が多いので平和な日常回になりがち。
次回は『アーヤちゃんの夏休み ドキッ!? イケメンだらけのサマーバケーション! in サルバッド!』です。お楽しみに!
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