──私の後輩には1人、おかしな奴がいる。
それはもちろん、7年振りに再会したヴァンではない。確かにヴァンも普通の1年生とは言い難い奴ではあるがな。もちろんエレインでもない。エレインは真面目な優等生だ。ヴァンのように先生に目を付けられるようなちょっとした問題児でもないし、私のように裏で適度に肩の力を抜いていることもない。
じゃあ誰かと言えば決まっている。現アラミス生であれば真っ先にその顔と名前を思い浮かべるだろう──アーヤ・サイードだ。
《アラミスの狂人》という様々な意味を込めて付けられた異名を持つ中東人の彼女はヴァンやエレインと同じクラスであり、ヴァンなどとは比較にならないほどの問題児である。
と言ってもとんでもない不良だとかそういう訳ではない。むしろ善人の部類に入るだろう。彼女は明るく人当たりも良い。校内では1番の美人はエレインだが1番可愛いのは実はアーヤではないかと言われる程には容姿も整っているしな。
だがその見た目が霞むほどに彼女は規格外なのだ。そしてどこか抜けていて頭が残念なトラブルメーカーでもある。
自分は入学式に車に轢かれた頃からの付き合いであるが、そのようにアーヤ自身が悪いというわけではない事件も幾つもある。一学期はそれこそ学食やイジメられ疑惑のせいで散々振り回されたものだが、夏休みを終えて二学期に入ってもその狂人っぷりは健在だった。
まずそうだな……アーヤを語る上で外せないのはその裁縫──いや、ファッションデザイナーとしての才能だろう。
入学時点から彼女の趣味が裁縫や服作り。それに付随する小物作りであることはよく知られていたし、仲の良い友人には時折自分で作った服などを送ったりすることはエレインやヴァンからもよく聞いている。私自身も一学期に彼女が作った服で利益を出した場合はどうすればいいかという相談に乗った際、後日シンプルな白ワイシャツを貰った。どのコーディネートにも合わせられるが、袖や胸ポケットに僅かに刺繍を入れている。フォーマルな場でも許される遊び心を加えてみたとは彼女の言だ。サイズもぴったりで着心地も良く、正直なところ感心した。普段彼女が着ているようなファッションセンスに溢れたものだけでなく、こういったシンプルなシャツでさえ彼女の手にかかればどこか他のシャツとは違った光るものが感じられる一品になる。
だから二学期になって彼女のデザインした服が、ある3年生の先輩の友人や知人を通じて依頼が殺到していると聞いた時は半分は驚いたがもう半分は納得した。それはそうだろう。既製品と何ら変わりないどころかそれ以上のクオリティであれば需要がない筈がない。だからこそ私は彼女が生徒会室を訪れた際に、今度はしっかりと個人事業主としての手続き方法や各種制度の説明を彼女に行ったし、その噂を聞いた教師陣も驚愕していた。芸術家アラミスの創設したこの学校の教師でさえ、まさか在学中にファッションデザイナーとして活動を始める生徒が出てくるとは思わなかったことだろう。しかもそれがあのアーヤ・サイードともなれば驚くのも当然。やはり芸術で結果を出す人間はどこか人とは違うところがあるものなのだと芸術科の教師が熱く語っていたのを聞いた時は個人的に親交のある身としてはそれなりに誇らしくなったものだ。
そして二学期になってからアーヤはその友人になったという3年生の先輩の知人からの依頼をこなすことで忙しくしている。これでアーヤの狂人染みた規格外の行動も落ち着くだろうと私やヴァンは思っていたのだが……生憎と私達はまだアーヤという人物を捉えきれていなかった。
二学期になって服作りで忙しくなりながらも、アーヤは突然バスケ部に入って部活動にも精を出し始めた。私が体育館で練習を始めようとストレッチをしているところにアーヤが運動着で現れた時は何の冗談かと思ったが、どうやら本気らしい。と言っても期間限定。1シーズンだけ参加したいということであった。……アラミスのバスケ部は男子女子共に強豪でカルバード国内の学校やチームで行われる全国大会でも良い結果を残し続けている。だがそれとは別にアラミスは生徒の自主性を重んじている。部活動も途中参加も快く認められる。しかもその途中入部したのがあのアーヤ・サイードともなれば歓迎しない訳がない。彼女の身体能力は一学期で既に校内中に知れ渡っている。バスケにおいても実力を発揮し、女子のレギュラーどころか私を含む男子バスケ部のレギュラーメンバーにすら勝利してしまう程の腕前だ。
ゆえにこの結果は予想出来た──二学期が始まってから行われた全国大会で、アラミス高等学校の女子バスケ部は優勝した。エースはアーヤで凄まじい跳躍力で何度もダンクを決めていた。そして誰も止められないのだからそうなる。ただでさえ強いアラミスのバスケ部にアーヤが入ったのだからこうなるに決まっていた。そしてアーヤは全国優勝を成し遂げた次の日に「スッキリした」という理由でバスケ部を退部。ストレスでも溜まっていたのかよく分からないが、少なくとも《アラミスの狂人》伝説にまた新たな伝説が追加されたことだけは確かだ。
……と、ここまで学校史に残るような活動を行っている一方で、アーヤの普段の生活はまた謎と言うべきか、ちょっとした噂もある。何でもアーヤには彼氏がいるらしい、と。
無論、ただそれだけであれば話題にはなってもおかしな噂にはならない。問題なのは、アーヤが幾人もの男性とデートを行っているらしいと言う噂が立っていることだ。
最初の目撃証言は夏休み。家庭の事情で夏休み中に退学してしまった生徒と出歩いているのを見たとか、サルバッド出身の生徒がサルバッドでアーヤらしき人が物凄いイケメンと夜にデートをしていたとか、休日にダンディな大人の男性と出歩いていたなど、様々な証言が上がっている。
だがどれも噂の域は出ないものだ。実際俺もそれとなくアーヤに聞いてみたが、大人の男性は保護者でサルバッドは多分人違い。退学した生徒とはちょっと遊びに行っただけの友達だと答えた。私の目から見てもその言葉に嘘は見られないし、他にある目撃証言についても全員友達だと言うから私は納得した。……まあ私も年上の彼女がいる身だ。その彼女の友達と男連中とで遊ぶこともあるので理解はある。多少は軽いのかもしれないがそこまでおかしなことでもないだろうと私はそれとなく噂は噂だったことを広めることにした。
──と思っていた矢先に、私は更にとんでもないことを聞いた。何でも、アーヤには彼氏だけでなく彼女もいるらしいと。
私はまたしても頭に疑問符を浮かべた。アーヤが突拍子もない行動を取った際はいつもそうなってしまうが、私も遺憾ながら慣れてきている。すぐに冷静さを取り戻してヴァンと共にアーヤに事の真偽をそれとなく聞いてみたのだが……。
「あっ、えーと……まあ……そ、ソンナコトナイヨー。あはは……」
──どうみても黒だった。どうやらアーヤは異性相手に軽いというだけでなく、同性相手もそういう目で見ることが出来るらしい。
実際に彼氏と彼女が同時に存在するかどうかまでは分からないが、最低でも彼氏がいたこともあれば彼女がいたこともあるのは多分事実なのだろう。実際、10月に行われた実地研修後からアーヤと仲良くなった女子生徒とよく一緒にいるところを目撃している。何でもアパレルブランドに視察に行った際に、同じ裁縫好きということで仲良くなったのだとか。普通の友人のようにも思えるが……アーヤは元々距離感が近いため分かりにくい。友人相手、それこそエレインに対してもスキンシップが激しいのだから多少距離が近くても付き合っているとは限らないだろう。
とはいえそれもまた《アラミスの狂人》伝説を彩る1つの噂となった。アーヤには彼氏が複数人いる。それどころか彼女もいたとか──そんな真偽不明の噂がまことしやかに囁かれるようになったが、それでもアーヤは変わらないし周りを取り巻く環境にもあまり変化はない。
むしろ一学期に比べてより受け入れられているのを感じる。ただ慣れただけかもしれないが……だとしても良いことではあるだろう。アーヤは個性的でおかしな人物ではあるが、悪い奴ではないし、私にとっても可愛い後輩の1人だ。最近はよくヴァンやエレインのことを気にかけてくれているようでもあるし、たまにドジをしてもつい許してしまうような愛嬌があることを私も認めざるを得ない。
あるいはそういう部分が人気なのだろう。個性的な部分もまた魅力になるし、それをマイナスに感じたとしても声をかけたくなるくらいに可愛さはある。まあ私は絶対にないが。ただの可愛い後輩でありそれ以上でもそれ以下でもない。
だが可愛い後輩だからこそ一応は面倒を見てやろう。頼られるのも悪い気はしないしな──
「──ルネっちせんぱーい! ちょっと小耳に挟んだんですけどルネっち先輩って彼女を取っ替え引っ替えしてるんですよね? もしかして……ヤ◯チンなんですか?」
他の人間もいる生徒会室でアーヤはとんでもないことをいい出した──女性を本気で殴りたいと思ったのは初めての経験だったが、私はそれをぐっと堪えてそのふざけすぎた勘違いを訂正した。……やはり少しは厳しくした方がいいかもしれないな。
──はぁ……ちん◯ん食べたい……あ、こんにちは。アーヤ・サイードです。
忙しかった夏休みも終わって二学期。秋が始まって景色がまた移り変わる中、私もまたちょっとした変化を自覚していました。
それと言うのも、夏休みに私は約10年振りとなる男性とのえっちを体験したんだけど……それがまあ、何と言うか──
いやほんと、自分でもびっくりだ。まさかあんなにハマるとは思わなかった。最初は私も少しだけ内心緊張してたけど、いざ始まってみれば昔と変わらず私のテクニックは抜群だったし、昔と違って身体も心も成長したおかげかしっかりと快感を感じられた。何だったら相手をイかせるのも結構楽しかった。……まあそんなには出来なかったけどね。手でした時もすぐに出しちゃってたし、本番も一瞬で出してたし2回戦も全然持たなかった。無理やり復活させて行った3回戦は多少は持ったけどそれでも割とすぐ終わったので気持ちは良かったけど微妙に物足りなかった。まあ最初にしては上出来というか十分な気もしたけどね。
ただ相手は初めてだったからしょうがないとも思う。冷静に客観的に見てみれば私って可愛すぎるし。愛嬌たっぷり美少女フェイスにサラサラの銀白色のヘアーにスタイルもエレインちゃんとかに比べると身長は158リジュと低めだけど抜群だし。特にウエストには自信あるし、胸もそこそこはある。お尻もプリティだし足も太くはない。程よく肉の付いた綺麗な美少女太腿&おみ足。濃すぎない褐色の肌もすべすべぷにぷにだし黄金色のぱっちり瞳も綺麗で可愛いだろう。なんなら声も可愛いと思う。前世で知ってる声優さんで強いて例えるならあやねるとかが近いかな? ふっふっふ、こんな可愛い子に可愛い声で甘々に囁かれたりしたらそりゃあんなに出してしまうのもしょうがないだろう。おまけに何がとは言わないけど私のあれは昔あんだけ使い込んだにも関わらずきつきつで最高らしいし。汚れてすらいないし綺麗なものだ。
そしてそんな美少女なのにおしゃれですらある。なんてことだ。ナルシストになっても全然問題ないくらいに私ってば可愛い。最近は男子によく声かけられるし困った困った。だからと言って全員と遊ぶわけにもいかないんだけどね。ビッチ扱いされたくはないし、一応気を使ってる。誰とやっても構わないけど恋愛もすると考えると一応選びたいしそっちの意味だと安売りはしたくない。そんな複雑な女心だ。
……だけどそれはそれで中々えっち出来なくて困るんだよねぇ……なので二学期が始まってから私は悩んだ。ムラムラしすぎてそれを抑えようとバスケ部に入って全国大会優勝するくらいまで頑張って忘れようとしたけどそれも一時的で結局ムラムラしてきちゃったし、その後はアナ先輩に頼んでた宣伝が上手くいって私に服を作ってほしいと依頼が結構沢山来てたのでそれに集中したりして誤魔化してる。いや、もちろん服作りは楽しいし依頼が来たのも嬉しいし、今でも大喜びで毎日服を作ってるけどそれでもふとした時にちん◯んが食べたくなる。ほら、やっぱ三大欲求だしね? 他に夢中になっててもふとした時に食べたくなっちゃう。普段あんまり食べないけどふとした時に食べたくなるし、一度食べたら嵌って癖になる食べ物ってあるじゃん? あれと同じだよちん◯ん。たまに一晩だけってことで食べたら落ち着くけどしばらくしたらまた食べたくなる。食べるまで落ち着かない。
つまり逆に言うと食べるまではずっとその口になってるんだよね。だから最近の私はふとある毎にちん◯んのことを考えてる。特に男の子と話してる時は顔を見ながら思う──ちん◯ん大きそうだなーとか小さそうだなーとか皮被ってそうだなーとか。気になってしょうがない。この間のアハトくんはそんなに大きくなかったからそれと比べて考えたり想像したりする。そう言えばカシムのカムチンは大きかったな……あれは確かに史上最強の猟兵の一角になれそう。私が出会ったシグムントとかまだ会ってないし会いたくもない《猟兵王》とかも何となく大きそうだし。なんだったらこの世界でもかなり上位に来そう。マクバーンとかレーヴェもそこそこありそうだよね。異界の王と剣帝だし。逆に小さいのって誰だろう……八葉関係者も大きそうだしなぁ。優男系もなんだかんだ大きいイメージがあるし……あ、閃のエリオット君とか? いやでもああいう可愛い系に限って案外デカかったりして……父親はゴツかった気がするし……いや、むしろ普段カッコつけてる奴とかに限って小さかったら面白いかな? 面白教授とか黒月の腹黒眼鏡とかが短小だったら……ふ、ふふ……ダメだ。想像しただけで面白い。それならちょっと好きになれるかも。爆笑しそう。
「ふ、ふふ……」
「──アーヤ?」
「ふっ……あ、ごめん。ちょっと思い出し笑いというかふと思いついちゃって」
──っと。危ない危ない。今はエレインちゃんとおしゃれなカフェでお茶してる最中だった。今日はちょっとした内緒の女子会で、更にはエレインちゃんの相談に乗ってあげる日でもある。だからこそエレインちゃんもちょっと恥ずかしそうというか緊張していた。
「……? まあ良いけれど……それより、その……ど、どうだったの……? その、デートは……」
「あー、うん。結局普通に遊んで帰っちゃってね。でも結構色々気になることは聞けたというか、エレインちゃんが気になる男の子の傾向も何となく見えてきたよ」
「そ、そうなの。まあ、別に私は気になる人なんていないけど……一応話したいのなら聞いてあげなくもないわ」
頬を染め、目を逸らしながらストローをちゅーちゅー吸うエレインちゃんは可愛い。本当は興味があるくせにねー。でも野暮なことは言わない。このバレバレなのに隠してる感じが可愛いからね。指摘せずにこのまま楽しむのが良い。ってことで女性誌もついでに広げつつ、と。
「そうだねー。それじゃあ話したいから話すけど、やっぱりデートするならおしゃれとか身嗜みを整えていくのは当然として……」
「おしゃれ……ね。あまり自信はないわね。アーヤはおしゃれだから良いでしょうけど……」
「エレインちゃんは素材が良いからなんだって似合うと思うけどねー。もし不安なら今度私が仕立ててあげよっか? お友達価格で格安で提供するよ!」
「ふふ、ありがとう。そうね、また今度余裕がある時に頼ませてもらうわ。……あくまでデートとは関係なく普段遣いとしてだけど」
「うんうん、分かってるよ。だからまあおしゃれはちゃんとした方がいいよね。洋服はもちろんだけど──下着とかも」
「し、下着……!? え、その……そ、そんなところを……?」
「そりゃあね。いわゆる勝負下着ってやつだよ。いざって時のために彼が萎えないようにちゃんと可愛くてえっちなのを付けていかないとね」
「な、萎えるって……」
「え? そりゃあちん──」
「い、言わなくていいからっ!」
おっと。危ない危ない。ちょっと頭からちん◯んが溢れ出すところだった。エレインちゃんは初心だから気をつけないとね。きちんと段階を踏んでいこう。
「おっとっと。ごめんごめん。危うく口を滑らせちゃうところだったよ」
「全くよ……場所を考えて」
「うん。気をつけるね」
「そうしてちょうだい」
「うん。それじゃあ可愛い下着を付けてもしもの時に備えた後は……そうだね。次はちん◯んに上手く避妊具を付ける方法でも──」
「あ、貴方今気をつけるって言わなかった!?」
「え? でもゴムはちゃんと付けないと大変だよ? まあ薬でもいいけどあれ合わないとキツいらしいし」
「そ、それは分かってるわよ……! ただ私が言いたいのは、そういうことを学ぶ必要なんて……」
「いやいや、甘いねぇエレインちゃん。甘々だよ。正しいゴムの着用方法や気をつけるべきポイントを知らないといざって時に失敗しちゃうんだよ?」
「……………………そうなの?」
「うん。途中で外れちゃったりしたら意味ないし、そもそも付ける途中で萎えちゃったりしたらまた盛り上げてあげないといけないしね」
「そ…………そういうものなのね……」
「うん。だから私のおすすめはこう、
「~~~~っ! も、もういいからっ! そ、その先は……」
エレインちゃんが顔を真っ赤にして私の話を止めてくる。もしかして想像しちゃったのかな? やっぱり可愛いねエレインちゃん。良いと思うんだけどなー。エレインちゃんみたいな凛々しい清楚美人系お嬢様がそんな風に付けてくれたら最高だと思うんだけど。きっとヴァンも大興奮で朝までコースだろう。
「そっかー。まあ気が向いたらいつでも言ってね! いつでも教えてあげるからさ!」
「そ、そう…………その……やっぱりアーヤはそういうことを……その……」
「んー? まあ秘密──って言いたいところだけどまあ人並みにはあるかもねー♪」
「……まあ、アーヤは可愛いものね。それにおしゃれだし明るいし、モテるのも頷けるわ」
「ふふ、ありがと♡ でもエレインちゃんも美人だし可愛いよ? だから自信持って! 絶対行けるからさ!」
「べ、別に私は誰かとそういう仲になるつもりなんて……」
「そう? 次はデートでのテクニックでも教えて上げようと思ったんだけどなー。それじゃあここまでにする?」
「……………………一応聞いておくわ。そういう時が来るかもしれないし……」
「オッケー! それじゃあ次は──」
──と、そんなこんなで私はエレインちゃんに男の子とのデートで外さないような場所とかアプローチのテクニックとかを色々教えることにした。私もまだまだ百戦錬磨とは行かないけどちょっぴり実践して学んだからね。
「さーて。お次はっと」
そうしてエレインちゃんと別れた後はまた別の場所へ向かう。
今日は休日でだからこそやることは山のようにある。だけどそんな中でも優先度が高いのはやっぱり服作り。なので今日はまた衣装作りの打ち合わせだ。
「やっほー。セラちゃん」
「アーヤちゃん。おはよう」
「先に来てたんだ。ごめんねー。待たせちゃって」
「ううん、全然大丈夫。今月出た新作を色々まとめてたところだから。ほら見てよ。こっちの秋用コーデとか良いと思わない?」
「お、確かにいいねー。ふむふむ……ピンクと黒で合わせるのが流行りそうだねー」
「そうだね。アーヤちゃんの着てる服にも似たところがあるし、そっちで攻めていくのも需要ありそうだね」
「確かにそうかも……これは上手くいけば私が共和国の新たなファッションリーダーもといカリスマデザイナーになれるかも……!」
「アーヤちゃんならきっとなれるよ。僕も頑張るから一緒に頑張ろう!」
「うん! よーしやる気出てきた! それじゃあ今日はまず生地と糸を買い足しに行こっか!」
「うん。一緒に行こう」
──と、そんな会話を私は待ち合わせ場所の別のカフェで行った。そしてその相手は最近出来た新しい友達のセラちゃんことセラフィーネ・アロンちゃんだ! 隣のクラスでレミフェリア公国出身のシルバーアッシュの髪色が特徴的な可愛くてかっこいい子! 身長が高めですらっとしてるんだけどスタイルも良い! 足が長くて綺麗! 髪のまとめかたも前髪は左分けにしつつ短めに見えるけど後ろ髪は伸ばしてて細く一本でまとめてるのがなんかかっこ良くて可愛い! 僕っ娘だしちょっとクールな感じもあるけど笑顔が可愛い! ちょっぴりお姉さん味もある気がするし、地味にお尻が大きいのが分かるのもいいね! ファッションは全体的にボーイッシュな感じでストレートパンツがよく似合ってる! 趣味は私と同じで服飾全般で、学校行事の実地研修で一緒になった時に知り合って仲良くなった! 将来は服飾業界に務めたいらしくて裁縫とかそういうのも得意だからって私の活動を噂で聞いて知って良かったらちょっと手伝わせてくれないかと頼んできたので快く引き受けることにした。今までは私が全部1人でやってたけどよくよく考えたら将来的には人を雇わないと色々と足りない部分が出てくるかもしれないしね! セラちゃんの方はデザイナー志望とかそういうのはないみたいで服飾に携われれば別に営業とか経理とか何なら事務員とかでもいいらしい。そしてそういうのも得意らしくてますます私と相性が良い! 私はそういうのはあんまりだからね!
そして更に言うならセラちゃんは割と距離が近い。というか、私が最近ムラムラしてるので男性女性問わず人肌を求めたくなっちゃうんだけど、そうやってスキンシップ多めというか腕を組んだり抱きついたりしても嫌がらないどころか「あはは、ちょっと恥ずかしいね。でもアーヤちゃんがそうしてくるなら僕からも……えいっ。こんな感じかな?」とか言って抱きついたり腕を組んだりしてくれる。うっひゃーかわいいー。すっごいいい匂いするし顔面が良すぎるしスタイルも良いからもっとくっつきたくなる。ちん◯んが食べたかったけどこうなると女の子もいいよねってなる。衝動的にキスとかしてみたくなるけどさすがにそれは妄想で留める。せっかく手に入れた新しい友達。しかも同じ趣味の友達を一時の性欲で失うのは嫌だからね。ってことで我慢我慢。ちん◯んのことでも考えて落ち着こう。落ち着こうおち◯こ。
「アーヤちゃん、今日なんか良いことでもあった?」
「え? なんで?」
「なんかいつもよりテンションが高そうだったからね。それにちょっと体温も高い気がするし。もしかして熱だったりしないよね?」
「あ、それは大丈夫」
「本当? 無理しないで何かあったら言ってね?」
「うん、ありがとねー。あはは……」
おっと、危ない危ない。またムラムラしてしまった。いつもより強めに腕を組んでしまったし自重しよう。おっぱいも地味に大きいから横乳の温度を感じたくてより密着感を出してしまった。はぁ、ムラムラするなー。これはさっさと作業に移って集中して忘れないといけないかもしれない。もしくはどこかで発散するかだが、生憎と今日この後は更に予定がある。
──というのもだ。セラちゃんとの作業が終わって解散となった後のことになるんだけど。
「ふふ、今日も良い感じで進んだね」
「ありがとー! これで明日には完成出来そう!」
「手伝えて良かったよ。それじゃ僕は帰るね。また明日」
「うん! ばいばーい!」
そうしてセラちゃんと笑顔で手を触り合って帰る。私はそのまま家に入ろうとして──しかしすぐに物を持って彼女を追いかける。
これから行うことは即ち──尾行だ。そしてサプライズを行う。
何故かと言うと簡単な話。セラちゃんは、彼女はなんと……ついこの間が誕生日だったからだ! なので渡しそびれていた誕生日プレゼントの衣装を今日渡す! そのためにサプライズで尾行して彼女の家までついて行ってそこで試着してもらうんだ! ふっふー!
なのでちゃんと尾行を、それも気づかれないようにちゃんとしないといけない。私は辺りに人がいないことを見計らってぴょーんと屋根の上にジャンプ。そしてもう本気で、かつてない程に本気で気配を消す。こちとらこう見えて暗殺者やってるからね。本気を出せば気配を隠すことも尾行することも朝飯前なんだよね。
なのでまあそのまま駅の方に歩いていくセラちゃんを上手いこと尾行して行くんだけど──
「ん? どこ行くんだろ?」
──やって来たリバーサイド地区でセラちゃんは段々と人気のないところへ入って行ってしまう。なんでこんなところに? もしかして貧乏? 実は倉庫とかに間借りして住んでたりする? それともお父さんが働いてたり、あるいは用事があるのかな?
私は気になりつつもその路地裏を歩くセラちゃんを屋根の上から見逃さないように尾行していく。そして更に人気を感じない場所に向かうとそこでセラちゃんは待っていた別の人物と会っていた。私の知らない金髪の女の子。歳は結構若めかな。でもおっぱいが大きい。セラちゃんも中々可愛い友達持ってるねー。でもこんなところで何を話すんだろう。屋根の上からなのでちょっと遠いけど聞き耳を立ててみる。ええと、何々……?
「
「今のところ問題は起きてないよ
──え、何? 距離があって聞こえにくいけどAカップって言った? おっぱいの大きさの話してる? ……でもそれにしては妙だな……セラちゃんはどう見てもAカップじゃないし……多分EかFカップくらいはあるし……相手の女の子はそれ以上に大きいし……エーじゃなくて、エェフ……って言ったのかな? そんなことある?
「そっちはどうだったんだい? シックス。ナインと一時的にパートナーを組んだんだろう? 仕事の方は?」
「そっちも問題ないに決まってるじゃない。あたしらはプロなんだから」
「なら良かったよ。失敗なんてしたら管理人に何をされるか分からないからね」
──えっ……そんな……何を言ってるの? セラちゃん……今──シック◯ナインって言った……? しかもパートナーって単語も辛うじて聞こえたけど……も、もしかしてえっちな話してる? しかも目の前の女の子とシック◯ナインしたの? それに管理……って聞こえたけどどうしたんだろう。管理……射精管理? いやいや、2人共女の子だし……でも女の子だからと言って貞操帯を付けてないとは限らないし……あ、もしかして管理人……大家さんに叱られたとか? 部屋でエロいことしてドッタンバッタン大騒ぎしたからうるさくて怒られちゃったのかもしれない。まあ声は抑えないとダメだよね。私も1人でする時はイクスやヨルダに絶対バレないように気をつけてるし。
というか……えーショック……セラちゃんが私以外の別の女の子と付き合ってるなんて……どうせ付き合うなら趣味も同じ私の方が……くっ、でも友達として応援した方が……いや、もうちょっと話を聞いてみよう。もしかしたら私の勘違いかもしれないし。気づかれる可能性は上がるけどもうちょっと屋根から身を乗り出して、と──
「──こんなところで何やってるの?」
「──うわぁ!!?」
──と、その時背後からの声掛けで私は驚き飛び跳ねる。か、カンパネルラ? なんでこのタイミングで?
「ちょっと、驚かさないで──あっ」
「あっ」
そして更に運というか間が悪いというか……突然カンパネルラが声を掛けてきたことによって私はその屋根の上から身体を滑らせてしまう。
「うわあああああ!!?」
「!?」
「誰だ!?」
そして当然……そうなれば2人にも気づかれてしまう。声を上げながら地面──ではなく間一髪ゴミの山に落ちた私は2人に視線を向けられて苦笑いを浮かべた。
「あ……あはは……どうもー」
「あ……アーヤちゃん……? なんでこんなところに……?」
「! アーヤってもしかして……」
え、何? 相手の子も私のこと知ってるの──ってそれは別におかしくないか。セラちゃんが話しただけだろうし。
というかそんなことよりだ! ここまで来たら聞いてみよう!
「あ、あの……もしかしてだけど……セラちゃん……」
「…………聞いてたのかい?」
「うん。ちょっとだけ……だからもしかして……」
私は意を決して口にする。冷たい表情と気配を漂わせるセラちゃんと後ろの子に対して──
「──もしかして……2人は付き合ってるの!?」
「…………は?」
「え?」
私の問いかけに2人は虚を突かれたような表情となって動きが止まる。そりゃまさか聞かれてるなんて思わないから当然だよね。
「…………えっと……どうしてそんな結論になったのかな?」
「だってなんかAカップとかシック◯ナインとか! おっぱいの話とかえっちな話してたじゃん! だから付き合ってえっちなことしてるんじゃないの!?」
「えっ……ええっ!? い、いや、違う違う! ぼ、僕達は別に付き合ってもないしそんなこともしてないよっ!」
「……そうなの? だったらさっきは何話してたの?」
「それはもちろん…………」
なぜかそこでセラちゃんが止まる。言葉も身体も。何かに気づいたように止まってしまった。どうしたんだろう。
「……? どうしたのセラちゃん?」
「……あ、いや……そうだね……その……まあ、何の話をしていたかと言うとだね……」
なぜかセラちゃんは汗をびっしり流しながらしどろもどろになる。やっぱり私には知られたくないし聞かれたくなかったことなんだろう。それは申し訳ないけどここまで来たら友達として聞いておきたい。私とあんなにスキンシップ取って弄んだ罪もあるしね!
「どうなのセラちゃん」
「そ、それは…………そ、そう! ぼ、僕も相談してたところだったんだ! お、女の子同士の恋愛について……」
「えっ、そうなの!? ってことはやっぱり!?」
「い、いや! それは違うんだ。僕というよりは彼女をアーヤちゃんに紹介しようと思ってね……僕の昔からの友達の……し、シーナ……シーナって言うんだ。ほら、共和国ではポピュラーな名前だろう? シーナくんって呼んだのを聞き間違えたんじゃないかな? ねえ、シーナ」
「そ、そうね。あたしはシーナよ。よろしくねアーヤお姉ちゃん」
「え、うん……よろしくシーナちゃん?」
私がぎこちない笑顔を向けてくるシーナちゃんという金髪ロリ巨乳と挨拶を交わす。ううん、でもまだ納得がいかない……。
「……でもナインとか言ってたし……それに女の子同士の恋愛の相談で私に紹介ってどういうこと?」
「そ、それはそのまんまの意味だよ。アーヤちゃんも女の子が好きだって話は噂で耳にしてたし、彼女……し、シーナも実はそうなんだ。シーナも女の子と付き合いたいって言うから、2人ならお似合いかと思って……」
「えっ」
「は、はぁ!? な、何言ってるのよエー……せ、セラフィーネ! そ、それはあんたの方でしょ!?」
「えっ。えっ」
私はそれを聞いて困惑する。まさかセラちゃんが女の子を私に紹介してくれるなんて……確かにシーナちゃんもなんか恥ずかしがってるような……しかもセラちゃんまで……?
「な、何を言ってるんだシーナ。ぼ、僕は別に……」
「……こ、こうなったら覚悟決めなさいよ。どの道
「っ……それは……」
「え、何? どういうこと?」
2人は2人だけで分かるような会話をして通じ合っている。え、何? 2人とも私と一緒にいたいってどういうこと? もしかしてそういうこと? もしかしなくてもそういうこと? なんか私がさっきまでいた屋根の上でカンパネルラが屋根に両手を付いてばんばん叩いて笑ってるような気配がするけど私勘違いしてないよね?
「…………そうだね。こうなったら……アーヤちゃん。君が良ければなんだけど……良かったら僕達のどちらかと付き合ってくれないかい?」
「そうね。お願い出来るアーヤお姉ちゃん……? もちろん嫌なら断ってくれていいし、お姉ちゃんの意思が最優先だけど……♡」
「そうだね。嫌なら断ってくれていい。君の嫌がることは
「えっ……は、いや、その……」
なんだろうこの状況。急に2人に告白されてしまった……2人ともなんかちょっと震えてる気もするし、怖がってる気配も一瞬感じた。そしてその言葉。よっぽど私の嫌がることはしたくないんだろう。
つまりそれだけ私のことを想ってる……? 好き……? ラブってこと……? でも2人同時に言われても困る……私こんなの選べないし、2人に悪いし……。
「で、でも2人同時なんて……そ、そんなの私……」
私はその意思を口にしようとする。やっぱり断ろう。そうだ。幾らムラムラしてるからって友達と知り合ったばかりの子と付き合ってえっちなことしようとするなんて間違ってる。そうだ。私は正しい。性欲に流されてはいけない! 私は賢い可愛い良い子なんだ! だからやっぱりこの話は保留ってことで、私はそう言おうとして──
「なんだったら僕達2人と付き合ってくれたっていい」
「──付き合います。よろしくね、セラちゃん。シーナちゃん」
──オーケーした。そこまで覚悟してるなら応えない方が失礼だよね。しょうがないしょうがない。うん、しょうがない……。
屋根の上で道化師が爆笑してる気配を感じながら私は自分に言い訳した──そして私は誰でもない誰かに報告する。2人も何故か親に報告するとか言ってたしね。
そういうことで私、アーヤ・サイードは1年生の秋に……彼女が2人出来てしまった。
今回はここまで。半分くらいちん◯んと下ネタの話しかしてないけど無事アーヤちゃんはモブキャラ? サブキャラの彼女とデザイナーとしてのスタッフを手に入れました。でもぶっちゃけ出番はそんなないです。
そんなこんなで次回は冬休み。ジュディ……グリムキャッツ回です。後ちょっとだけカンパネルラ。ちなみに空の軌跡開始まで予定だと後4話くらいかなって。お楽しみに。
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