TS不幸少女のゼムリア大陸災難記   作:黒岩

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グリムキャッツと戯れる不幸

 ──アーヤ? そりゃもちろん好きだよ。なんなら大好きなくらいね。

 

 だってあの子面白いんだもん。いやほんとに。別にあの子の過去が面白いなんて教授みたいな悪趣味なことを言うつもりはないよ? いやまあ興味深いしある意味で面白くはあるんだけどそうじゃなくてさ。単純に面白いんだよ。

 見た目は可愛いよ。それこそ彼女が《月光木馬團》から結社に移った頃から知ってるけどね。見た目は中東人らしく褐色の可愛い子なんだけどね。性格も明るいし人当たりも良くて闇なんて到底ないような子だし実際あるかどうかはまあノーコメントって感じなんだけどさ。

 ただその言動がいつも予想外なんだよね。なんでそうなるの? みたいな。

 それこそ教授に対する勘違いとか執行者候補を間違って殺した話とか護衛対象を間違って殺しちゃったりとか色々ドジをしちゃうこともあったりね。使徒たちが集まる会議で教授に対する爆弾発言なんて可笑しすぎて笑いを堪えるのに必死だったよ。

 かと思えば暗殺者としてしっかり仕事したりもするし、頑丈過ぎて全然死なないどころか大抵の任務は無傷で帰って来るしでしっかり能力を発揮したりもする。まあキツい任務は大袈裟に騒ぎながらだけどそれも割と平気で、だからこそ面白い。とにかく行動が予想出来ないんだよね。そういう意味じゃ《破戒》と似たところはあるかな? 彼も使徒の中じゃ最も行動が読みにくい人だけどその《破戒》に育てられただけあってアーヤも予想外の動きをいつもしてくる。

 もっとも《破戒》と違って悪意なんて欠片もないんだけどね。でもだからこそ厄介と言えるかな? 実際教授はそれで苦労してたし、彼女の被害者はそれなりにいるし。とはいえ僕的には全部笑える範疇だし、被害に遭った人たちもなんだかんだでアーヤとは仲良くやってるね。まあ癖のある人間。それも闇を抱えたヤバい人が多い結社の人間の中じゃアーヤはそりゃ付き合いやすいだろうし嫌いにもなれないんじゃないかな。根は良い子なのに悪事に対しての忌避感もそんなにないからそこで衝突することもないしね。

 そんな訳だから《道化師》としても同じ執行者の中でもなんなら身喰らう蛇の構成員全員の中でもかなり好きな方かな。僕のお気に入りだね。だから何かあればよく関わりに行くし、普通によく喋る方だね。アーヤも僕のことを避けたり鬱陶しがったりすることもないから交流はとてもスムーズに行われる。

 この間だって一緒に仕事をしたけど面白かったね。僕が幻術を使ったら運悪く彼女もかかちゃってさ。なんか変な幻覚を見ちゃったみたいで大騒ぎして大変だったよ。後で聞いたら「全裸の面白教授が空に……これも幻術……!?」とか言ってたし。いや僕そんな幻術かけてないけど……? とは思ったけど正直面白いからどうでもよかったね。なんなら僕も見たかったよ。ある意味敵を困惑させられそうだし本当にそういう幻術を使うのもありかな? 今度試してみよう。

 

 それでこの間も会いに来たらまた面白いことがあったんだけど……それは一旦置いとこうか。そのことも聞きたかったけど、今日会いに来たのはまた仕事を頼みに来たんだよね。共和国で時折出没する怪盗──いや、ブルブランじゃないよ。グリムキャッツって奴さ。──あ、知ってる? そうそう。それがなんか代替わりしたみたいでさ。しかもそれが結社と繋がりのある悪い有力者に予告状が届いたらしくて。一応手持ちの猟兵団に警備させようと思ってるけど正直守りきれるとは思わないんだよねぇ。だから良かったら君も手伝ってくれない? 明日から学校休みでしょ? 報酬ももちろんあるからどうかな? ──オッケー♪ いやー君が受けてくれて助かったよ。それじゃ場所は……あ、ごはん? いいよ。それじゃ適当なお店でお茶でもしながら話そうか。ウフフ、それにしてもやっぱり君は面白よねぇ。この間の子達とはどんな──

 

「あ、そういえば聞きたかったんだけどカンパネルラって生えてるの? というか男か女の子なのかよく分からないんだけど実は女の子だったりしない? もしくは……ふ、ふた◯りとかだったり……

 

 ──バカじゃないの? いや、そういう冗談は僕以外に頼むよホント。傍から見る分にはともかく巻き込まれるのは僕だって嫌だからさ。

 

 

 

 

 

 ──メリークリスマス! アーヤ・サイードです! 最近身長が160リジュになりました! でもそろそろ伸びが緩やかになって成長が止まりそうでやばい! 170は欲しかったのに! 

 

 さて、そういう訳で二学期も終わって遂に冬休みに入りました! もう後数日で年も明けて私の誕生日も近い! 次の誕生日で17歳になる! もうちょっとで大人の仲間入り! 

 それにしても今年は色々あった。アラミスに入学したこともそうだし、久し振りにえっちしてそれに嵌ったりもしたし友達と色んな思い出も作ったし将来の夢についてもかなり前進した。

 私がアラミスに入学する際に立てた目標も結構進展したけど、その中でも特に進展があったのは……やっぱデザイナーとしての活動かな。

 夏休みが明けてから一応はデザイナーの端くれとしてアナ先輩の知り合いを中心に服を仕立てては納品してを繰り返した訳だけど、二学期が終わる頃には私の作った服の噂が広がってそれなりにご注文を頂けるようになった。しかも元貴族であるアナ先輩の知り合いだから政財界のお嬢様方を中心にだ。なので結構しっかりとした値段を出してくれる人が多い。ただ私が中東人だと知るとそこで偏見というか差別意識で注文しないどころか悪評を立ててくる人もいるかもしれないってことでアナ先輩はもう少し人気が出るまでは隠しておこうということになった。なので希望を聞いたりするのは窓口になってくれるアナ先輩だったり顔を合わせず書面でのやり取りになったりする。採寸も出来れば直接したいけどしょうがないので伝えてもらっていた。一応会っても問題なさそうな人とは会ってるけどね。それこそ学校の人とか。そのうちバレるかもしれないけど口コミは広まってるし評判も良いから問題はないとは思うけど。一応何かあればアナ先輩がフォローしてくれるらしい。もうすぐ卒業だっていうのにほんと良い先輩だ。

 そんな訳で懐もちょっとずつ潤い始めているので仕事の方は順調。この調子で共和国のカリスマデザイナーの地位を手にしてやる! 

 

 そしてお次は友人関係。これも問題ないどころか超順調。前にもまして友達は増えてきたし、友達付き合いもしっかりしてる。それに良い報告と言うか……それこそヴァンとエレインちゃんの話なんだけどね。あの2人──とうとう付き合うことになりました! いえーい! おめでとー! 

 もっとも周りからすれば遂にって感じだ。前々から噂というか、いいから早く付き合えよって空気ではあったからね。でも実際付き合った時はほっとした。私のアドバイスが効いたかどうかは分かんないけどもし付き合いもしなかったら私のせいみたいで悪いしね。ルネっち先輩も肩の荷が下りた様子だったし良かったよほんと。

 ちなみにルネっち先輩は年上の彼女さんがいるみたいでリア充なんだよね。ちょっと見てみたいから今度紹介してくださいって言ったら私には絶対紹介しないって言ってた。失礼すぎる。なんで紹介してくれないんだ。紹介してくれたら似合う服とかプレゼントしてあげるのに。

 

 まあでも何はともあれヴァンとエレインちゃんおめでとー! めでたいね! まあいつだっけ? その内別れることになるかもしれないけどそれまで頑張って思い出を作ってほしい。なんだったら私も協力する。バレにくいホテルとか教えるし丈夫で薄いゴムも教えてあげる。なんだったらその内売ろうと思ってる童貞を殺すセーターとか服とかちょっとエロい服もプレゼンとしてもいい。実際原作じゃそこまでいってたのか微妙だけどそれがあればヴァンもイチコロだろうし。

 

 ってことでめでたいことがどんどん続き、私もまためでたいことがあった。それは──

 

「はいアーヤちゃん。あーん」

 

「あーん♡ ん、美味しー!」

 

「ふふ、それは良かった。アーヤちゃんのために作ったからね。その、愛情を込めて……」

 

「わーありがとーセラちゃーん! お礼にこっちからもはい。あーん♡」

 

「あ、あーん……」

 

「ああっ、ずるい! あたしもお願いしますアーヤお姉様~」

 

「慌てなくてもほら、シーナちゃんもあーん♡」

 

「どうせなら口移しとかでもいいんですけど……ダメ?」

 

「シーナちゃんは甘え上手だねー♡ それじゃちゅーしようね。はい、ちゅー♡」

 

「んっ……お姉様……♡」

 

 ──と、言う事で……彼女が出来ました。しかも2人も。

 いやーなんか2人同時に告白されちゃったんだよねー! それで2人一緒でもいいって言うから付き合うことになっちゃって。やっぱ2人が覚悟してるなら私も応えなきゃだよね! ってことで3人で付き合うことにしたんだよねー。

 1人はアラミスに通う私の友達で隣のクラスのセラちゃんで、クールっぽい見た目なのに可愛い笑顔が魅力的。付き合ってからは恥ずかしがり屋というか、キスしたり手を繋いだりそれ以上のことをするのも顔を赤くして自分からはあまり攻めてこない受け一辺倒なんだよね。身長は167リジュで結構高めの私の彼女1人目。

 そして2人目はそのセラちゃんと昔からの知り合いだというシーナちゃん。共和国人らしい長い金色の髪と青い目を持つまだ12歳の女の子! お人形みたいに可愛くて身長もまだ148リジュしかない! でもおっぱいは私やセラちゃんよりも大きい! そして甘え上手で女の子が好きでお姉様が欲しかったらしい。おまけに裁縫もセラちゃんほどじゃないけどまあまあ出来る! ちなみに家庭に問題があるらしくて家族のことを話したがらない。ちょっとミステリアスだけどえっちで甘えんぼな私の彼女2人目。

 

 ……いや、分かる。確かに女の子なのに女の子と付き合ってるとか、そもそも2人同時に付き合うとかダメだろとか色々冷静になれば思うことはある。あるけどさ……だってしょうがないじゃん。2人共可愛いんだもん。そして私は女の子も好きなんだもん。なんだったらまだ一応女の子の方が好きだし。それで2人も、世間的にはまだあんまり理解されてない女の子好きで、しかも2人共私と付き合いたいって覚悟持って言ってるんだよ? それならこっちも付き合うしかないじゃん。可愛いし。えっちだし。だからもう開き直って楽しむことにした。法律とか道徳とか当人たちが納得してるなら別にいいよね。誰かに迷惑をかけてるわけでもないし! ってことで最近の私の生活は本当に充実してる。例えば──

 

「ね、ねぇ……こんなところでするの……?」

 

「大丈夫だよ。ほら、一瞬だから。ね、お願い。ちゅーしよ?」

 

「もう……い、1回だけだからね……んっ……」

 

「んー♡ はい、じゃあもう1回」

 

「ええっ!? だ、ダメだってアーヤちゃん……もし人が来たら……」

 

「大丈夫。誰も人なんて来ないって。だからほら、舌出して。はい、れーって」

 

「……わ、わかったよ……れー……んんっ!? ちょ、だ、だめだってばぁ……」

 

 ──こんな風に学校でセラちゃんと人気のない教室とか物陰とかでちゅっちゅって百合キスに励んだりもした。なんだったら暇があればしてる。学校という場所であえてバレたらマズイ場所でバレないようにこっそりするのが興奮するんだよね。すれ違い様にちょっと指を絡ませてみたり、一瞬の隙を見計らってちゅーしてみたり。お尻とか身体を触ってみたり。しかもセラちゃんが恥ずかしがり屋だから余計に興奮してしまう。見た目はかっこかわいい系なのに責められるとすぐ女の子になっちゃって可愛いね。

 そして休日や放課後は──

 

「ねーえーアーヤお姉様~もっと撫でて~」

 

「はいはい。ほんとシーナちゃんは甘えんぼさんだねー♡」

 

「だって学校行ってる時はずっとセラちゃんといちゃいちゃしてるんでしょ。だからその分今はあたしのことも……か、可愛がって……?」

 

「いいよー。それじゃあくすぐり合いっこでもする?」

 

「もうお姉様ったら……そんなこと言ってエッチなところ触るんだ……」

 

「嫌?」

 

「嫌じゃない……アーヤお姉様ならあたし……どこ触られてもいいよ? ──あんっ♡ やっ♡ ほんとにエッチなところから触るなんて……お姉様のえっちぃ……♡」

 

 ──と、一人暮らしをしてるシーナちゃんの部屋でシーナちゃんをお膝に乗せながら簡単な裁縫作業に勤しみ、時折シーナちゃんのさらさらでふわふわの髪を撫でたり顎を擦ったり。そしたら更に甘えてきたりするので受け入れてちゅーしたりおっぱいとか身体の色んなところ触ったりしていちゃいちゃする。すぐに誘ってくるんだよねシーナちゃんは。しかも誘い受けしてくるし可愛いね。

 そして極めつけは──

 

「ほーら3人でちゅーしようねー♡」

 

「んっ……♡ もう……今日は作業する日だって言ってなかったっけ? アーヤちゃん……♡」

 

「お姉様のインスピレーションを刺激するためだものね♡ んっ♡ だったらあたしは何でもしたいな……♡」

 

「そうそう。今新しいデザインで悩んでるからどうしても必要なんだよ。ってことでおねがーい♡ 3人でしようよー♡」

 

「うう……は、恥ずかしいんだけどな……♡ で、でもそうだね……アーヤちゃんが望むなら……♡」

 

「あたしはいつでもいいよお姉様♡ 3人でとろとろになるまで気持ちよくなろっ♡」

 

「うん! それじゃ始めちゃおっか♡」

 

 ──そうそう……やっぱり3人でね。もうこれがなんというかもう最高で……それぞれ違った女の子の肌と熱や柔らかさを同時に堪能出来てね。私も肌はすべすべなんだけど逆にそれが良くて。互いに肌を擦り合わせてさ。セラちゃんの太腿に頭を乗せてすりすりしてたらその上からシーナちゃんが猫みたいに甘えてしなだれかかってきて。3人で舌を絡ませたらじゃれあうみたいに2人の身体に手を伸ばしてみたりして。そしたらセラちゃんは割とされるがままなんだけど、そんなセラちゃんの大きめの身体を楽しんでたら後ろからシーナちゃんがそのちまちました手で私の身体にも触れてきて。もうそこまで来ると大興奮で抑えが効かなくてセラちゃんに私の顔に乗ってもらった状態でシーナちゃんに私の……まあこれ以上はちょっともうえっちすぎて言えない。お風呂に入って身体を洗っこしたりするのも良いしその後に3人とも裸のまま部屋で日常を送る感じでいちゃつくのも良いし私が作った服とか下着を着せて色んなポーズをさせるのも楽しいしで……うん。やっぱり女の子って最高だよね! 最近はちん◯ん欲しがりまくってたし、いや、別に今でも欲しい時はあるけど彼女が2人出来たことで女の子の良さを再確認した。やっぱ百合だね。百合ハーレム最高。はぁー両脇に彼女2人侍らせて布団にしながらお昼寝するの気持ちいい~。おかげで新しい服のデザインが出るわ出るわ……芸術ってこういうことなんだ……。

 

 いやでも実際男相手でも女の子相手でもえっちなことをした後ってデザインもすっごい色々思いつくし型紙を起こすのも楽々出来るし、縫製作業もめちゃくちゃ捗るんだよね。だからまあ……同意があればこういうのもありというか、別に問題ないよねって思ってる。なんだったら彼女まで出来たことで日々のムラつきが解消されて割と落ち着いてきたと思う。前はずっとそのことばっかり考えてたけど今は全然そんなことないし、服作りや学校生活にも集中出来る。友達付き合いも友達のことをそういう目で見なくて済むしね。

 

 まあ問題があるとすれば……最近はめちゃくちゃキスに嵌ってしまった。特に女の子とのちゅーね。別にそんなえっちな気分じゃなくてもとりあえずちゅーしたくなる。可愛い子とか見たらほっぺたとかにちゅーしてあげたくなるし、なんなら口とかにもしたい。いや、しないけどね。あくまでちょっと思うだけだ。そして我慢出来なくなったらこっそりと彼女とちゅーすればいいだけだし。ついでにお尻とかおっぱいまで触れればなおよしだ。色々捗る。

 他は問題はないはず。友達との付き合いも疎かにしてないし。家のイクスとヨルダを蔑ろにして遊び呆けるなんてことも当然してない。なんなら以前よりも母性というか、2人とちゃんと弟と妹みたいに見れてると思う。純粋に可愛がってるからね。まあ暗殺者なんだけど。最近ようやく大体の訓練は一通り終わったんで次の長期休暇……春休みくらいかな? になったら一度私が付きっきりで見て卒業試験をしようと思う。……いや、別に私はしなくてもいいんだけどオジサンとかエンペラーがうるさいし。イクスとヨルダの調子はどうだ? って聞いてくるのが鬱陶しいんでめちゃくちゃ優秀なところを見せて文句を言えなくしようと思ってる。ウチの子はすごいんだぞー! ってね。

 

 それとレンも相変わらずちょくちょく遊びに来るのでその度に一緒に遊んだりお出かけしたりしてる。この間は一緒にお散歩ついでに魔獣とかも狩ってみたけどやっぱ前見た時より強くなってる。さすがは天才。まだ私の方が強いっぽい? けどすぐに抜かれちゃうんだろうなー。まあ別にいいけどね。私執行者最弱だし。

 

 そして冬休みはまた服作りをしたりデートをしたり友達と遊んだりしようと思ってたんだけど、そんな時にカンパネルラがやって来たんだよね。だからちょっと人に聞かれない場所──まあ具体的に言うと第13区の黒芒街なんだけど。そこで仕事を頼まれた。なんでも──怪盗グリムキャッツが今度現れるんで執行者として不正に手に入れたという美術品を守ってほしいのだとか。

 それを聞いて私はテンション上がった! 怪盗グリムキャッツ! あの痴女だ! ジュディ……グリムキャッツだ! 母親の方にも会ってみたかったんだけど代替わりしたんだって! なら見れるじゃん! やったー! 

 

 私はすぐにその仕事を受けることにした。だって別に危なくないしね。躊躇なく殺そうとしてくる相手じゃないし、狙いは美術品──いや、不正の証拠でしょ? それなら私は狙われないし。おまけに私としても暗殺でも破壊工作でもなんでもないから心情的にやりやすい。確かに私が守るのは悪党だけど、相手だって盗みっていう不正なやり方で挑んできてるんだから悪党だ。つまり悪対悪。勝った方が正義。私が悪党守ったって言い訳が立つってものだ! 

 

「それじゃ他の皆は普通に警備お願いねー。ここは私が陣取ってるからさ」

 

「はっ、アーヤ様」

 

「あんまり名前で呼ばないでねー」

 

「も、申し訳ありません」

 

 ──と、そういう訳で早速悪徳美術商のいるビルにやってきた! そして美術品がある倉庫部屋や不正の証拠となるものを敢えて一箇所に集めて私がそこに陣取り、他のフロアや周囲にはカンパネルラが手配した結社の強化猟兵を巡回警備させる。なんか私が執行者で向こうも結社の所属だからか普通に名前が知られててちょっとだけ困惑したけどしょうがない。なんだかんだ私も結社に入って6年くらい経つわけだしね。そりゃ組織内なら名前も知られる。でも表には名前の方は轟いてない筈。だから名前は極力知られないようにしよう。顔は誤魔化しが効かないこともないけど名前はね。知られたら活動しにくくなるし。

 

 ってことで私はひたすら待つ。待ち続ける。辺りを強化猟兵が巡回する中、私は暇なのでデザインでも考えておこう。さっき色々美術品を見せてもらったのもあって結構頭が刺激や創造力で満ちている感じがする。お客さんも増えてきたしもっと頑張らないとね。

 

「あっ」

 

「!? 明かりが消えた!?」

 

「すぐに明かりをつけろ!」

 

「例の怪盗かもしれん! 辺りに気を配れ!」

 

 とかなんとか考えてたら辺りが暗くなる。おー定番の停電だー! いいねぇ。怪盗ならこうでなくちゃ! なんだったら次に明かりが点いた時には全部無くなっててもいい。面白いし。いやまあよくないけどね。出来れば仕事はちゃんとしたい。カンパネルラからも結構それなりの額とお礼もくれるらしいし。

 ってことで私は頑張って目を凝らす。私って夜でも割と見えるからね。これでも暗殺者だからこういうのには敏感だ。なんだったら気配もそんな得意じゃないけど分かる。暗闇でも目が見えると便利なんだよね。ほら、布団の中とか暗くした部屋とかでもしっかりと相手の顔とか身体も見えるし──

 

「ついた!」

 

「なんだったんだ──ぐあっ!?」

 

「! どうした!?」

 

「急に倒れた……! もしや──ぐっ!?」

 

「そこに誰かいるのか!?」

 

「いや、誰もいな──ウッ」

 

「っ、どういうことだ……!? 姿が見えないのにいつの間に……!」

 

 ──なんて言ってたらなんかどんどん強化猟兵がやられていってる。やっぱ強いんだ。まあ怪盗だしね。なんか謎スーツも強いっぽいし。強いんなら戦いたくないなぁ……でも仕事だしなぁ……殺される心配はないからちょっと頑張ってみる? でも痛いのも嫌だし……でも仕事だから頑張るしかないかぁ……。

 

「はぁ……しょうがない」

 

「アー……《血染の裁縫師(ブラッドクチュリエール)》様! 敵襲です! おそらく例の怪盗かと……!」

 

「うん。分かってるよ──だって()()()()()()

 

「! それはどういう──ぐあ!?」

 

 あ、報告に来た部下がやられちゃった。でも私は辛うじて見える。そういえば光学迷彩とかなんだっけ……でも思ったよりは見えて良かった。でもちゃんとグリムキャッツ姿見たい……しょうがない。ちょっとかっこよく見えてますよアピールして姿を見せてもらおう。

 

「ってことで出てきてくれる? そこにいるのは分かってるんだからさ」

 

「……まさか気づかれるなんてね」

 

 お、本当に釣られてくれた! 床に降りてきた! そして前から声がする! 

 

「貴方が何者かは知らないけど、どうやら只者じゃなさそうね。その嗅覚に免じて私も特別に姿を見せてあげるわ!」

 

 そしてそのステルスが解かれて──遂にその姿が露わになる! 

 

「あたしこそ世の巨悪に天誅を下す、正義の怪盗──《グリムキャッツ》!」

 

 仮面に猫耳。谷間丸出しかつ身体のライン丸わかりのぴっちりスーツを着た私よりも若そうな感じのするオレンジ色の髪の女の子が名乗りを上げた。

 そう、彼女こそジュディ……グリムキャッツだ! そしてやっぱり直接見ても──

 

「さあそこをどきなさい! 私の目的はそこにある不正の──」

 

「わぁ……すごい衣装……本当に痴女だ……」

 

「痴女じゃない! 誰が痴女よ!」

 

 ──うん、痴女だ。痴女すぎてびっくりする。ジュディ……グリムキャッツはツッコミを入れてるけどこの場合正しいのはこっちだと思う。

 

「だってすっごいえっちな衣装着てるし……」

 

「こ、これが幻夜の猫スタイルなの! かっこいいしセクシーでしょうがッ!」

 

「まあ確かにデザインは良いよねー。えっちだし痴女だけど。コスプレ衣装とか作ったら売れそうだし燃えそう。やっぱタイツってえっちだよねぇ」

 

「えっち言うな! とにかくそこをどきなさい!」

 

「セクシーもえっちも同じ意味だと思うけどなぁ……。あ、それとどくのはちょっと……ジュ……じゃなくてグリムキャッツちゃんこそ今日だけは帰ってくれない? ほら、また明日。私が仕事が終わって帰った後なら幾らでも盗んでもいいからさ? それなら私も働かなくてすむし。そっちも面倒にならなくて済むよ?」

 

「な、なんかやる気のない警備ね……思ってたのと違う……い、いやそうじゃないわ。あたしは正義の怪盗グリムキャッツ! 悪を見逃す訳にはいかないのよ! だからその頼みは聞けないわね!」

 

「じゃあどうするの? 戦う? 私戦うのあんまり好きじゃないんだよねー」

 

「……そりゃあたしだって女性を傷つけたくはないけど……貴方が悪に与するなら仕方ないわ──力ずくでも押し通らせてもらうからね!」

 

「え、本当に? あ──」

 

 そうしてグリムキャッツはどこからか得物である鞭を取り出すとそれを構えて私に襲いかかってくる。それを見て私は内心でいつものように叫んだ。うわ──!? 痴女が襲ってきたー!? ジュディス・ランスターの痴女──!! 痴女痴女痴女ー!! 鞭って結構凶悪な武器なんだぞー! それを女の子に向ける方が酷いと思う! うわ……って、あれ……? 

 

「いやいや、ちょっと待ってほしいんだけどな──って……」

 

「!? あ、あたしの鞭を紙一重で躱した……!?」

 

 ジュディ……もうジュディスちゃんでいっか。ジュディスちゃんは私が鞭を簡単に躱したのを見て戦慄している。いやだってそんなに早くなかったし……ってことはやっぱり……これはちょっと珍しいパターンだ。モブじゃない原作キャラとの戦闘ではあるんだけど──

 

「あーうん。結構鋭いけど……まあ──()()()()()()()()

 

 私は空間から《ゾルフシャマール》を取り出して構える。困ったなー……手加減って実はそんなに得意じゃないんだよね。間違って殺しちゃいそうになるから怖い。格上とか同格くらいだとその心配は逆にないんだけど格下だとかなり気を使わないといけない。模擬戦とか訓練だとかなり手加減しても問題なく成立するけど実戦となるとほんとうっかり殺すこと多いからなー……《ゾルフシャマール》も切れ味良いからちょっと当たったらざっくりちょきちょきされることも珍しくない。

 なのでもう一度。一応警告しておこう。

 

「戦うなら相手になるけど気を付けてね? 間違って()()()()()()()()()()()()()()

 

「ッ……! じょ……上等よ……! こっちは覚悟を持って怪盗してんのよ……! それくらいで怯んだりなんてしないんだから……!」

 

 いや、そういう覚悟とか出されても困るんだけどね。そこで変に奮起した結果、良い一撃とか出されるとそれこそ反射的に反撃して殺しちゃいそうになるし。本当にやめてほしい。

 まあでも頑張ろう。一応戦意をへし折る方向で追いかけっこでもすればその内逃げてくれるはず! メインキャラだしね! なんとか良い感じになってくれることを期待して──

 

「それじゃ頑張って避けてね? 今から追いかけっこするから。逃げたくなったらいつでも逃げていいよ!」

 

 ──いざ尋常に勝負だ! 

 

 

 

 

 

 ──怪盗業を受け継いだあたしには、怪盗としての誇りがある。

 

 おばあちゃんもママも怪盗だった。怪盗グリムキャッツは代々受け継がれる誇りある名前であり役目。法で裁けない悪党に天誅を与える裏稼業──義賊、なんて呼び方は少しおこがましいかもしれないけれど、それでもあたしは受け継いだばかりのこの仕事を誇りに思っている。

 それこそデビューしたばかりの映画女優と同じくらいにはね。まだまだ端役どころかエキストラみたいな役どころしかないけれど14歳の子役はそれはそれで役どころはあるし、そういう小さな役から少しずつ結果を出していつかは主演を飾り、映画を見た皆を魅了するトップ女優になるのが私の夢。

 そして怪盗も同じ。まだまだ受け継いだばかりの新人だけど、それでも少しずつ積み重ねていくつもりだ。実力もまだまだ引退したママにも及ばないし、おばあちゃんからはまだまだ怒られてばかりだけど気持ちでは負けてるつもりはない。

 だから今回の仕事も必ず成功させてみせるとあたしは意気込んでいた。相手は美術商だけど汚いやり方で美術品を集めている悪党。本当は美術品を全て盗んで美術館にでも寄付したいところだけど、それはさすがに無理。でもその不正の証拠を盗んでしまえば美術商もそれを手放さざるを得なくなる。

 だから警備の猟兵を無力化してさっさと盗んで逃げて終わる──そうなる筈だったけど。

 

「うわっ、身のこなしすごいねー! 壁走りとかどうやってるの?」

 

「ッ……企業秘密、よ!」

 

「おっと」

 

 ──まさかこれほど手強い相手が警備をしてるなんてね……! 

 

 あたしは振るわれる鋭い巨大な鋏のような武器を壁に逃げることで躱し、反撃に鞭を振るうもその鞭はあっさりと躱されてしまう。その差が、あたしとその彼女の実力差だ。

 あたしの目の前に立ち塞がるその美少女は多分私と同程度か少し上の年齢だろう。中東人らしい綺麗で鮮やかな褐色の肌に白に近い銀白色の髪にインナーカラーで赤で染めている。黄金色のぱっちりした瞳も可愛くてまさしく美少女だった。スタイルも良いし、明るそうな感じがしてそれこそ映画女優にもなれそうな存在感を感じる。それでいてどこか親しみやすさを感じる……そんな相手。

 だけどその実力は明らかにあたしより数段上だ。あたしの攻撃は通じなくて、反対に向こうの攻撃は鋭くて油断したらいつ死んでしまってもおかしくないと思える。先ほど壁に走った斬撃は綺麗な切れ目をそこに入れていてその得物の鋭さと彼女の腕前がよく分かる。

 

「あたしと同年代で……あたし以上の使い手がいるなんて……!」

 

「褒めてくれてありがとね! でもそうだねー。このままじゃ怖いからそろそろ逃げてもいいんだよ? そろそろ疲れてきてない?」

 

「冗談言わないでくれる……! こっちはまだまだ行けるんだから……!」

 

「長期戦はやめといた方がいいと思うんだけどなー。っと、いたた……ちょっと当たっちゃった。やっぱ鞭って結構痛いねー」

 

「っ、嘘でしょ……!?」

 

 呑気に話し続ける相手に隙を見て鞭を当てることに成功した。

 だけどその美少女はその当たった腕を軽く擦って顔をちょっとだけしかめただけで何の傷もダメージも負った様子がない。冬場にうっかり静電気を浴びてしまったような反応だった。少しびくってして痛そうにしただけで食らってない。いや、どんな肌してんのよ……!? 

 

「ねえ? やっぱりもうやめない? ほんとに危ないよ? 怪我しても責任取れないからやめた方が……」

 

「うるっさいわね……! あたしは、こんなところで諦めるつもりなんて……ないんだから……!!」

 

 生半可な攻撃は──いや、そもそもあたしの攻撃は彼女には多分通じない。目を狙ったり首を締めたりなんて手段が一瞬だけ頭を過るけどそんな手段を取るのはグリムキャッツじゃない。逆にモタモタしてると殺される可能性が高まる。今は本気を出してないから何とか避けれてるけど、それでもキツい。室内で彼女と戦うのは不利なのもある。

 だからあたしは彼女の言う通り──少しだけ逃げた。後方に。窓を破って別のビルの屋上へと飛び移る。

 

「あれ? そこで帰るの?」

 

「帰らないわよ……! 覚悟はいいわね……ッ!?」

 

 そしてあたしはあえてビルの壁から壁へ移動し、勢いをつける。その上でビルの壁面に鞭の先端を突き刺し、その鞭にぶら下がるような形で再びその場所に舞い戻った。

 

「酔いしれなさい……! “グリムナイトワルツ”!!」

 

 そうしてその勢いのまま放つ飛び蹴り。これがあたしの考えた、今のあたしが出せる最高の一撃だ。

 とはいえ──

 

「うわっまた来た! でも残念! そんなモーションの大きい技は躱して当たり前だよね!」

 

 ──そう。隙を作ることなく放った私の一撃は格上の彼女には難なく躱されてしまう。この一撃じゃ彼女は倒せないし、これが通じない以上あたしじゃ彼女は倒せない。

 だけどあたしの目的は別に彼女を倒すことじゃない。そして、彼女の方もどういう訳かあたしを傷つけることを避けている。だからあるいはと思ったけれど──上手くいった! 

 

「あたしの狙いはあんたじゃないっての!」

 

「え……? ──あっ、しまった!」

 

 そう。あたしの狙いは彼女が守ってた保管室! 彼女が攻撃を躱した先、その部屋にその勢いのまま突入し、あたしはすぐさま目的の物を探す。早く、早くしないと! 落ち着きなさいジュディス・ランスター。不正の証拠なんて怪しいもの、あえて集めてるなら見ればすぐに分かる筈──いや、やっぱり無理、すぐには分からない。適当に書類らしきものを幾つか手に取ってみて──あれ? これじゃない? み、見つけた! あった! さすがあたし! 幸運の女神はあたしの味方をしたみたいね! 

 

「よし! 目的の物は頂いたわよ! それじゃあね!」

 

「あっ、ちょっ、早っ……くうう……ま、待てー! 逃がすかー! こうなったら追いかけちゃうからね!」

 

「怪盗の足に追いつけるものなら追いついてみなさい! まあ無理だと思うけどね!」

 

 あたしは目的の物を盗み出すとそのまま反対側の窓を蹴破ってそのまま脱出する。後ろから彼女の声が聞こえたが、さすがにあたしみたいに別のビルに飛び移ったり壁を走ったりは出来ないでしょう。そう思ったからこそ、あたしは捨て台詞を口にしようとして──

 

「待ちなさーい!」

 

「!? えっ!? 嘘!?」

 

 ──お、追いかけてきた!? な、なんて跳躍力よ! それにい、糸? 糸らしき何かを使って更に効率よく移動を行いあたしを追いかけてくる。

 

「痴女のくせに私の仕事を失敗させて私をドジでぽんこつって評価にさせるつもりね! そんなの許さないわっ!」

 

「だから痴女って言うな──!!」

 

 って、叫んでる場合じゃないわ! このままじゃ追いつかれ──

 

「ぎゃ──!!?」

 

 ──なかった。なんか勝手にビルに激突して悲鳴を上げてるわね……だ、大丈夫かしら。まあ大丈夫よね……あれだけ硬かったんだし……うん、大丈夫……よし、今のうちに──

 

「ま、待てー!!」

 

「ええっ!? まだ追いかけてきてる!?」

 

 ──と思ったらまた追いかけてきた!? し、しつこいわね……! やっぱりビルに激突したくらいじゃ全然傷つかないんだ……化け物ね……やっぱり直接戦うのは不利! 

 

「だったら壁を走って──」

 

「待てール◯ーン!!」

 

「誰よル◯ンって!!」

 

「だって三世でしょ!」

 

「確かに三世だけど違うッ!」

 

 ──あたしはひたすら逃げる。壁を走ったり。

 

「なら隠れて息を潜めれば──」

 

「私が来た!!」

 

「来るな──!!」

 

 ──物陰に隠れたりして。

 

「今よッ! ここで通路を閉じて──」

 

「Get Over The Barrier!」

 

「ええ!? 壁を壊してきた!? せめて乗り越えなさいよ!」

 

 ──地下に入って通路と通路を繋ぐ扉を閉じたりした。

 

「ぜぇ……ぜぇ……ど……どれだけしつこいのよ……! もうこうなったら──」

 

 だがどれだけ逃げても彼女は追ってくる。あたしはそれに嫌気が差して後1回だけ迎え撃つことにした。彼女を待ち伏せて、その瞬間にカウンター。そしてふっ飛ばし、その隙に今度こそ逃げる。そうしようとして──

 

「──あっ」

 

「へっ?」

 

 ──路地裏の角から僅かに顔を出した瞬間……思ったよりも早く追いついてきていた彼女と目が合った。

 そしてその瞬間、あたしと彼女の身体は激突し、彼女の勢いもあって地面に転がる勢いで倒れる。

 あたしは一瞬、何が起こったのか分からなかった。衝撃と痛みを感じ、そしてぶつかったことを理解する。だけどすぐには立ち上がれない。だけどすぐに立ち上がって逃げようとなんとか状況を理解したところで──私は固まった。予想外のことが起こっていたせいで。それは──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んんっ……!?」

 

 ──あたしが彼女を押し倒して……()()()()()()()()()()()()()()()

 

 あたしは目を見開く。頭が再び思考を停止する。今あたしはキスをしているという事実。しかも今日会ったばかりの女の子と。事故だけど。事故だけど。なんなら半分はあたしが悪いけど。そんなに気にする必要はないかもしれないけど。こんないきなり、あたしの初めてが──

 

「…………ん、れろぉ……♡」

 

「!!?」

 

 ──えっ。なんか口の中に舌が入ってきて……って、は、はぁ!? な、何して……! 

 

「な……何してんのよ──!!?」

 

「え?」

 

「え? じゃ、なーい!! あんた、今あたしにキス……し、しかもし……舌入れたでしょ!?」

 

「いや、だってそっちからキスしてくるから……私もびっくりしたけど、そっちから求めてくるなら……まあ、いいかなーって……」

 

「だとしても舌入れるとかおかしいでしょうがッ! 事故でするキスはバードまでなのよ! 事故でディープなキスまでするような作品見たことあんの!?」

 

「そんな騒がなくても……というか狙ってなかった? あんなグッドタイミングで顔出してくることなんてある? さっきまで逃げてたのに……」

 

「あ、あれは……ちょ、ちょっと作戦があったのよ! だからわざとじゃない!」

 

「なんか怪しいなぁ。……もしかして……怪盗グリムキャッツはとんでもないものを盗んでいきました……それは私の心……もとい唇です……ってこと……? そんな急に……でも最近私すごいモテてるし……ありえるのかも……? ってことはまた彼女が……?」

 

「小声でぶつぶつ変な妄想垂れ流してんじゃないわよ! あーもうっ! こんな筈じゃなかったのにー!!」

 

「とりあえずこれ返してもらうねー。もうどうせなら破っちゃおう。びりびりびり」

 

「ああっ!? くっ、しまった……お、覚えてなさいよー!!」

 

「ばいばーい。またねー」

 

 ──そうしてあたしの怪盗稼業1年目のその仕事は、あたしにとんでもない奴の記憶を植え付けることになった。何とかその場から逃げ帰った後、あたしはママとおばあちゃんに彼女のことを話し……それから彼女についてのある情報を聞かされた。

 あたしが聞いた彼女の《血染の裁縫師(ブラッドクチュリエール)》という異名は、とある組織に所属する伝説級の暗殺者である可能性が高いと言う。

 そして、もしそうだとしたら関わらない方がいいとも言われた。あたしにはまだ早いとも……手に負えない相手だとはっきり言われた。

 確かにあたしもまだ勝てないとは思う。それはきっと事実。実際戦って歯は立たなかった。

 

 だけど、それはただの言い訳に過ぎない。

 

 伝説の暗殺者だか何だか知らないけど、同年代で裏稼業をしてる女の子に、一方的に打ちのめされて負けるだなんて……悔しいじゃない。

 だからこそあたしはその《血染の裁縫師》とやらを勝手ながらいつか超える相手として定めることにした。強敵という正しい意味での──ライバルとして。

 まあ当分会うことはないでしょうけど──

 

「──どうもー! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ファッションデザイナーのアーヤ・サイードでーす! よろしくお願いしまーす!」

 

(な……なんであいつがここにいるのよー!?)

 

 だがその数カ月後。あたしがエキストラを務める映画の撮影現場に彼女がいて、あたしは頭を抱えることになった──「あ、ジュディスちゃん久し振りー!」な、なんのこと……? あたしとあなたは初対面ですけど……お、おほほ……って、しかもなんでバレてるのよー!?

 




格下からするとアーヤちゃん普通に怖いし脅威だよねという話でもある。ということで今回はここまで。
次回はまた時が進んで学藝祭。そして学園編はほぼ終了かな? いや、まだまだ立場としての学生は続くんだけど2年生から先はそんなに描写しないので。視察研修とか卒業式とかのイベントとかは描写するけどね。

感想、評価、良ければよろしくお願いします。
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