TS不幸少女のゼムリア大陸災難記   作:黒岩

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遊撃士と関わる不幸

 ──あたしはエステル・ブライト。ヨシュアといっしょに正遊撃士を目指してリベールの各支部を回ることにした準遊撃士。

 

 ロレントを出て隣のボースにやってきたあたし達はメイベル市長直々の依頼でハーケン門に向かおうとしたんだけどその前に幾つか準備も兼ねて依頼を片付けようと市内を回っていた。

 そんな時に見かけたシェラ姉と似た肌色の女の人。ファッションデザイナーのアーヤさんって人に出会ってあたし達はアーヤさんから話を聞いて服に必要な魔獣の素材を街道で集めることになった。ただその時にちょっと変わった提案をされて──。

 

「──え? 一緒に連れてってほしい?」

 

「うん。私遊撃士ってあんまり見たことなくてね。ちょっと仕事振りを見せて欲しいかなって。──それに直接シャイニングポムを見た方が新しいデザインが思い浮かぶかもだし!」

 

「うーん……でも民間人を連れての魔獣退治は危険だから……」

 

 あたしはアーヤさんのその提案に苦笑いをしながら断ろうとする。アーヤさんはあたしより2つくらい年上みたいだけどあたしやヨシュアみたいに鍛えてるならともかく魔獣は危険だし、民間人を守りながらってのも出来なくはないけど出来れば避けた方がいい。

 

「へーきへーき! こう見えてちょっとは戦えるからさ! カルバードって武術が盛んな国家だし学校の授業で護身術とかもあったからね! あちょーあちょーって感じで!」

 

「そうなの?」

 

「確かにカルバードは拳法や武術が盛んだけど……でもあんまり期待しない方がいいわね……」

 

「やっぱりそうなんだ。うーん、ならやっぱり……」

 

「お願い! 大丈夫だから! ね? 報酬も弾むから!」

 

 アーヤさんはよっぽど自分も一緒について来てみたいのかそんな風に頼んでくる。あたしは少し悩んだ。アーヤさんは全然強そうに見えないし危険な目に遭わせるわけにはいかない。

 でも遊撃士としては民間人の護衛も依頼の内に入るわけだし……そういう内容の依頼なら受けても構わないとは思う。

 

「どう思う? シェラ姉」

 

「良いと思うわよ。この辺りの魔獣ならそれほど危険もないし私らでも十分に守りきれると思うわ」

 

「そうだね。僕も良いと思う」

 

 シェラ姉とヨシュアもそう言ってくれる。だったらもう話は決まりだ。

 

「わかった。それじゃあ依頼は護衛と素材の入手ってことで」

 

「うん、それでいいよ。受けてくれてありがとー! それじゃ早速街道へレッツゴー! ──あ、セラちゃんは宿で待ってて! すぐ戻って来るから!」

 

「はぁ、仕方ないなぁ。それじゃあ皆さん。アーヤちゃんをよろしくお願いするね」

 

「うん、任せて!」

 

 そうしてアーヤさんの友人で秘書だというセラフィーネさんとも別れ、あたし達はアーヤさんと一緒に街道へと向かった。

 それで道中ではアーヤさんと話すことになったんだけど──

 

「へぇ~エステルちゃん釣りとスニーカー集めが趣味なんだ。ストレガーのスニーカー良いよね。私も何足か持ってるよ。おしゃれな上に運動にはばっちりだからスポーツとか山登りに最適なんだよね!」

 

「そうなのよ! あたしも新作が出る度にお小遣いを貯めて買ってて。それも丈夫だから中々壊れなくて助かるのよね~」

 

「エステルちゃん運動好きそうだもんね。あたしも結構好きでバスケとかよくやっててさ~。ストレガーのバスケシューズがデザインがかっこいい上にしっかりしてて良い感じなんだよね」

 

「バスケか~。確か共和国で流行ってるスポーツよね? あたしあんまりやったことないけど面白そうよね」

 

「楽しいからエステルちゃんも今度やってみるといいよ。もしくは機会があれば私が教えるからさ。代わりに私はエステルちゃんにおしゃれを教えてあげようかな~」

 

「う、う~ん、おしゃれかぁ……でもアーヤさんみたいなおしゃれな服ってあたしには似合わないかも……」

 

「いやいやそんなことないない! エステルちゃん素材は良いんだからおしゃれしないと勿体ないって!」

 

「そ、そうかなぁ……?」

 

「絶対似合うと思うよ! それにおしゃれって多分エステルちゃんの想像するような可愛い服だけじゃなくてかっこいいのとか色々な種類があるからね。エステルちゃんの場合はそうだねー……カジュアルなシティ系ファッションとか似合いそうかな。ちょっぴり緩めのTシャツにパーカーに短パン。それにキャップも付けてブーツにポーチも付けて活発な都会のおしゃれ女子……髪とかもおろしちゃって……うん、可愛いと思うから今度試してみて!」

 

「あ、あはは……うん。機会があったら試してみようかな(カジュアルなシティ系……? な、何言ってるか分からない……)」

 

 アーヤさんは少し年上だけど明るくて話しやすい。おしゃれについてはよくわからないけど話も合うし道中は退屈しなかった。

 なんだか年上ってより同年代って感じ。ただロレントにいるあたしの友達とは違ってちょっと都会の雰囲気を感じるし、同じ中東人でもシェラ姉とも雰囲気は全然違う。

 白銀の髪色なのに髪の内側は赤で染めてあるし、服装も中東っぽいけどそれだけじゃないというかお腹周りを出した装飾が多めの衣装でよく分からないけどおしゃれなのは分かるし似合ってるのも分かる。羽織ってる基本は黒いのにコートもジッパーとかポケットとかベルト部分とかところどころがピンク色でかっこいいのに可愛い。あ、よく見たら内側は紫色でまた別の色になってるんだ。な、なんかすごい。あたしとはおしゃれ力が違いすぎてまじまじと見ると圧倒される。身長もあたしと殆ど変わらないのにスタイルもあたしより良い気がするし……なんか隣にいるとあたしがとんでもない田舎娘に見えてくるような……。

 

「何なら今度仕立ててあげるよ」

 

「え、仕立てるって……買うんじゃなくてアーヤさんが作るってこと?」

 

「そりゃファッションデザイナーだからねー。あたしが着てる服なんかも全部自分で作ったんだから」

 

「ええっ、そうなの!? ちょ、ちょっとすごすぎない?」

 

「……確かにすごいね。うん、人気のファッションデザイナーというのも納得だ」

 

「良かったじゃないエステル。適当に見繕ってもらえば足りない洒落っ気が少しは改善されるかもしれないわね」

 

「むっ……あたしだって少しは考えてるんですけどー?」

 

「あはは! まあエステルちゃんはしばらくそのままでもいいかもね! その服も似合ってるし!」

 

「アーヤさんまで……」

 

「いや、本当の意味で似合ってるって意味だから! バカにしたわけじゃないって!」

 

「それならいいけど……あっ」

 

 そうしてお喋りをしてる内にあたしの視界に普通のポムではないキラキラしたポムの姿が映った。

 だからあたしはヨシュアやシェラ姉と目配せを行う。

 

「い、いた……! どうするヨシュア?」

 

「落ち着いてエステル。シャイニングポムは外敵を見るとすぐに逃げる習性がある。ここは先制攻撃で一気に仕留めよう」

 

「そうね。付け加えるならシャイニングポムは普通のポムよりもかなり硬いから全力で攻撃した方がいいわね」

 

「うん、よーし。そうと決まれば──って……」

 

 ヨシュアとシェラ姉と相談して一斉に攻撃しようとあたしは棒を取り出して構えたその瞬間──あたしは先に動いたアーヤさんを見て戸惑った。アーヤさんはあたし達が相談している間にまっすぐシャイニングポムに向かって走ると飛び込むようにしてシャイニングポムにタックルを仕掛けて抱きついた。

 

「──確保──!!」

 

「!?」

 

「え……え~~~~!?」

 

「今だよエステルちゃん達! 皆で攻撃だ!」

 

「う、うん! ──ってそうじゃない! 何してんのよ!?」

 

「え? だってすぐに逃げられるから逃げないように抱きついて止めようと思って……」

 

「危険よ! すぐに離れなさい!」

 

 あたしよりも大きな声でシェラ姉が危険を察知してアーヤさんに呼びかける。シャイニングポムはすぐに逃げる習性があるとはいえ戦って弱いわけでもない。だからこそ真剣なその注意だったけど幸いと言うべきか不幸と言うべきか、シャイニングポムは攻撃を行うこともなく、代わりに──

 

「うわ~~~~~~!!?」

 

 ──逃げた。

 ()()()()()()()()()()()()()()()

 

「な……な……何やってんのよ~~~~!!?」

 

「…………何でだろう。彼女を見てるとすごい頭が痛くなってきた……」

 

「き、気持ちは分かるけど追いかけるわよ! 何かあったら大変だわ!」

 

「う、うん! 行こ、ヨシュア!」

 

「あ、ああ! 分かってる! すぐに追いかけよう!」

 

 あたし達はすぐに声を掛け合って逃げるシャイニングポムとアーヤさんを追いかける。

 

「待ちなさーい!」

 

「エステルちゃん早く捕まえて~!」

 

 ──街道を走って。

 

「他の魔獣が道を塞いで……!」

 

「ヨシュア君頑張れ~!」

 

 ──道中の魔獣を倒して。

 

「木の上に移動したわ!」

 

「ふっふっふ。人間にここまで来れまい……」

 

「なんでそっち側なのよ!」

 

 ──木の上に昇って。

 とにかく追いかけて追いかけ続けて……そうしてようやくシャイニングポムとアーヤさんをあたし達は追い詰めた。

 

「はぁ……はぁ……よし! ようやく追い詰めたわよ!」

 

「よーし! いいぞ! やっちゃえエステルちゃん!」

 

「な、なんか向こうの方は元気だね……」

 

「とにかく倒すわよ!」

 

 そこであたし達は最後の気力を振り絞ってシャイニングポムに猛攻を仕掛け、何とか討伐して素材をゲットすることに成功した。

 

「……これでいいかしら?」

 

「うん! よしよし、これでいい服が作れる! ありがとねー! エステルちゃん達!」

 

「はぁ~~~~……つ、疲れた……」

 

「シャイニングポムを倒すのは元々簡単じゃないけどそれでもいつもより体力を消耗したね……」

 

「あはは、ごめんごめん。逃げられたらヤバいと思ったら自然と走っちゃった。ほんとごめんね~」

 

「まあ無事だったから良かったけど……」

 

「魔獣に向かっていくなんて危険な真似は次からはやめてちょうだいね?」

 

「まあ多少はやれるってのも嘘じゃないみたいだけど……」

 

「あ、あはは……まあね。でもほんとありがと。お礼はえっと……遊撃士協会を通じて支払えばいいんだっけ?」

 

「ええ。そうしてくれればありがたいわ」

 

「あ、やっぱりそうなんだ。遊撃士って利用したことないから勝手が分からなかったけど案外手軽に頼めるんだね!」

 

「アーヤさん、遊撃士に依頼したことないんだ?」

 

「それが運の悪いことに私が住んでた場所があんまり遊撃士に縁がなかったんだよね~。ってことでこれが私の遊撃士初体験! いや~初めて生の遊撃士の活躍が見れて感動したよ! おかげでまた良いデザインが浮かびそう!」

 

「メイベル市長の服を作るんだっけ。良い服が出来るといいね」

 

「ふふん。もちろん良い服は作るよ。──あ、そうだ。それなら私からもお礼として──うーん、そうだなぁ……それじゃこれ、エステルちゃんに上げようかな!」

 

 依頼を完了した後、アーヤさんはシャイニングポムと一緒に爆走したことを忘れて笑顔であたしに衣服──戦闘でも使える装備をスーツケースから取り出して手渡してきた。

 

「え? これってアーヤさんの服じゃ……?」

 

「一応ね。うちのブランドの既製服のサンプルとして持ってきたものだからオーダーメイドじゃないけど、ちゃんと私がデザインを描いた服でもあるし、装備としても使えるから是非受け取って。エステルちゃんならサイズも私と近いから着れると思うし」

 

「そうなんだ。ならありがたく受け取らせてもらうわね」

 

 そうしてあたしは更に依頼の報酬としてそれを懐にしまうと元来た道を通ってボース市内へとアーヤさんを送っていった。

 

「それじゃほんとありがと! エステルちゃんにシェラザードさん。それにヨシュア君もまたね~!」

 

「うん、またね」

 

「何かあったらまた遊撃士協会までお願い」

 

「はい。またどこかで」

 

「ばいばーい!」

 

 アーヤさんは笑顔で手をぶんぶんと振りながらあたし達と別れて勢いよく宿へと帰っていった。多分急いで服を作るために。

 

「はぁ~、なんというか明るくて良い人だったけど忙しない人だったわね」

 

「ファッションデザイナーと言うだけあってちょっと変わってるのかしら。デザイナーも一種の芸術家だし、あれくらいじゃないと務まらないのかもね」

 

「ふーん、そういうものなんだ。……って、あれ? ヨシュアどうしたの?」

 

「…………ううん、何でもないよ。ちょっとね」

 

「? ──あ、わかった……ヨシュアってばもしかしてアーヤさんのこと気になっちゃったんでしょ。可愛くてスタイルも良いしおしゃれな人だったもんね~?」

 

「──うん、それはないかな」

 

「え?」

 

 何でかアーヤさんのことを最後まで気にしていたヨシュアにあたしがからかうようにそう言うも何故かヨシュアはそれをきっぱりと否定する。

 だけどすぐにヨシュア自身も自分でも不思議そうにして。

 

「あ……いや、ごめん。そうだね、なんか反射的に否定しちゃってたけど確かに可愛いしおしゃれで明るくて良い人だと思うよ」

 

「あ、やっぱそうなんだ。まあヨシュアもお年頃だもんね~♡ やっぱり年上のお姉さんには興味が……」

 

「うーんどうだろ。確かに年上だけどあんまりそんな感じはしないというか……ちょっとエステルに似てるところもあるかな」

 

「え?」

 

 あたしはそれを聞いて一瞬鼓動を跳ねさせる。

 ヨシュアがそんな風にあたしを褒めるなんて珍しい。だからちょっと嬉し恥ずかしというかびっくりしたんだけど……。

 

「明るくて親しみやすいけど落ち着きがなさそう……って言うとアーヤさんに少し失礼だけどね。でも大雑把でそそっかしそうなところはエステルも似た節があるし、少し気をつけた方が……」

 

「あ、あんですって~!?」

 

「ふふ、確かにそこはちょっと似てたかもね。もっとも、エステルの方が女子力では負けてるみたいだったけれど」

 

「シェラ姉まで!? ぐぬぬ~……! ふんだ! あたしだってあそこまでとは行かずともこれを着てちょっとはおしゃれ女子になるんだから! 見てなさいよ~!」

 

「……大雑把でそそっかしいところは否定しないんだね」

 

「はいはい。いいから次の目的地に向かうわよ」

 

 そうして3人でアーヤさんの印象を少し語って、あたしが少しダメ出しされてムカっと来た後、あたし達は再び依頼をこなすため3人で街道へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 ──どうもおはようございまーす。カルバード共和国に本社を置くサイード社社長にしてファッションデザイナーのアーヤ・サイードです。社訓は“最高に()明るくなれる()良い服を()誰にでも()”。オートクチュールからプレタポルテまで幅広く取り扱ってますので気になった方は導力通信にてご連絡ください。

 

 とまあそんな訳で、ボース市での商談を終えてメイベル市長へ贈り物として衣装を仕立てた後、私はルーアン市のジェニス王立学園に戻って再び学校生活と仕事の両方に勤しむことにした。

 そうして寮の自室でせっせと針を動かしながら思うのはつい先日のエステルちゃん達との出会いだ。まさか私がちょっと困ってるところにあんな風に現れるなんてね。さすがは主人公と言うべきかな。サブクエストもとい遊撃士としての依頼への嗅覚が尋常じゃない。

 正直最初はあんまり関わるのもどうかなって断ることを考えたけど困ってるのは事実だし断るのも不自然かなって思って依頼することにした。エステルちゃん達の実力や活躍も見たいし話してもみたいしね。

 なので無理を行って一緒についていくことにしたんだけど、感想としてはまず接しやすいね。エステルちゃんは活発で明るいのにツインテールが女の子らしさもあって可愛いかったし、シェラザードはしっかりした遊撃士として一人前の色気あるお姉さんって感じだったし、ヨシュア君は元気で良かった。昔は完全に死んだ目がデフォで感情もほぼないような状態で暗すぎたけど今は随分と明るい美少年に。やっぱりエステルちゃんっていう太陽の娘に触れて心を取り戻したんだね。うんうん。同期のお姉さんとしては嬉しい限りだよ。

 もっともいずれ試練が訪れることになるけどそれもまああの2人なら大丈夫だと思うし何も心配いらないね! 私がいるっていう変化はあるけど私なんてカレーの福神漬けくらいの存在感しかないただのおまけなんで気にせず乗り越えてもらいたい。

 ただ一応こっちもお仕事なので建前としてエステルちゃん達の実力を何となく確認してみた。本音はエステルちゃん達と絡みたかった。そして実際に見てみた感想としては……うん。まあ、元気が良いよね! それに才能もすっごい感じさせるしさすが主人公だと思ったよ! うん!

 

 ……いや、ごめん。本当に正直なところ言うとちょっと弱いかもって思ってしまいました……多分私でも秒で倒せちゃう……。

 ま、まあでも才能は感じた。実際16歳であれだけ動けるなら大したもん──いや、でもレンとかメルキオルとかオランピアちゃんとかイクスとかヨルダとか庭園の構成員の方が……い、いやでも才能はあると思う。才能なんて見抜けないけどなんか……なんかオーラを感じた! だから今は弱くても絶対強くなる! これは本当に嘘じゃない! 

 それに主人公たちの強さは個人の強さだけじゃない。その心とか精神力。仲間との絆や連携が強いんだからきっと大丈夫。……ただヨシュア君とかが思ったより強くなってないのは不安だなぁ……まあ暗示かけられてるからそれが解けたらもうちょっと強くはなるとは思うけど……後シェラザードさんも……昔の記憶だと結構頼れるお姉さんな気がしてたけど……えっと、Cランク遊撃士だっけ。Cランクであれくらいかぁ……大丈夫かな……弱くはないけど強くもないって感想になっちゃって本当にごめん……貶める気はないんだけど自分に嘘はつけない。心の中だけで思うから許してほしい。

 ま、まあでも強さだけが全てじゃないって思ったのは本当だ。良い人達ではあったしすごい好感は持てたし私は好き。もう少し強くなってくれないと不安でやきもきするけどね。遊撃士としての仕事もまあ多分良い感じなんだと思う。親切ではあったしね。遊撃士って今まで全然利用してこなかったからあんまり分からないけど依頼料はそんなに高くないし親身に依頼をこなしてくれるからこれからはもっと気軽に依頼をしていいのかもしれない。

 後は納得した。エステルちゃんとヨシュア君があれでシェラザードさんがあれならそりゃクルツもやれちゃう訳だよ……一応まだBランクだもんね。後にAランクになるって言うけどまだBランク。つまりもうちょっとしたシェラザードさんと同じくらいのランクってことだ。

 それに加えて多分、戦闘が得意なAランクじゃなかったんだろうね。遊撃士のランクって依頼こなしまくれば自然と上がれる訳だし。正面から戦闘力で何とかしなくても依頼をクリアすればそれでいいわけだ。つまりクルツはそんなに強くなくて私もだから勝てた……うーん、この言い方だとちょっとクルツが可哀想かな……やっぱりレーヴェの言う通り私って実は結構強かったりする? まあ確かに身体能力とかは高いし自信あるから人間離れした跳躍とか跳び下りとかも出来るけどさ。暗殺にも自信はあるけど正面からの戦闘での勝ち星ってそんなにないし……。

 

 ──ま、でもいいか。考えてもよく分かんないし。過信すぎると良いことはないので過信しすぎず。だけどレーヴェの言う通りちょっとだけ自分の評価も改めよう。B級遊撃士くらいには勝てるし大したことない……良し。それくらいで考えよう。

 

 ただ逆に言うと執行者と戦えるレベルの遊撃士がちょいちょいいるってのはさすがだと思う。遊撃士協会って大きいもんね。強くて親切な民間人の味方って確かに良い。民衆のヒーローだ。私のことも守ってほしい。

 ってことで遊撃士及びエステルちゃん達の評価はこんなもんでいいかな。私は大好きだけど実力はまだまだ発展途上。これからに期待。

 

 なので次はジェニス王立学園での生活だけど……こっちは相変わらず楽しい。学生って良いよね。友達とお喋りして遊んで平和で。制服も可愛いから気に入ってる。3年生の短期留学生かつ中東人の私のことを避けたりもせず親身に接してくれるし。なのでこっちも遠慮なく楽しく過ごさせてもらうことにした。夏には学園祭もあるから楽しみだね! 今度は何しようかな~。

 

 だけど学園祭よりもある意味で重要なのは私の後輩だ。留学してすぐの頃に知り合っちゃったんだよねー。

 

「──こんにちはー! アーヤ・サイードでーす! サイード社から洋服をお届けに参ったよー!」

 

「あっ! アーヤお姉ちゃん!」

 

 ──ということで今日も今日とて私は学園の休日を利用してその子と知り合ったその施設……マーシア孤児院に洋服を持ってやって来る。

 大声で挨拶をすれば駆け寄ってくる小さな子供達。特に3人だね。マリィちゃんにポーリィちゃんにダニエルくん。もう1人のクラムくんは反抗期だから近づいてこない。

 

「今日も来てくれたんだ~」

 

「うん、来たよ~。しかもアーヤちゃんの新作衣装付きでね! ほら、ポーリィちゃんにはこれ。可愛い柄物ワンピース!」」

 

「わぁ、かわいい~。ありがと~」

 

「アーヤお姉ちゃん! 私のは!?」

 

「ふふ、大人なマリィちゃんにはちょっと丈の短いチュニック! ほーら、ドレスみたいで可愛いでしょ?」

 

「わぁ……本当に可愛い……! ありがとうアーヤお姉ちゃん!」

 

「そんでダニエルくんにはシンプルだけど可愛いシャツと短パン! パーティとかちょっと良いお店なんかに着ていっても問題なしのちょっとフォーマルな奴ね」

 

「ありがと~アーヤお姉ちゃん!」

 

「そして最後はクラムくんだけど……おーい、クラムく~ん! 服上げるからおいで~! 今日はフード付きのパーカーだよ~!」

 

「うっせーな! 服なんていらねーっていつも言ってるだろ!」

 

「まーたそんなこと言って~。相変わらずクラムくんはツンデレだね~。この間は街で私の服着て遊び回ってたくせにさ~」

 

「なっ……!? み、見てたのかよ!」

 

「見てないよ。でも今の反応でバレちゃったね~? 悔ちいね~?」

 

「っ! く、くそ~っ! もう絶対着ねぇ! 今度こそ着ねぇからな!」

 

 なんて色んな性格の子供達に服を渡しながら相手をしていると建物から優しそうな女の人──この孤児院の院長であるテレサさんがやって来た。

 

「アーヤさん、いらっしゃったんですね」

 

「あ、はい。来ちゃいました。これ、この間預かった服も直しといたんでどうぞ」

 

「いつもありがとうございます。こんなに子供達に服を仕立ててくれて。なんとお礼をしたらいいか……」

 

「全然全然。これくらい大したことないんで。いつも秒で終わらせちゃってるんで気にしないでください。お礼ならお菓子とかご飯でいいですよ」

 

「ふふ、なら今日もご馳走させてもらおうかしら」

 

「やったー! それじゃ遠慮なくお邪魔しまーす!」

 

 テレサさんと話をして修繕した服やらを返しつつ孤児院の中に招き入れてもらう。

 すると先に来ていたのだろう。火元を見ていたその可憐な私の後輩も挨拶をしてくる。

 

「アーヤ先輩!」

 

「お、クローゼちゃん! やっぱり先に来てたんだねー」

 

「はい。誘わせて頂こうかとも思ったんですけど、お忙しいかと思い……」

 

「気にしないでいいのに。時間があるからこうやって来てるんだしさ」

 

「でも仕事の納期があると以前に仰っていたので……」

 

「そうそう。納期は守らないとね。だからこうやって服を届けに来たんだからさ。クローゼちゃんも手伝って貰わないと困るよ~。私1人で4人分の服を運ぶの大変なんだからさ」

 

「先輩……ふふ、分かりました。なら次は手伝わせて頂きますね」

 

「うんうん。それでいいんだよ。ちゃんと手伝ってくれないとすねちゃうから気をつけてねー」

 

「分かりました。気をつけますね」

 

 と、私に尊敬の眼差し──は、分かんない。うん、ちょっと嘘ついたけど、少なくともそれなりに仲良くしてくれて私に可憐な笑顔を向けてくれるのはジェニス王立学園の2年生のクローゼ・リンツちゃんだ。

 私が3年生だから一応は後輩に当たり、以前からこのマーシア孤児院に遊びに来ている可憐で控えめで優しくて品があってショートカットが可愛い美少女後輩。私が以前、ルーアン市内で孤児院の子供を見かけて少し年季の入った服を着ているのを見かねて服を贈りに来た時から知り合って仲良くさせてもらってる。この孤児院の子供たちやテレサ院長ともね。

 まあそれだけでも良いんだけど生憎とクローゼちゃんについての情報はこれだけじゃない。なんて言ったってこのクローゼちゃんの正体はクローディア・フォン・アウスレーゼと言ってこのリベール王国の王位継承順位1位。つまり本物のお姫様だ! ふっふー! 

 しかもパーティキャラでもある。学生だけど細剣とアーツが得意なんだったかな? 

 ただそんなことはどうでもいい。クローゼちゃんはとにかく可愛い。女の子らしくて控えめだけど芯もあって見てるとちゅーしたくなる。お姫様の唇ってロマンだよね。私と白き花のマドリガルしてほしい。

 

「あ、テレサ先生。解れてる服とか持ってきてください。この場でぱぱっと直しちゃいますから」

 

「あら本当? ならお願いしちゃっても大丈夫かしら。いつも頼んじゃって悪いのだけど……」

 

「いいえ全然大丈夫ですよー。お代はお菓子大盛りでお願いしますねー」

 

「ふふ、分かったわ。それならすぐに持ってくるわね」

 

 ただそんなこと言う訳にはいかないため普段通りお菓子が焼き上がるまでは暇潰しもかねて衣服や布団の修繕をしてあげる。するとクローゼちゃんやマリィちゃんが隣にやって来て。

 

「先輩。私も手伝います」

 

「私もやりたい! お裁縫教えて!」

 

「オッケー♪ カリスマデザイナーのアーヤちゃんが直々に教えてあげちゃおう」

 

 と、親切で言ってくれるクローゼちゃんとお裁縫に興味があるマリィちゃんとかも加えてアーヤちゃんのお裁縫教室だ。

 まあ私がいるのも期間限定だし、お裁縫を覚えれば簡単な衣類の修繕なんかは出来るようになるから良いことだよね。なので是非覚えてもらいたい。

 ちなみに私が孤児院にここまで親切にすることに特に意味はない。強いて言うならちょっと気になったのと私の作った服をどうせならプレゼントしようと思って流れで関わっただけだ。

 とはいえ孤児院やそれを運営してる人は尊敬してる。子供の面倒を見るって大変だからね。私もレンとかイクスとヨルダを見てたからよく分かる。孤児院の運営なんて子供が好きじゃないと出来ないことだ。それにここの子供たちを見てると環境が良いことがよく分かる。私って子供の表情の機微とかには鋭いからね! 昔っから子供が大勢いる環境には慣れてたし。子供と一緒にいるのも慣れてる。ここは財政的にあんまり余裕があるようには見えないけど子供達は幸せそうだ。財政的に余裕はありまくっても年間でどれだけ子供死ぬねんってレベルで子供の入れ替わりが激しかった《楽園》とかとは大違いだ。いやー懐かしいよね。笑顔がだんだん無理がある感じになったりするんだよ。それに比べたらここは先生や周りの人に恵まれてるんだろう。貧乏でも不満なんて全くなさそうだ。少なく見積もってもざっと数百人の子供を看取ってきた私が言うんだから間違いないね! 

 

「……? なんか外が騒がしいですね」

 

「確かにねー。何かあったのかな?」

 

「どうせクラムがまた騒いでるんでしょ。ほんとあいつはガキなんだから」

 

「先輩。私ちょっと見てきますね」

 

「はいはーい。いってらっしゃーい」

 

 そしてクローゼちゃんと良い雰囲気お裁縫をすることしばらく。外が少し騒がしくなったのでクローゼちゃんが一時退席してしまう。せっかくお礼にまた膝枕してもらおうと思ったのに……ま、いいか。スキンシップはいつでも出来るしねー。

 それにしても平和だなー。原作が始まったってのに特に何も起きない。私がいることの影響なんて全く感じない。いや、なくていいんだけどね。なんならこのまま全然ラストの方まで行ってもらっても構わない。私の仕事はラストの方だけで十分だ。

 実際何か仕事を言いつけられたりでもしなければエステルちゃんと会うこともないだろうし、何か事件でもなければ一緒に行動することもないから平気だろう。

 

「それじゃお邪魔しまーす! ──って……あっ!」

 

「あっ」

 

 ──とか言ってたらエステルちゃんとヨシュア君がやって来ました。私フラグ回収早すぎない? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──そしてその翌日。

 

「先輩……孤児院が、火事になったって今学園長伝に連絡が……!」

 

 ──とか言ってたら事件起きた。忘れてた。私、フラグ回収早すぎない? というか……あ──!!? 私の服が──!!? 孤児院が──!!? 子供達が──!!? 犯人誰──!!? 覚えてないけど確かギルバート君だっけ? ぐぬぬ……許さん! 細切れにしてやるぞギルバート──!! 

 

 ──そうして私はクローゼちゃんから声を掛けられて一緒に孤児院へ向かうことになった。




そういうことで次回ゲスト加入。次回はクローゼちゃん視点と劇やら色々。FCは正直まだまだあっさりめでお送りします。本番はSCからなので。お楽しみに。

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