──ボクにとってのアーヤちゃんは
ボクの名前はセラフィーネ・アロン。レミフェリア公国出身でカルバード共和国に移住し、アラミス高等学校に入学した少女で現在はリベール王国のジェニス王立学園に、友達で彼女かつ雇い主のアーヤちゃんと一緒に留学に来ている。
毎日アーヤちゃんに振り回される日々を送っているが、それでいて充実もしている。勉強に遊びに仕事に。これまで多くのことをアーヤちゃんと共に行い過ごしてきた。
それだけ多くの関係を結んでいるのだから公私関係なく側にいることは当然でもあったし、ボク自身アーヤちゃんといる時間を気に入っている。そうでなければ彼女にもならなければ同僚にもならないし、一緒に留学なんてしない。
──そう。それがボクの建前だった。
ボクの本当の名前……いや、今の名前は
暗殺組織《
ノーザンブリア自治州の出身で《北の猟兵》のたちの悪い過激派かつ子供に暴力を振るうことが趣味の父親によって育てられたボクは幼い頃から戦う術を教えられながらも外国の戦場で敗北し、1人生き残りながらもボクは売られることになった。
《庭園》という組織の養成所。そこに少し年上の子供として放り込まれて暗殺技術を叩き込まれた。幸いにも戦う術は他の子供と比べて覚えがあったため、1年で養成所を卒業。《棘の園》へとボクは振り分けられ、暗殺者として日々を過ごすことになった。
だがそれから数年し、ボクが15歳になった頃。《棘》の管理人からある任務が言い渡された。
それがアラミス高等学校に入学するアーヤ・サイードの監視任務。今なお続くボクに与えられた特殊な仕事。
以前にペアを組んでいたカップの6と共にアーヤ・サイードの懐に潜り込み、彼女と良い関係を築き、その行動に協力しながら監視を続ける。ボクはそれをこれまで続けてきた。
その結果、ボクは幾つもの情報を知ることになった。
アーヤちゃんは一見してちょっとおかしな明るい良い子にしか見えない。ファッションデザイナーとしての才能。服飾職人としての才能は天才とも言えるし、女の子も恋愛対象に入るというのはちょっと変わっているけれどそれだけなら特におかしなことはない。
だけどアーヤちゃんは明らかに一般人とは違う。それはこれまで側で見てきたことでよく理解していた。
まず妙に身体が丈夫で身体能力が高い。アラミスに通っている時からアーヤちゃんの身体能力は普通の学生どころか庭園の暗殺者であるボクを超えている。ボクと6──今はシーナと呼ばれている彼女が気づかれそうになった時だって何故か上から落ちてきていた。サプライズをしようとしたにしてもおかしすぎる。なんでそんなところから落ちてくるのか。しかも落ちてきて無傷なのか。ツッコミたいところは山程あったし、その後の聞き間違いも理解は不能だった。……まあそのおかげで監視対象に素性がバレずに済んだのだからそこはボクらとしては助かった部分なんだけども。
そして2人してアーヤちゃんの彼女になってからそれなりの時間を過ごしてきたが、アーヤちゃんは時折消える。服飾の仕事や遊びに行くのではなく、ボク達の監視を振り切ってどこかへ消えてしまうのだ。その上戻ってきたかと思えば、妙に疲れていたり、軽傷を負っていたり、なんか普通によく分からないデカい武器をうっかり壁に立てかけて眠りこけていたりする。
それを見てボクは気付いた──あ、彼女って裏の人間なんだ……と。
しかも多分同業者。多分というのはアーヤちゃんがあまりにもどこか抜けていて明るいために疑問を呈さざるを得ないからだ。「これが暗殺者の姿なのか……?」と思うようなことがありすぎて自分の判断に自信が持てなくなってしまうためだ。
だけど考えてみればおかしなことは沢山あった。身体能力もそうだし、消えることもそう。武器もおかしいし、この間なんてマキナという明らかに普通じゃない人形を持って帰ってきて頭が痛くなった。なんだったらつい昨日なんてものすごくおしゃれでデザイン性を感じる暗殺者っぽい服をクローゼットに仕舞っていたし。もうなんか隠す気がなさすぎて逆に怖くなってくるくらいだった。
それに……後、あまり言いたくはないけれど、アーヤちゃんはエッチなことが上手い。彼女になってから何度もそういうことに付き合わされたけど未だにおかしくなってしまうし、ハニートラップによる暗殺が得意なシーナすら上回るテクニックを持っている。それを実際に味わってシーナとその後で話し合って、アーヤちゃんはハニートラップもやっていたんじゃないかという結論に達した。
そしてそれらの報告を管理人に行うことがとてつもなく怖かった。《棘》の管理人は凶悪かつ残忍で人を殺すことだけではなく苦しめることを躊躇わない。
もしボク達が管理人の逆鱗に触れればすぐに殺されてしまうだろう。その恐怖に怯え、それを隠し通しながらもボクは報告に一切の虚偽も交えずにしっかりと報告を行った。知ってはいけないことを知ってしまったんじゃないかと、そう怯えて。
『アハハ! 気づいちゃったんだ! まあそりゃ気づくよね。仕方ないから教えといてあげるけど……確かに彼女は同業の暗殺者──だけど敵ではないから安心していいよ。これまで通り監視と協力を続けるようにね♥』
──だが、意外にも管理人はその事実をあっさりと認めて引き続きの監視の継続をボクたちに命じた。
その理由は不明……だけどそれが如何なる理由であったとしてもボクらは逆らうわけにはいかない。ただ命じられたことを行うだけだ。暗殺だろうと監視だろうと何も変わらない。
だからアーヤちゃんが同業だと知ってもボクらのやることは変わらなかった。相変わらずの監視と協力……彼女の友人で彼女で部下として、彼女と共に居続ける。時折アーヤちゃんがいないタイミングで暗殺任務に出かける時もあるけれど、アーヤちゃんに気付いた様子は見られない。
そんな歪な関係。歪な日々を送っているけれど──正直なところ、ボクはこの日々が嫌いじゃない。
アーヤちゃんと一緒に過ごす日常はとても普通で楽しく充実している。友人として一緒に遊んだり、彼女の服作りを手伝って秘書みたいなことをする時間は紛れもない表の日常だからだ。
これだけ一緒に過ごしたこともあってボク自身もアーヤちゃんのことは好きになっている。彼女はちょっとバカで抜けてるところがあってたまに頭が痛くなるような行動をするけれど、悪い子じゃない。むしろ暗殺者とは思えないほどに良い子で、一緒にいると明るい気持ちになれる。彼女としてエッチなことを求められるのは困るけれどそれも慣れてきた。それどころか……正直ちょっと疼いたり嫉妬してしまう時もたまにある。この間もジェニスの仲の良い後輩に膝枕をしてもらっているのを見て少しだけ不満を覚えた。一応は彼女……まあ2人いる時点で通常の常識は当て嵌まらない気はするけれど……それでも色んな女の子にそういう目を向けるのはどうかと思う。
まあでもそういう部分も含めてアーヤちゃんなのかもしれないけれど。
ボクはいつも困ったように笑い、彼女の自由な言動をつい許してしまう。管理人から言われた命令通り、ボクは彼女の忠実な手足として働きつつその動きを監視するだけだ。
《庭園》に所属して血生臭い暗殺者として生きるボクだけど、彼女と共にいるその役目が嫌じゃないことだけがボクにとっての不幸中の幸いで。だからボクは今日もアーヤちゃんの近くでアーヤちゃんの命令に従う──
「セラちゃ~ん。疲れたしストレス溜まってるからシック◯ナインしよっ♡ このブルマ履いて♡ あ、もちろん私が下ね! セラちゃんのお尻に顔を埋めて圧迫してもらいたいし!」
──でも変態的な命令を頼んでくるのはやっぱりちょっと困るかな……。
でもボクは結局逆らえず、羞恥に耐えながらも彼女の指定通りのコスチュームを身に着けながら指定された通りに彼女と愛し合うのだった……。
──ん~~~……! はぁ……あ、どうも。アーヤ・サイードです。今は朝の運動を終えて深呼吸をしたところです。田舎は空気が美味しいからねー。
ということで今の私はリベール王国にいます。帰ってきました、エレボニア帝国から。
いや~帝国旅行はほんと最悪だったね。まあ帝国が悪いんじゃなくて悪いのは無茶振りしてきた面白くない教授なんだけど。それと私視点だとカシウスね。いや、襲撃したのはこっちなんで恨むのはお門違いなのは分かってるんだけど……でもあんなに叩くことないじゃん! 馬鹿みたいに強いんだからもっと優しく倒してよ! 《剣聖》なんだから私なんて余裕で倒せるはずでしょ!
……いや、でも私はちょっと思った。多分カシウスさん、体調悪かったんじゃないかな。
だって私の奇襲を防げずになんか食らっちゃってたし。ちょっと腕切れたし。血出てたし。血って流れるんだって思ったよ。切ってもノーダメージかと思ってた。
だから奇襲が地味に成功した後、びっくりしすぎて無言になっちゃったもんね。本当にびっくりした。その後私の格好と得物を見てすぐに渾名バレしたんで内心で叫んだ。もうその時点で逃げたくなったけどすぐに向こうも戦闘状態に入ってめちゃくちゃ追いかけてきたからね。すっごく怖かった。というかやっぱり強すぎる。棒術使いとか全然戦ったことないのもあって強いし痛いし速いしで。挙句の果てに奥義まで打ってきちゃってさ。もう棒術はやだ。なーにが棒術だ。棒なんてちん◯んだけで十分すぎる。それだったら私も得意だし。棒術じゃなくてちん◯ん振り回してくれた方が全然マシなんだけど?
まあその後はなんとか逃げ切れたから良かったけどあのまま続けてたらやられてただろうし逃げられて良かった。任務も完了したしこれで良かっただろう。カシウスさんには悪いけど計画が進めば皆救われるし私もレーヴェを助けられるしで良いことばかりなのでごめんだけど腕切ったのは許してね。
ということで仕事を終えてリベールに帰ってきた私はまたしばらくの学園生活を経てからまた外出した。今度はセラちゃんと一緒にね。王都グランセルまで小旅行だ。
というのも9月には女王生誕祭というリベール王国の祝日。今年で60歳になるアリシア・フォン・アウスレーゼ女王陛下の誕生日なのでリベールではちょっとしたお祭りなのだ。
王都じゃそれに先んじて武術大会も開かれるし、生誕祭当日には屋台なんかも出るらしい。なのでそれを楽しみに来たってわけだ。
……まあ若干裏の仕事の関係というか、そういうのもあるんだけどそれはしょうがないし気にしないでいこう。なので私はセラちゃんと一緒に街道をてくてく歩いていった。散歩がてらね。ルーアンから王都グランセルまではそんなに遠くもないし歩いて行ける距離だし、頭の中で『空を見上げて』を流しながら自然豊かな街道を歩くのは中々に気分が良いし楽しかった。
まあたまに魔獣なんかも出るけどそこは大丈夫。私もダガーを使って戦えるし、セラちゃんも戦えるからね。セラちゃんは父親が軍人だったらしくて昔っから格闘術とかナイフや導力銃の使い方とかを教わってたらしい。だから結構強いんだよね。ナイフと導力銃。それらを用いた軍隊格闘術で魔物をスマートに倒していく様は中々にかっこいい。やっぱ鍛えてる女の子っていい。良いお尻してるからね。
そしてセラちゃんの尻を眺めながら歩いて歩いて途中でツァイスもちょっと見て更に歩いてしばらくして王都グランセルに辿り着いた訳なんだけど、そこからはまあ普通だ。ホテルに2人でチェックインしてから観光。
ちなみに王立競技場──グランアリーナで行われる武闘大会のチケットはちゃんと取っておいた。ふふん。お金はまあまあ余裕あるからね。なんか教授が私にチケットを与えようとしてきたけど別に与えられなくても自分で取る。そもそもセラちゃんと一緒に見たいのに1人だけだと意味ないしどっから貰ってきたんだって怪しいでしょうが!
なので教授の手を借りずに本戦の観戦チケットを購入した後はしっかり予選から大会を見る。実際楽しみだったんだよね。レーヴェが出たり原作キャラがいっぱい出るのもそうだけど、私って自分で戦うのはあんまり好きじゃないけど戦いを見るのは好きだ。特に自分に関係ない自分が絶対に安全な高みの見物は大好き。
なんでかって言うとほら、スポーツ観戦もさ、自分が一応経験者だとそれなりに理解もあるし熱くなるし語れるじゃん? それとおんなじでさ。私もそれなりに腕に覚えがあるから人が戦ってるのを見ると色々と興味深いし楽しめるわけよ。さすがに目も良くなってるし、昔よりもよく見える。昔から達人同士の戦いなんかも見る分には楽しんでたけど今はもっと楽しめる。
ということで客席で観戦──うおー! 行け行けー! そこだそこー! お、今の選手動きいいねぇ。あ、今の人ミスった! うわぁ、痛そー。でも負けるなー! がんばえー!
予選はチーム数が多いこともあってサクサク進む。その中でも勝ち上がって良い動きをしてるのはやっぱりネームドだね。遊撃士協会のクルツ(かませのB級の人)筆頭にグラッツ(誰だっけ?)、カルナ(お姉さん!)、アネラス(かわいい──けど八葉だ~~~~!!? うわあああああああああ!!?)のチームはなんだかんだ連携も取れてて見てて楽しいし強い。
だけどそれ以上にすごいのはなんていっても最後に出てきたクマみたいな大男──ジン・ヴァセック。カルバード共和国からA級遊撃士! 皆ご存知パーティキャラで《泰斗流》のジンさんだ! 《不動》のジン! うお──!! 1人で4人をぶっ倒した──!!? 強ーい! さすがヴァルターのライバルなだけはあるね!
そしてそのジンさんの試合が終わると予選も終了。予選は特務兵チームにいるレーヴェも出てこなかったし、カプア空賊団も薄っすらいた記憶があるけど出てきてなかった。本戦から出場かな? 後は不良チームの《レイヴン》も出てたけど、まあ前よりは努力を多少は感じるかな? ってくらいの強さなのでとても本戦で勝ち上がれるとは思えない。
なので優勝はやっぱりジンさんのチームだろう。まだエステルちゃんたちがいないけどなんてたって主人公だし! 優勝してくれないと話も進まないしね! まあガチるなら本気を出したレーヴェに勝てる人なんてこの大会どころかリベールにはいないんでレーヴェが勝つんだろうけど多分手加減してわざと負けるはずなのでまあ優勝は決まってるよねって感じだ。
そして予選の試合が終わった後はセラちゃんと一緒にご飯を食べてホテルに帰ってえっちなことをしてお風呂に入ってちょっと服を仕立ててからしっかり就寝。次の日からは3日間にかけて行われる本戦があるからね! 王都もゲームで昔見た時よりはめちゃくちゃ大きい──人口が30万人ってセラちゃんに教えてもらったんでカルバードだと大体オラシオンくらい人がいる街ってことになるしそりゃ大きいよね。だから見るとこも沢山ある。
なので次の日は朝から試合が始まるまで観光を楽しんでたんだけど──そんな時に出会ってしまった。
「あ──アーヤ! それにセラも!」
そうして元気よく私に声を掛けてきたのは試合前と思われるエステルちゃんたち。ヨシュアくんにジンさん。そしてオリビエもいる! オリビエ・レンハイム! オリヴァルト皇子だー! うわー……こんなとこいて大丈夫? めちゃくちゃ重要キャラなんだよねこの人。旅の演奏家なんてしてる場合じゃない。なんてたって帝国の皇子だし。暗殺とか怖くないのかな……私が同じ立場なら怖いんでもっと護衛を沢山付ける。ヴァンダール流がダースでいないと安心出来ない。
「お、エステルちゃんにヨシュアくんじゃん! 久し振り~!」
「うん、久し振り。セラさんもお久しぶりです」
「ああ、久し振りだね」
ってことで普通に会話。もう普通に再会を喜び合う。セラちゃんも当然2人と知り合いなので普通に挨拶。普通すぎて特に言う事はないくらい普通で平和だ! 強いて言うならルーアンでのあれこれでエステルちゃんが私たちを友達として呼び捨てで呼ぶようなことになったくらいしか言うことはない!
「お前さんたちの知り合いか?」
「ジェニス王立学園にちょっとだけ仕事でお邪魔させてもらって。その時に仲良くなったんです」
「ほう……美しいお嬢さん方だね。──ボクはオリビエ・レンハイム。エレボニア出身の旅の演奏家さ。良ければ君たちの名前を聞かせて貰ってもいいかな?」
「ジン・ヴァセックだ。カルバード出身の遊撃士だ」
「あ、カルバード出身なんですね! 私もカルバードから来たんですよ! アラミス高等学校からジェニス王立学園に留学しに来ました学生兼ファッションデザイナーのアーヤ・サイードです。よろしくね!」
「セラフィーネ・アロンです。アーヤちゃんと同じくアラミスからの留学生でアーヤちゃんの秘書のようなことをしてます」
「ほう……お前さんたちもカルバードから来たのか。確かに、そっちのお嬢さんは中東の、そちらのお嬢さんは北方の感じがするな」
「あ、分かります? そういうジンさんは東方っぽいね!」
「カルバードは多民族国家だからねぇ。色んなタイプの花が見れて嬉しい限りだよ。それにしてもサイードか……もしかして最近ファッション界で有名なあのサイードなのかい?」
「その天才ファッションデザイナーのサイードだよ。ふふん」
「ほう、やはりか。噂で耳にしてるよ。カルバードのファッション界に現れた風雲児。新進気鋭の若き天才ファッションデザイナーの存在をね」
「そのアーヤちゃんです! この私のことを知ってるとは……中々分かってるねオリビエさん!」
「フッ……芸術家の端くれとして当然の知識さ。それよりもどうだろう。せっかく出会ったんだ。記念に一曲捧げさせて貰えないだろうか?」
「いいよ! なんだったら他に楽器があれば私もセッション出来るし!」
「ほう、楽器も嗜むとは。これは嬉しい誤算だ。それならどこかで楽器でも借りて……」
「こらこらこら。何を急に暴走してんのよ」
「随分と馬が合ってるみたいだね……」
「これから試合もあるからな。演奏会はまた次の楽しみにさせてくれ」
「はーい」
「フッ、仕方ないね」
──と、そんな感じで挨拶を交わしてノリの良い会話をした。まあ知ってる街の人とのストーリーに関係ない会話って感じだね。どうやらエステルちゃんたちは試合前の準備をしてるっぽい。アイテム買ったり装備を新調したりクオーツ嵌め込んだりね。戦う前の準備はゲームでも現実でも大事だからさもありなん。
「というかもしかしてエステルちゃんたちも大会に出るの?」
「うん。ジンさんと同じチームに加えてもらってね。アーヤたちは大会の観戦に来たの?」
「女王生誕祭って祭りがあるって聞いたからね。しかも武闘大会まであるって聞いたからそりゃ行くしかないでしょ!」
「行くと言って聞かなかったからね。数日分の外出届けを出して観光に来たんだ」
「仕事もちゃんとするから大丈夫! ってことでエステルちゃんたちが全員ぶっ倒せるように応援するね!」
「ええ。こっちも優勝するつもりだから期待に応えられるよう頑張るわ!」
そして次に大会の話もする。まあ一応ね。情報の共有は大事。私は知ってるけどちゃんとこうやって聞いた体を取らないと事故が起こったら怖いし。
なのでしっかりと大会に出てくることを聞いて応援するねと言って別れる──が、その前にちょっと思いついたので私はエステルちゃんを呼び止める。
「あ、そうだ──はい、これ!」
言って私はスーツケースから衣装を何着か取り出してエステルちゃんたちにプレゼントする。
「これって……アーヤが作ってる洋服よね」
「ほう……これは良いものだな。しっかりと丈夫で軽い素材で仕立てられている。これなら戦いの場でも問題なく着られそうだ」
「デザインもかなり洒落ているね。それに着心地も良さそうだ」
「うん、確かに良いものだけど……アーヤさん。これを僕たちに?」
「皆にプレゼント! 私がデザインしたブランド服でちゃんと装備にも使えるから良かったら着てみて!」
「そうなんだ。ちょっと貰いすぎな気もするけど……でもありがとうアーヤ!」
「気にしないで! 大会優勝チームが私の服を着てるってなると宣伝にもなるし、互いにウィンウィンってことで!」
「あ、なるほどね」
「ふむ……てっきりエステル君と似たようなタイプかと思ったが、アーヤ君の方が少し強かではあるようだね」
「これでも社長だからね! それじゃ皆頑張ってねー!」
そして今度こそ別れて私たちは客席へ。エステルちゃんたちの応援に専念する。これで宣伝にもなるし、エステルちゃんたちの勝率もしっかり上がるだろう。良い装備は正義だからね! 私のブランドはおしゃれだけじゃなく装備品としても使える衣服も用意している。まあ私が直接仕立てたものじゃないから状態異常の耐性とかは付けられないけどそれでも防御力や身軽さは向上するはずだ。エステルちゃんたちにお金か素材があれば直接仕立ててアーヤちゃん印の最強おしゃれ装備をプレゼントするのも吝かじゃないけどさすがにタダはね。まあ気分によっては全然上げるけどそのためだけに仕立ててると他の仕事もあるからセラちゃんに呆れられちゃうし程々にしよう。
そんなイベントがありつつ、そこからは純粋に試合を観戦した。本戦1日目の最初の試合は王国軍の将兵とクルツ率いる遊撃士チームの試合でクルツチームの勝利。王国軍チームの動きは兵士なだけあって悪くはないけどそれなりに場数を踏んでいるっぽい遊撃士チームには敵わなかった。
二試合目は不良チーム《レイヴン》とエステルちゃんたちのチームだけど、ここもまあ当然エステルちゃんの勝利。単純に実力が違う。頑張ってはいたけど頑張りだけではどうにもならないのが勝負の世界ってやつだ。……まあ根性だけでめちゃくちゃ壁を乗り越えるヤバい警察官もいるけどね……と、それは置いといて三試合目はカプア一家チームVS王国軍チーム。……王国軍多くない? いやリベールの武闘大会なんだから当然なんだけどさ。これなら私とセラちゃんで組んで出ても面白かったかもしれない。いやまあ手加減する必要があるしレーヴェと当たると面倒くさすぎるからないけどね。そしてその試合はカプア一家の勝利。元帝国貴族ってだけあって動きいいよね。──ん? 帝国貴族関係あるかって? あるよ。だって帝国だよ? 化け物武術家兵士が大量にいるエレボニア帝国の帝国人なんだからそりゃ普通の人よりは強いでしょ。なのでこの結果も当然っちゃ当然。
そして第四試合はもういい加減飽きた王国軍チームVS情報部特務兵チーム。レーヴェ……じゃなくてロランス・ベルガー少尉のチームだ。当然私は特務兵を応援する──きゃー! ロランス頑張れー! うおー! 手加減しまくってるけどそれでもめちゃくちゃ強いー! さすがー! かっこいいー! 抱いてー!
……ってな感じで1日目は終了。王国軍だらけだったけど中々楽しかったね。
でも大会は2日目からが本番だ。なので2日目もしっかりと観戦に行く──うわっ、客席に面白くない教授を見つけてしまった! 塩まけ塩! よくもカシウス暗殺なんて無茶振り任務与えてくれたな! はい、かーえーれ! かーえーれ!
私はついそんなコールをしたくなるもさすがに内心だけに留めて自重する。向こうは向こうで多分気づいてるけど気づいてない振りだ。笑顔が胡散臭いなぁ……。
まあでも気にせず観戦しよう。気にしてもしょうがないし──ってことで準決勝第一試合はクルツチームVSジンチーム。ほぼ遊撃士同士の対戦だ! これはさすがに見応えがあった。主にクルツとジンさんの主導権の握り合いというか、クルツ側がサポートをしつつジンさんを抑えにかかるもジンさんは驚異的な身体能力と体術で前衛に打撃を叩き込み、それをエステルちゃんとヨシュアくんもサポートするように叩く。1か月くらい前にルーアンで見た時よりもちゃんと強くなってる! さすがの主人公! 成長がすごい! そしてオリビエも導力銃による銃撃が正確かついやらしいところを突いてくるのでクルツチームはやり辛そうだった。やっぱり遠距離攻撃出来る人がいると戦術に幅が広がるよね! クルツチームも頑張ってるけどそれでも徐々に押し込まれて敗北した。クルツチームの敗因はクルツが若干動きが悪かったところかな。なんでかは分からないけど本調子じゃないっぽいね。とはいえ今のところこの試合が今大会のベストバウトだね!
そして次の準決勝第2試合はカプア一家VS特務兵チーム。まあこれはね。やっぱりレーヴェ無双ですよ。手加減状態でも無双。特務兵も王国軍の兵士よりちょっぴり強いしね。勝てるわけがないよねってことで順当にレーヴェの勝利──きゃー! ロランス少尉ー! かっこいいー! 仮面取って見せてー! ふっふー! よっ! 一般《身喰らう蛇》構成員が選んだイケメンだと思う執行者第一位!
──ってことで2日目も終了。その後に観光をまた楽しんでえっちなこともしたけど他に特に言う事もないんで3日目の観戦。
この日は決勝戦だけとはいえ1番盛り上がるからね。観客もちょっぴり多い気がした。そして客席にエステルちゃんとヨシュアくんが来てたけど……うわっ、面白くない教授と話してる……どの面下げてヨシュアくんの前に顔を出してるんだろ。怖いなぁ……あ、今度はこっち来た。
「やっほーエステルちゃんヨシュアくん。決勝戦も頑張ってね!」
「ええ、見てて。絶対優勝してくるから!」
「アーヤさんから貰った装備の分も頑張らないとね」
「そうそう。ちゃんと宣伝してねー」
「2人なら大丈夫だと思うけど怪我には気をつけてね」
と、そんな当たり障りのないサブ会話をして2人は去っていった。うーん、やっぱり知ってる人にはちゃんと声かけていくんだね。社交性が凄まじい。だから知り合いとかすっごいいっぱいいるんだろうね。軌跡主人公すごい。
さてさて、そうして始まる決勝戦。遂にエステルちゃんとヨシュアくんがロランス少尉率いる特務兵チームと試合だ。もちろんレーヴェが本気を出したらボコボコだろうけど……あっ、やっぱり手加減してるね。それでも強いけど。でもジンさんもいるし特務兵が若干足を引っ張ってるからこれは良い感じだ。傍目にはすごい良い勝負に見えるし熱い。レーヴェの実力を知ってるこっちからすると違和感がすごいけど……あ、負けた。エステルちゃんたちの勝利だ。さすがレーヴェ。手を抜くのも上手だなぁ……私も見習わないと。
ってことで武術大会はジンさんチームもといエステルちゃんたちの優勝! うわー! パチパチパチ~! おめでとー! 優勝チームの一部装備はサイード社の提供でお送りしております!
はぁ~なんだかんだ面白かったー。満足満足。本当に満足だ。まだ女王生誕祭が残ってるとはいえ武術大会も含めて結構王都を堪能した気がする。
というか武術大会が終わって女王生誕祭までは安心して観光も出来ないだろうから逆にその前に色々見れて良かったよね。だって今からリシャール大佐のクーデター始まるし。物騒なことこの上ない。
ただ私には関係ない。忙しいのはレーヴェだけ。私はただ見に来ただけの野次馬なので、王都でこのまま民間人として大人しくしつつ……後はまあエステルちゃんたちが声かけてきたらちょっとだけ協力しようかな? ちゃんと乗り越えて貰わないと困るし。装備面とかでは役に立てる。条件付きで終盤用の最強装備作ってあげよう。そうじゃなくても良い装備が揃ってるよ!
……まあちょっと心苦しいところはあるけどしょうがない。精々高みの見物ってことでエステルちゃんたちの英雄伝説。空の軌跡FCの終盤を1人のサブキャラとして見守ろう──
──『さて、せっかくだ。君もレーヴェと同じように少々“試し”をお願いするよ。──グランセル城の城門開閉装置で
………………………………。
──数日後。
「お前は……」
「ふむ、どうやら只者じゃないみたいだね?」
「っ……多分、暗殺者だ。それもかなり凄腕の……!」
「──その通りだ。お前たちに恨みはないが……依頼主の要請によりここを守らせてもらう……」
──私は《
※空の軌跡FCの切り裂き魔戦ではBGM「銀の意志」が流れますが仕様です。ご容赦ください。ってことで今回はここまで。次回はFCラスト。男組と戦ってなんやかんやあって解決して終わりです。お楽しみに。
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