TS不幸少女のゼムリア大陸災難記   作:黒岩

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告白しないといけないことがある不幸

 

 ──その気配は驚くほど希薄だった。

 

 カシウスさんの頼みもあって俺がやって来たリベール王国で起きたリシャール大佐のクーデター。それをエステルやヨシュアたちと共に解決しようと俺たちは作戦を立て二手に別れることになった。

 エステル、クローゼ、シェラザードの3人が王城へ──飛空艇を使って女王宮への突入を行う班。

 そして俺、ヨシュア、オリビエの3人は王都地下水道から城門の開閉装置に向かい、城門を解錠する班だ。

 ちなみに王城正門には親衛隊が突入し、エステルたちが女王宮へと突入する囮となってくれる。

 その囮を正確に機能させるためにも俺たちは早々に開閉装置を起動させなければならない。そのために見張っていた特務兵を無力化し、開閉装置に近づこうとした瞬間──俺たちの目の前に謎の人物が現れた。

 

「お前は……」

 

「ふむ、どうやら只者じゃないみたいだね?」

 

「っ……多分、暗殺者だ。それもかなり凄腕の……!」

 

「──その通りだ。お前たちに恨みはないが……依頼主の要請によりここを守らせてもらう……」

 

「ッ……来るぞ! 構えろ!」

 

 俺は咄嗟に注意を促す声を出す。殺気や敵意のない攻撃の動作を見たからだ。

 そうして両手に持つ長大な双剣──両刃で鍔に当たる部分が丸く広く出来ていて、その1つが身の丈ほどに長い得物──で斬り掛かってきた。俺は得物を確認し、手甲でガードしながらも相手の風貌も見る。

 声や体格からして女。僅かに見える肌の色からおそらくは中東人。年齢も若く見える。エステルやヨシュアより年上か。それでいて実力は達人級。振るわれる刃物の鋭さは多くの人を斬り伏せてきた自負を感じる。

 だがそれでいて気配は薄い。それもただ薄いのではなく、強者特有の気を感じなかった。

 まるで一般人がそこにただいるかのような気配。だというのに腕前は高い。その一見矛盾に見える特徴こそ、この人物が凄腕の暗殺者だと断言出来る証拠だ。

 ヨシュアもおそらくそれを理解したのだろう。この暗殺者が現れた時の顔が酷く険しかった。

 

 ──だが俺も戦い始めてその懸念が強く理解出来る。

 

「せいっ!」

 

「ふっ!」

 

「そらっ!」

 

「……!」

 

 戦いが始まり、俺たちは揃って攻撃を仕掛ける。陣形は俺が前衛で敵の攻撃を受け止めつつ肉薄し、ヨシュアが中衛。常に動き回って敵の側面や背後を取って撹乱し、隙を見れば攻撃を行う。オリビエが後衛で導力銃やアーツによる攻撃や支援を行う。

 3対1。如何に達人とはいえ数の差を覆すのは容易ではない。集団の連携が取れているなら尚更だ。

 

「──はぁっ!」

 

「うっ!?」

 

「っ、何……!?」

 

「……! やるものだね……!」

 

 だが相手はそれを覆した。

 側面からのヨシュアの奇襲。それを相手は片方の双剣で雑に吹き飛ばすとそのまま拳を放っていた俺の攻撃を受け止め、そのまま反撃に転じる。その上でオリビエの導力銃の攻撃も弾いていた。

 

「大丈夫かヨシュア!?」

 

「っ……何とか……まだいけます!」

 

「アーツで回復する! それまで持ち堪えてくれ!」

 

 俺は吹き飛ばされ壁に叩きつけられたヨシュアに声をかける──参ったな……! これはパワーもかなりある。俺以外は防ぎきれん……! 

 俺は暗殺者との近接戦を行いながらもオリビエがアーツによる回復を行うまでの時間を稼ぐ。俺の身体を壁にして立ち塞がれば接近は容易ではない。

 

「──“キラーソーイング”!」

 

「くっ!?」

 

 しかし俺は更に見誤ってしまった。近接攻撃だけではない。相手は離れた相手に攻撃する手段を持っていた。針を投げてオリビエに突き刺し、引っ張るようにして引き寄せる──これは……糸か!? くっ、俺としたことが……! このままではマズいな……! 

 

「やらせん! はぁぁぁ……!!」

 

 このままではオリビエが引きつけられて切りつけられてしまう。それを防ぐために俺は自らの身体を強化した。“龍神功”と呼ぶ泰斗流の技。気功術の1つを使って肉体の能力を高めた上で俺はオリビエに向かって得物を振るおうとする相手に飛び蹴りを行う。

 

「どりゃりゃりゃ!! ──奥義!! “龍閃脚”!!」

 

「っ!?」

 

 連続で蹴りつけた後に放つ鋭く重い蹴りの一撃で相手を吹き飛ばす。今の一撃は手応えがあった。そのことを感じたからこそ、俺は仲間の方に僅かに意識を向ける。

 

「平気か!?」

 

「少し痛いけど問題ないさ……! しかし、これで何とか開閉装置を動かすことが──」

 

「──せいっ!」

 

「なっ……!? ──ぐっ!?」

 

「……!?」

 

 ──だがそれがマズかった。

 僅かな意識の隙を突いて相手はすかさずこちらに一閃。かなりの速度で距離を詰めて斬撃を放ってくる。俺は手を交差させてその一撃を手甲でガードし、オリビエも何とか守るもそれでも僅かな遅れによって完全には守りきれない。

 結果俺とオリビエは背後に吹き飛ばされ、膝を突いてしまう。かなりのダメージだ。俺ですら隙を生じさせてしまうほどの。

 

「──させないっ!!」

 

「!」

 

 しかしそこでもう1人の仲間であるヨシュアが暗殺者に斬りかかり、追撃を阻止する。その得物の大きさには差はあるが、双剣同士の鍔迫り合いのような形となった。ヨシュアは素早いが、力の差は歴然。ゆえにヨシュアは苦しそうな表情を見せる。

 

「っ……くっ……!」

 

「……ヨシュア・ブライト。もっと強くなれ」

 

「……!? 何故僕の名前を──うっ!」

 

 そして暗殺者はヨシュアとの鍔迫り合いを制し、言葉と共にヨシュアに鋭い攻撃を与えて膝を突かせる。

 その上で更に言葉を放っていた。仮面の下からヨシュアを冷たく見下ろして。

 

「その程度では足りない。大事な人を守りたいならな」

 

「! ……何、を……!?」

 

「……()()()()()()()()()。そうすればきっと強くなれる」

 

「!?」

 

「じゃあまたね」

 

 そうして意味深な言葉をヨシュアに──女性としての演じていないような言葉を残しながらその場から去ろうとする。

 だが俺はその背中に声をかけた。

 

「待て……!」

 

「……貴方たちの実力は理解した。私は帰らせてもらう」

 

「それは助かるが……その前に1つ聞かせてくれ。あんたは……もしや切り裂き魔(ザ・リッパー)》なのか?

 

「! 《切り裂き魔》……? それは……」

 

「……大陸各地で噂される都市伝説の暗殺者の名前だね。何年か前に大陸各地で()()()()()()()()()()()謎の切り裂き事件……それらを起こした犯人の正体は未だ不明で未解決事件のまま。手がかりと言えば被害者の遺体に遺された同様の刃物によるものと思われる鋭い切り傷だけであり、多くの事件でその切り傷だけは共通しているという話だ」

 

「ああ。だから巷じゃその正体不明かつ未解決の殺人事件の犯人を《切り裂き魔》と呼んでいる」

 

「……………………」

 

「もちろん、確証があるわけじゃない。あくまで俺の知人から聞いた特徴と似通っているというだけだが……それだけの腕を持つ暗殺者はそういないだろう」

 

「ふっ……さて、どうかな?」

 

 俺の質問に相手は笑みを見せる。

 その余裕っぷり。意味深な言葉。中東人という特徴もある。そしてその肯定を意味する笑みと言動……やはり俺の予想は正しかったらしい。

 しかし《切り裂き魔》はそこで笑みを消して再び告げてくる。部屋の外へと移動しながら。

 

「仮にそうだったとしても今は仲間を助ける方が重要だと思うが……?」

 

「それもそうだが、生憎と目の前に油断ならない暗殺者がいるんでな。目を離す方が危険だ」

 

「──なら私はさっさと立ち去らせてもらうとしよう。次に会う時までに強くなっていることを期待するよ」

 

 最後にそう言い残して《切り裂き魔》は外へと出ていった。

 もう気配は感じない。とはいえ相手は暗殺者。気配を感じないからといっていなくなったとも限らないが……とはいえいつまでもじっとしている訳にもいかない。《切り裂き魔》の言う通り、今は城門を開けることが先決だ。

 

「……どうやら行ったみたいだね?」

 

「ああ……まさかこんなところで伝説の暗殺者と出会うとはな……」

 

「リシャール大佐との繋がりも気になるね。だけど今はそれを話している余裕もなさそうだ」

 

「ああ。あちらさんの言う通り、今は城門を開けることを優先しよう。ヨシュアもいけるか?」

 

「…………」

 

「ヨシュア?」

 

「……! はい! 大丈夫です! 今から城門の開閉装置を操作します! ジンさんたちは周囲の警戒をお願いします!」

 

「ああ! 任せろ!」

 

 そうして最初の目的通り、城門の開閉を行っていく。ヨシュアの反応が妙に鈍いことだけが気がかりだったが……それも気にしている余裕はない。

 俺は敵が来ないように周囲をオリビエと共に警戒し、程なくしてやって来た敵を撃退して地上へ戻ることにした──エステルたちと合流し、《切り裂き魔(ザ・リッパー)》という伝説の暗殺者の情報を共有し……この事件を解決するためにも。

 

 

 

 

 

 ──うわああああ!!? ヨシュアくんふっ飛ばしちゃった!? いやああ避けてええ!? って、危ない! ジンさん強いよ! パワー強くて怖い! あ、でも避けて! 殺しちゃう! 手加減難しい! あ、ヤバいオリビエ刺しちゃった!? 何とか防いでえええ!! 皇子が死ぬ──!! ひゃああああ!!? でも奥義はやりすぎ!!? 痛い痛い痛い!! や、やったなこのー!! あ、やばっ、ちょっと本気出しちゃった……危ないっ!? 殺す!? 殺しちゃうところだった!? ぎ、ギリギリセーフ……うわっ!? またヨシュアくん!? ってヨシュアくんは弱いなぁ……昔の方が強かったのになぁ……どうしよう。このままじゃヨシュアくん乗り越えられないかも……よし。未来のためにちょっと助言をしておこう──

 

「っ……くっ……!」

 

「……ヨシュア・ブライト。もっと強くなれ(ヨシュアくん! 頑張って! もっと強くなろう!)」

 

「……!? 何故僕の名前を──うっ!」

 

「その程度では足りない。大事な人を守りたいならな(その程度じゃ死んじゃうから強くなろ! ね? エステルちゃんたちと一緒に事件解決してもらわないと困るしさ!)」

 

「! ……何、を……!?」

 

「……昔を思い出すんだね。そうすればきっと強くなれる(よーし、ここでちょっとレーヴェを参考にした正体不明の暗殺者エミュやめて優しくアドバイスしよっと! 昔の方が強かったし暗示を解いたら頑張ってね!)」

 

「!?」

 

「じゃあまたね(こうしておけば後で感謝してくれるはず! 多分! ってことで私は帰るね! 身体めっちゃ痛いし!)」

 

「待て……!」

 

「……貴方たちの実力は理解した。私は帰らせてもらう(いや無理。殺しちゃいそうで怖いしあんたのせいで身体痛いから帰らせて)」

 

「それは助かるが……その前に1つ聞かせてくれ。あんたは……もしや《切り裂き魔(ザ・リッパー)》なのか?」

 

「! 《切り裂き魔》……? それは……」

 

「……大陸各地で噂される都市伝説の暗殺者の名前だね。何年か前に数百人以上の被害を出した不審な切り裂き事件……それを起こした犯人の正体は未だ手がかりすら得られず、ただ被害者から見られるその鋭い切り傷だけが共通しているという話だ」

 

「ああ。だから巷じゃその正体不明の殺人事件の犯人を《切り裂き魔》と呼んでいる」

 

「……………………(あっ)」

 

「もちろん、確証があるわけじゃない。あくまで俺の知人から聞いた特徴と似通っているというだけだが……それだけの腕を持つ暗殺者はそういないだろう」

 

「ふっ……さて、どうかな? (ふ、ふーん。よく調べてるじゃん……でも、ど、どうかな? 私ただの一般暗殺者なんで……そ、そんな奴知らないかなー?)」

 

「仮にそうだったとしても今は仲間を助ける方が重要だと思うが……? (というか私の正体なんてどうでもいいじゃん! エステルちゃんたち待ってるんだから早く行って! 逃がして! なんで動かないの!? 馬鹿なの!? 私とお見合いしてる場合じゃないでしょっ!?)」

 

「それもそうだが、生憎と目の前に油断ならない暗殺者がいるんでな。目を離す方が危険だ」

 

「──なら私はさっさと立ち去らせてもらうとしよう。次に会う時までに強くなっていることを期待するよ(それはそうだね。よし、帰ろう。帰る理由出来たぜ。あ、次会う時までちゃんと強くなってね! ジンさん以外! ジンさんはもう強くならなくていいよ! 十分だから! それじゃあね!)」

 

 ふぅ……こんなところでいいかな──あ、どうも。《切り裂き魔(ザ・リッパー)》のアーヤちゃんです。しがない暗殺者やってます。私なんて全然大したことないですよ。ほんと。

 

 ということで今は地上に戻って衣装も脱いで一般天才美少女ファッションデザイナーのアーヤちゃんに戻りました。はぁ、疲れた。正体バレないように結構気を使った。声も頑張って低めにしたし、喋り方もレーヴェを参考にしたクールな暗殺者を心がけてみたし、手加減も頑張った。ジンさんは強かったけどヨシュアくんがやっぱりまだまだ弱いのとオリビエが後衛だからさすがに打たれ弱いのもあって危なかった。ヨシュアくんを殺しちゃわないように気をつけないといけないのに変にジンさんが強いせいで手加減あんまり出来なかったりして色んな意味で怖かった。私がジンさんに殺されるか私がヨシュアくんやオリビエを殺すかの謎のシーソーゲームだった。

 

 なんで思ったよ。主人公パーティと戦うのってめちゃくちゃ気を使うんだねって。私の場合、別に倒したいわけでも殺したいわけでもないから本当に困る。むしろ助けたいくらいだし。うっかり殺しちゃったら怖いから迂闊に本気も出せない。今度レーヴェから上手い手加減の仕方教えてもらおっと……。

 

 ──まあでも! これで私のお仕事も無事完了! もうやることも本当にないし後はエステルちゃんたちが玉ねぎを倒して事件は無事解決だ! 

 いやーFCは面白かったね。エステルちゃんとヨシュアくんの遊撃士としての始まり。そして仲間たちの始まりを見れてとても良かった。まあティータちゃんをまだ見れてないのがちょっと残念だけどそのうち……というかこの後ちょっと話しかけてもいいしね! 女王生誕祭は平和に行われるし! ラストでヨシュアくんが面白くない変態教授から暗示を解かれてエステルちゃんから離れるっていう切ないエンドを迎えるけどそれも後の感動に変わるから大丈夫! 全部予定通りだからね! 

 

 ──ってことでこれにて無事に空の軌跡FC完! 続きは空の軌跡SCで! エステルちゃんとヨシュアくんの真面目なシリアス感動英雄伝説をお楽しみに! 

 

 

 

 

 

 ──王都で行われる女王生誕祭の1週間前。

 

 僕たちはリシャール大佐が企てたクーデター事件を解決した。

 もちろんそれは僕たちだけの力じゃない。僕たちと一緒に戦ってくれた仲間……遊撃士や親衛隊。軍の人々。民間人。それに帰ってきた父さんも含めた皆の働きがあったから事件を解決することが出来た。

 そうして1週間後……女王生誕祭の当日。僕とエステルは事件解決の働きを認められて正遊撃士になることが出来た。

 それと同時に父さんが遊撃士を辞め、王国軍の建て直しを行うために軍に復帰することになったけれど……いつまでも父さんに甘えてばかりはいられない。

 僕たちも正遊撃士としてこれまで以上にしっかりしないといけない。

 

 何しろ──クーデター事件は解決したけれど、謎は多く残されている。

 

 クルツさんやリシャール大佐の記憶の混乱。

 黒のオーブメントを持ち込んだというロランス・ベルガー少尉という謎の人物。

切り裂き魔(ザ・リッパー)》という都市伝説の暗殺者の存在。

輝く環(オーリオール)》とは一体なんなのか。

 

 それらの謎を解かない限り……完全に事件が解決したとは言えないだろう。

 だけど今日は女王生誕祭の日。せめて今日くらいはエステルと一緒にお祭りを楽しんでもバチは当たらない。

 そう思ってエステルと一緒に祭りで彩られた王都を回った。

 祭りではしゃぐエステルを見て、改めて僕はこれからもエステルと一緒にいたいと思う。

 その理由をエステルにも口にすれば、エステルは急に様子が変になって1人でアイスを買いに行ってしまった。その様子を見て僕はまさかとは思うもそんな訳はないと自らの考えを振り払う。あのエステルが意識してるなんてことはないだろうと。

 

「いやぁ。若い人は羨ましいですね」

 

「! アルバ教授……」

 

「やあ、しばらくぶりですね」

 

 ──そんな時だった。彼が現れたのは。

 アルバ教授。僕とエステルが翡翠の塔で出会った考古学者を自称するその人。

 僕達の行く先々に、事件が起こった街やその近くに居合わせ、クルツさんが青褪めていたその場にもいたその人物。

 そして何より──最初から違和感と震えが止まらなかった。

 そう……僕は彼こそが一連の事件の黒幕だと感じていた。

 

「クク……認識と記憶を操作されながらそこまで気付くとは大したものだ──さすが、私が造っただけはある」

 

「……え…………」

 

 だからそう指摘した。

 だけどアルバ教授は今の僕に理解不能な言葉を投げかけてきた。

 

「では、暗示を解くとしようか」

 

 その上で彼はその指を鳴らし──

 

「………………あ…………」

 

 ──その瞬間。僕の脳内に存在する幾つもの記憶が溢れ出した。

 

 ──ハーメル村の事件。

 

 ──壊れた僕の前に現れ、僕の心を造り変えた目の前の魔法使い。

 

 ──暗殺者として育て上げられ、多くの人々をこの手にかけてきた記憶。

 

 ──カシウス・ブライトの暗殺を命じた結社《身喰らう蛇》の知識。

 

 ──幼い少女の服を脱がせて発情させ、挙げ句に僕にも同じことをしようとした目の前の変質者の記憶。

 

「あなたは……あなたは……ッ!?」

 

「フフ、ようやく私のことを思い出したようだね。バラバラになった君の記憶を組み立て、直してあげたこの私を」

 

 震えと怖気が走った。

 

「虚ろな人形に魂を与えようとしたこの私を」

 

「対象者の認識と記憶を歪めて操作する異能の力……!」

 

 そう。目の前の男の正体を知って。

 

「7人の《蛇の使徒(アンギス)》の1人!」

 

 僕はそれを口にする。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「《白面》のワイスマン……!」

 

 ──変質者……! 《面白》のワイスマン……! 

 

「はは……久し振りと言っておこうか。執行者候補……《漆黒の牙》」

 

 ──そうして僕を造り上げた張本人である彼は、様々な事実を口にし、僕に言葉をかけていった。

 

 僕に与えられた本当の任務が暗殺ではなく諜報であり、僕は知らず今回の一連の事件に関与していたこと。

 協力してくれたお礼に結社から抜けて自由の身になってもいいと告げた上で、項垂れる僕の心に楔を打ち込んでいった。

 

「君は人らしく振る舞えるがその在り方は、普通の人とは違う」

 

 そう──僕は化け物で普通の人とは違う。

 

「どんな時も目的を合理的に考え任務を遂行できる思考フレーム。単独で大部隊と渡り合えるよう限界まで強化された肉体と反射神経」

 

 そう──それらを持ち合わせている怪物。

 

「私が造り上げた最高の人間兵器。それが君──《漆黒の牙》だ」

 

 なのに。

 

「まあもっとも──()()()()()()()には敵わなかったがね」

 

 そう──僕は彼女に敵わなかった。

 人間としても暗殺者としても欠陥品な化け物……それが僕《漆黒の牙》だ。

 

「とはいえ気にすることはない。落ちぶれた不良品とはいえ化け物は化け物……そんな君が、人と交わるなどしょせんは無理があったのだよ」

 

 そう──無理があったんだ。

 僕がいるべき場所は……少なくともここじゃない。

 

「この先、彼らと一緒にいても君が幸せになることはありえない」

 

「……………………」

 

「だから、辛くなったらいつでも戻ってくるといい。大いなる主が統べる魂の結社。──我らが《身喰らう蛇(ウロボロス)》に……」

 

 ──だけどこの変質者と共にいるべきでもない。

 

 だからこそ僕はこの時に決意したんだ。

 その日の夜……エステルに全てを打ち明けよう。

 僕のこれまでとこれからを。僕の思いを。

 その上でエステルの前から去ろう。

 そこにいるだけで不幸と災厄をもたらすような、穢れた存在の僕が隣にいていいはずがない。

 悪い魔法使いを止めるために、僕は彼女と別れて旅立つことにした。

 

「──さよなら、エステル」

 

 ──そうして最後にエステルからの想いを聞いて。

 僕は僕の想いと人間らしさの象徴だったハーモニカを預け、彼女に最初で最後の口づけをし、彼女を眠らせて旅立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──あ、そうだ。思い出した。私もレーヴェに告白しないと。昔言い忘れてたことがあったんだった。

 

「──あ、レーヴェ。ちょっと話というか告白があるんだけど聞いてくれる? 昔言い忘れてたんだけどさ。ほら、相談しようとしてた時あったじゃん? あの時に本当は言おうとしてたんだけどね。えっと……その……実は教授、私だけじゃなくて──ヨシュアくんにも性的に手を出そうとしてたみたいなんだよね……

 

「…………………………………………何だと?

 

 ふぅ──よし! これで言い忘れてた告白終わり! これで無事にFCが終われるね! 皆エンディング行くよー! 『星の在り処』流してー! さん、はい! 君の影~♪ 星のよに──

 




よし! シリアスで良いエンディングだな! ってことで空の軌跡FC終了! 次回からは空の軌跡SCです。まずはエステル視点かな。チート親父から切り裂き魔の話聞いたり執行者集結したり色々です。
一応明日は所用で時間がそんなに取れないので投稿休むかもしれない。でも書けたら休まないかもしれないのでご了承ください。また次回をお楽しみに。

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