──その人はちょっぴりエステルお姉ちゃんに似てました。
わたしが会ったのはツァイスでの地震の調査が終わってお姉ちゃんたちについて行くことになってから。王都に向かった時のことでした。
エルベ離宮で観光客の子供が迷子になっていると聞いて依頼に向かったわたしたちは、そこでレンちゃんと出会ったんです。
レンちゃんはお父さんとお母さんに置いていかれたみたいなのでわたしたちでお父さんとお母さんを見つけて上げることにしました。
そのために一度レンちゃんと連れて王都のギルドに向かった時にわたしとレンちゃんでエステルちゃんたちがお仕事をしてる間、百貨店でお買い物をすることになったんですけど──そこで出会いました。
「あ、やっぱりレンじゃん。やっほー。どうしたのこんなところで。お友達とお買い物?」
「アーヤ!」
「えっと、レンちゃんのお知り合いですか?」
「あーまあね。アーヤ・サイードだよ。よろしくねー」
「ウフフ、レンのお姉さんなの」
「えっ! そうなんですか?」
「あはは、姉っていうか前から知り合いってだけだね」
「以前面倒を見てもらったことがあるのよ」
「あ、そうだったんですね。わたしティータ・ラッセルって言います。今はその、レンちゃんのお父さんとお母さんが迎えに来るまで一緒にお買い物をしてるところで……」
「よろしくね! ティータちゃん! でも2人だけで買い物かぁ……2人だけで大丈夫? せっかくだから私も付き合ってあげよっか?」
「いいわね! アーヤも一緒に行きましょう! ティータもいいわよね?」
「えっと……はい。それならよろしくお願いします」
レンちゃんの知り合いと聞いてわたしはアーヤさんがいればレンちゃんも安心かなと思って一緒に付き添ってもらうことにした。
それにもしかしたらレンちゃんのお父さんとお母さんについても何か知ってるかもしれないし……だから買い物の途中でちょっと聞いてみたけど、レンちゃんのお父さんとお母さんについてはアーヤさんも知らないみたいでした。
だから結局、わたしとレンちゃんとアーヤさんは一緒にしばらくお買い物を楽しみました。その時間は本当に楽しくて。
レンちゃんみたいな同年代のお友達と遊ぶのは久し振りだったし、アーヤさんもとても明るくて親切な人だった。ジェニス王立学園に留学に来てるらしくて、どうやらクローゼさんのお友達みたいで。なんならエステルお姉ちゃんとも友達で他の人とも顔見知りだって聞いてので私は安心しました。
お仕事はファッションデザイナーをしててわたしやレンちゃんのお洋服を見繕ってもくれました。色々買い与えてくれるのはちょっと申し訳なかったけど、それでも嬉しかったです。可愛いって言って頭を撫でられたり、抱きしめられたのはちょっと恥ずかしかったですけど……でも温かい感じがして嫌じゃありませんでした。
その後、ギルドに戻った時もエステルお姉ちゃんたちはアーヤさんに会えたことを喜んだり、どうしてかちょっと苦笑いしたりしてましたけど……でもやっぱり嬉しそうでした。装備なんかも欲しかったら素材があれば交換してもらえるみたいでやっぱりすごく親切です!
ただそれからは少しの間アーヤさんとは離れてエステルお姉ちゃんたちと一緒にエルベ離宮に向かいました。
そしてエステルお姉ちゃんたちが言うには、そこでシード中佐さんから奇妙な話を聞いたそうです。
なんでも──レイストン要塞や軍の施設に侵入者が出たらしくいて。
それを聞いて私は大丈夫なのか心配になりましたけど、話に拠ると侵入者が出て被害も出たけど亡くなった人や怪我人はいないそうです。
じゃあ何をされたのかってお姉ちゃんも聞いたみたいです。そしたらシード中佐さんは渋く言い難そうな表情でこう言ったんだって。
「それが……その、毛を切られてしまうんだ」
「……え?」
「毛を切られてしまうって……どういう意味ですか?」
「そのままの意味だよ。侵入者は夜になると基地に忍び込んで髪の毛を切ってしまうんだ」
その言葉にエステルお姉ちゃんたちは困惑したそうです。言ったシード中佐さんも自分で言いながら困惑してたって言ってました。
お姉ちゃんがその理由を聞いてみたみたいだけど目的は軍でも掴めていないそうです。何かを盗むでもなければ怪我をさせるわけでもなくただ髪を切ったりするだけで。
他にもちょっとしたいたずら……見回りの兵士を気絶させた上で油性ペンで身体に落書きを書いたり、爪を切って深爪にしたり、出される食事がいつの間にか激辛に味付けされていたりされてるそうですが、主な被害は髪の毛を切られることで。それがここ最近毎日続くので兵士さんたちは参っているそうです。朝起きたら自分の髪がなくなっていたりするんですから確かにちょっと怖いです……。
だけどシード中佐さんが言うには自分たちの髪の毛がなくなるよりも(ちなみにシード中佐さんは髪の毛がありました)困ったことがあるみたいで、それが──
「モルガン将軍がね……その、同じように夜中に襲撃を受けて髪の毛をばっさりいかれてしまったんだ。もっともやられてすぐに気づいたから全て切られるようなことはなかったんだけどね……だがそれがむしろモルガン将軍の頭が……
──ってことみたいです。何でもモルガン将軍は頭の上の部分だけ刈り取られてしまったみたいで……その、面白いことになってるらしくて……それで兵士さんが笑ってしまうんだそうです。
そして笑ったら怒られてしまうみたいで……それは確かに大変そうです。将軍さんも兵士さんも……エステルお姉ちゃんもそれを聞いてちょっと見てみたいかも……と言ってました。
ただシード中佐さんはこうも言ってました。
「……だが笑い事でもなくてね。こうも容易く基地に侵入し、多くの兵やモルガン将軍にすら気づかれずに髪を切ったりいたずらが出来るということは──相手にその気があればどうとでも出来ることを意味する」
つまり、気づかれずに髪を切ったり出来るなら、命を奪うことも簡単に出来たってことで……。
それは確かに大変なことで。挑発か陽動か、あるいはそれら全てを意味しているかもしれないって言ってました。
だからここ最近は警戒してるみたいなんですけどそれでも少なからず被害は出てしまうみたいで……シード中佐さんも気を揉んでいました。相手は相当凄腕の工作員か暗殺者かもしれないって。もしかしたら以前、クーデター事件の時に現れた《切り裂き魔》かもしれないって言ってました。
そんな人がいると思うとわたしも怖いですけど……で、でもだからと言って調査をやめるわけにはいきません。
エステルお姉ちゃんやヨシュアお兄ちゃんのために頑張りたいってせっかく付いてきたんだから放り出すことはしたくない。そう思ってわたしは自分に言い聞かせました。そうして王都に戻ったんですけど──
「ティータちゃん! 欲しがってた希望の鞄、持ってきたよ! 耐久性に優れて軽くて工具なんかも入れられるやつ! はい、ティータちゃんにプレゼント!」
「わぁ……ありがとうございます! アーヤさん!」
──と、そこでアーヤさんに出会い、わたしは昨日の買い物でアーヤさんに(アーヤさんからその場で営業を受けて)注文した手作りの鞄を受け取りました。ランドセルっていう赤い色の背負い鞄でアーヤさんの言う通り軽くて丈夫で工具なんかも入れられる立派な物です。えへへ、やったぁ。わたしは嬉しくなってそれを背負い、エステルお姉ちゃんたちに自慢しました。やっぱりアーヤさんは親切で優しい人です。
──どうもおはようございます。アーヤ・サイードです。やっぱり小学生は最高だよね。この世界小学生って括りないけど。
ということで私はここ最近、ずっと仕事をしていました。いやもう教授に頼まれてしまったからね。嫌だけど頼まれてしまったものはしょうがないと私は注文通りに軍に嫌がらせをすることにした。
まあその前にちょっとした休憩として騒ぎが収まったツァイス地方で少し観光したりもした。エルモ村の温泉はやっぱり最高だったね。自然も豊かで長閑だったしすごい癒やされた。出来れば女の子と一緒に入りたかったけどそれはしょうがない。途中でヒツジンが入ってこようとしたんでそれはぶん殴った。覗きはよくないよね、うん。
そして温泉で一休みした後はいつもの《切り裂き魔》衣装でレイストン要塞へ。すごい厳重で見回りの兵士もいっぱいいたけど侵入自体はそんなに難しくなかった。糸を使って壁をひょいひょいってね。
だけど問題なのはその後で、私は何をするべきか迷った。軍への工作って何をすればいいんだろうって。工作ってことは何かしら嫌がらせになるアクションを起こせば良いんだろうけどちょうどいいのが思いつかない。暗殺はやりすぎだしやりたくない。重傷を負わせるのも頼まれてないし可哀想。かといって爆発物を使うのも怖いし、糧食を焼くとかも考えたけど火を使うのはなぁ……ちょっと怖いんだよね。大惨事になりそうで。マクバーンからも火を使うのは気をつけろって言われてるし。実際前に山火事を起こしそうになったこともある。なので火もNGだ。
だけどちゃんと工作にはしないといけない。軍の動きを鈍らせる方法を、私はしばらく考えて考えた結果……そこで思いついた。
「よし、髪を切ろう。それも気づかれずに」
私はそれを決意するように口にした。──え、なんで髪を切るかって? それはほら、髪って大切なものだしね。一応勝手に髪を切るってのも良くないことだけど髪はまた生えてくるから大したこともない。でも嫌がらせにはなるし、脅しにもなる。髪を気づかずに切られるってことは危ないよって。私にそんな気はないけど殺せるよアピールをすることで教授の指示通り軍の動きを鈍らせようと思った。
そうして私はこっそりと眠っている兵士の髪をばっさりと切ってつるっぱげに。今回だけは美容師に転身だ。ハゲ限定の。なのでばっさばっさと切っていく。起きている兵士も気絶させてから綺麗に剃ってあげた。
ただ元々坊主だったりハゲている人は切るところがないので油性ペンでおでこに『肉』って書いたり背中に『バカ』って書いたり他にも色々と落書きをしたりしたし、爪を切って深爪にしたりもした。
後はキッチンや倉庫に忍び込んで私特製のスパイスを使って食事を激辛に味付けしたりしてあげた。辛いものが得意な人には効かないだろうけどね。辛さ的にはアラミスにある煌都風東方料理定食の辛さ9くらいだし。だけど苦手な人は食べるのに苦労するだろう。焼いたり捨てるのは食べ物を粗末にすることで良くないけど味付けを多少変えるくらいなら別にいいよね。これなら嫌がらせにもなるし一石二鳥だ。
そして後はモルガン将軍とシード中佐。軍の中心人物を脅かせというお達しなのでそっちもちゃんと実行した。モルガン将軍はかなり強いって聞いてたので気づかれること前提で忍び寄ってから頭の上をばっさり。するとやっぱりすぐに起きたのでこっちも姿を見られる前にすぐに逃走した。時間をかけて切れなかったので頭の頭頂部だけがツルピカになるっていうかなり面白いことになったけどそれもまあ良し!
そしてシード中佐の方はイケメンだから髪を切るのは勘弁してあげたけど代わりに起きたら顔面に熱々おでんが降りかかるトラップを設置しておいたし、これで問題なしだ! こういった嫌がらせを続けた結果、今では兵士たちの大半がマルハゲになって深爪になって身体に落書きを書かれ、激辛で舌をヒリヒリさせている。まあさすがに2日目からは兵士にちょっと仕掛けるくらいしか出来なかったけどそれで十分だと思う。結構なストレスのはずだ。でも大したことはしてないので時が経てば解決する。教授に頼まれた仕事を完遂しつつやりすぎない! ふふん、さすが私だ。これはちょっと自分の頭の良さと良識を褒め称えたくなる。
そして1つ目の仕事を無事に完遂した私は安心して王都で遊んだ。途中でレンとティータちゃん──そう、ティータちゃん! ロリ! 幼女! かわいい! 三高弟のA・ラッセル博士の孫娘! 金髪ロリのティータちゃんと出会ったので私も一緒に買い物に付き合ったり、ランドセルを押し売りしたりして楽しい時間を過ごさせてもらった。いやーティータちゃんは本当に可愛かった。肌もぷにぷにすべすべだったし髪もふわふわさらさらで抱きしめるとミルクにも似た香りがして良かったよ。レンとセットだと可愛さ2倍増しで更に良かったよね。
で、その後はまたエステルちゃんやクローゼちゃんたち。空の軌跡パーティの皆さんと再会したんで再会を喜びつつ装備が欲しかったら言ってねって営業トークもしておきながらもその後はそんなに関わってない。強いて言うならなんか私までレンに眠らされそうになったくらいだけど、レンのお菓子に混ぜた睡眠薬は私には効かなかった。ちょっと眠いなーってくらいの効果しか出なかったけど、それはそれで別に眠れないわけではないので自主的に眠った。すると朝までぐっすり! 次の日起きたらレンが執行者だったことを教えられて驚いておいた。私が眠っている間に色々あったらしい。まあ知ってるんだけどね。驚きの演技をしつつ次の街へ。
そしてエステルちゃんたちがロレントに向かう中……次は2つ目の仕事であるヨシュアくんの動向を探ることにしたんだけど……いや、正直これはちょっと難しいんだよね。ヨシュアくん隠れるの上手だし。そもそも今のヨシュアくんってカプア一家と行動を共にしてるからね。《山猫号》でびゅんびゅん飛ばれて移動されては追いかけるのは難しいってか無理だ。
だからどうしたものかなぁ……って思ってたんだけど、そこで天才のアーヤちゃんは閃いた。逆に考えた。別に一々動向を探る必要なんてないんじゃないかと。報告なんて適当で良いんじゃないかなって。
何故かと言うとだ。私はヨシュアくんを追いかけるのが難しい理由について考えたように、ヨシュアくんがカプア一家と行動を共にしていることを
そう、私には原作知識というチートがあるのだ! なのでよくよく考えれば別に調べなくても分かる。調べる必要なんてあんまりない。……いやまあちょっとはあるかもだけどね。原作と違ってる可能性もあるわけだし。でも多分問題ないだろうってことで私は教授に報告をすることにした──「ヨシュアくんはカプア一家と共に行動して空賊艇を奪還した後はリベール各地を飛び回ってるみたいで教授をどうにかすることも諦めてないみたいだよ」って確信を持って言った。そしたら教授は「ほう……さすがだ。まさかこれほど早く動向を掴んでくるとは思わなかったよ」と感心していたのでこれで仕事は完了! やることなし! イエイイエイ!
……って思ってたんだけどね。仕事が終わって基地に報告に行ったらそのままレーヴェと一緒に付いてくるように言われたので今はまた飛空艇に乗ってボース地方の霧降り渓谷にやって来ました。
その名の通り霧だらけな場所で視界があんまり良くない。良くないけど何とかなる。霧はむしろ仕事がしやすくて助かるよね。魔物相手にも忍法霧隠れの術って感じでちょっきんちょっきんして楽勝に進む。そもそもレーヴェがいるし、嫌だけど教授も強いんで魔物相手には苦戦しなくていい。これでレーヴェと2人っきりだったらお弁当でも持ってピクニックでもしながら行くんだけど教授が一緒なんでそれは無しだ。本当空気読んでほしい。でも一応上司なので表面上は仲良くしないとね。なので私は教授にも声を掛けてあげる。
「それで、結局ここで何をするの?」
「フフ、まあ待ちたまえ。言わずとも見ればすぐに分かるからね」
「えー、気になるなぁ」
そして疑問を口にした私の質問に教授は匂わせで答える。ねえ、その勿体ぶり癖やめない? 普通に教えればいいのにさ。鬱陶しくてしょうがないよ。レーヴェも無言できっと呆れてるよ? そもそも教授と一緒に行動ってのが嫌だよね!
なので私達は特に愉快でもない静かなピクニック。霧だらけの渓谷を進んでやがてある場所に辿り着いた。そこはかなり広い空間で……ん? なんかいる……って、なんか覚えがあるような……?
「うわっ!? こ、これって……!」
「……これは……」
「フフ……やはりここにいたようだね」
私は声を上げて驚く。そういえば忘れてた。リベールには《空の至宝》があるんだからこいつがいるんだったと。
「見たまえ、君たち。何とも優美な存在じゃないか」
「…………………………本当にこんなものを使って実験を行うというのか?」
「はえ~……」
私は上を見上げて感心する。いや、デカすぎんだろ……。レーヴェの言う通りだ。これ使うの? ってか使えるの? いやまあ原作じゃ使ってたから使うんだろうけどね。こいつの存在忘れてるとか私ってばうっかりしてた。
「君の危惧も当然だ。だが、《β》を仕上げるにはどうしても必要なデータだからね」
「へぇ~、そうなんですか……」
「…………おぬしらは…………」
──と、私が教授の言葉に仕方なく相槌を打とうとした瞬間、頭の中に声が届いた。え、何? ファ◯チキくださいって言った? なんか念話みたいなのが聞こえてくる! 気持ち悪い!
「おお……起こしてしまったようだね。20年振りのお目覚めかな?」
「……………………………………」
はえー……やっぱりすごい……ってかでっっっっか……。化け物じゃん……でもテンション上がるなぁ~。竜って好きなんだよね、私。かっこいいし。ドラゴンスレイヤーとか憧れる。英雄願望もないし危ないことはしたくない私でもファンタジーの代名詞でもあるドラゴンは好きだ。なので色々とお話をしてみたいんだけど今は無理だろうなぁ……主導権が教授にある時点で無理だよね。
「お初にお目にかかる。私の名は、ゲオルグ・ワイスマン。《身喰らう蛇》を管理する《蛇の使徒》を任せられている」
「……………………………………去れ……」
教授、竜にまで嫌われてて草。喋りかけんなオーラ出てるって教授。空気読んで私にお話任せてみない? 竜と友達になって空飛んでみたいんだよね、私。
「おぬしが漂わせるその力……どことなく懐かしい気がするが……おぬしの目は気に入らぬ……昏い悦びにしか生を見出せぬ……歪んだ魂の匂いを感じるぞ……」
「フフ、お褒めにあずかり光栄だ」
ほらほら、言われてるよ。バレてて草なんだが。魂レベルで教授はやべー奴なんだよね、やっぱり。ここは社交的なアーヤちゃんの出番じゃない? ちょっとだけでいいからお話させて見ない? 実験は絶対嫌がるだろうけどちょっとは何とかなるかも……「それとおぬし」──え? あ、やばい! 本当に話しかけられちゃった! 私も何か言われる? おぬしは可愛すぎるから友達になってくれ、みたいな? そうだったらいいな。まあでもダメだろうけどね。でも教授ほどボロカスは言われないだろうけど……さあどうだ!?
「え、私ですか? は、はい。なんでしょうか!?」
「…………おぬしは…………」
「は、はい」
「……………………」
「……? えっと……」
「……
「? 力?」
「……………………いや、どの道言うべきことではないか」
「……………………は、はぁ……そうですか……」
──いや、気になる!!
何なんだ、意味深なことばっかり言って! 結局言わないなら何も言うな! 匂わせるくらいなら最後まで言ってくれないと困る! 気になって今日の夜眠れずに睡眠不足になったらどうするの!?
「フフ……面白い。どうやら何かに気付いたようだね?」
「……去れ。おぬしらに伝えるべき言葉はない」
「それは残念。しかしながら貴方に拒む権利はないのだよ。女神の至宝に関わる話だからね」
「…………なに…………?」
「レーヴェ、見せてやりたまえ」
「…………………………」
「……それは……!」
「1200年前の記憶が蘇ったかね?」
「レプリカに過ぎないがなかなか良く出来ているだろう?」
「…………おぬしら…………まさか《輝く環》を!!」
「フフ、そのまさかだ」
そして私が気になってしょうがない間も容赦なく話が進む! いや待って! 話勝手に進めるな! 気になるんですけど! いやまあ聞いたところで話してくれないんだろうけどさ!
「それでは──最後の実験を始めよう」
そうして教授は杖を取り出しながら実験開始を宣言する──くそー! ってことはこのまま戦闘するってことだよね! 女神の至宝を見守る聖獣の内の一体である古竜レグナートとさ! ぎゃー!? でかすぎるー! 古竜とか普通に無理ゲーでしょ! モン◯ンじゃないんだから気軽に古竜を狩りにくるな!
──いや、でも落ち着け私。私1人で戦うわけじゃないんだ。こっちにはあの《剣帝》レーヴェがいる。それに一応教授もいる。戦力的には頼もしい2人だ。私もそこそこは戦えるし、そもそも完全に倒さずともちょっとだけ体力を減らして隙を作ればゴスペルでどうにか制御するって感じだろうし無理しなくていいはずだ! 危険には変わりないけど1人で戦うよりは全然マシだ! タゲも分散されるしね! なんなら教授にタゲを押し付けたい!
よーし、そうと決まれば怖いのは変わらないけど頑張るしかない! 頑張らないとやばいし! 隙を作ればいいだけ隙を作ればいいだけ! 一狩り行くぞ! とりゃああああ! 行け! ゴスペルボール! ポ◯モンゲットだぜ!
──その時、《輝く環》を狙う者達が私に襲いかかってきた。ゆえに私はそれを跳ね除けようとして爪を、前足を振り下ろしたが、その攻撃は恐るべき腕前を持つ彼らには容易に躱され──
「へぷちっ」
──と思ったのだが1人だけ不運にも躓いて転んで潰れた。……こやつは何をしに来たのだ?
……だがその後、混ざりあった不思議な力をその身に秘める人間は私の前足の肉をその鋏のような得物で切り裂いて「いた──────い!!? めちゃくちゃ骨折した~~~~!!? 血も出ちゃった~~~!! うわああああん!! 痛いよ~~~~!!」と言いながら問題なく立ち上がってきた。私はそれともう1つの不思議な現象に動揺し、その間に残った2人と立ち上がった少女による攻撃を加えられしばらく戦った結果、彼らに操られることになってしまった……。
1乙しましたが拠点には戻りません。ってことで今回はここまで。次回は仕立て屋さんとして活躍します。古竜? それはレーヴェに任せる方向で。なのできっと平和に何事もなく終わるはずです。でも1%くらいの確率でポ◯モンバトルします。お楽しみに。
感想、評価、良ければよろしくお願いします。