TS不幸少女のゼムリア大陸災難記   作:黒岩

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支店が開店して色々壊れる不幸

 ──どうもー! ファッションデザイナーのアーヤ・サイードでーす! 戦術オーブメントの専用スロットは空・時・水です! ラインは2つで4つと3つ。それぞれにクオーツ『天眼』『闇の理』『水耀珠』を付けてます。ちなみに残り4つは『行動力3』『諜報』『神速』『移動3』です。手持ちのクオーツでレアな奴を適当に付けたらこうなりました。私はアーツはそんなに得意じゃないのでアーツのことはあんまり考えてません。でも使えるアーツは地味に結構あります! この構成に私の戦闘に対する考えが詰まってるかもしれない。とにかく見つからないように敵を見つけてさっさと倒していざとなったら死なないようにしながらさっさと逃げる。そんな激ダサな思考が詰まってます。

 

 と、上記のように一応戦闘というか裏の仕事でもちゃんとやれるように気を使ってる私。おかげで先日はなんとか《古竜レグナート》を弱らせてゴスペルで制御下に置くことに成功しました。

 まあめちゃくちゃ大変だったけどね。戦闘開始してすぐに転んでレグナートに踏み潰されかけたし。ギリギリのところで《ゾルフシャマール》を使って足裏を切り裂いたから何とかなったけどそうじゃなきゃ死んでたまである。骨折もしたし血も出た。すっごい痛かった。

 

 だけどそのかいあってかレーヴェがゴスペルをレグナートの額に打ち込むことに成功したので良かったよね。いや、良くないけど。無事に生き残れただけ良かっただけで悪巧みが成功してるのは良くない。

 でもそれも今更。今の私は執行者なので表面上それを喜び、実験はレーヴェに任せるということで私は帰還した。回復アーツで回復しつつ治療して次の日には治して一度ジェニスに戻ったけどすぐにボース市に。ジェニスに戻った理由としては、もうすぐ私の短期留学が終わるからだ。

 

 というのも元々1年じゃなくて冬くらいまでの予定だったんだよね。なので年明けからはまたアラミスに戻って残りの3ヶ月を過ごす。卒業までもうすぐだからね。さすがに1年ずっとジェニスにいては留年することになってしまう。

 まあでもアラミスに戻ったからといって学校に行けるかは分からないけどね。計画は年明けにも続くし。とはいえ残りの単位はもうすぐで取れるし、先生方も忙しい私の事情を考慮して空いてる時間に補修授業も行ってくれるとのことなので問題はない。めちゃくちゃ忙しないけどちょくちょくイーディスまで戻って授業を受けてまたリベールに戻るみたいなことをする必要はある。

 

 ってことでジェニスからいなくなるということでジェニスの私の友達や後輩は私との別れを惜しみつつ軽いお別れパーティを開いてくれた。ご飯を食べてお喋りしたりするだけなんだけどね。以前にクローゼちゃんからプレゼントを貰ったのも実のところそういう意味合いが大きいかもしれない。年末にはカルバードに帰るって言ってあったし。

 

 もっともまだ帰りはしない。結社の計画もあるし、なんならそれ以外でもリベールに来る理由はある。そう、それが──

 

「“SAID(サイード)”ショップ! リベール王国ボースマーケット支店! 開店しまーす!!」

 

 私はお店の前のテープをハサミで切って開店を告げる。するとカルバードからやって来た私の会社のスタッフやこっちで雇った従業員たちや店の前で待っていたお客さんが拍手をしてくれた。

 それと同時にお店にお客さんが押し寄せてくる──そう。今日は記念すべき私のブランドショップ支店が開店する記念すべき日! 半年くらい前にメイベル市長と商談して契約してテナント。そこに私のお店が出来たのだ! エステルちゃんと初めて会った日でもあるね! その時の交渉が実を結んだ! 私はほとんど何もしてないけど! 

 

 いやーあれから大変だったね。リベール支店を開店するにあたって私はひたすらデザインを描いたり型紙を起こしたり縫製をしたりと……服しか作ってない! でも既製服用のデザインはいっぱい描いたよ! リベール王国民にもウケそうな普通の洋服だけじゃなくて共和国風や中東風の衣装も置いてある。もちろんそのままじゃなくてちゃんとデザイン性のある着やすい奴ね。普通の服じゃブランドの意味がないからそういうところは気をつけている。この塩梅が地味に難しい。すごい良い服だからといって売れるとは限らないのだ。特定の個人向けに作るオートクチュールと大勢の人に向けた既製服は当然違うのでそこは気をつけた。まあ昨年のコレクションで出した服も一応出してるんだけどね。結構な高額だけどそっちの方が一瞬で完売する辺りファッションに敏感な若者はやっぱり分かってるというか目ざとい。買う人は幾ら出しても買うって感じだから売れちゃう。私の作った服のすっごいファンなのだろう。そういう人も大事にしないとね。

 

「アーヤさん。新店舗のオープン、おめでとうございます」

 

「あ、メイベル市長! ありがとうございますー! 来てくれたんですね!」

 

「はい。視察ついでに寄らせていただきました。どうやらかなり盛況のようですね」

 

「そうなんですよ! 私の服が沢山の人に行き渡ってくれて嬉しくて嬉しくて! 良かったらメイベル市長もどうですか?」

 

「ふふ、ありがとうございます。それでしたら客足が落ち着いた頃にまた寄らせていただきますね」

 

「はいー。その時は是非。リラさんも、新しいメイド服や私服が欲しくなったらいつでもご来店くださいね!」

 

「はい。ありがとうございますアーヤ様」

 

「それではわたくしたちはこれで」

 

「はーい。それじゃあまたー!」

 

 ──そして途中でそのメイベル市長がメイドのリラさんを伴って挨拶にも来てくれたので私もにこやかに挨拶を交わす。ちなみに私の役目はこういう挨拶だけで他にやることがない。他の従業員はお客さんの対応やらで忙しいからね。秘書のセラちゃんや社員も店舗裏で在庫を出すのに必死だ。実は開店までめちゃくちゃギリギリだったからね。オープン初日ということもあって忙しいので他の人も手伝ってる。私も接客くらいは手伝おうかな。試着よろしいですか? はい、よろこんでー! って感じでね! 

 いやでもほんとにめでたいね! 本店がオープンした時も嬉しかったけど支店が出来たのもやっぱり嬉しい。私の仕立てた服が世界に認められてる感がある。

 でもまだまだだ。この調子で各国に支店を作ってお客さんを増やすぞ! そのためにはやっぱり頑張って服を作り続けないとね! 

 

 でも今日のところはうかれても構わないだろう。なので心の中だけで万歳しておく。わーい! やったー! ばんざーい! ばんざーい! ばんざ──

 

「──ゴオオオオオオオ!!」

 

「ぎゃ──!!? な、何!!? 地震!?」

 

 ──だがその瞬間、私の店が──いや、ボースマーケット全体が揺れた。

 しかもその際になんか聞き覚えのある咆哮まで聞こえた。私は動揺して叫び、何が起こったのかと頭上を見上げる。

 すると天井部分が崩れ落ちていて、そこには見覚えのある竜の身体が見えた。私はそれを見て思い出す。

 あ……レグナート……って、忘れてた────!!? そういえば実験するんじゃん!! でここ被害が起きるんじゃん!! うわあああああ!!? 

 でもなんでよりによって私のお店の開店初日に──って、危ない!! 

 

「とりゃっ!」

 

「しゃ、社長!?」

 

 私は落ちてきた瓦礫を咄嗟に《ゾルフシャマール》で切り捨てて防ぐ──って、あ、やばっ。危なすぎて使っちゃった。い、いやでもウチの社員やお客さんが怪我したらいけないし……み、見なかったことにしてもらおう! よし、すぐ様しまってと。はい、避難避難避難! とりあえずお客さんと社員を外に避難させる! 

 

「と、とりあえず外に避難して!」

 

「わ、分かりました!」

 

「アーヤちゃん!」

 

「セラちゃんも避難誘導手伝って!」

 

「ああ、分かったよ!」

 

 こういう時は指示出しが大事! なのでセラちゃんや社員の人とも協力して店からお客さんを出してマーケットからも避難してもらう。倒壊の危険性もあるからね! まあさすがに倒壊まではしなかったはずだけど……『ガシャン!!』──あっ。

 

「また瓦礫が!?」

 

「今度はあっちの店が潰れたぞ!!」

 

「おい! 大丈夫か!?」

 

「……………………」

 

 周囲が騒がしくなる中、私は目の前で潰れた私の店を見て無言になる。運悪く、私の店にピンポイントで瓦礫が落ちてきたのだ。

 散乱するショーケースのガラスや衣服などを見て私は頭を抱えた。そして天に向かって叫ぶ。

 

「わ、私の店がー!!?」

 

 つ、潰れた……オープン初日なのに……!! く……くっそー!! あのドラゴン許さん!! 文句言ってやる!! ちょっとそこで待ってろよ!! このやろー!! 

 

 

 

 

 

 ──その時、俺の前に現れたのは馬鹿でかい古代竜と、いつぞや追った情報部の赤い仮面の男だった。

 

執行者No.Ⅱ。《剣帝》レオンハルト。以後、そう呼ぶといいだろう」

 

 そいつの真の名前はそいつ自身が名乗りやがった。

 ロランス・ベルガーってのは偽名で、レーヴェって名前も奴の愛称。仲間内で呼ばれている名前だと。

 そして俺たちにも好きに呼ぶがいいと舐めたことを言いやがった。

 だがそんな時だ──あの竜が吠えたのは。

 

「ああっ!」

 

「あれは……!?」

 

「えっ……!?」

 

「──何?」

 

 俺たちは全員でその竜を見上げる。あの野郎ですら何故か疑問を口にしてやがったが、その意味は俺にもすぐに理解出来た。

 何しろその竜の背中に──

 

「──このやろー! レグナートの馬鹿! マーケットを壊すなー! バカバカバカー!!」

 

「……………………」

 

 ──その背中に、髑髏の仮面で目元を隠した暗殺者らしい格好の女が、ドラゴンをその馬鹿デカい鋏でガキみてぇな文句を言いながら何度も叩いていたから。

 

「あ、あれって……?」

 

「あれは……以前に王都の地下で見た……」

 

「ああ! 《切り裂き魔(ザ・リッパー)》だ!」

 

「あれが《切り裂き魔》……!?」

 

「先生に傷を負わせるほどの伝説の暗殺者……!」

 

 オリビエやジンもその正体がクーデター事件の時に現れた《切り裂き魔》だと証言したことでエステルやシェラ、俺も当然警戒し驚いた。

 

「で、でもなんだか……竜に攻撃してますよ?」

 

「はい。どういうことでしょうか……?」

 

 ……だがそれに困惑が多く含まれちまったのはそいつが竜を攻撃していたからだ。何とも緊張感のない攻撃──というか躾にも見えるそれだが、その覇気の無さに反して攻撃は地味に痛そうで竜も咆哮を上げていた。

 そしてそれを見てレーヴェと名乗った奴が溜息をつく。

 

「……やれやれ。手間を掛けさせてくれる」

 

 レーヴェの奴が竜の背中に飛び乗り、もう1人の《切り裂き魔》に声をかける。

 

「落ち着け、《切り裂き魔》」

 

「あ、レーヴェ! ねえ聞いてよ! この竜が……! この竜がぁ……!」

 

「なぜ怒っているかは理解出来るが落ち着け。文句なら後で聞いてやる。俺にも責任の一端はあるからな」

 

「レーヴェは悪くないよ! 悪いのは言う事を聞かないこの竜でしょ! あーもう! せっかく頑張ったのにー!」

 

「全く……ならばすぐに撤退するとしよう」

 

「なっ……待ちやがれ!!」

 

 話の内容は俺たちにもよく分からないが、どうやら《切り裂き魔》の奴はボースマーケットを壊されたことを怒っているのは理解出来るが、味方同士であるはずの連中がなぜそんな風に言い争ってるのかは理解出来ねぇしどうでもいい。

 それよりもそいつらを逃がすわけにはいかなかった。

 だから俺は、俺たちの手に負えねぇから王国軍にでも任せとけと抜かして竜に乗って逃げたレーヴェを全力で追いかけた。

 そして俺は竜が飛び去った先──俺の生まれ故郷のラヴェンヌ村に一度立ち寄り、火の消化を手伝った後で奴の向かったと思われる北の廃坑へと向かい、そこで連中に追いついた。

 

「──はい! レグナートお手! おすわり! ちん◯ん!」

 

「……その芸を覚えさせることに意味はあるのか?」

 

「データはあることに越したことはないし、言う事聞いてくれるならそれに越したことないからいいじゃん! はい、次はおかわり!」

 

「グゥゥ……!」

 

 ──だがそこで奴らは竜に芸を教えてやがった。犬に芸を教えるみたいに。

 

 俺はそれを見て、こいつら何をやってんだ……! と強い呆れと怒りを抱き、奴らを八つ裂きにしてやろうと大剣を構えた。

 

 

 

 

 

 ──はいこんにちは! 本日二度目のアーヤ・サイードです! 執行者No.ⅩⅢ《血染の裁縫師》です! 

 

 さて、お店を壊されたアーヤちゃんは激怒した。必ずかの邪智暴虐の竜とその根本の原因の催眠変態エロ教授を取り除かなければならぬと決意した。アーヤちゃんには実験が分からぬ。アーヤちゃんは執行者である。服を仕立て、彼女と遊んで暮らしてきた。けれども変態に関しては人一倍敏感であった。

 

 ──ということで私は怒りのままにレグナートに躾をすることにした。レーヴェからゴスペルを貸してもらってお手やおすわりやちん◯んなんかの基本的な芸を教えて手懐ける。私の店を壊すなんて許せないからね──あ、ちなみに店の方はセラちゃんや社員に任せてきた。すぐ戻って来るから心配いらないよって言付けて置いたので問題ないだろう。

 そしてレーヴェと一緒にしばらく廃坑で待機していたんだけど、そしたら入口からアガットが登場。原作通りっぽい? 会話を経て──私のことも「王都の地下に現れた暗殺者か」って言及してたけど──なんかすごい怒ってレーヴェに斬り掛かってきたんでレーヴェがそれに応じる。そうしてレーヴェとアガットの戦いが始まった。ここはさすがに覚えてる。レーヴェが圧勝するんだよね。私は頭の中で銀の意志を流しながら観戦する。

 

「……腕の差が歴然なのは前の手合わせで分かっている筈だ」

 

「そうだそうだー腕の差は歴然だー」

 

「加えてこっちにはもう1人の執行者に竜の脅威もあるだろう。なのに何故、あえて1人で挑む?」

 

「そうだー舐めてんのかおらー」

 

「勝算なんざ知ったことか……」

 

「いや知ろうよ、それは。遊撃士でしょ? 自殺行為はよくないよ」

 

「てめえは気に食わねぇ……ただ、それだけなんだよッ!」

 

「やれやれ……その程度か」

 

「やれやれ……その程度か(レーヴェの声真似)」

 

「これでは助力を頼むまでもない」

 

「元々レーヴェのが強いだろうからどっちみちいらないんじゃない?」

 

「なに……!? うおッ……!」

 

「うわー! レーヴェかっこいいー! どっちもがんばえー!」

 

「似たところもあるが……俺とお前は決定的に違っている。それは剣を振るう理由だ」

 

「な、なんだと……?」

 

「なんでしょう。3秒位内にお答えください。さあ走って!」

 

「ってうるせぇな! ちょっと黙ってろよてめえ!?」

 

「……俺が剣を振るうのは人を捨て修羅となるがため……しかしお前は、己の空虚を充たすがために振るっている」

 

「てめえも普通に話続けてんじゃねぇよ……!」

 

 うわっ、怒られた。普通に観戦してただけなのに。そしてレーヴェはいつも通りだ。さすがの冷静っぷり。この辺がアガットとは違うよね。ほら、レーヴェも「重き鉄塊を振るうことで悲しき空虚を激情で充たす……怒りで心を震わす間は哀しさから逃れられるからだ」って言ってる。つまり欺瞞ってわけね。レーヴェも「だが、それは欺瞞に過ぎない」って言ってる。やっぱり覚えてるね。もしくは私が普通にレーヴェの人となりを理解したから分かっただけかもだけど。

 

「…………やめろ…………」

 

「そして欺瞞を持つ者が前に進むことはありえない。《理》に至ることはおろか《修羅》に堕ちることもない」

 

 だけどさすがにちょっと静かにしてよう。一応名シーンだしね。頭の中でデザインでも考えながらね。はー店壊れたしまた頑張らないとなー。

 

「今のままでは……お前はどこまでも半端なだけだ」

 

「黙りやがれえええッ!!!」

 

 ってことでアガットが痛い所を突かれて叫ぶも、その攻撃は私から見ても何と言うか、怒りのままに振るってる感じで精彩を欠いている感じがする。

 なので圧倒的格上のレーヴェからしたら余計に大したことないというかまあ──そりゃレーヴェが勝つよね。一閃してアガットの大剣をへし折ったレーヴェは決着がついたと判断してこっちに歩いてくる。

 

「さて……今のうちにゴスペルの制御式を調整しておこう。ゴスペルを貸してくれ」

 

「あ、はーい」

 

「……ま、待ちやがれ……」

 

 ──と思っていたらアガットは立ち上がって折れた剣でまだ勝負は終わってないと言い張ったのでレーヴェもとどめを刺そうとして……その時にティータちゃんが大声で割って入ってきた。あ、エステルちゃんたちも来た。やべっ。引き続きまたちゃんとバレないようにしないと。声真似というか声の調整は得意だからね。あっ、あー、うんっ……よし、大丈夫だね。アガットも気づいてないみたいだしこの声のままで行こう。声優ばりの声変わりと演技を見せてやる! 

 

「──そこで止まれ」

 

「くっ……! あなたが……《切り裂き魔》……!」

 

「くっ、マズいわね……!」

 

 ということで私はレグナートと一緒にエステルちゃんとシェラザードさん、それにクローゼちゃんの3人を止めることにする。よし、行け! レグナート! 火炎放射だ! 心苦しいけどちょっと待っててね! 

 

 ──そしてそこからはまた原作通りのイベントだ。ティータちゃんがアガットを守るためにレーヴェの前に立ち塞がってみせる。うおー! すごいぞかわいいぞティータちゃん! 赤毛は爆発しろー! 燃えろー! 行け! レグナート! 火炎放射だ! 赤毛を燃やせ! いや、さすがにしないけどね? 

 

 でレーヴェは優しいからティータの覚悟を見て引いてくれる。別に殺す気なら幾らでも殺せたけど殺さなかったのは優しいからだ。邪魔が入ったといっても別に殺す時間くらいはあるしね。

 ってことで直後に軍用飛行艇が空からやって来た。そこにはリベール王国軍のトップであるスキンヘッドのモルガン将軍が──って、スキンヘッドになってる──!? え、嘘!? もしかして私が中途半端に切ったらから全部切っちゃったの!? うわぁ……なんかすごい……ブ◯ース・ウィ◯スみたいになってる……まあこれはこれで似合ってるかなぁ……? でも宣教師ヘアーよりはマシか。

 私はモルガン将軍のヘアースタイルの批評を内心でしながらレーヴェの言葉の後に「またね」と言ってエステルちゃんたちと別れることにした。地味に執行者の中で私だけ名乗ってないけど別に名乗るつもりもないからね。私は最後までこれで通していく。レーヴェも私を気遣って《切り裂き魔》としか呼ばないのも助かった。

 そしてこれでもう今度こそやることはないし、お店に戻って色々と手伝いつつ、折を見て基地に帰ることにしたんだけど……。

 

「──この場所に近づいてきている遊撃士がいる。気絶させて私の元に連れてきてもらいたい」

 

「あっ、はーい。よろこんでー」

 

 ──竜騒ぎが一段落したすぐ後。基地に戻るなり面白くない教授がそんな仕事を私に課してきたため私はそれに従って遊撃士の迎撃に出る。

 だけど今回は1人じゃなかった。

 

「アーヤ、私も一緒について行っていいかしら?」

 

「俺も手伝おう。先の実験で竜を抑えられなかった借りもある」

 

「オッケー。それじゃ一緒に行こっか!」

 

 ちょうど基地にいたレンとレーヴェも手伝ってくれることになったので3人で待ち伏せ。うーん、今回は奇襲じゃなくていいかな? 奇襲してもいいんだけど……3人いるし……別に手を抜いてもいいだろう。どうやったって勝てるだろうし。ってことで遊撃士たちとご対面。

 

「っ……なんだお前たちは……!?」

 

「言わずとも察しはついているだろう。お前達が探し求めている組織に属する者──執行者だ」

 

「悪いけどここで全員やっつけちゃうね♪」

 

「…………」

 

 ──って、またしてもクルツだった。それにクルツ率いる4人組だった。なんかよく会うなぁ……あー、そういえばこの基地見つけるのってクルツなんだっけ。ちょっと思い出した。そして小舟に揺られることになるんだよね。で、その時にボコボコにしたのがレーヴェとレンと……うわぁ、可哀想。可哀想すぎてちょっと憐れみを感じてしまう。

 でも残念ながら手心を加えるわけにはいかないんだよね……ってことでレーヴェとレンと協力して3人を気絶させる。正直普通だった。弱くはないけどね。こっちのパーティが強すぎるのが運の尽きだった。

 そして命令通り4人を教授の元に連れていけばお得意のエロ催眠こと暗示をかける。そしてその内の3人を操り、残り1人──クルツだけは小舟に返してあげた。なんで返してあげるの? って思ったけど教授は悪い笑みを浮かべてたのでわざとなんだろう。気づかせておびき寄せて遊ぶつもりだ。はー、お趣味が悪いですわねー。おゲロが出そうですわー。私はその趣味に付き合うこともないし、大人しく部屋に戻って服でも縫ってようかなーっと思った所で。

 

「アーヤ。せっかくだ。君にもゲームに参加してもらいたい」

 

「ゲーム?」

 

「ああ。最終関門で彼らを迎えてあげてくれると、とても面白いと思うのだがどうかね?」

 

「ええっと、この部屋で適当に迎え撃てばいいんだよね?」

 

「ああ、そうだ。君に少しでも痛手を加え、気付くことが出来たのなら彼らの勝ちにしてあげよう」

 

「……りょうかーい。それじゃ待機しとくね」

 

「ああ、お願いするよ」

 

 ──と、またしても教授の頼みが来たので私はそれを了承する。今度はこの基地の中でやって来るエステルちゃんたちを迎え撃てばいいらしい。やっぱり趣味悪いなぁ。どうせどうなろうと自分の思い通りに進ませるつもりなくせにね。

 私はもう何度目か分からない教授の悪趣味に内心で辟易しながらも待機する。……が、そこで思った。よくよく考えたらエステルちゃんたちと戦うのって初めてになる。前にヨシュアくんたちと王都の地下で戦いはしたけど、執行者としてしっかりと出ていくのは初めてになるだろうし。

 となるとここが私的にピークかな? 正直後は隙を見てレーヴェを救うことしか考えてないし、エステルちゃんたちとはそんなに戦わないつもりでいる。命令されたからといってやるわけにはいかないし。手加減出来るならともかくね。なのでここでの戦いを適当に流して終わらせたら後は表にそんなに出ることもない。表向きにはリベールからは帰国することになってるしね。そして正体がバレないまま、謎の暗殺者としてレーヴェを救いつつ少し良い人の雰囲気を漂わせて物語を終えるのだ。それが私の計画であり予定になる。

 なのでここはちょっと気合いを入れよう。手加減はするけど印象に残るようにね。次いつ姿を見せられるか分かんないし、出来る限り意味深かつ正体不明に──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──そして迎えたヴァレリア湖畔の北西にある結社の秘密基地の最奥で。

 

「──《切り裂き魔》の正体……貴方だったんですね──アーヤ先輩……!!

 

「……………………」

 

 ──私、身バレしました。やっべ、どうしよ。




ということで切り裂き魔の正体はアーヤちゃんでした! 如何でしたか?
次回は名探偵クローゼちゃん! 6章で遂にエステルちゃんたちと戦って衝撃の正体が明らかになる切り裂き魔ちゃんこと血染の裁縫師ちゃんです! お楽しみに!

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